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JR吉備線に乗って、岡山駅から終着駅の総社駅に来ました。
列車は0番線ホームに停車中。
総社駅は特急やくも(岡山〜出雲市)が走る伯備線の駅で、吉備線は岡山〜総社における短距離需用に特化しており、LRT構想があるほどです。
今日使っているのは青春18きっぷ。全国のJR在来線普通列車に乗車可能で、安くて使い勝手の良いフリーきっぷです。
そんな18きっぷですが、ここ岡山県には「JR在来線の路線なのに18きっぷで乗れない普通列車」があります。
同じ区間でどちらも普通列車なのに、種類によって乗れるか乗れないか決まる。あまりにも初見殺しな区間をご紹介します。
青春18きっぷで乗れないのは、総社駅の端に停まっているこちら。
第三セクター井原鉄道井原線です。
第三セクター鉄道はJRではないので、青春18きっぷで乗れないのは当然のこと。しかし、この列車が総社駅にいるのは、JR伯備線へ乗り入れているからに過ぎません。
こちらは周辺の路線図です。井原鉄道は清音〜神辺を結ぶ路線で、総社駅の隣駅である清音駅が分岐駅となっています。
しかし、井原鉄道の列車は多くが総社駅まで乗り入れており、運行上の起点駅は総社駅とも考えられます。
そうは言っても、清音〜総社間はJR伯備線。区間を考えれば青春18きっぷで乗れると思うのが自然です。
第三セクターの普通列車がJRに乗り入れる例は全国に存在します。例えば、伊勢鉄道が乗り入れる関西本線の四日市〜河原田、道南いさりび鉄道が乗り入れる函館本線の五稜郭〜函館などです。
これらでは、乗車したのが第三セクター鉄道に乗り入れる列車だったとしても、JRの区間内であれば青春18きっぷで乗ることができます。
しかし、井原鉄道の場合は別。JR区間の総社〜清音間だけだったとしても、18きっぷで乗れるのはJRの車両で運行される列車だけです。
一体どうしてこんなことが起きているのでしょうか。
【三セクがJRに乗り入れる時の一例】
①三セクの列車が乗り入れてくるけど、この区間はJRだから、運賃はJRに入ってくるようにしたい。
②確かにこの区間はJRのものだけど、運賃が入ってくるのは三セクが車両を走らせているおかげ。だから運賃全部をJRのものにはできない。
③三セクが車両を運行してくれた料金(車両使用料)を払うから、JR区間の運賃は自分のものにする。
④JRの区間は車両関係なく自社内で運賃が完結しているので、18きっぷも使える。
【井原鉄道(総社〜清音)の場合】
①井原鉄道はJRの総社〜清音に乗り入れたい。車両は井原鉄道が走らせるけど、JRの区間だから運賃はJRに持っていかれる。
②JRの線路を使わった料金(線路使用料)を払うから、井原鉄道が走らせた分の運賃は井原鉄道のものにさせてもらう
③「井原鉄道が走らせた分の運賃」と「JRが走らせた分の運賃」を分けないといけないので、会社別に運賃収受を整理する必要がある。
④井原鉄道の車両で運行している場合、総社〜清音でもJRの収入になる18きっぷは使えない。
以上より、井原鉄道の総社〜清音は青春18きっぷをはじめとした、JRの乗車券で乗ることはできないのです。
それでは実際に井原鉄道の普通列車で、総社〜清音に乗ってみましょう。
改札内に設置された発車標には、JR伯備線とJR吉備線の案内だけ。井原鉄道の案内はありません。
ここで一旦JR線の改札を出ます。
自動改札機が設置されており無人時間帯でしたが、「青春18きっぷ利用の方はそのままお通りください」の張り紙の通り、無人と化した有人改札を素通りします。
自由通路でお隣りにあるのが、井原鉄道井原線の改札。木目調でリニューアルされているのが目を惹きますね。
井原鉄道の方は無人駅で、自動券売機も無いので乗車券の購入はできません。整理券を取って運転士さんに料金を支払う、バスのような方法が採られます。
列車の本数は1時間に1本程度。1日6本清音駅始発の列車があり、JR伯備線への接続が案内されていました。
井原鉄道の改札を抜け、乗車しようというところ。目立たない位置に重要な張り紙があります。
「JRの各乗車券ではご乗車いただけません」とあり、青春18きっぷも代表に挙げられています。
それでも総社〜清音が名指しされておらず、ちょっとトラブルになりそうで分かりやすくした方が良い気も。
と言っても、わざわざ18きっぷでこのひと区間を乗る方は、そんなにいなさそうですが。
井原鉄道の車両はIRT355形気動車で、車両譲渡を受けた訳ではなく自社車両です。
それにしては、何やら見覚えのある形ではないでしょうか…。
そう、これはJR西日本のローカル線で活躍する、キハ120形気動車を元に製造されているのです。
ラインカラーの組み合わせもそれっぽく、もうJRにしか見えませんね…(笑)
それでは清音駅まで乗車しましょう。
実はこの時、青春18きっぷで乗れないというだけで、別に乗車券を買えば良いと勘違いしていたのですが、これも間違い。
これは「JRの乗車券」なので、「井原鉄道の運賃収入」にならず、これで井原鉄道に乗車することはできません。
乗車時に整理券を取って、下車時に運賃を支払うというのが正しくなっています。
ちなみに井原鉄道の運賃表も確認すると、総社〜清音は190円。JR西日本と同じ料金です。
JR伯備線の線路上を走りまして、清音駅へ。
ひと区間進みまして、清音駅で下車しました。
この駅は有人駅ですが、車両先頭部で運転手さんに190円を支払います。
清音駅も総社駅と同様、JR伯備線と井原鉄道井原線の改札が別になっています。
こちらはJRの駅舎を正面から見たところ。JRは駅舎に入る一方、井原鉄道は右の跨線橋を渡る構造です。
駅舎にはJRの自動改札機が設置されています。井原鉄道は有人駅ですが、JRは完全な無人駅です。
改札を入って右手には、井原鉄道のホームへ繫がる跨線橋が見えます。ただし、駅舎に面した3番線ホームから登ることはできません。
左手にはJR伯備線の1,2番線ホームへ繫がる跨線橋があり、岡山方面へはあちらへ渡ることとなります。
真ん中の2番線ホームが延びる先に井原線ホームがあり、このホームにJRの車両は停まらず井原線が通過していくばかりです。
ここまではっきり運賃収受が分けられた総社〜清音ですが、実は同じ井原鉄道でも青春18きっぷで乗車する方法があります。
それは福塩線の神辺〜福山、井原鉄道の一部列車はこの区間に乗り入れています。
こちらについてはJR西日本が井原鉄道に車両使用料を支払っているため、運行車両に関係なく完全にJRの区間であり、JRの乗車券で乗ることができます。
同じ井原鉄道でもJR西日本へどのように乗り入れているかで異なっており、本来ならお客さんに見えないはずの影響が、このように現れています。
わざわざ来ることは少ないと思いますが、ぜひこの不思議を体感してみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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