宮城県の北端に位置する、くりこま高原駅です。
ここは新幹線単独駅で、徒歩圏内に在来線の乗り換え路線はありません。なぜここに新幹線駅…?とよく言われてしまう駅です。
一方で、かつてはこの近くをローカル鉄道が走っていました。それが、第三セクターくりはら田園鉄道です。東北新幹線とは北側で交差していたのですが、この路線自体2007年に廃止されています。
乗り換え路線を持たずに30年経った、くりこま高原駅。新幹線単独駅として歩んできた様子をご覧いただけたらと思います。
ひらがな駅名決定まで
駅周辺には田んぼが広がり、雰囲気的には「高原」にぴったり。ただし駅がある位置の標高は19.8mで、実際の高原とは程遠いです。
その中で一つ駅前に立っている大型施設が特徴的、かなり目立つ存在になっています。
くりこま高原駅の設置は東北新幹線開業前から構想されており、それを最も推し進めていたのが築館町でした。その後、築館町に駅を設置すると古川駅に近くなってしまうことから、志波姫町に設置することで計画を変更。地元が建設費用を負担する請願駅として、1990年に開業しました。
仮駅名は「栗原・登米駅」としていましたが、JR東日本は郡名を並べていると分かりづらいとして、再考を地元自治体に打診。
駅名公募が行われて以下の5案、「栗原登米駅」、「三陸栗原登米駅」、「奥宮城駅」、「スワン駅」、「伊豆沼駅」がJR東日本に提示されました。(若干変なの混じってますけど(笑))
結局JR東日本はどれも採用せず、くりこま高原駅に決定。現在は10町村が合併して2005年栗原市になっていますが、当時は栗駒町単体を連想させるとして反発しましたが、結局くりこま高原駅で決まっています。
ホーム拡大可能な構造
駅が完成した当時は12両編成対応でしたが、現在はミニ新幹線と合わせた17両編成に対応した長さに延長されています。
また2面2線の配線ですが、将来的に4線へ拡張できる用地も確保しました。目の前を320km/hで通過するので、可動式のホーム柵が設置されています。
ホーム上には水飲み場が設置。特に昭和以前からの歴史ある駅だとよく見られますが、平成になってからの開業駅でこれは珍しく感じます。
締め切り型の待合室や喫煙所なども、ホームに設置されています。
整列乗車を促す看板も、剥がれてきてちょい不気味(笑)
民営化直後の明るい駅へ
国鉄時代の新幹線駅は、高架橋の周りに駅舎を付け足しただけの、かなり無機質な印象がありました。くりこま高原駅の開業前後はその切り替え時期にあり、壁面にガラスが取り入れられているだけでも印象が違います。
コンコースは改札とホームの間に中2階がある構造です。線路が通過線もない2面2線で幅が狭いためか、あまり新幹線駅に見えないコンパクトさ。
何となく出雲市駅や鳥取駅など山陰の主要駅に似た構造です。
有人改札と一体化した、みどりの窓口が透明な壁で囲われています。新幹線単独駅ですが、指定席券売機以外の自由席用券売機も置いてありました。
改札前を見渡してみますと、お土産屋さんや観光案内所などが入居しており、高架下でありながら明るい雰囲気が感じられます。
NewDaysではなく、入っているのは独自のお土産屋さん。地方の空港みたいです。
観光案内所は交流スペースみたいでかなり広々しています。広大な栗駒市を巡れるレンタサイクルも取り扱っていました。
駅周辺には何が?
三角の出っ張りが何かと思っていたんですが、ガラス面で星形を描いていたんですね。こういうデザイン性は国鉄時代の駅舎には無かったと思います。
新幹線単独駅であることから、路線バスにより他の場所へ行けるようになっています。
栗原市民バス若柳線は東北本線の石越駅・栗原中央病院へ。岩ケ崎線は栗駒病院前に向かいます。
ミヤコーバスは佐沼営業所・登米総合産業高校へ。
また、高速バスの東日本急行仙台金成線があり、料金面と速達性で住み分けはされていても東北新幹線とライバル関係です。
このようにバスの発着はありましたが、本数は少なめ。無料駐車場もありますし、車でここまで来るパークアンドライドの需要が大きくなります。
七戸十和田駅の近くにもイオンショッピングセンターがありましたが、こちらの駅前にはイオンスーパーセンター栗原志波姫店。最寄りコンビニは1km離れており、これだけでも非常に便利です。
裏側にあたる西口も同じような駅舎デザインになります。
駅前にはホームからも見られた、エポカ21がドンと構えていました。こちらには宿泊施設やプール、サウナ、展望レストランが備わっているそうです。くりはら高原駅周辺では間違いなく、一番の観光向けスポットになります。
近くを交差した赤字ローカル線
新幹線単独駅を強調してきましたが、かつてこの近くを赤字ローカル私鉄が交差していました。それが、最寄りの在来線駅・東北本線の石越駅から東へ伸びた、くりはら田園鉄道線です。
くりこま高原駅から5.6km北側で交差しており、近くに大岡駅がありました。それならここに乗換駅を設置して、栗駒の中心部や東北本線へのアクセスを向上できたのではと思ってしまいます。
これが実現しなかった理由は、「あまり意味がないから」に尽きるでしょう。新幹線乗換駅になるということは、メリットを享受するくりはら田園鉄道側もお金を出さなければなりません。そこまでして乗換駅を手に入れても、大きな収支改善に至らないと判断されたのでしょう。
また、交差地点は金成町・若柳町周辺で、最も新幹線駅設置に積極的だった築館町から更に離れてしまいます。
以前ご紹介しました、七戸十和田駅での南部縦貫鉄道乗り換えは、交差地点が近く同じ七戸町内だったため具体的な計画もありました。一方でこちらの例では、当時の築館町が乗換駅設置によるメリットを享受できないため、具体的な構想が立てられなかったようです。
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一方で、合併後の栗原市は第三セクターくりはら田園鉄道の56%の株を有していました。新幹線駅設置誘致の時この状況だったならば、交差地点に駅ができていた可能性も十分あると思います。
くりはら田園鉄道は2007年に廃止されましたが、今でも廃線跡が色濃く残っており、旧若柳駅のくりでんミュージアムでは乗車会も行われています。廃止路線を積極的に活用した例であり、是非とも一度足を運んでみたい場所ですね。
くりこま高原駅の乗車人数は1010人/日(2019年度)。単独駅だからこそパークアンドライドの需要が大きいです。
ここはフリーきっぷ・週末パスで来られる北限ですから、その点ではある程度来やすいところです。ぜひ機会を作って訪れてみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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