今回ご紹介するのは、岩手県南部に位置する水沢江刺駅です。
東北新幹線の単独駅であり、東京からのはやぶさ号だと一瞬で通過。周辺の観光地も目を惹くものが少ないため、中々利用する機会が無い駅です。
そんな目立ちづらくあまり馴染みのない水沢江刺駅。
しかし、駅構造には将来的に夜行新幹線運行を想定した姿を見ることができます。鉄道ファンの9割が大好きな夜行列車、それに向けた動きが現実に現れているのです!
夜行新幹線運行を想定した構造とは
水沢江刺駅は現在2面2線で、通過線がありません。目の前をはやぶさ号が320km/hで通過していきます。
夜行新幹線の運行において一番の問題が、夜間行っている保線作業の障害になることです。
そこで、上下線どちらか1本の保線作業を行い、もう1本で夜行新幹線を運行する、一時的に単線にすることが考えられました。
単線での運行ということは、どこかで行き違いを行わなければなりません。その場所として水沢江刺駅が想定されたのです。
例えば上りで保線作業を行っている時は、下り側で行き違います。
このように待避線を外側に1本ずつ付け足して、2面4線構造にする計画を立てました。水沢江刺駅は東北新幹線盛岡開通時には無く、1982年の開業ですが、夜行新幹線運行においていずれ駅を設置する予定でした。
駅の外へ出てみると、待避線を付け足す時にコンクリートによる高架橋同士接続できる構造を見られます。
一方で、このような運行方法には大きな問題があります。2本の新幹線が向かい合って走る単線新幹線は、十分な安全な運行を行えるのか。また、新幹線運行中の線路横で保線を行うのも危険です。
夜行新幹線運行は北海道新幹線開通後を想定していましたが、札幌延伸時に走るなんてことあるのでしょうか…?
後付された延長ホーム
駅のホーム端を見てみると、どう見ても後から付け足された部分があります。
元々12両対応で開業した水沢江刺駅ですが、1991年の東京駅乗り入れを機に16両化。元々16両編成と2面4線化に対応分の用地を確保していたので、スムーズに建設が行われました。
一方で問題になったのが、屋根の建設費です。
自治体は既存部分と同じく線路全体を覆う上屋を、JR東日本全額負担での設置を求めましたが、JR東日本は地元負担を主張します。
最終的に全体を覆う屋根(費用約3億円)ではなく、現在のホーム部分だけ屋根(約8000万円)として、費用はJR東日本と地元が折半しました。
フル規格新幹線の場合は16両、ミニ新幹線のこまち号連結の場合は17両に対応します。
窓の形など家形になっていたりと、多少のデザイン性は見られます。
駅名で揉めたけど…
水沢江刺駅の駅名は、新水沢駅(所在地が水沢市)で開業する予定でしたが、江刺市も新幹線用地に提供したとし、「水沢江刺駅」を提案。その後も揉めに揉めて、結局岩手県知事が「水沢江刺駅」で決定しました。
結局水沢市と江刺市は合併して奥州市になっており、結果的にあの騒動は何だったんだというオチです。
階段を降りたコンコースは昭和感漂っており、そこまで広々していません。
改札を出た先には、お土産屋さん「ぐるっと遊」がありました。営業時間は8:15〜18:30です。
水沢江刺駅は新花巻駅と同時に開業した駅なのですが、売店や観光案内所の配置などが瓜二つになっています。国鉄末期の費用を抑えたコンパクトな作りです。
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駅舎内には南部鉄器製の手形が展示されていました。胆江地域(奥州市・金ヶ崎町)を訪れた芸能人の方に協力してもらって、ハリウッドにあるみたく手形をいっぱい集めようという計画です。
あまりに視界が開けた正面口
残念ながら工事中で見えませんでしたがコンクリート造り、上越新幹線の駅みたいで地味な色合いの駅舎です。正面口という名前ですから、こちらがメインになります。
駅前を見てみると、見事に新幹線駅らしい光景は全くありません。ビジネスホテルも無く、日産レンタカーが奥の方にあるだけです。この道を真っ直ぐ400mほど進んだところに、ローソンがあります。
左手には葬儀ホールがあります。新幹線の駅真ん前に斎場とは、中々なもんですね…。
駅前に立つ銅像は、日本の鉄道網を作り上げた後藤新平。
羽黒山出羽神社の境内に公園を整備して、水沢出身の後藤新平像を立てる予定だったのですが、公園ができなかったため神社の境内に置かれたままに。その後生誕150周年を迎える2007年、水沢江刺駅前に設置されました。
ここから東北本線の水沢駅までは4.5km離れているため、岩手県交通による路線バスが発着しています。本数は少なめなので、タクシーのほうが便利そうです。
その他、水沢市コミュニティバスもあります。
昔はもっと多くのバス路線があったのでしょうか、テープで隠されています。現在は1番のみ、水沢市内へ向かいます。水沢市というのも無くなってますけどね。
田んぼの広がる駅裏側
東側は目の前に道路が通っているので、ロータリーなどはありません。
当然パークアンドライドによる需用を見込んでおり、市営の無料駐車場が整備されていました。その奥には田んぼが広がるばかりです。
お土産屋さんがあるので、買い物的なのはこっちの方が便利かもしれません。
水沢江刺駅の乗車人数は、970人/日(2019年度)で減少傾向。
来る理由を見つけないと機会がないですが、とても面白い駅でした。
単線新幹線にして行き違いを、とはならなくても、いつか夜行新幹線で札幌に行ける夢を叶えてほしいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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