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【和室フェリーの旅】新日本海すいせんステートA 苫小牧→敦賀21時間乗船記[2309北海道廃線]

2023年10月12日

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北海道から関西のルートを形成する、新日本海フェリー。

苫小牧港から敦賀港まで日本海側を航行、21時間かけて結びます。

 

トラックドライバーだけでなく、一般客にも浸透しつつある長距離フェリー。北海道苫小牧港より「すいせん」に乗船します。

 

今回利用するのはステートA和室。完全個室の中では最もリーズナブルですが、ホテルと変わらない素晴らしい設備となっています。

 

退屈知らずの長距離フェリーの乗船記、是非お楽しみ下さい。



苫小牧東港アクセス

札幌市の副都心に位置付けられる、新札幌駅からのスタートです。

苫小牧駅へ向かうため、19:55発普通列車苫小牧行きに乗車。

 

南千歳駅からは、今回利用する苫小牧東港フェリーターミナルまで連絡バスが運行されています。南千歳駅21:50発で、運賃は1200円です。

ただしインターネット予約でフェリーを予約した場合、前日までに東港はバス利用の電話をする必要があります。今回はそれを忘れてしまったので、違う方法で行くことになりました。

 

20:53、終点の苫小牧駅に到着しました。札幌駅からだと普通列車で1時間ちょっとの所要時間です。

 

苫小牧にはフェリーターミナルが2つあって、メインは何度か利用したことのある苫小牧西港。こちらであれば徒歩1時間程度で簡単に歩いて行けます。

一方で東港はタクシーでも30分ほどかかる距離です。

 

ここからは日高本線に乗車しまして、東港の最寄駅である浜厚真駅へ向かいます。



21:31 苫小牧駅 発

9月終わりですが気温17℃と冷え込んでおり、車内には暖房が効いています。

この汽車は日高本線の最終便、10人くらい高校生の生徒さんが乗り込まれました。ほとんどの方が終点の鵡川駅まで行くみたいです。

 

しばらくは室蘭本線とピッタリ並行して走っており、奥の方には苫小牧西港が見えました。八戸、名古屋、大洗へのフェリーが就航しています。

 

街を外れて海沿いには、北海道電力苫東厚真発電所が現れました。港から近いため石炭運搬の便が良いものと思われます。

 

そして苫小牧東港フェリーターミナルには、今回利用する敦賀行きのフェリーが泊まっていました。今から乗るフェリーを列車から見られるのも、非常にワクワクさせてくれます。



21:53 浜厚真駅 着

厚真町で唯一の駅ですが、町の中心部はもっと内陸部。ここで降りられる方は他にいらっしゃいませんでした。

 

貨車を転用した待合室になっていまして、真ん前には木が一本だけ立っていました。

 

それにしても駅前は本当に真っ暗、これから20分ほどこの中を歩かなければなりません。

 

熊と車だけには遭わないことを願いつつ、駅前から西へ戻る形です。

 

街灯があるのに点いていない臨港大橋。カモメの鳴き声に怯えつつ、一段と明るい光が近づいてきました。



乗船手続き

数台行き交うトラックに安心感を覚え、Shin Nihondaiと輝く東港フェリーターミナルに到着です。

今回はこの手段しかなかったので仕方ないですが、徒歩乗船の方は絶対に連絡バスの予約を忘れないようにしましょう。

 

まずは1階の窓口にて、乗船手続きを行います。出航時間の60分前までです。

敦賀港到着後連絡バスを利用するか聞かれましたが、迷わず利用することに。

 

ここでe乗船券控をいただきます。これがルームキーの代わりになるので、無くさないようにしましょう。

料金は大人22,800円となっており、個室の中ではリーズナブル。その上で費用対効果が大きい設備だったと思います。

 

2階へ上がると待合スペースが設けられています。売店も21:30から乗船開始まで営業しているみたいで、お土産品や飲み物を中心に販売していました。

 

こちらが今回お世話になります、新日本海フェリー「すいせん」です。

他に「すずらん」「はまなす」「あかしあ」が運用に就くこともあります。

 

22:55、乗船が始まりました。

先ほど受け取った乗船券控えを提示しまして、ボーディングブリッジを渡ります。



船内紹介

高級旅館みたいな金文字の「すいせん」に迎えられつつ、船内へ。

 

乗客が航行中行き来できるのは、4〜6階。最初足を踏み入れるのは一番下の4階になります。

 

中央部は吹き抜けになっており、色が変わる大きなモニュメントが特徴的です。新しい長距離フェリーではトラックドライバーだけでなく一般客も受け入れられやすいようになっており、こういったものも楽しみになってきます。



ステートルームA和室

今回利用するのはステートルームA、5階へ上がりましてその一角です。

 

たくさんの扉が並ぶ通路を進んでいき、割り当てられた521番個室は日本海から見て陸側になります。

 

ドアノブ上にある透明なリーダーに、乗船券控のQRコードをかざします。

割とコツがいるみたいで、中々入れない人も多くいらっしゃいました。カチッとロックを解除した音がしたら、ドアノブをしっかり下まで下げてから押し入ることが必要です。



そしてこちらが今回利用します、ステートルームA和室です。

入った瞬間、新しめの旅館と全く変わらない雰囲気となっています。

 

畳敷きで5畳くらいの広さ。1人では十分すぎる空間でして、和室ならではの温もりを感じます。

 

この部屋は1〜3人で利用できるのですが、公式ページで注釈されていた通り、確かに3人だと窮屈そう。布団を敷く時はちゃぶ台や椅子など奥のスペースにしまう必要があります。

 

アラームなども設置されていて、コンセントは3箇所くらいです。

 

クローゼットに救命胴衣が用意されているので、こちらも確認しておきましょう。

 

ビジネスホテルと同じサイズ感の冷蔵庫があり、ペットボトルなども十分入れられる大きさです。



お手洗いと洗面台も室内に設けられています。

これまたわざわざ外に出なくて良い、非常に大きなメリットです。

 

定員人数分のコップやタオル、歯ブラシ等も備わっていました。

 

ティーポットもあるので、持ち込んだカップ麺など食べたい時非常に便利です。

 

和室の場合個室から海の景色を楽しめるのが大きなメリット。散々寝台列車で学んだ夜景の楽しみ方、部屋を真っ暗にして苫小牧東港の明かりを眺めます。



ショップ・カフェ

ショップも営業していまして、お酒やお菓子、グッズなどを販売しています。

お土産品は船によって商品が異なり、北海道と福井を中心にした品揃えです。

 

5階のカフェ営業の放送が流れまして、早速行ってみることに。

 

ビーフカレーやスパゲティなど、この時間帯でもしっかり食事を摂れます。

 

カラフルな椅子の並んだテーブル席のほか、奥の方にはカウンター席も設けられていました。



乗船記

23:30 苫小牧東港 発

森や海の闇に染まること無く輝くフェリーターミナル、真っ暗な航海へ出発です。

 

ショップで買ってきたメロンサワーとともに、たこ焼きをいただきました。

凄く特別感があるわけではない庶民的な味、これをフェリーで食べられるというのが良いんですよね。

 

沿岸部の元気な夜景に見送られつつ、北海道からお別れです。

 

お部屋に戻ってきまして、お休みの準備。厚いマットレスにシーツを織り込みます。

 

羽毛布団と枕で非常に良い寝心地。かすかなエンジン音を聞きながら、おやすみなさい。



おはようございます。

朝6時ごろ青森県最西端の艫作(へなし)崎を通っていきます。JR五能線が走っている、青池のあたりです。

 

お部屋にも日の光が入ってきて、午前中にはぽかぽか陽気でした。

 

大浴場は乗船時〜24:30、8:00〜18:00。早速朝風呂を浴びていきます。

展望浴場となっているので、しっかり海の景色を眺められます。その他露天風呂やサウナまで。

 

ビールやソフトドリンク、アイスの自動販売機もあります。

 

カップ麺の自販機も備わっていまして、長距離フェリーならではという印象。

 

コインランドリーもあったので、長旅の方々でも安心です。

 

朝一番の放送は8:00、出航時刻も遅かったのでそれに合わせてか朝も遅めです。



朝食

8:00〜9:00、レストランにて朝ごはんをいただけます。

レストランは5階、昨日ご紹介したカフェからさらに奥へ進んだところです。

 

朝からプレートセットや朝カレーなど、お腹が空いた方でも安心です。

 

テーブル席や海沿い含めたカウンター席など、様座な客層に合わせたレストラン。

 

展望デッキを目の前にしたカウンター席をチョイスしました。タブレットで注文する形となります。

 

そこまでお腹が空いていなかったので、かけそばに。

蕎麦の香りと染み渡る梅雨が体を温めます。

 

レストランへの突き当りに展望デッキがあって、後方の景色を一望できました。



9:55、敦賀から苫小牧東高へのフェリーとすれ違いです。

10分ほど前に進行方向右側に注目するよう放送してくださったので、見逃すことなく皆さんご覧になっていました。

 

お互い大きな汽笛を鳴らしまして、想像以上のサイズ感に圧倒されます。



昼食

12:00〜13:00今度は昼食です。

北海道のイカそうめんや、名物となるザンギ定食。敦賀ラーメンや鯛茶漬けなど、発着地ゆかりの料理がたくさんです。

 

敦賀真鯛と青海苔のスキレットパスタをいただきました。

パリッとした生地にのびーっとチーズ。香り高い真鯛とマッチして非常に美味しかったです。

 

事前予約制ですがコース料理も用意されていて、その方は5階グリルダフネーでいただくことになります。

 

13:00〜、15:30〜にはコンファレンスルームにて、映画上映も行われているようでした。



ポセイドン

今回利用しているステートルームの廊下を進んだ先には、ポセイドンがあります。

フォワードサルーンと書かれている通り、フェリーの先頭部分に位置します。

 

ゆったりした落ち着く空間となっていまして、一番前から航行中の景色を楽しめます。

 

13時前、右手の水平線がボコボコとしています。あちらがおそらく新潟県佐渡島、見ることは難しいですが、一番こちらに近い西端には沢崎鼻があります。

 

15時頃、ショップ横の案内所でメロンパンとチョコチップメロンパンが販売されました。

 

船内で焼き上げており、外はカリッと、中はとてつもなくフワフワです。

5分で完売するほどの人気ぶり、ぜひお早めに買ってみてください。



14:10、石川県能登半島先端の沿岸部に浮かぶ、舳倉島へぐらじまが見えてきました。

2010年時点で人口110人の小さな村。バードウォッチの聖地とされており、海女さんによる素潜りも盛んです。

 

島の中央部には舳倉島灯台があって、2005年からは無人化されています。

 

15:30ごろには能登半島がかなり近づいてきました。

基本的にスマホの電波が通じない航路ですが、この辺り陸地が近づくと通じる繋がるようになります。

 

輪島市の断崖絶壁に位置する、猿山岬灯台が見られました。あたりには岩場しかなく到達困難に見えますが、猿山自然歩道があって散策される方もいらっしゃるようです。



日の入り

17時を過ぎまして、いよいよ夕暮れの時間帯です。

 

船内からは西の水平線へ沈みゆく太陽、日本海側の航路ならではの絶景です。

 

太陽が昇ってから沈むまで非常に長い航路、再び夜がやってきます。

海面に滞留する雲へ隠れていく様子を、最後まで見届けました。



夕食

船内最後の食事となる夕食、17:30〜19:00にいただけます。

道産牛の厚切りステーキや小樽群来鰊丼、中札内田舎どりチキン南蛮など、最後まで北海道の食を味和うことができます。

 

今回は新日本海自家製ハンバーグを。鉄板からはジュージューと音が立っており、その香りが食欲をそそります。

 

この程よいジューシーさが好み、お肉の旨みがギュッと詰まった美味しさです。

 

お部屋にかえる途中、水平線の向こうから照らされる空がとっても幻想的でした。船内の空間越しに見る夕焼けも素敵なもの。

 

デザートにアイスの自動販売機へ寄り道、ブルーベリーのチーズケーキをいただきます。



真っ暗になるのはあっという間。

福井県の東尋坊辺り、三国港周辺までやってきました。

 

19時を過ぎたところで、越前岬灯台を通過。鍵の形をした福井県ですが、つまむ部分の最西端に当たります。

 

越前ガニが採れる港町、越前温泉もある海岸沿いを航行していました。

 

リアス式海岸の付け根部分に当たる湾に入りまして、右手にはその門番とも言える立石岬灯台が灯っています。

 

そしてついに敦賀港の中へ侵入。いよいよこの船旅も終わりを告げます。

 

21時間に及ぶ長い移動でしたが、大きな船ゆえの充実した設備に、快適な個室。時を忘れて非常に楽しいものとなりました。



下船

20:30 敦賀フェリーターミナル 着

他にも貨物線が滞泊しているフェリーターミナルへ接岸です。

 

徒歩客は案内所横にて、ボーディングブリッジの接続を待つことになります。

 

敦賀もまたレストランや売店がある立派なフェリーターミナルです。

 

ターミナル前のロータリーには、敦賀駅への連絡バスが待っていました。福井鉄道バスさんによって運行されており、7,8人ほど利用されています。

 

バスはすぐ国道8号を走り始め、金ケ崎トンネルの中へ入っていきました。

 

氣比神宮の大鳥居を横目に、敦賀市の商店街に向けて走ります。

 

所要時間は10分ほど、敦賀駅に到着しました。料金は大人350円です。

 

22:04発特急サンダーバード50号でこの日中に関西圏へ帰る事もできます。

北陸への足も十分確保されているため、割と自由度が高いです。

 

半年後には北陸新幹線がやって来る敦賀。

今では無くなってしまった関西〜北海道の寝台特急にも重ねつつ、ぜひ新日本海フェリーの旅も選んでみてください。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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