まだ日が昇る気配も無い早朝4時台の高知駅、一番手前には新型2700系気動車が停車中です。
2008年に高架化された新駅舎にはまるでライトアップされているかのような照明が灯っており、四国に2駅しかない自動改札機も通れる状態です。
一番最初に発車するのは、特急しまんと2号高松行き。始発の高知駅出発時刻はなんと4:51です。
真っ暗な早朝の空間の下、駅ホームの照明に照らされるステンレス車体の気動車。2両編成のこちらに乗車しまして、早朝特急ならではの車窓と利用状況について観察していきます。
4:51 高知駅 発
時刻通り高知駅を出発、この時点で1号車自由席の利用者は10人、2号車自由席は4人、指定席は2人でした。車掌さんによる肉声で停車駅等の案内が流れます。
特急南風・しまんとは全て新型車両に統一されており、かなりしっかりしたリクライニング座席を使用しています。全席にコンセントを備えているため、居住性と共に利便性も向上しました。
高知市都市圏の高架線から降りてきまして、高架化に伴い移転した高知運転所横を通過。この時間ではまだ沢山のディーゼル車が止まっています。
高知県内の電化路線はとさでん交通の路面電車だけで、JRや土佐くろしお鉄道など普通鉄道は全て非電化路線です。
4:58 後免駅 着
ここからは高知県南東部へ向けて土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線が伸びています。2002年に全線開業した非常に新しいローカル線、阪神タイガーズのラッピング車両が止まっていました。
後免駅では3人の下車、高知〜後免の短距離利用は日中でも見られますが、この時間では飲み会や夜職の方の朝帰りという感じでしょうか。
ごめん・なはり線は高架へ登っていきまして、太平洋を一望できる沿岸部へ向かいます。とさでん交通の終点がお隣の後免町駅で、この辺りは高知県における重要な交通結節点です。
5:03 土佐山田駅 着
香美市の中心駅、土佐山田駅で下車する方は見られませんでした。高知から土佐山田駅までは比較的多くの普通列車が設定されています。
後免駅、土佐山田駅ではまだ改札を行なっていないため、車掌さんがきっぷを回収なさっていました。
ここで車内改札が行われまして、乗車券と自由席特急券を見せます。
そしていよいよ四国山地を越えていきます。かなり険しい山となっており、ディーゼル音を響かせている状態です。
車内改札優先の観点から今回は撮り逃しちゃいましたが、スイッチバック駅の新改駅を通過する様子も見られます。
トンネルに出たり入ったりを繰り返し、出ている状態でも森の中。
前面展望でヘッドライトが照らしてくれているので見られますが、普通に座席からでは何がなんやら分かりません。
グネグネしたカーブの連続で山を登っている区間ですが、中には長大トンネルも存在。地図上に定規で直線を引いたみたいです。
2700系気動車は制御付自然振子装置を備えており、カーブで車体を傾けることによって速度制限を抑えます。
ようやく森を抜けたようで、ガソリンスタンドの灯りが見えると繁藤駅を通過。JR四国で一番高い地点に位置し、標高は347mです。
再びトンネルが連続しまして、土佐北川駅を通過しました。
なんと橋梁に駅があるという面白い構造、まさに川の上にプラットホームが設置されています。
1986年に開通した大豊トンネルへ。それまでは川沿いを走っていたのですが防災機能強化のためルートが変更され、土佐北川駅はスペースが無い中で橋梁内部という立地になりました。
5:23 大杉駅 着
一部の特急南風・しまんとは通過しますが、大豊町の中心駅。こちらは停車する便でした。
ちょっと曇りがちですが夜は明けてきて、霧のかかった青々した山の下には、吉野川が静かに流れています。
高知県から徳島県に入りますと、木々の隙間から渓谷とそれに沿った集落が見られるように。
5:41、祖谷の渓谷美を楽しめる観光地の玄関口、大歩危駅に到着しました。
昼間なら10人程度お客さんの流動が見られますが、この時間ではいらっしゃらないみたいです。
そしてここからが土讃線特急のハイライト。大きな岩に急流の渓谷、そこに張り付く大きな建物も見所です。
日中では観光案内として車窓に関する自動放送が流れるのですが、明るくなっているとはいえ寝ている方も多いため、その放送はありませんでした。
大歩危駅〜小歩危駅の中間地点で吉野川を渡り、渓谷の車窓は進行方向右手へ移ります。
小歩危駅では回送列車と行き違い、おそらく大歩危駅6:13発の普通列車琴平行きになるのでしょう。
オレンジ色の光も注ぎ込み始めます。
9月前期でもこの空色ですから、もう少し早ければここで日の出など狙えそうです。
たぬきの駅として名高い、阿波川口駅を通過。
ここで初めての営業列車、阿波池田発/土佐山田行き普通列車と行き違いました。四国山地を越える普通列車は1日5往復だけです。
日曜日ということもあって、今日は旅行の方が7割くらい。それでもスーツをお召しになったサラリーマン風の方もいらっしゃいました。
ここで立派な高架橋、徳島自動車道の下を潜ります。「四国のへそ」であることから、池田へそっ湖大橋と名付けられているみたいです。
四国で一番広い面積を占める三好市、その中心部ともなっている池田地区の市街地へ入ったところで、丁度日の出を迎えました。
5:59 阿波池田駅 着
ここで乗務員さんが交代、お客さんは2人下車されました。
そして阿波池田駅を出発したところで、一気に朝日が差し込みます。四国山地では霧が立ち込めていて天気が心配でしたが、完全に吹き飛ばされました。
佃駅からは吉野川沿いに徳島県を横断する、徳島線が分岐していきます。
吉野川を渡る時の日の出が素晴らしいこと。
かつて京都〜高知を結んだ夜行快速ムーンライト高知は阿波池田駅5:21発だったようで、おそらくこんな景色をカーペット車などから眺められたんでしょうね…。
何でもかんでも夜行列車に例えてしまう悪い癖ですが、本当にそれを彷彿させる特急です。
吉野川近くの畑にはカカシが集結しており、お見送りしてくれました。
四国山地を越えた後、今度は讃岐山地を登っていきます。朝日も山陰へ隠れることに。
急カーブによって讃岐山地へ挑むのですが、新しい一日を迎えた池田の街並みを一望できました。
ぐんぐん山を登っていく先、四国で一番の秘境駅が現れます。
それがこちら、坪尻駅です。
スイッチバック駅となっていまして、坪尻駅に停車する普通列車は、2度進行方向を変える必要があります。
特急列車は駅から少し離れたところを通過していき、駅舎もやや見下ろす角度です。しばらくして3845mの猪鼻トンネルで徳島県から香川県に入ります。
讃岐平野へ出てきまして、100km/h超の速度で駆け抜けていきました。
6:23 琴平駅 着
金刀毘羅宮の玄関口でもある琴平駅、それを意識したお洒落な駅舎となっていまして、昼間なら観光客も多く利用します。
次にやってくるのは特急しまんと1号、1日1本だけ運行される、高知駅を越えた中村行き直通特急です。
琴平駅から先は電化区間ということで、電車が走っています。
ただし簡易的な方式のため、寝台特急サンライズ号が琴平まで延長運転する時間帯は、気動車に変えて運行する必要があります。
高松琴平電気鉄道琴平線と直交、高松築港〜琴電琴平を直線的に結ぶので、このアクセスには結構便利です。
6:28 善通寺駅 着
琴平駅の隣駅、全ての特急列車がこちらに停車しており、空海誕生の地ともされる善通寺へ行くことができます。
お隣の金蔵寺駅で運転停車しまして、特急しまんと1号中村行きと行き違いました。あちらは高松駅を6:04に出発し、高知駅を8:20に出た後、終点の中村駅には10:04着の丁度4時間かかります。
松山方面から予讃線が近づいてきまして、まもなく多度津駅。
多度津工場も併設された車両基地があって、これから走り出す列車たちが準備中でした。
6:37 多度津 着
ここでは1人乗車、2人下車されました。
12分前に特急いしづち103号が出ているので、松山方面へは接続していません。次は8:09発特急しおかぜ1号、松山駅到着は10:06です。
香川県第二の都市である丸亀市、大きな石垣に小さな天守閣の丸亀城を見つつ通過していきます。
そして列車は宇多津駅も通過。
特急列車が宇多津駅を通過するのは結構珍しい方かと思います。
ここで本州方面への線路が分かれ、上へと登っていきました。
上の線路は瀬戸大橋へ向かい、左へ分かれているところ。向かいからは普通列車がすれ違います。
左手からは快速マリンライナーが走る、岡山から高松への線路が合流し、デルタ線を形成しているのが分かります。
6:47 坂出駅 着
ここで6人下車、1人乗車しました。
この列車は特急しまんと号なので、岡山駅へは行きません。坂出駅で7:01発の快速マリンライナーに接続しており、これに乗れば岡山駅に7:46着となります。
岡山駅ではのぞみ80号に接続しており、新大阪駅8:43着、東京駅11:15着です。のぞみ271号は広島駅8:37、博多駅9:39着となっています。
おそらく大阪、広島での始業に間に合わせていると思われます。
こちらはそのまま高松へ、予讃線の架線下をディーゼル特急が駆け抜けます。
高松の車両基地には、土讃線の観光列車四国まんなか千年ものがたり号がいました。
行き止まり式のホーム、終点の高松駅に到着です。
7:02 高松駅 着
高知駅から2時間11分、結構あっという間で高松駅に到着しました。
これが岡山駅発着の特急南風ではなく、高松駅発着の特急しまんとで、2両編成という短編成なのも面白いところです。
高松駅では新しい駅ビルを建設中で、JR四国も不動産事業に力を入れているところ。四国の特急は本州発着がメインですが、高松に向かう便として非常に面白いもの。
非常に朝早いですが早朝特急としての魅力、是非体感していただけたらと思います。今回もご覧いただき、ありがとうございました。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。