JR本州3社の中でコロナ禍の影響を大きく受け、いち早く輸送密度2000未満の赤字線区の収支を公表したJR西日本。
最新データとして2020年度〜2022年度平均の収支や営業係数、2022年度の輸送密度から各線区の状況を整理します。
「輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示(JR西日本)はこちら」
各線区の状況まとめ
小浜線
敦賀~東舞鶴 赤字額15.2億円 営業係数792円 輸送密度864(人/日)
全線電化されたローカル線で、原発により比較的裕福な自治体を走ります。上下分離方式による存続を受け入れるかどうか具体的な話は上がっていません。
2024年10月に観光列車「はなあかり」が敦賀〜城崎温泉を走り、北陸新幹線敦賀延伸による観光需要に注目が集まります。
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越美北線
越前花堂~九頭竜湖 赤字額8億円 営業係数1,892円 輸送密度318(人/日)
越前花堂〜越前大野の利用者が比較的多く、末端部の少なさが目立ちます。北陸新幹線開業による並行在来線分離で飛び地路線になることから、全線の廃止を考えているものと思われます。
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大糸線
南小谷~糸魚川 赤字額5.9億円 営業係数3,835円 輸送密度108(人/日)
北陸エリアの中では最も営業係数が大きい赤字路線。
えちごトキめき鉄道の鳥塚社長が、JR西日本が経営分離して鉄路として残す場合、トキめき鉄道としての存続について言及したこともあります。
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山陰本線
城崎温泉~浜坂 赤字額9.5億円 営業係数1,053円 輸送密度721(人/日)
浜坂~鳥取 赤字額7.6億円 営業係数991円 輸送密度768(人/日)
出雲市~益田 赤字額33.1億円 営業係数694円 輸送密度860(人/日)
益田~長門市 赤字額11.4億円 営業係数1,939円 輸送密度231(人/日)
長門市~小串・仙崎 赤字額8.3億円 営業係数1,457円 輸送密度273(人/日)
特急が走る主要幹線で保守費用がかさむことから、出雲市〜益田は赤字額が最大です。
2023年7月の大雨で、粟野川橋梁が傾く被害を受け、長門市〜小串で代行バスによる輸送が続いています。復旧の見込みは立っていません。
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関西本線
亀山~加茂 赤字額15.8億円 営業係数1,046円 輸送密度864(人/日)
特急の走らない線区では、1kmあたりの赤字額が最大。京都府と三重県にまたがり、草津線や伊賀鉄道が接続するものの、廃線も視野に入るレベルです。
紀勢本線
新宮~白浜 赤字額28.5億円 営業係数838円 輸送密度793(人/日)
全区間電化されて特急が走っており、1kmあたりの赤字額が最大です。紀南エリアの観光には特急列車が欠かせず、WEST EXPRESS銀河紀南ルートの誘致にも取り組んでいます。
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加古川線
西脇市~谷川 赤字額2.6億円 営業係数2,244円 輸送密度237(人/日)
阪神淡路大震災の時には、大阪から姫路への迂回ルートとして設定されました。輸送密度が非常に低いですが、2004年に全線電化されています。
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姫新線
播磨新宮~上月 赤字額5.8億円 営業係数896円 輸送密度822(人/日)
上月~津山 赤字額4.4億円 営業係数1,079円 輸送密度358(人/日)
津山~中国勝山 赤字額4.4億円 営業係数1,142円 輸送密度386(人/日)
中国勝山~新見 赤字額3.8億円 営業係数3,745円 輸送密度132(人/日)
播但線
和田山~寺前 赤字額6.2億円 営業係数402円 輸送密度972(人/日)
寺前駅より北側は非電化区間、城崎温泉へ特急はまかぜ号が走っています。
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芸備線
備中神代~東城 赤字額1.6億円 営業係数3,181円 輸送密度89(人/日)
東城~備後落合 赤字額1.19億円 営業係数15,516円 輸送密度20(人/日)
備後落合~備後庄原 赤字額2.3億円 営業係数3,777円 輸送密度75(人/日)
備後庄原~三次 赤字額2.3億円 営業係数958円 輸送密度327(人/日)
三次~下深川 赤字額13.8億円 営業係数888円 輸送密度988(人/日)
東城〜備後落合は100円稼ぐのに15,516円の経費がかかり、日本一の赤字路線と名高い区間です。
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福塩線
府中~塩町 赤字額5億円 営業係数2,516円 輸送密度160(人/日)
因美線
東津山~智頭 赤字額3.7億円 営業係数2,431円 輸送密度130(人/日)
木次線
宍道~出雲横田 赤字額6.2億円 営業係数1,538円 輸送密度237(人/日)
出雲横田~備後落合 赤字額2.36億円 営業係数5,695円 輸送密度54(人/日)
2023年11月23日に観光列車『奥出雲おろち号』が引退。光景の『あめつち』は出雲横田駅までの運行で、営業係数・輸送密度ともにワースト2位の出雲横田〜備後落合の存続が厳しい状況です。
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岩徳線
岩国~櫛ケ浜 赤字額5.6億円 営業係数494円 輸送密度1,071(人/日)
山陽本線を短絡するこの路線の存在のために、規則上山陽新幹線の運賃が安くなっている現状。この路線を廃止すれば遠回りの山陽本線で運賃計算が可能になるため、輸送密度はある程度高くても、JR西日本としては特に何とかしたい路線です。
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山口線
特急スーパーおきが結ぶ陰陽連絡線、観光列車SLやまぐち号も走ります。
宮野~津和野 赤字額9.7億円 営業係数1,148円 輸送密度495(人/日)
津和野~益田 赤字額6.1億円 営業係数1,304円 輸送密度417(人/日)
小野田線
1日3本しか列車が発着しない支線も有します。
小野田~居能など全線 赤字額1.7億円 営業係数1,230円 輸送密度371(人/日)
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美祢線
厚狭~長門市 赤字額4.7億円 営業係数1,049円 輸送密度377(人/日)
2023年7月の大雨で、第6厚狭川橋梁が流出する大きな被害を受けました。代行バス輸送が続いており、現在でも復旧の見込みが立っていません。
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各線区データ別ランキング
各線区における1kmあたり赤字額、営業係数(2020-22年度平均)、輸送密度(2022年度)を、それぞれ厳しい順に並び替えました。
1kmあたり赤字額
電化され特急が走るため経費がかかる、紀勢本線(白浜〜新宮)が最も1kmあたり赤字額が大きいです。
関西本線(亀山〜加茂)が続いており、1両のディーゼル気動車が行き来するローカル線である現状、廃線議論も視野に入るのではと思わされます。
営業係数
営業係数のトップは芸備線(東城〜備後落合)、100円の収入を得るのに15,000円必要です。2019-21年度平均では23,000円で、鉄道ファン利用のためか割と回復しました。この傾向はローカル線全体に見られますが、だからといって路線維持は難しいです。
輸送密度
コロナ禍をほぼ終えた2022年度でも、輸送密度1000を超えるのは岩徳線(岩国〜櫛ケ浜)のみでした。
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【赤字路線一覧】JR東日本が収支公表まとめ 2022年度赤字額・営業係数・輸送密度ランキング
2022年夏、輸送密度2000未満(2019年度)の赤字線区について、収支を公表したJR東日本。 2022年度分のデータが公表されたため、最新情報として各線区の状況を整理します。 (JR東日本公式ニュ ...
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