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【幹線に成り損ねた!?】赤穂線がローカル線になった理由[〇〇のはなし(1)]

2023年1月18日

 

姫路から岡山の在来線には2つのルートがあります。

ひとつは神戸から九州までを結ぶ山陽本線、そしてもう一つが南側を走る赤穂線です。

 

京都や大阪ではよく発車標で、播州赤穂の文字を目にする機会があります。これは途中から赤穂線に入る列車たちです。

 

山陽本線のブラッシュアップを図る目的で建設されながら、地域輸送に徹することとなった赤穂線。その理由と現状を見てみましょう。



列車は人口50万人に及ぶ大都市、姫路を出発しました。

まずは山陽本線を駆け抜けていきます。太平洋ベルトに位置する重要路線であり、長距離旅客輸送を新幹線に明け渡しても、貨物列車が沢山走ります。

 

山陽新幹線の高架橋が現れまして、姫路の隣に位置する新幹線駅、相生駅に到着です。

 

日中、山陽本線の運行系統は相生駅で分かれているため、青春18きっぷ期間中は席を求める多くの乗換客で溢れます。

 

その一方で、ここから分岐する赤穂線については比較的空いています。のんびり18きっぷ移動を楽しみたい人にとって、抜け道ルートです。

 

相生~東岡山で山陽本線と赤穂線を比べると、それぞれ60.6kmと57.4kmで、赤穂線の方が3.2km短いです。それでも速達性で有利に働くのは山陽本線、その理由は両者の歴史にあります。

 

山陽本線は1891年、岡山駅まで延伸開業しました。ところが、兵庫県と岡山県の県境には船坂峠があり、これを避けるバイパス路線、赤穂線が計画されます。

赤穂線は相生駅からの着工にこぎつけたものの、太平洋戦争により工事が停まってしまいました。

 

戦後の1962年に全線開通を果たした赤穂線ですが、全線単線電化区間も相生~播州赤穂のみ

一方で、山陽本線は複線電化されていたため、赤穂線は地域輸送に徹することとなりました。

 

1969年に全線電化を果たしましたが、現在山陽本線の最高速度が120km/hに対し、赤穂線は95km/h。

駅数が多いことからも地域密着型の鉄道として活躍していることが分かります。

 

より距離を短くしようとする山陽新幹線については、一部赤穂線と並行するものの、基本的には山陽本線と赤穂線の間を走る形です。



播州ばんしゅう赤穂駅に到着、駅名の播州とは、旧国名「播磨はりま国」の別名です。

関西圏の鉄道網では西端となっており、ここで列車の運行系統が変わります。

 

岡山方面へ向かう黄色い電車に乗り換えです。赤穂線では全線を通して運行する列車が存在せず、必ず播州赤穂駅で乗り換える必要があります。

 

18きっぷ期間で多少お客さんは多めですが、山陽本線よりはマシに思います。関西圏で見慣れている223系電車を横目に、岡山方面へ出発。

 

1本線路が増えて広くなっているのは、線内唯一の貨物駅、西浜駅です。

1995年に住友大阪セメント赤穂工場が鉄道輸送を廃止しており、現在は三菱電機工場で製造した変圧器を輸送する、特大貨物輸送列車が不定期に運行されます。

 

この列車は赤穂線から伯備線への直通列車。運賃表にはこの時点で出雲市の文字が出ており、特急やくもより広範囲に対応しています。



岡山県の旧国名「備前」が付く、備前福河駅に到着。

しかし、まだ岡山県には入っておらず、ここは兵庫県です。

1955年に駅が開業した当時、ここは岡山県和気郡福河村でした。しかし、1963年に兵庫県赤穂市へ越境合併したため、現在では駅名と県が一致しなくなっています。

 

1602mに及ぶ福河トンネルを通りまして、今度こそ兵庫県から岡山県に入りました。



日生ひなせ駅にて反対方向の列車と行き違い。

ここは小豆島へのフェリーが出ている港町です。

 

山陽本線に比べれば海沿いを走る赤穂線ですが、瀬戸内海を楽しめるのはこの周辺ぐらいになっています。

 

山を越えながらカーブしまして、山陽新幹線の近くへ向かいます。



備前市役所に近いことから、中心駅と位置付けられている備前片上駅に到着。

赤穂線が開通する以前の1923年から、この地域には片上鉄道がありました。こことは別の片上駅から現・美咲町の柵原駅を結んだ、同和鉱業の鉄道路線です。

 

(spaceaero2 - 自ら撮影, CC 表示-継承 3.0,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7484220による)

この鉄道は柵原鉱山で産出された硫化鉄鉱を輸送していましたが、海外からの輸入に押される形で産出量が減少。トラック切替により旅客輸送では成り立たせられず、1991年6月30日をもって廃止されました。

 

備前市と言ったら備前焼の方が、連想しやすいかもしれません。

日本六古窯ろっこようとされる瀬戸焼,常滑焼,信楽焼,越前焼,丹波焼,備前焼の中で最も古く、古墳時代から続きます。

 

伊部地区がその中心であり、赤い煙突の並ぶ街並みが特徴的です。かつて大きな釜があったところには、割れた焼物が山になっていました。

 

岡山地区の観光列車ラ・マル・ド・ボァですが、2021年夏からラ・マル備前長船として、岡山~日生の運行を開始しています。

2022年にも走っており、駅にはその横断幕が掲げられていました。

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ここで、山陽新幹線すぐ近くを並走する区間になりました。

距離にしてはそんなに長くないのですが、新幹線の本数が多すぎて割と目にすることができます。

 

しかも運の良いことに、今回はドクターイエローまでやって来ました!

 

これは本当に驚いて、ソワソワする不審者と化してしまいました。通報されなかった時点で、幸運をもたらされたと思います。



邑久町、牛窓町、長船町の合併により、誕生した瀬戸内市へ。

2,3分停車しまして、反対方向の列車と行き違い。どうしても単線なので、こういったところで運行上制約が生まれてしまいます。

 

瀬戸内市は岡山市のベッドタウンとして発展しており、邑久駅辺りから特にお客さんが増えてきました。

 

吉井川を渡りまして、岡山県に入りました。300m近くありそうな、非常に長い鉄橋です。

 

西大寺駅は西大寺の玄関口であり、2面3線のかなり大きな構造です。

 

実際には3つ以上挙げられる日本三大奇祭のひとつ、はだか祭りが行われます。



相生駅以来しばらくだった、山陽本線と合流。山陽新幹線と共に岡山駅へ向かいます。

この先、東岡山駅から山陽本線に入ることとなります。

 

沿線人口は山陽本線の方が少なく、赤穂線の方が生活利用者に密着した運行が可能となっています。運行本数についても1時間に1本で、実は変わりません。

 

たしかに山陽本線のような幹線にはなれなかった赤穂線。しかし、岡山と関西それぞれの都市部に向かうのに必要不可欠な路線として、大切にされていると再認識できました。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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