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ここは秋田県の中心駅、秋田駅です。
秋田新幹線や奥羽本線、羽越本線など特急街道が集まる中、ひとつ普通列車が行き来する路線があります。それがこちら、男鹿線です。
赤青の車体になまはげが描かれた、まさに男鹿を表した車両。
実はこの車両は普通とは違う特徴があり、遠くJR九州の車両をリニューアルしたものです。普段全く関わりのないJR東日本とJR九州、これは一体どういうことなのでしょう。
07:41 秋田駅 発
列車に乗り込みまして、まずは秋田駅を出発。しばらくは奥羽本線を走行します。
こちらはコンテナが並ぶ秋田貨物駅の真横、近くには2021年春に開業した泉外旭川駅があります。
土崎駅で男鹿線の普通列車とすれ違い。
向こうは4両編成と長い両数となっており、秋田市への通勤通学需要の大きさを感じます。
土崎駅からは秋田港駅へ貨物線の支線が分岐しています。しかし時々、クルーズ船客専用列車が秋田港から運行されて、旅客でも乗車することができます。
さて、運転席を見てみますと、緑色で「架線あり」と表示されていました。
ここ奥羽本線は貨物列車も走る重要な路線であり、電化されています。この列車もパンタグラフを上げて架線から電気を摂り、それによって走ることができている訳です。
動きが見られるのは、途中の追分駅です。
なんと架線から電気を摂るのに必要な、パンタグラフが降ろされてしまいました。
これでは電気を得て走ることができません。ここから男鹿線をどうやって走るのでしょうか。
そこで注目するのが、車内のデジタルサイネージです。これによると列車に蓄電池が搭載されており、ここから電気を得ていることが示されています。
追分駅を発車し、奥羽本線と男鹿線の単線が並列した状態。奥羽本線側にだけ架線が張られています。
この列車はパンタグラフを下げて、蓄電池に充電された電気で走っているのです。
男鹿線が西へカーブすると、もうこの路線が非電化路線だと明るみになりました。
運転席を見てみると、今度は白い「架線なし」の表示に変わっています。
男鹿線を走っているこの車両は、ACCUMと愛称付けられたEV-E801系電車です。
JR東日本は2014年、直流に対応した蓄電池電車EV-E301系を烏山線に投入しました。
その後、交流電化区間や寒冷地での蓄電池電車を実用化、蓄電池電車を広める方針を示します。
そこで、すでに交流電化区間で実用化されていたJR九州のBEC819系電車(DENCHA)をベースに改良。東日本の50Hzに対応させ、寒冷地仕様にした上で新造し、2017年3月に男鹿線で営業運転を開始しました。
確かにJR東日本EV-E801系(ACCUM)とJR九州BEC819系(DENCHA)を比べると、ライト位置や窓枠など細かいところに注目しなければ、ただの色違いです。
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ACCUMの車内はご覧の通り。いつものJR東日本と違った印象を持ちますが、何も知らなければ、新しい車両だからそういうものかなと思ってしまいそうです。
しかし、DENCHAの車内と比べてみるとどうでしょうか。
水戸岡デザイン特有の木の座席が採用されていますが、それ以外はかなりそっくりだと言えます。
また、先程ご覧頂いたデジタルサイネージのデザインも、なまはげがいる以外はかなり似ています。
システムは同じなので当然といえばそれまでですが…。
車端部には機械室が備えられており、ここに蓄電池が詰まっているのでしょうか。
男鹿線の車窓に目を移してみます。
上二田駅は潟上市の代表駅とされており、行き違い可能な構造です。
男鹿なまはげラインという愛称が付けられている、秋田〜男鹿駅。駅名標の背景には、なまはげと男鹿半島の先端部・入道埼灯台が描かれています。
列車は八郎川橋梁によって、船越水道を渡ります。戦後の八郎潟干拓によって一部分残された、八郎潟調整池と繋がっていました。
船越駅は秋田県立男鹿工業高等学校の最寄り駅です。
男鹿線は全体的に平坦な土地を走るので、蓄電池車両でも電気を食わずに運行が可能です。
山がちなのは、脇本駅〜羽立駅ぐらい。やはりあまりに勾配のきつい区間が続いては、折り返し時間での充電では足りないかもしれません。
08:37 男鹿駅 着
ここまで男鹿線は非電化区間が続いていましたが、最後の最後で架線が現れました。駅構内の僅かな区間ですが、ここだけ電化されているのです。
それは、男鹿駅での折り返し時間の間、蓄電池に充電するためです。
車内のデジタルサイネージでも、充電中ということを示していました。
急速充電に対応しており、折り返し時間の20分で充電は完了します。
また土崎駅で4両編成のACCUMとすれ違いましたが、2+2での運行にも対応するため、架線は4両分の長さあります。
2017年の導入から1編成しか運用されていなかったACCUM。
しかし、2021年3月に5編成追加投入、それまで走っていたキハ40・48形を置き換える形で統一されました。
男鹿線で蓄電池車両を採用できたのは、26.4kmという短い非電化区間の長さ。実用化には運行上支障ない充電時間で、非電化区間を走らせられないといけません。
駅前は広場として整備されています。
かつては男鹿駅から1.8km先、船川港駅まで貨物支線が伸びていました。施設移転やタンクローリーへの輸送方法転換により、2002年に廃止。男鹿線から貨物列車は消滅しました。
線路が行き止まり式になったため、2018年には駅舎を線路終端部に移転させました。
ACCUMを走らせていることもあり、環境に配慮した設計。壁面には男鹿石を使用しており、さっきの充電の様子は屋上から見下ろせます。
旧駅舎の模型も展示されていました。こっちの方が男鹿の荘厳らしさはありますか、現駅舎は環境を意識した男鹿線のイメージとマッチしています。
男鹿駅では列車ごとの改札を行っていて、10分前までホームへ入れません。
ホームに隣接した空用地には、9基の小形風力発電機が設置されています。これによって駅の電力を賄い、ACCUMの充電にも一部使用されているとのことです。
2019年にはACCUM充電を含む男鹿駅で使用される電気はJR秋田下浜風力発電所由来に切換、完全なCO2フリー電気となっています。
充電が完了したところで、パンタグラフを下ろします。
男鹿線の運行本数は1時間に1本。余裕ある運行ダイヤであり、朝は4両にすることで輸送量を確保しています。
駅舎横には変電所が設けられていて、かなり大掛かりな装置。蓄電池車両の導入には様々な条件があり、これからの技術向上が要されるところです。
JR東日本は鶴見線・南武線で運行予定の、水素燃料式電車FV-E991系電車も開発。環境配慮と運行費用縮小のバランスを取れるよう、いろいろ考えられているようです。
それでは男鹿駅で充電した蓄電池電車で、追分駅へ戻りましょう。
09:41 追分駅 着
パンタグラフが上がりまして、奥羽本線を走り秋田駅を目指して走っていきました。
遠く離れた九州と東北、思わぬところで技術が提供の繋がりがあったと知り、なんだか素敵だなと感じます。環境に優しい鉄道がもっと浸透するよう、国内で技術開発が活発になることを望みます。
10:00 追分駅 発
それではいつもの電車で奥羽本線を北上、史上最長片道切符ルートに復帰します。男鹿線は完全にルート外でしたが、ちょっと取り上げたかったので。
八郎潟周辺の水田地帯を走ります。
10:42 東能代駅 着
ここからは五能線に乗り換えるのですが、2022年夏の豪雨で被災。当時、東能代〜岩館駅と五所川原〜川部駅だけで運行再開していました。
代行バス運行と並行する路線バスによる代行輸送が行われていたので、これでタスキを繋ぐことにします。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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