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今日は三陸地方、釜石駅に来ています。
駅舎では銀河鉄道が駆け抜けておりますが、これから乗車するのは釜石線を走るSL銀河です。
この列車は岩手県営運動公園内で静態保存されていた、C58形蒸気機関車(C58 239)を動態復元したものです。震災復興を兼ねて、2014年に運行を開始しました。
しかし、JR東日本は2023年春限りでSL銀河の運行終了を発表しています。
蒸気機関車の運行には転車台や給水設備、運転士の技術を整えなければなりません。ただの観光列車では無いのにも関わらず、これほど短い時間で運行を終えるのは珍しいこと。
SL銀河の引退理由は蒸気機関車ではなく、旅客車のキハ141系の老朽化。この車両はJR北海道から譲渡されたもので、50系客車を改造した気動車です。
蒸気機関車は通常、動力を持たずに軽い客車を引き連れて運行します。しかし、釜石線はあまりに急勾配だだったため、旅客車を気動車が担当して協調運転を行っているのです。これならば蒸気機関車は引っ張るだけでなく、旅客車が後ろから押してもくれて、急勾配を走れます。
ディーゼルカーは基本的に1両での運行が考えられており、運転台やエンジンは必ず備えられています。このような車両には「キハ」と書かれます。
しかし、SL銀河の中間2両はエンジンが無く、「キサハ」の表記です。
改札前には大勢のお客さんが改札を待っていました。
電光掲示板にはSL銀河が表示され、9:30頃に改札を開始します。
SL銀河は運行日が少ない上、廃止発表による人気で切符を取るのが難しくなっています。1ヶ月前の10時でも売り切れることが当たり前なので、区間を区切って粘ることが必要です。
指定席料金は840円、分けた場合はそれぞれに支払う必要があります。青春18きっぷでの乗車も可能です。
乗車記念品として、石炭をいただきました。食べちゃダメ〜!
SL銀河は宮沢賢治の世界をコンセプトとして、列車に『銀河鉄道の夜』を表現しています。
釜石線の沿線には、銀河鉄道の夜にゆかりあるものが沢山あるのです。
4両の客車には様々な星座が描かれており、外から走る姿を見ればまさに銀河鉄道。キラキラ輝きながら駆け抜けて行くことでしょう。
客室内は昔ながらのモケット色にした上で、装飾による特別感も演出。
網棚上のステンドグラスも特徴的でした。
遠野駅までは最後尾の、4号車に乗車します。この車両は座席が少なめで、半分くらいはフリースペースや販売カウンターです。
フリースペースは高級ホテルにありそうな、フカフカのソファ。
SL銀河関連の様々なグッズも販売されていました。紺地に金なので、デザイン的にもかなり良いです。
カウンターではお弁当が販売されており、それを目当てに釜石駅から並んでいる人がいました。
最近では完全予約制のところも増えている中、現地で買えるのは良いですね。
お弁当はSL銀河帆立おこわ弁当(1450円)です。
掛紙には列車に関しての解説などがされています。当然これは記念に取っておくことになりますね。
どうしても撮影で食べている時間がないので、帰りの電車にて。傾けると黒胡麻で大変なことになるので気をつけましょう(笑)
メニューは星空に関連したネーミング。帆立もしっかり入っていて、とても美味しかったです。
9:57 釜石駅 発
プラットホームでは大漁旗を振って、お見送りしてくださいました。SL銀河の旅の始まりです。
右手には銀河仕様で星の散りばめられた、車庫が置かれています。
最初に渡るのは甲子川。釜石線は途中、陸中大橋駅までこれに沿って走ります。
右手には三陸鉄道が分かれていきました。
釜石〜宮古駅はJR山田線だったのが第三セクターとして震災から復旧し、盛〜久慈駅が一本のリアス線で繋がりました。
左手を見ていると、山の中に突然木が無くなった斜面が現れました。
これは溶鉱炉で鉱石を精錬して分離された、スラグを捨てていたことで生まれたそう。釜石市は昔から鉄鋼業が盛んな街で、その様子が今でも分かります。
列車は早速トンネルへ、出てくると白い煙を吐き出します。
まだまだ住宅街が続きますが、思いっきり煙を待ちの中へモクモクと。 洗濯物大丈夫ですかね…?
まだまだ釜石市のロードサイド店舗が続いており、市街地の中です。車からは手を振ってくださって、かなり注目されます。
そんな市街地の中、ホーム上は草で覆われているのが小佐野駅です。
釜石線の駅にはエスペラントによる愛称駅名が付けられています。小佐野駅は「緑の風(ヴェルダ・ヴェント)」、もしかしてこのホームが理由で…?(笑)
列車はいよいよ山へと登っていきます。蒸気機関車は真っ黒な煙がモクモクと立てており、この急勾配の厳しさを伝えてくれました。
このカーブからは蒸気機関車もよく見られまして、窓が開くところから車体外に出ないよう、レンズだけちょっと出すと、その勇姿を切り取ることができます。
ここから列車は25‰の最急勾配へ。山の中を一生懸命登っていきます。
トンネルを抜けるとまた真っ白に。蒸気機関車が長い間線路内にいると、煙が充満して機関士さんが窒息してしまう可能性があります。
蒸気機関車と気動車が一緒になってこの勾配を駆け上がるのは、機関士さんの安全を守るという面も。
トンネル区間も交えながら、左手には赤い鉄橋が見えてきました。
実はあれ、今走っている釜石線の線路なのです!
これからあの高さまで登っていくことになります。
(地理院地図を改変)
しかし、勾配に弱い鉄道では一気にあそこまではいけません。少しずつ登るためにΩカーブと呼ばれる線形で距離を稼ぎ、この高低差を移動可能にしています。
線路ができる前は、ここをロープウェイのような索道で荷物や貨物の運搬を行っていました。
陸中大橋駅に到着しました。
エスペラントによる愛称は「鉱石(ミナージョ)」。
ここはかつて鉄鉱石の積み出しで賑わっていたのです。
駅には現在でも、日鉄鉱業のホッパーが遺構として残っています。現在では民家が数件立ち並ぶだけですが、鉱山で栄えた街だったのです。
また、釜石線が開通する以前の1880年、ここから釜石まで鉱石を輸送する釜石鉱山鉄道も開通していました。これは日本で3番目に開通した鉄道です。
陸中大橋駅では、快速はまゆりと行き違いました。
立派なホッパーを横目に、陸中大橋駅を出発。
いよいよ日本屈指のΩカーブがある、仙人峠に臨みます。
第2大橋トンネルへ入るとすぐにカーブ。180度進む方向を変えないといけないので、急になります。
山の上まで来てトンネルを抜けると、木々の向こうには駅らしき構造物。
そして先ほど下から見上げていた、鬼ヶ沢橋梁に到達すると、地上の釜石線がハッキリと見えています。
この橋梁は長さ105m・高さ55mであり、JR東日本で最も地上から高いところです。
車掌さんがいらっしゃって、指定券に入鋏。
SL銀河オリジナルのデザインで、日付も入っています。
記念乗車証をいただきまして、4号車ソファ横にあるスタンプを押しました。この先の区間にある、宮守川橋梁を走るSL銀河の姿です。
土倉トンネルを抜けまして、上有住駅に到着。
駅近の観光地、滝観洞の玄関口です。鍾乳洞の中には落差29mの滝があり、神秘的な光景が広がります。
古い駅名標もあって、まるでタイムスリップしているよう。
違うのは周りの方々が、スマホを向けていることぐらいでしょうか。
出発時は機関士さんと車掌さんが連絡を取り合って出発します。
気動車の運転士さんについても協調運転のため、連絡を取らなければなりません。後ろから押してばかりでは詰まってしまって、中がひしゃげるようにして脱線する可能性もありますからね。
再びトンネルへ入りまして、まだ25‰区間は続きます。
峠越えを終えまして、足ヶ瀬駅で普通列車と行き違いました。ここから遠野方面へは22‰の下りです。
足ヶ瀬〜平倉駅において、汽車はひまわり畑の中を走ります。
この周辺には、カメラを構えている方が百人以上いたんじゃないでしょうか。
もう少し走ると一面にひまわりが!
太陽が照りつける夏を感じさせてくれる、素晴らしい光景です。
背が高いので、黄色い魔法のじゅうたんみたいに浮いているようにも見えます。SL銀河の引退は2023年春のため、ひまわり畑を駆け抜けるのは最後です。
早瀬川を渡りまして、遠野盆地内の市街地へ入ります。
11:46 遠野駅 着
大理石みたいなコンクリートブロック積みの駅舎。ホームでは横断幕を持ってお出迎えしてくださいます。
遠野駅では蒸気機関車の給水、灰捨てのために2時間も停車。まずは機関車と旅客車の連結を外します。
そして前方へと少し走らせ…
駅構内で停止させ、点検などを始められました。
今の時代では考えられない、運行効率の悪さ。それもまたSLの面白いところです。
エスペラントの駅名は民話(フォルクローロ)。遠野市といえば様々な民話が生まれた里であり、河童や座敷わらしなどが有名です。
2時間もの停車時間ですので、この間に観光やお昼ごはんへ出ることも可能。
遠野市にとって、SL銀河の停車中にちょっと歩いてもらい、興味を持ってもらった人にはまた来てもらう大きなきっかけだったでしょうから、列車の廃止はかなり影響を受けそうですね。
遠野駅の駅舎2階には、JR東日本系列のホテルフォルクローロ遠野がありましたが、2015年に駅舎改修とともに閉鎖されています。ここに泊まってホームを見下ろすなんて、素敵だったでしょうね。
お昼ごはんにはざるそばをいただきました。遠野市は多くのわさびを産出し、これによってそばも有名です。
釜石駅から乗車するとき、遠野市内の店舗で使える500円クーポンを頂いています。やはり遠野市はこの長時間停車を重要視していることがはっきり分かります。
伝承園やカッパ淵は駅から離れていますから、また来なければならないですね。まんまと策略にハマってしまいました(笑)
まだ時間はありますが、改札内へ。
発車30分前の段階で蒸気機関車は連結されています。停車中の様子は遠野駅の駅舎とマッチしており、明治大正の雰囲気を漂わせていました。
ここからは先頭の1号車に乗車。
この号車にはプラネタリウムがあり、展示物も天体に関する作品が揃っています。
プラネタリウムを見るには1号車のカウンターにて、整理券を受け取る必要があります。今受け取ったら何時になりますか?と聞いたら、空いているのでどうぞと勧めていただきました。
走行中だと車窓を撮るので、停車中に見られて非常に助かりました。
上映中の撮影はできませんが、ホームプラネタリウムとは比べ物にならないくらい、はっきりとした星空を映し出してくれます。銀河鉄道の夜をベースにしたストーリーで、走行中の振動と共に楽しんだらさらに臨場感があるでしょう。
整理券は遠野駅発車後すぐに配りきっていたので、お早めに。
2時間の停車を終え、機関車も準備満タン。
13:53、手を振られながら遠野駅を出発しました。
最初に渡るのは猿ヶ石川、河童のすむ川とされています。
「道の駅 遠野・風の丘・永遠の日本のふるさと」からは大勢の方がお見送り!柵沿いにはビッシリです。
列車は山に囲まれた田園風景、遠野盆地の中を走ります。
ちょっとしたカーブでは、機関車が顔を出してくれました。
後ろ車両の方がその姿がより分かりやすいですが、近ければ煙を感じられて迫力があります。
鱒沢駅では手作りのプラカードを掲げている子も。これがあと1年でいなくなってしまうなんて、残念ですね…。
左手に見えているのは釜石自動車道。山と山を大きな橋で繋ぎます。
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釜石線の中でも特に有名なアーチ橋、宮守川橋梁を走り始めます。
めがね橋として親しまれ、1943年に完成しました。1915年に完成した旧橋は、宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』のモチーフにもなっています。
たしかに夜空に駆け上がる橋として、イメージにピッタリです。
道の駅みやもりからこの橋を見上げることができ、広場でこちらに向かって写真を撮られています。
宮守駅の愛称は、銀河のプラットホーム(ガラクシーア・カーヨ)。先程の橋の近くということでピッタリです。
支流を岩根橋を渡るとき、猿ヶ石川を見渡せます。
並行する道路では車がSLと並走していき、皆さん手を振ってくださいます。特に1号車だとこの間の交流が盛んです。
土沢駅では普通列車と行き違い。
宮澤賢治の出生地である花巻市です。この駅は『銀河鉄道の夜』の始発駅のモデルとされています。
1913年、岩手軽便鉄道の終点駅として開業しました。
花巻市の中心部へ向かっておりまして、いよいよSL銀河の旅も終盤です。
東北新幹線と直行する地点で、新花巻駅に到着。
この駅は開業当初ありませんでしたが、地元の方が懇願して設置されました。北上駅から10kmほどで、新幹線としては短いです。
端っこなのであまり分かりませんが、在来線ホームはSL仕様のデザインになっています。
長い汽笛を響かせながら、北上川を渡りました。
SL銀河は、新花巻〜花巻駅なら指定席が空いている場合が多いです。短い距離ですがここだけ乗る方もいましたし、十分楽しめますからぜひどうぞ!
右手からは電化されている立派な幹線、東北本線が近づいてきました。
東京駅から続く東北本線の500キロポストが位置する、花巻駅に到着です。
蒸気機関車が復活した中でも、かなり厳しい線路を走るSL銀河。
ディーゼルの力を借りているとはいえ、黒煙をあげながら一生懸命峠を超える姿は素晴らしいものでした。
また、沿線では沢山の方から手を振ってくださり、本当に愛されている列車だったのだなと感じました。
東日本大震災からの観光復興の面でも、多くの方が三陸方面へ足を運ぶきっかけになったはず。何か観光列車が来てくれたら非常に嬉しいです。
釜石線自体非常に面白い路線ですが、ぜひ蒸気機関車だからこそ感じられる勇姿を体感しに来てみてください!
東北本線一ノ関行きと同時に、15:40に回送列車として発車。とても楽しい旅をありがとうございます!
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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