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【2024年春廃止】根室本線(富良野〜新得)の現在 新旧メインルートを辿る[史上最長片道切符の旅(99)]

2023年5月17日

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かつて札幌〜道東方面の長距離輸送は、根室本線が担っていました。

1981年に石勝線が開通したことで、道東特急のルートが変更。滝川〜新得は普通列車が行き交うローカル線になりました。

 

さらに2016年夏、台風が北海道を襲い、東鹿越〜新得の鉄路が寸断。代行バスによる運行が続けられていますが、2024年4月1日の廃止が決まりました

 

本日やってきているのは、北海道のど真ん中に位置する富良野駅。廃止まで1年に迫った根室本線に乗車します。



廃止される根室本線(富良野〜新得)のうち、富良野〜東鹿越については今でも列車が行き来しています。

発車標には東鹿越の文字が表示。

災害による不通以前、東鹿越駅は駅の廃止が取り沙汰されたほどの小さな駅でした。終点の状態がこれほど続くとは、思いもよらないことです。

 

使用される車両はキハ40。根室本線の不通区間を挟んだ北側では、今でもこれが現役です。

 

14:19 富良野駅 発

お客さんは1区画に1人いるかどうか、ほぼ全員が鉄道ファンと見られます。

 

しばらくは富良野市街地を走りますが、すぐに建物が見えなくなりました。

 

カラフルな一軒家が現れると、布部駅に到着。

 

布部駅は『北の国から』にて、東京から富良野へ渡った五郎・純・蛍の3人が、最初に降りた駅らしいです。



石狩川の支流で最も大きな、空知川を渡ります。

アイヌ語で「滝がごちゃごちゃ落ちている川(ソーラプチ・ベツ)」が由来であり、根室本線の始点である滝川はこれを意訳して名付けられました。

 

勇払川を渡った先には山部の集落が広がっており、農業倉庫に見える煉瓦積みの倉庫が建っています。

 

折返しの列車があるためか、ここで下車される猛者さんも。近くにはセイコーマートや宿があって、ある程度の規模です。

 

こんもり雪が積もったランプ小屋に木造の小屋も、レトロな歴史を伝えてくれます。



本当にガラガラなので、冬でも窓を開けて迷惑にならないレベル。

内陸だからこそ道内でも特に冷たい風が顔を襲ってきます。それを体感してみたいなという、ちょっとしたM心。

 

この辺りでは空知川とじっくり並走。トレッキングを楽しんでいるみたいな感覚です。

 

車が止まっているなと思ったら、撮り鉄さんが撮影なさっていました。ここで列車を待つとは、本当に凄いですね…。

 

下金山駅からはかつて西達布森林鉄道が分岐しており、鉄道による木材の積み出しが行われていました。

 

道路と一緒に空知川を渡りまして、あちらの方は五月橋。

 

すると金山の集落へと入ってきました。ここにあった金山小学校は2022年春、廃校になったばかりです。



交換可能駅でもある金山駅に到着。

名古屋にも金山駅がありますが、あのターミナル駅とは規模感がまるで違います。

 

金山駅から東鹿越駅にかけては、ダム建設に伴い1966年に付け替えられた区間。2kmに渡る空知トンネルで貫きます。

 

列車が警笛を鳴らすと、皆さん車窓にカメラを向けます。

その目的はおびただしい数の鹿さん、北海道のローカル線と言えばやっぱり野生動物ですよね(笑)

 

奥の方には線路付け替えについて先程触れた、金山ダムが見えてきました。山の間にそびえ立つ大きな壁は、凄い迫力です。

 

金山ダムは空知川をせき止めており、それによって生まれたのがこの開けた景色。

ただの雪原に見えますが、これはダム湖「かなやま湖」です。

 

湖が凍ってその上に雪が積もったことで、一面真っ白になりました。

 

鹿越地区には石灰石が採れる日鉄鉱業の鉱山が存在します。かつて東鹿越駅からはそこへ続く専用線があって、釧網本線中斜里駅近くの製糖工場へ石灰石を輸送していたそうです。



15:04 東鹿越駅 着

駅舎の前では大勢の外国人観光客が列車を待っていました。カラフルな服装から見ても、スキー帰りと見て間違いないでしょう。

1年前に訪れた時も外国人2人が乗っていて、代行バスを知っているなんてコアだなと思ったのですが、コロナが収束したらかなりの数で、その情報収集能力には驚きます。

外国の鉄道代行バスなんて知らないですもん…。

 

東鹿越駅は2017年春のダイヤ改正で廃止意向を伝えられていた駅です。

それが2016年夏の台風により、東鹿越〜新得が代行バスでの運行へ。列車とバスの乗換駅として存続することになったのでした。



15:13 東鹿越駅 発

多くの外国人観光客を乗せた列車がひと足早く出発。こちらのバスも続けて南へと出ていきます。

 

左手にはしばらく、かなやま湖を見渡すことができました。

 

そして根室本線の上を跨ぎます。

除雪車は当然入らないので、線路がどこか分からない状況。もう廃線になっているみたいです。

 

踏切まで埋もれていて、遮断器も撤去されています。

 

山には国設南ふらのスキー場が切り拓かれています。

先程の外国人の方々は、ここへいらっしゃったのでしょうか。

 

南富良野町は今回の路線廃止で完全に駅を失う自治体になります。



その中で中心駅だったのが、幾寅駅です。

高倉健主演の映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケ地として、非常に有名。作品内では幌舞ほろまい駅として登場しており、まさに廃線間近の鉄道として扱われています。

 

駅舎だけではなく、周辺の建物までセットが組まれた状態で残っています。駅舎内はミュージアムのようになっており、車で訪れる方も多い一種の観光地です。

 

朝高校生の生徒さんが乗られている時には、北海道南富良野高校にも代行バスが停車しました。時刻表上では公表されていない様子ですが、通学で便利に改良されています。



不通区間におけるもう一つの駅が、落合駅。

根室本線の落合〜新得は1966年に線路が付け替えられており、それ以前のルートは狩勝峠を越える急勾配。

それに挑むための機関車がこの落合駅に配置されていました。

 

広めの構内はその名残を残していますが、夏には一面草蒸した既に廃駅のような状態です。

 

線路と道路共に狩勝峠に向けてぐんぐん登っていきます。

 

先程触れたように、根室本線は1966年に新線へ付け替えられました。

旧線は大カーブで峠を迂回していましたが、新線は5790mに及ぶ新狩勝トンネルで貫いています。

 

国鉄は全国から日本三大車窓を指定したのですが、その一つが根室本線旧線から見られた狩勝峠。

新線はトンネルになってしまいましたが、道路は旧線に近い所を走るため、ある意味日本三大車窓が復活したことになります。



日本三大車窓にも選ばれた狩勝峠の景色がこちら!

完全に真っ白ですね…(笑)

 

というわけで、夏の晴れた時の景色がこちら。

どこまでも十勝平野が広がっていて、北海道の鳥瞰図みたいです。

 

ぬるっと峠越えを終えまして、こんどはスノーシェッドの中を駆け下ります。

 

根室本線の旧線は、この辺りで半径180mの大カーブをしていました。当時は撮影スポットにもなっていたそうです。

 

山をほとんど降りきったところ、新内駅跡地は旧狩勝線ミュージアムになっています。

 

ここで脇道に逸れまして、サホロリゾートホテルに寄ります。新得駅からホテルへ送迎を兼ねているのです。



しばらくすると右手には、盛り土が見えてきました。

ここは狩勝実験線として使用され、脱線事故の研究のために無人列車を走らせて実際に脱線させたりしていました。その後も車両火災や振り子車両開発など、鉄道に大きな影響を与える実験が行われています。

これについては先程の、狩勝線ミュージアムにて詳しく知ることができるようです。

 

そして旧線の盛り土の向こう、少し高いところには現在も特急列車が走る石勝線が見えてきました。

 

橋のところなんか旧線も分かりやすく残っています。

 

少し開けると蒸気機関車D51が保存してありました。

新得町SL広場から狩勝線ミュージアムまで、遊歩道「狩勝ポッポの道」として整備されています。

 

新得町の中心街になりまして、新得駅に到着です。



16:21 新得駅 着

予想通り、乗車していたのは東鹿越駅で乗り継いできた鉄道ファンばかりでした。代行バスとしての役割を終えると鉄道の乗車券で乗れなくなりますし、かなり利用者が少なくなると思われます。

 

北海道最長路線の一角を成した根室本線ですが、デマンドタクシーのみになることも十分考えられる状態です。

 

新得駅の発車標には列車種別ごとにアイコンが描かれていて、とても可愛らしくなっていました。

 

留置線にはH100系の釧網線ラッピングが停車中。

 

釧路湿原と屈斜路湖、反対側は流氷をデザインしています。釧網本線らしさをギュッと詰めていますが、今のところ走っているのは新得〜釧路だけです。



16:33 新得駅 発

ここで、南千歳方面の特急おおぞら出発まで2時間近く空きます。せっかくフリーパスなので、帯広まで往復して車内を作業スペースにさせてもらうことに。

 

ほんの30分ほどで高架線を走っており、道東を代表する都市が広がっていました。

 

17:02 帯広駅 着

1996年にオープンした高架駅、ピカピカ光る車体が映えます。

 

かつては国鉄広尾線、国鉄士幌線が分岐しており、北海道ちほく高原鉄道も乗り入れていましたが、現在は根室本線の単独駅です。



17:48 帯広駅 発

滞在もそこそこに、釧路から来た特急おおぞら10号に乗って戻ります。今度は列車名がLEDではなく幕でした。

 

高架を見下ろすと街の灯が広がっており、夜の方が大きな都市部に来たという実感が湧きます。

 

西帯広駅の近くには帯広貨物駅が広がっており、ここから農作物が貨物列車で輸送されます。

 

途中駅では特急とかち5号と行き違いました。



新得駅に到着しまして、ここから史上最長片道切符のルートに復帰。

ずっと新得駅で待っていたとしても、結局この特急に乗っていたのですから、本数の少なさに驚くばかりです。

 

トンネル内の上落合信号場で、富良野方面へ線路が分かれているはずです。

 

トマム駅からは外国人観光客の方々が数人乗ってこられました。

 

石勝線の新夕張駅〜上落合信号場・新得駅が開業したのは1981年のこと。

それまで最長片道切符の起終点は帯広駅から南下する広尾線の広尾駅だったのですが、苫小牧駅まで戻って日高本線の様似駅に伸ばせるようになったのです。

 

通過する占冠駅で特急おおぞら11号と行き違い。

占冠駅〜新夕張駅の駅間34.3kmは国内在来線最長だったのですが、2016年の駅廃止で石北本線上川駅〜白滝駅の36.3kmに置きかわりました。



新夕張駅に到着です。

ここからは2019年春に廃止された夕張支線が伸びていて、夕張駅〜新夕張駅〜追分駅は1892年に開業していた歴史ある路線です。

 

長大トンネルも少なくなりまして、ポイント転換部に雪が詰まらないよう、スノーシェッドが掛けられる様子が見られます。

 

川端駅で特急とかち7号と行き違います。

 

岩見沢駅からの室蘭本線が合流してきました。この路線は苫小牧を経由して内浦湾沿いを走行、長万部駅まで至ります。

 

夕張の炭鉱から積み出された石炭貨物列車は、追分駅から札幌・小樽方面や室蘭へ輸送され、日本の産業発展に貢献したのでした。

 

石勝線の追分駅〜南千歳(千歳空港)駅についても、1981年に開業した区間です。空港から離れたレンタカー屋さん沿いを走ります。

 

遠くに新千歳空港が見えてきたところで、南千歳駅に到着です。



19:53 南千歳駅 着

特急おおぞらは千歳線を走り、このまま札幌駅へ向かいます。

 

ホーム上には石勝線の0キロポストが設置されています。北海道をかたどった立派な石碑で、道東への交通を大きく変えたことがよく示されていました。

 

南千歳駅は新千歳空港の隣駅で、千歳線と石勝線の分岐駅です。

 

それだけでなく、かつては千歳空港駅で国鉄初の空港アクセス駅でした。

改札を出て左側には、長い通路が伸びています。

 

道路への階段を降りると、明らかにこの先まで通路が伸びていたのに、ぷつんと途切れているのが分かります。

 

千歳空港は自衛隊との共用空港だったのですが、需要の拡大や安全面で運用が難しくなりました。

これに伴って民間機専用の新滑走路をすぐ近くに建設、1988年に新千歳空港が開港したのです。

 

20:33 南千歳駅 着

千歳線の普通列車に乗車、一気に通勤電車感がマシマシ。急に二郎系食べさせられても心臓に悪いです。

 

20:53 苫小牧駅 着

とは言ってもお客さんはかなり少なめ。そのまま終点の苫小牧駅に到着しました。

 

いよいよ明日は史上最長片道切符の旅最終日。末端区間が廃止された日高本線のバスを乗り継ぎ、ゴールの様似駅を目指します。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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