今日は東北新幹線の新幹線単独駅、七戸十和田駅に来ています。
2010年12月、東北新幹線の八戸〜新青森延伸と同時に開業。2019年度の乗車人数は761人/日で、コロナ禍前までは増加傾向にありました。
七戸十和田駅の仮称は、自治体名をそのまま取り入れた七戸駅でした。そこから七戸十和田駅に変わったことを見ると、新函館北斗駅みたいに周辺自治体からクレームを入れられたみたいに思っちゃいますが、実際は異なります。
七戸駅を要望していた七戸町商工会ですが、福士孝衛町長(当時)は、七戸の新幹線駅設置に協力した上十三地域(上北郡、十和田市、三沢市)の意見を無視できないとしていました。
その後、各首長で議論を交わし、「短い七戸駅で良い」「観光資源の(十和田湖)を付けてほしい」「七戸町の意向を尊重する」との意見。
最終的に自治体の要望通り、そのまま「七戸十和田駅」で決定しました。
駅構造
プラットホーム・コンコース
1時間に1本しか通らないため、相対式ホームの2面2線で通過線はありません。停車するのはそのうち半数、1〜2時間に1本の停車となっています。
改札のあるコンコースへは、上に向かっていく構造です。
新幹線駅は高架上に設置されるため、階段を降りていくイメージがあるのですが、ここは登るのをはっきり見られます。
コンコースでは、南部織物で表現された八甲田山の冬景色が表現されていました。
ここからは新幹線の線路を真上から見下ろすことができます。
どうやら床には十和田石を使っているみたいです。
改札周辺・待合室
自動改札機の台数も最低限。改札内にはお手洗いや売店がありません。
駅機能は南北自由通路から、正面に改札を迎えた部分に集約されています。
待合室内のみどりの窓口と有人改札は一体になっていまして、防寒対策として完全に囲われています。
ここには新幹線関連の新聞の切り抜きが、たくさん展示されていました。
他に、JR東日本における新幹線開通の歴史も。駅員さんの手作り感が素敵ですね。
待合室には1人ずつ分かれた椅子が置いてあり、みどりの窓口と指定席券売機が設置されています。まだみどりの窓口が廃止される気配はありません。
お隣にあるのが売店。NewDaysではなく、青森・下北ふるさとの会さんによって、経営されています。
お土産品に重きを置いたコンビニという印象です。
お手洗いも囲われていまして、完全に北国仕様です。
南口
南北自由通路によって結ばれている二つの駅舎、まずはメインの南口から。
駅舎のデザインコンセプトは「心安らぐ豊かな自然と歴史の感じられる駅」です。
3つの箱を並べたような構造をしていて、真ん中は八甲田連邦、新青森寄りは町の未来、八戸寄りは奥州街道の松並木を表しています。
そのボックスに照明でくっきりと表れた、透明な曲線は八甲田の山並と南部馬の背中をモチーフにしているとのことです。
駅舎に背を向けて正面を見てみますと、あまり目立った建物はありません。
それでも、ニッポンレンタカー、タイムズカー、みちのく銀行などここから遠くへ行くのには困りません。
さらに、すぐ横に隣接してイオン七戸十和田駅前店があります。さらに道を挟んで南へ行けば、道の駅しちのへやローソンも。
あまり重要とは言えない新幹線途中駅でありながら、かなり充実しているように思えます。
南北自由通路
改札を出て南口を向いた角度、青森ヒバがぬくもりを感じさせます。
KEY'S CAFÉ七戸十和田店が七戸町観光交流センター2階に入居しています。
七戸町観光交流センターは南口へ向かう正面にあり、自由通路と一体化しています。
北口
駅舎は南口と同様のデザイン、こちらは裏側で結構寂しげです。
駅前にはトヨタレンタカーリースがあるだけで、そのほか商業施設は見当たりません。
近くにはパークアンドライドを見込んでいるであろう、駐車場が広がるばかりです。
かつては無料駐車場であり駅の利用者数が増加し続けていたのですが、慢性的な満車状態が続いたため2019年から有料化。予約無しで利用可能な写真に映している北口第1駐車場、南口駐車場は24時間200円です。(駐車場の詳細な利用料金)
上野へ行く夜行バスパンダ号八戸線の乗り場がありました。
七戸十和田駅の乗換え路線
2022年9月に西九州新幹線の嬉野温泉駅が嬉野市に開業するまで、所在地の七戸町は在来線駅が存在せずに新幹線駅だけがある唯一の自治体でした。
ここから七戸町中心部、十和田市、野辺地町などへは、路線バスが発着しています。
近くを通った赤字私鉄
七戸町は現在新幹線しか存在しませんが、かつて私鉄の路線がありました。東北本線の野辺地駅から七戸駅を結ぶ南部縦貫鉄道です。
1両のレールバスで運行されており、20.9kmの路線でした。
(CC 表示-継承 3.0,https://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=1446338より)
しかし、東北新幹線開通を前にして、1997年に全線休止、2002年に正式廃止されました。
南部縦貫鉄道は野辺地駅から一部、旧東北本線の路盤を借りて運行していました。しかし1995年12月、国鉄清算事業団から約5100万円で買い取りを要請されます。
その資金捻出が不可能となり、1997年に全線休止。その後沿線自治体との調停によって、1998年6月に約450万円で路盤を買取りましたが、休止中に鉄道施設が荒廃して復旧が困難に。2002年に廃止されました。
七戸十和田駅への新線計画
南部縦貫鉄道は七戸十和田駅のすぐ近くを交差しており、近くに営農大学校前駅がありました。そして、七戸十和田駅の設置計画も存在していました。
そこで、南部縦貫鉄道は東北新幹線開業に合わせた、経営改善計画を立てます。七戸十和田駅開業後、営農大学校前駅~七戸駅は廃止。その代わり七戸十和田駅~営農大学校前駅に線路を敷設し、下北方面へのアクセス列車を走らせるというものです。
しかし、東北新幹線は中々建設されず、既存の東北本線を利用するミニ新幹線での開業も視野に入っていた状況。先述の出来事により、新幹線による需要を享受する前に、余儀なく廃止されました。
営農大学校前駅跡地
七戸十和田駅から歩いて5分ほど、青森県営農大学校に来ました。
校門のすぐ右隣に設置されていたのが、営農学校前駅です。
この線路跡はこの先、東北新幹線の高架橋と交差します。
新線建設ほど大掛かりなものは難しくても、路線が残っていれば少なくとも乗換駅になっていたでしょう。
待てど暮らせど中々建設されなかった東北新幹線。その前に営業休止を余儀なくされ、経営改善を図る前に廃止されてしまったという切なさがあります。
東北新幹線の中でも、あまり利用されない七戸十和田駅。
新幹線単独駅で来る機会が無かったのですが、非常に興味深い歴史が詰まっていました。
南部縦貫鉄道の旧七戸駅構内では当時の車両が動態保存されており、見学もできます。ぜひその時には七戸十和田駅を利用して、廃線跡まで見に行ってみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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