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【最終回】日高本線で遂にゴールへ! 廃線代替バスモデルコース[史上最長片道切符の旅(100)]

2023年6月11日

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枕崎駅より始まった、史上最長片道切符の旅。ついに最終日がやってきました。

最後の路線は「北の大地」海の玄関口、苫小牧より伸びる日高本線です。

 

乗車するのは普通列車鵡川行き。

2023年3月に留萌本線の石狩沼田〜留萌が廃止されるまで、日高本線の苫小牧〜鵡川は日本一短いJR本線でした。

 

元々日高本線は、苫小牧〜様似146.5kmを結ぶ長大路線でした。しかし、2015年の高波と翌年の台風により被災し、代行バス運行を経て、2021年春に鵡川〜様似が廃止されました。

 

現在は廃線代替バスの運行が行われていますが、かつての日高本線を再現するような乗車は少々複雑です。

今回の行程はそのモデルルートにもなるので、参考になればと思います。

 

先日737系新型電車導入により室蘭本線の定期運用から撤退した、キハ143形気動車がいました。

客車に運転台をつけて気動車にした、かなり面白い車両です。SL銀河もラストランを迎えたため、既に通常乗ることはできなくなっています。

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乗車するのはお隣に停車中、年季の入ったキハ40形気動車です。しかし本日充当されていたのは、おめかしした「道央花の恵み号」。

 

「北海道の恵みシリーズ」の一つであり、座席の頭部分を木にしてデザイン重視にしたり、窓のところに写真を飾ったりしています。

観光列車で運行するときには、テーブルも設置可能な構造です。



07:52 苫小牧駅 発

1982年の鉄路を舞台にした今回の旅、最後に相応しい車両に乗れました。

朝の時間帯ですが高校生の生徒さんの乗車は少なく、ローカル線の空気をこれでもかと詰めて出発しました。

 

右手には苫小牧貨物駅が見えてきました。

駅から少し離れたところに位置しており、札幌貨物ターミナルを補完する役割も担っています。

 

5kmほど複線の室蘭本線と並走しており、3線並列みたいな感じでした。

あちらは札幌へ向かう千歳線にも繋がっています。



最初の停車駅は勇払駅。かつては製紙工場へ専用線が伸びていて、大きな構内を有していました。

事務室があったであろう二階建ての駅舎や、ホームとの距離からも、その名残が分かります。

 

ここから海沿いを走ることになり、コンテナヤードが広がっています。

鉄道貨物よりもはるかに大きな、おそらくタンカー規格のコンテナを積んでいました。

 

続いて苫東とまとう厚真発電所の真横を走行。こちらの円筒は石炭灰サイロです。

ここは火力発電所であり、石炭を燃やして燃焼ガスを浮遊する灰の粒子を集めています。

 

ちょっと詳しいことは分からないのですが、燃料をここから発電所へ運んでいるのでしょうか。うっすら雪が被っているものの、黒い山ができています。

 

さらに進んで厚真町に入ったところ、奥に見えるのは苫小牧東港フェリーターミナルです。秋田・新潟・敦賀への旅客フェリーも、ここから出発します。

 

その最寄駅となっているのが、浜厚真駅です。

厚真町内唯一の駅ですが、町の中心部はもっと内陸寄りのため、駅舎は貨車駅舎と簡素なものになっています。平成30年に北海道胆振東部地震が起き、大きな被災を受けた地域です。

 

厚真町内を走っているのは僅かな距離、入鹿別川を渡って、むかわ町へ。



コンクリートブロックが積まれた待合室が鎮座する、浜田浦駅を通過しました。

こちらの駅は乗車人数1日平均3名以下ということで、2023年春に廃止されています。この列車もそうですが、普通列車でも一部列車が通過していたのです。

 

その先ではコンクリート工場が現れます。

太平洋沿岸を走ることもあって、苫小牧を核にした工業と港のまちが広がっており、日高本線は工業色が強い路線という印象です。

 

むかわ町の中心部に入り、あっという間に日高本線の終着駅、鵡川駅に到着です。



8:20 鵡川駅 着

ホームには高校生の生徒さんが10人ほど待っておられました。

予想通り朝の時間帯では鵡川から苫小牧への需要がメイン、おそらく苫小牧の高校へ通学されるのでしょう。

 

ホーム構造は1面1線、途中行き違い設備も無いので列車が行ったり来たりするだけです。

ぽっかり空いた空間には雪が覆うばかりで、1両の列車がぽつんと取り残された感を強調されます。

 

駅舎に面するこちらのホームは閉鎖されており、様似方面の線路も無くなってしまいました。



日高本線の中心駅だった、静内駅跡へ向かうバスを待ちます。

正直この接続があまりよろしくなく、1時間30分の待ち時間です。

JR北海道による代行バス時代はすぐ乗れたので、旅行者目線的に言えばちょっと不便に感じます。

 

一方で、これから始まる長時間のバス乗車に備えることができます。あらかじめ食料調達しておきましょう。



鵡川駅前にやってきました、道南バスです。

これで途中の主要中心街、静内まで行くことができます。

日高本線からの接続が考慮されていないのは、このバスが苫小牧駅前から来ているため。苫小牧→鵡川で言えば鉄道とバスでダイヤが重なっていないので、むしろ輸送効率が良いと言えます。

 

窓側にはコンセントが設置されており、かなりありがたいポイントです。



9:59 鵡川駅前 発

それでは、日高本線廃線代替バスの始まりです。お客さんはそこまでいらっしゃらず、4,5人程度でした。

 

むかわ町の中心市街地を走っていると、ししゃもが推されていました。

多分代替魚のカペリンしか食べたことないですが、ここにも「本物ししゃも」と強調されている通り、本当のししゃもが名産。聞いたことなかったですが、お刺身やお寿司も食べられるそうです。

 

バス通りの国道235号は内陸を走る一方、廃線跡は海沿いへ。跨線橋で上を越えて行きます。

 

ちょうど鵡川を渡っているところ、遠くの方には鉄道トラス橋が見られました。

 

海から離れたこちらでは、牧場や農場の真ん中を走ることになります。

冬なので雪原に包まれていますが、建物の形から典型的な牧場らしさを受け取れるのではないでしょうか。



日高町に入りまして、左手には門別競馬場が見えてきました。

日高地域はサラブレッドの産地として知られており、全国の8割程度を占めています。サラブレッドは競走用に品種改良された馬で、競馬で走っている馬と言って良さそうです。

 

江戸時代からロシアの南下政策に備えるため、馬の牧場が備えられていた北海道。戦後には本州の地価が高騰し、牧場が北海道へ移転してきました。

そこで選ばれたのが日高地域。比較的温暖で降水量の少ない気候が、馬の飼育に適していた訳です。



富川の街が見えてきました。

マックスバリュやサツドラの看板が見えたりと、それなりに栄えている印象です。

 

鉄道も海沿いから、わざわざこちらへ寄ってきます。富川駅が設置されていて、かつては急行えりもが停車していました。

 

程なくして日高町の中心部、門別地区に入ります。

こちらは日高町立門別国民健康保険病院、病院の目の前にバス停があるのはよく見る光景です。

 

そして薄緑色の日高門別駅跡が見えてきました。駅舎は改装され、2022年6月から住民の交流スペースとなっています。

トロッコ乗車体験会が開かれたりと、廃線跡の活用方法について模索中の様子です。



日高町役場の前も通りました。

日高町は2006年、日高町と門別町の2町が新設合併して誕生した町です。飛地自治体となっており、日高町役場は(旧)日高町ではなく、こちら門別町の方に置かれました。

 

かつての踏切から線路に入れないよう、廃線お馴染みのJR北海道立入禁止看板が設置されていました。

 

そんな廃線跡を真隣に、日高門別川を渡ります。

 

ここからは国道235号も廃線跡と同様、海沿いを走るようになります。

 

豊郷駅にはアルミサッシの待合所が設けられていましたが、現在ではあの場所へ行く人も少ないのでしょう。その手前で車の跡が止まっていました。

ホームへは立ち入り禁止の柵が設けられており、おそらく全駅同じような対応でしょう。



日高本線には橋梁が外された場所もあります。

こちらは慶能舞川の河口に架けられていた、もはや海の砂浜上に設置された橋梁です。

 

こちらは2016年の台風により壊滅的被害を受け、橋梁の半分ほどが落橋してしまいました。

廃線決定前から橋台のみ残っていたと記憶しています。

 

バスは漁港周辺に広がる、昔ながらの集落に立ち寄ります。

そこに厚賀駅が設置されており、今でも旅館が残っていたりと、田舎の一風景をうまく切り取られた印象です。

 

踏切の警報機も未だ残されたまま。撤去の道筋は中々立っていません。

 

厚別川橋梁は300m近くに及ぶ長大橋梁、海をバックにしたガーター橋ということで、撮影スポットとしても知られていました。



無機質な待合室がどんよりした太平洋を傍観する、大狩部駅跡です。

写真右奥の方に目をやると、線路がぐにゃりと曲がっています。

 

その先の橋梁に向かっても、線路がしなっていました。

ここが2015年の高波で、最も大きな被害を受けた区間です。

 

現在は日高厚賀ICまでの日高自動車道ですが、2025年度に新冠ICまで開通に向けて、建設が進められています。

ここから先、東静内ICまでの事業化が承認されました。最終的には浦河町を目指していますが、現在ルートの検討段階です。



新冠川を渡りまして、新冠町に入りました。

セイコーマート系列のハマナスクラブがあります、駅周辺の集落です。

 

こちらに設置されていたのが新冠駅。1999年に移転すると同時に駅舎が改築され、メルヘン感あるデザインです。

 

その近くには道の駅サラブレッドロード新冠があります。

ドーナツ状の円盤が浮かんでいる、こちらはレ・コード館です。1997年に開館したこちらの建物は、100万枚を目指してレコードを収集しています。



旧日高本線沿線の中で一番大きな、新ひだか町へ。

人口2万人ほどで、その中心部である静内の町へ入ってきました。

 

駅前大通らしい商店街を抜け、静内駅へ向かいます。



11:30 静内 着

料金は1040円、道南バスにはフリーパスが無いはずなので、普通に料金を支払う必要があります。

 

厩をイメージした駅舎が2001年に完成、新ひだか町観光情報センターぽっぽと一体化しており、現在でも交通拠点として利用されています。

それでもJRマークや駅名板が残っているのには驚きました。

 

列車が来なくなって5年以上、それでも営業を続けていたみどりの窓口跡です。

 

その周りには日高本線を走った列車の姿など、写真や看板が展示されていました。

 

代行バス運行期でも入場券を購入すれば、列車が来ない駅構内へ入らせてもらえました。

現在では立ち入れず、覗き見るだけ。当時から向かい側ホームの屋根は外されていたので、特に変わっていないはずです。

 

駅が無くなってもバスターミナルとして機能しており、売店が入居しています。

 

鉄道廃止後の現在も、鉄道関連グッズが販売されていました。

 

駅そば屋さんも営業しており、それほど変わった様子は感じられませんでした。



11:55 静内 発

静内〜浦河については、道南バスとジェイ・アール北海道バス両方が運行する区間です。

今回は道南バスが運行する便なので、ジェイ・アール北海道バスに乗れる企画乗車券は使用できません。

 

静内市街地の東端、河口の広い静内川を渡ります。

高波による被災で旅客運行はできなかった鵡川〜静内ですが、苫小牧から回送することはできたので、静内〜様似だけ運行が再開されました。

しかし鵡川〜静内の線路状態が急に悪化したため、区間運行も1ヶ月程で終えています。

 

静内から先に被災区間は無かったのですが、車両検査基地からの回送の手間があって、それから列車が走ることはありませんでした。

 

バスは一度国道から外れ、静内温泉へ寄り道しています。

 

牧場は雪に包まれていますが、馬が草を探し求めていました。これでも寒くないのでしょうか…。

 

新ひだか町には陸上自衛隊静内駐屯地が立地します。

右手海側には静内対空射撃場があって、日本で唯一地対空ミサイルの射撃場です。

 

明らかに古そうな海沿いの木造家屋を見ると、ニシン漁が盛んだった、道北日本海沿いの羽幌線跡を思い浮かべます。



2006年に静内町と三石町が合併して、誕生した新ひだか町。

本来は新冠町も合併して新ひだか市になるはずでしたが、議論から脱退。

2町の合併では当時緩和されていた市政要件人口3万人以上を満たせず、町としての合併に留まっています。

 

こちらは町の中心駅だった、日高三石駅跡。

1993年に改築されており、ふれあいサテライトみついしが供用された板張りの建物です。

 

バスはホテルやレストランが営業している、三石温泉へ乗り入れます。

道の駅みついしも隣接しており、マリンレジャーやキャンプを楽しめるところです。

三石と言えば三石羊羹が有名、明治43年からの老舗和菓子屋さんです。スティック糊みたく押し上げて、紐で切って食べるのが特徴的です。



浦河町に入ると、廃線跡はやや内陸へ逃げて行きます。

代行バス時代はわざわざそこへ寄っていましたが、代替バスはそのまま国道を走ります。

 

おそらく川によって運ばれた土砂が波に運ばれ、弧を描く海岸が連続していました。

 

浦河町役場が見えてきたところで、バスを下車します。



13:05 浦河町役場 着

このバスは浦河老人ホーム前行き、手前の浦河の中心部で途中下車しました。

 

すぐ左手に見えているのが、浦河駅跡です。

ここからホームへ繋がっていた跨線橋からは、「浦河」が消されていました。

 

平均乗客6人/日ながら、廃止直前までみどりの窓口設置駅でした。みどりの窓口がある駅では、おそらく日本一利用者が少なかったと思います。

 

代行バスは今と同じところから出発しており、駅舎まで跨線橋を通れました。

現在はロープが張られているので、おそらく踏切跡まで迂回しなければなりません。

 

そしていよいよやってきました、ジェイアール北海道バス。頭には「様似営業所」を示しています。

史上最長片道切符の旅、ゴールまで連れて行ってくれる最後のバス乗車です。



13:21 浦河町役場 発

浦河町は日高振興局所在地で、電柱が地中化されていたりとかなり綺麗な街並みです。

 

廃線跡の下を潜りまして、先程乗ってきた道南バスの行き先、老人ホームちのみの郷へ一旦北上します。

 

恐らくさっき乗っていたバスが、ここでお休み中です。ここから様似を目指すため、老人ホームで来た道を引き返します。

 

右手には浦河赤十字病院が見えてきました。

 

その向かい側には浦河高等学校。

鉄道代行バス時代も一旦廃線跡を外れて、ここから多くの生徒さんが乗車されていたのを思い出しました。

 

国道へ戻ってきまして、集落の向こう側に海沿いの廃線跡を望みます。

 

こちらは日高幌別駅跡、現役当時からの「レストビレッジ シンザン」として残っています。

「廃線ウォーク」という看板が掲げられていますが、浦河町では廃線跡を歩くイベントが開催されたことも。



廃線跡を越えたところで、最後の自治体「様似町」へ突入。

左手には北海道ならではの貨車駅舎、鵜苫駅跡が見えています。

様似中学校美術部によって、海の生き物たちで彩られました。

 

バスはアポイ岳ジオパークに指定されたエリアへ、海上には奇岩が姿を現わすようになります。かんらん岩によって作られた山々や渓谷は、世界的にも珍しい多彩さです。

最初に見えるこちらは、塩釜ローソク岩。地震や崩落などにより、ローソクらしさはちょっと薄れてしまったみたい。

 

トンネルを抜けた先にある親子岩は、様似町のシンボル的存在です。12月にはこの背後に夕陽が沈み、その景色を求めて多くの方が訪れます。

 

まるで陸繋島のように、先端に岩山がくっついたエンルム岬。

ローソク岩、親子岩と一直線になっており、奇岩の連続性を感じます。

 

自然が作り出した独特な地形の先、遂に様似町の市街地に迎えられました。

 

史上最長片道切符の旅、遂に終わりの瞬間です。



13:57 様似駅 着

様似駅跡に降り立ちました。

特に普通と変わらないバス停ですが、かつての日高本線終着駅。そして史上最長片道切符の旅のゴールです。

 

最後に連れてきていただきました運転士さんですが、後からご連絡がありました。

まさかの出来事で驚きましたし、最後に人との繋がりができるとは…。ありがとうございます。

 

こちらが様似駅の駅舎、「ありがとう!日高本線」の看板が取り付けられた他、特に変わったところはありません。

 

ジェイ・アール北海道バスの窓口があって、当時はJR北海道の乗車券販売も委託されていました。

 

中には入れなくなっていますが、ホームはそのままです。

本来ならえりも岬を経由して、国鉄広尾線から帯広へ抜けるはずだったこの路線。それを接続する意味合いで国鉄バスが運行され、ジェイ・アール北海道バスへ移行したのでした。

 

記念に観光案内所で、到着証明書を購入。史上最長片道切符ゴールの、この上ない記念です。



枕崎駅から様似駅まで13423.5キロ、1982年の一週間だけ存在した史上最長片道切符のルートを辿ってきました。

バスや徒歩、読者さんのご厚意で自動車も使って到達した、一筆書きのルート。

様似駅に到達して改めて驚いたのは、これが全て鉄路で繋がっており、列車に乗るだけで良かったということです。事実としてはとっくに理解していたはずなのに、これはこの旅をやり遂げないと実感できませんでした。

 

これからも中々できない旅をお届けし、皆さんを楽しませられる旅行を発信できればと思います。

また、今回の旅でご支援を頂いたり、お会いして下さった方々をはじめ、多く頂いた応援の声に感謝申し上げます。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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