たくさんの鉄道路線が集結する東京駅、ここからは各方面へ長距離鉄道が発着しています。
特にJR東日本の新幹線は5方面へ分岐しており、方面ごとに色分けされた列車が、発車標をカラフルに彩ります。
今回乗車するのは新潟方面へ行く上越新幹線、とき311号です。
途中停車駅を見てみると、大宮・新潟のみ。それ以外の駅は全て通過します。
この最速達便は1日1本だけの運行です。「東京〜新潟最速1時間36分の看板列車」というのはもちろんですが、なぜこの便が設定されているのか他の理由を探ります。
現在、上越新幹線ではE2系新幹線とE7系新幹線が走っています。
この便ではE2系新幹線が運用に就いているのですが、2023年春のダイヤ改正で全便がE7系新幹線へ置き換えられます。
今日は200系新幹線復刻塗装が施された、緑色のE2系新幹線でした。
9:12 東京駅 発
在来線ホームを見下ろしながら、国境とも称される厚い山脈を越えた先、新潟を目指します。
秋葉原の電気街を抜けると、新幹線は地下へと潜っていきました。
レトロな駅舎を見ることなく、地下深くの上野駅を通過。東京からすぐでもほとんどの列車が停車しますが、本当に急ぐ便についてはこのように通過してしまいます。
山手線や京浜東北線など、いろんな列車が行き交う首都圏らしい光景。
右手には同じ高さで埼京線が走っており、新幹線反対運動を続けた沿線住民の理解を得るべく、その見返りとして建設されました。
荒川を渡って東京都から埼玉県へ。まもなく県の中心駅である大宮駅に停まります。
到着前には、「次の停車駅は新潟、途中の駅はすべて通過します」と案内がありました。
大宮駅にはすべての列車が停車。東北と北陸・新潟方面の分岐点のため鉄道の街として栄え、新幹線においてもそれは同じです。
雪で遅れた東北新幹線と接続したため、4分遅れでの発車となります。
これまで在来線と共に、多くの建物が立ち並ぶ市街地を走っていましたが、郊外らしい景色へ変わりました。
とにかく暑い街として知られる熊谷を通過、2018年に41.1℃を記録し全国1位タイです。
東京都心からの暖かく湿った海風、秩父山地からの暖かく乾いた風が重なるためで、ヒートアイランド現象とフェーン現象によるもの。
さらに、冬の夜間には山沿いの冷え込みが強く、最低気温-10℃まで下がるという環境です。
本庄早稲田駅の壁に隔たれた通過線を駆け抜けます。
駅南側の大久保山丘陵地には、早稲田大学本庄キャンパスがあることから、この駅名が採用されました。
本庄市のゆるキャラは市内で出土した埴輪をモデルにした「はにぽん」。ぐんまちゃんの影に隠れていますが、地味に2016年のゆるキャラグランプリで2位になっています。
ちなみにこの年のグランプリは、「ちぃたん☆」と間違えられる「しんじょう君」です。
群馬県の県庁所在地(ではない)高崎駅も颯爽と通過。
通過自体は北陸新幹線かがやき号によるものを、いつでも見られます。一方で上越新幹線からその様子を見るのは中々レア…。
北陸新幹線開業以前、金沢〜新潟には特急北越が走っていました。新幹線開業によりこれは廃止され、上越妙高駅から乗り継ぐ特急しらゆきで代替されます。
しかし、新幹線があまりに速いため一旦高崎まで南下してから新潟へ行った方が早く着ける場合も。かなりの遠回りにも関わらず、新幹線の偉大さを思い知らされます。
その北陸新幹線が左手に分かれました。
北陸新幹線と上越新幹線の分岐地点には、38番分岐器が使用されています。これは1m離れるのに38m必要であることを意味します。これによって分岐側を160km/hで通過可能としているのです。
これら新幹線の高架橋は、榛名山をくちばしで挟んでいるよう。上越新幹線はそれの東側を走ります。
大宮〜新潟で40%がトンネルを占める上越新幹線。特に高崎〜長岡はほとんどがトンネルです。
少しの間明かり区間に出まして、特急草津が走るJR吾妻線と交差。雪が現れてきましたが、まだ新潟の豪雪感はありません。
通過している上毛高原駅は乗車人数が415人/日で、上越新幹線で最も利用者数が少ない駅になっています。
ここから22,211mに及ぶ大清水トンネルへ突入しました。1979年の貫通当時、世界一の長さを誇ります。
上越新幹線たにがわの終点、越後湯沢駅も通過します。
冬場はスキー場があるガーラ湯沢駅へ乗り入れており、東京から1時間でスキーを楽しめます。
トンネルを抜けて越後湯沢周辺を見ると、急に世界が変わっていてびっくりしました。
越後湯沢駅周辺の大清水トンネルから塩沢トンネルにかけ、新潟方面に向かって長い下り坂となっています。1990年〜1999年にはこの坂を利用して、新潟方面の一部新幹線が最高速度275km/hでの運転を行ったこともありました。
縮小傾向にあった車内販売ですが、上越新幹線でも復活していました。ここは新潟のこしひかりジェラート。
口の中でアイスが溶けると、ちょこちょこ凍ったお米が現れてきて、その食感もまた楽しめます。
かつて多くのスキー客が利用した痕跡が残る、浦佐駅を通過。団体客にも対応した広い空間がありますが、今ではその機能も失われています。
その後もいくつかトンネルを抜けると、越後平野が広がるようになりました。
新潟県第二の都市、長岡駅も構わず通過。
向こうには使われておらず柵の立てられたホームが見えてきました。これは、上越妙高駅から日本海側を通って青森まで至る、羽越新幹線構想の構造物です。
長岡から新潟では上越新幹線に乗り入れることになるため、ここにホームの用地が取られています。
新潟は日本一の米どころ、田んぼ一面にお米…ではなく雪が敷き詰められています。
燕市と三条市の境界に駅が設置された、燕三条駅を通過。
お互い新幹線駅の誘致合戦を繰り広げ、駅名は燕を先にする代わり、住所となる駅長室は三条市に置くなど、ここまでバチバチした駅は他にないでしょう。
一方ですぐ近くを走る北陸自動車道は、三条燕ICです。
燕市と三条市の不仲は江戸時代に遡ると言われています。当時、燕の職人は三条の商人に商品を売ってもらっていたのですが、三条の商人は三条の職人を優遇し、燕の職人については安く買い叩いていました。
この時からの根深いものが、今にまで続いているのです。
佐渡おけさの車内チャイムが流れまして、終点の新潟駅に到着です。
東京から1時間36分で新潟まで来たわけですが、ここまで急いでいる理由は新潟駅に到着すると分かります。
列車は11番線に到着。
ここで両側にホームが設置されていまして、左側のホーム上に乗り換え改札があります。
改札の先には在来線の5番線ホームがあって、特急いなほ酒田行きが待っていました。
東京〜新潟の速達型交通においては、上越新幹線がほぼ独占状態です。この区間には奪うものが存在していないため、JR東日本は上越新幹線にそこまで力を入れる必要がありません。
一方で新潟よりも先、東京〜庄内ではおいしい庄内空港を発着する航空機と競合しています。新幹線とき311号と特急いなほ号の乗り継ぎでは、東京〜酒田3時間53分。いわゆる4時間の壁を切っています。
また、上越新幹線の騒音対策が完了したことにより、最高速度が240km/hから275km/hへ引き上げ。2023年春のダイヤ改正で、E7系統一が行われます。
そして今回乗車した上越新幹線とき311号の所要時間も、1時間36分から1時間29分にさらなる短縮が実現します。
遂に東京〜新潟1時間半切りを達成する上越新幹線、一体どんな走りになるのか楽しみです。
新潟よりも先への速達化を見据えた、とき311号。ぜひ時間が合う際には、上越新幹線本気の走りを見てみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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