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【本州一の赤字路線】貨物のため高スペック路線を維持する羽越本線[史上最長片道切符の旅(74)]

2022年11月9日

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こちらは新潟県の鉄道の要衝、新津駅です。

 

昔から鉄道の街として知られており、在来線が4方向から集結。すぐお隣には車両基地が置かれています。

 

ちょうどSLばんえつ物語号の客車が停車中。東北地方を襲った豪雨により、磐越西線の橋梁が倒壊。運転見合わせ中でSLもお休みしています。

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今日ここから乗車しますのは、ホーム上に0キロポストが刻まれた羽越本線です。史上最長片道切符のルートとしては途中の坂町駅からですが、始点の新津駅から普通列車で乗り通します。

 

この羽越本線は日本海縦貫線を成す路線。しかし、JR東日本が収支を公表した路線の中で、年間49億円の赤字を叩き出した区間を含むのです。

今回は何故羽越本線が本州一の赤字額を生み出しているのか、JR東日本はどのようにそれを抑えているのか、注目していきます。



07:48 新津駅 発

SLばんえつ物語号が走るということで、ホーム上には明治時代のレトロさを思わせる、装飾がかき集められていました。

当時、時代の最先端が詰まっていた『駅』。その時の雰囲気を表しています。

 

ご覧の通り、夏休みとはいえ利用者はまばら。4両編成の電車は贅沢に思いますが、新潟周辺での電車運用全体を考えれば、効率は良いのでしょう。

また気動車で運行されることも多く、利用者数に柔軟な対応をしていることが分かります。

 

今走っている羽越本線の新津~新発田は、特急列車が走らないやや重要度が低い区間です。

 

新発田~新潟には白新線が走っており、大都市新潟を通るため、特急は白新線を経由します。貨物の大動脈である日本海縦貫線は、新潟経由信越・羽越本線経由二つのルートが存在します。

 

新津〜新発田の輸送密度は1300人/日、収支は8億6200万円の赤字、1kmあたり3315万円の赤字です(2019年度)。貨物列車が走るため高規格な線路をJR東日本が維持しており、キロあたりの赤字額は大きくなっているのが分かります。

 

新津〜新発田は明治43年9月に新発田線として着工し、大正元年に開通。今渡っている阿賀野川橋梁は1,229mに及び、当時日本一長い橋でした。

 

阿賀野市の中心駅、水原駅からは多くの高校生が乗車されました。



08:15 新発田駅 着

白新線と羽越本線の分岐駅となる、新発田駅に到着です。

 

駅舎は新発田城の城下町をイメージした様子、NewDaysではなくデイリーヤマザキが入居していました。駅前に停まっているバスも、特に雪国に似合いそうなレトロな車両です。



08:24 新発田駅 発

引き続き普通列車村上行きで北上します。

向かい側から来たのは電気式気動車GV−E400形、ギリギリ県境を越えた山形県の鼠ヶ関駅が始発です。

 

新発田〜村上駅については輸送密度2000人/日を超えており、収支が公開されていません。

 

こちらは新津駅前のデイリーヤマザキで買ってきた、にいつあんぱん。甘い小倉あんにホイップクリームはボリュームがあって、とても満足でした。

 

加治駅で特急いなほと行き違いました。

 

羽越本線は日本有数の米どころ、越後平野の北部を走り続けます。



中条駅は胎内市の中心駅、胎内市でコロナ感染者のニュースが出た時、遂に胎内で感染と勘違いを生んでいたのを思い出します。

胎内市は新発田市への通勤通学率が高く、鉄道利用による輸送密度向上に影響しているものと考えられます。

 

坂町駅から史上最長片道切符のルートに復帰します。

米坂線の乗換駅である坂町駅、夏の土砂災害によって大きな被害を受け、昨日はその被害状況を見てきました。

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坂町駅には坂町機関区があり、植物に侵食された給水塔が残っていました。扇形機関庫もあったそうですが、新津機関区にに機能が集約されています。

 

羽越本線は単線区間と複線区間が複雑に入り交じる路線としても知られています。例えば、今走っている中条駅からは平林駅まで複線となっており、右側に線路を見ることができました。

複線区間を最低限にして保守費用を抑えているのでしょう。

 

しかし、そこから村上駅までは単線のため、岩船町駅で普通列車と行き違いです。1.5km程離れた港からは、小さな離島である粟島浦村への船が出港します。

 

日本海沿岸東北自動車道の下をくぐりました。この高速道路は村上市の朝日まほろばICまでで県境を越えておらず、まだ鉄道のシェアが十分に取れている状況です。

他の主要幹線とは異なり、高規格道路整備によって高速バスが在来線特急のシェアを奪っているのではなく、単純に長距離移動の旅客需要が少ないということです。



08:58 村上駅 着

新潟県の北端、村上市に入りました。ここで1時間ほど待ち時間が生じます。

 

2022年のダイヤ改正から、いなほ3,10号がグリーン車の無い特急しらゆきの車両に変更。乗車位置案内のカラーリングもそれに合わせてあり、なんだか違和感です。

 

駅舎は2005年にデザインが一新され、レトロチックな見た目に変えられました。ランプや時計などはたしかにレトロですが、壁面の色合いはちょっと不自然に思ってしまいます…。

 

村上駅から先も電化区間ですが、電気式気動車のGV-E400形による運行です。

 

その訳は村上駅北側にある、交直切り替えポイント。ここまで直流区間を走っていましたが、ここからは交流区間に変わります。

直流と交流両方に対応した電車は非常に高価、それなら電車ではない気動車を走らせれば良いのです。

 

ここで特急いなほ6号とすれ違いました。特急車両については直流交流両方を走れる車両、こちらは速達性を重要視するので、電車での運行を行っています。



10:24 村上駅 発

村上〜鶴岡の輸送密度は1695人/日、収支は49億900万円の赤字、1kmあたり6136万円の赤字です(2019年度)。

先程の新津〜新発田は貨物ルートが白新線と分かれていましたが、ここは日本海縦貫線の貨物列車すべてが走行。貨物列車は旅客列車より重く長編成で、その分保線にも力を入れなければなりません。それが数字にも表れているのでしょう。

 

気動車なので関係ないですが、電化方式の交直切換ポイントへ侵入します。

 

電柱に注目しているとセクション注意の看板。その他にもよく分からない看板が、次々流れていきます。

 

そして、デッドセクションを示す赤白のしましま模様。

電車だと切り替え区間で電気が切れ、惰性で走り続けます。その後、交流区間となると再び電気が復帰、電気を摂って走り始めます。

 

全長2,333mに及ぶ村上トンネルに入りました。

 

そしてここからが羽越本線の車窓のメインどころ。日本海の景色を左手一面に見渡せます。

 

途中駅は昔からの木造駅舎が多く、そのまま使われているのが分かります。

 

並行する国道345号は日本海夕日ラインとされており、観光客が多く利用。物流については山の中の国道7号を利用する印象です。

 

桑川駅には道の駅笹川流れ・夕日会館が併設し、観光列車「海里」も停まります。

 

ここは景勝地・笹川流れ。日本海の荒波が作り上げた奇岩や岩礁など、迫力ある海岸を楽しめます。さらに、ロマンチックな夕陽も綺麗です。

 

勝木駅で村上行き普通列車と行き違い、勝木〜府屋駅の1区間だけ単線となっています。

保線費用を抑えるというのもそうですが、単線規格の大崎山トンネルを追加で1本掘るまでして、輸送力を拡大するだけの効果も無いのです。これはJRというより、国鉄時代からそのように判断されたのでしょう。

 

鼠ヶ関を越え、新潟県から山形県へ入りました。



羽前水沢駅では貨物コンテナを見られました。

以前ここから水澤化学工業水沢工場へ専用線が分岐し、コンテナによる製品輸送やタンクコンテナによる化学薬品の輸送が行われていました。しかし、2014年5月頃をもってトラック輸送に切り替えられ、貨物列車の定期運行は無くなっています。

 

鶴岡市は庄内地方最大の都市です。鶴岡〜酒田は輸送密度2000人/日を超えているとのことで、収支は公表されていません。

 

西袋駅では、酒田発鶴岡行きと行き違い。こちらは701系電車での運行です。

 

余目駅は陸羽西線の分岐駅です。新庄駅までを結びますが、2024年度まで並行する国道47号のトンネル工事により、代行バスによる運行になります。

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ここでは特急いなほ8号と行き違い、この便は秋田駅から新潟駅を結びます。

最近では酒田〜新潟への区間短縮も図られており、運行ネットワーク縮小がされているようです。

 

今渡っているのは、第二最上川橋梁。

2005年12月25日、ここを通過中の特急いなほが、突風によって脱線するという事故が発生しています。基準も満たした上での運行で防ぐことも難しかったですが、5人の乗客が亡くなり慰霊碑が建てられました。



12:24 酒田駅 着

羽越本線の運行上重要な拠点、酒田駅に到着しました。

 

北海道から大阪へ向かう、北前船が寄港した酒田。山居倉庫が観光地となっており、それを模したリニューアルが行われました。

ここ酒田駅から酒田港駅へは貨物線が伸びております、港の方には小さなターミナルがあります。

 

酒田駅前には交流拠点施設ミライニがオープンしています。中央図書館やバス窓口、ホテルも集まり、駅周辺の再開発を重要視しているようです。

 

15:30 酒田駅 発

ここからは701系電車に乗車。交直両方に対応した電車でなければ、架線を使って電車が走ります。

 

酒田〜羽後本荘の輸送密度は977人/日、収支は27億1100万円の赤字(2019年度)、1kmあたり4372万円の赤字です。

こちらの方が村上〜鶴岡より輸送密度が小さいのに、キロあたり赤字額も小さなものです。特急の本数が比較的少なく、その分保線費用が抑えられているのでしょうか。

 

特急も停車する遊佐駅、駅舎内ではカラフルな野菜が特徴的な遊佐カレーなど食べられるそうです。

 

この列車は普通列車ですが、女鹿めが駅を通過。

国鉄民営化時に信号場から駅に昇格、秘境駅と呼ばれる小さな駅ですが、2016年に新駅舎となっています。

 

羽越本線は大きな街に近づくと内陸部へ、それ以外は日本海沿いへ戻るというのが特徴的です。

 

初見では読めない象潟駅。山形県から秋田県に入り、にかほ市です。



仁賀保駅に到着時、ちょっとしたアクシデントが。

駅へ侵入する時、パンタグラフあたりからバチバチっと発光し、白い煙が出たのです。

 

所定の停車位置に止まり、ドアを開いて17分ほど停車。特に理由は分かりませんでしたが、安全確認をした後運行を再開しました。

 

右手からは由利高原鉄道鳥海山ろく線が近づいてきました。

 

その乗換駅が、羽後本荘駅です。由利本荘市の中心駅で、立派な橋上駅舎となっています。

 

折渡駅を通過後、再び海沿いへ。羽後本荘〜秋田については輸送密度2000人/日を超えているとのことです。

 

2001年に開業した新駅、岩城みなと駅。駅待合室もファンシーで、明らかに最近できたことが分かります。

 

日本海には雲の隙間から光が差し込み、これを最後に秋田駅へと向かっていきました。



17:26 秋田駅 着

非常に大きな赤字額である羽越本線、貨物列車のための線路設備が大きな要因でした。

貨物のために必要な線路設備への支出については、JR貨物がJR東日本へ支払うことになります。しかしその計算方法は国鉄民営化時に定められたアボイタブルコストのルールに基づいており、JR貨物に非常に有利なものです。その結果が羽越本線の赤字額に現れているでしょう。

 

アボイタブルコストについてここで詳しく説明するのは難しいため、詳しく知りたい方は動画投稿者の鐵坊主さんによる動画をご覧頂ければと思います。非常に分かりやすい解説ですので、興味のある方はぜひ。

 

この時は東北地方を襲った豪雨により、奥羽本線で土砂流入があり、鷹ノ巣〜大館が運休となっていたため日本海縦貫線が寸断。貨物列車は全く見られませんでした。

今度は羽越本線をどれだけの貨物が走っているのか、実際に注目したいです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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