青春18きっぷは春夏冬に発売される、全国のJR在来線普通列車に乗り放題のフリーきっぷです。
日本一有名なフリーきっぷと言っても過言ではなく、各シーズンには多くの利用者が見受けられます。
一方で注意しなければならないのが、第三セクター鉄道線の存在。かつて国鉄やJRだった路線でも、基本このきっぷで乗ることはできません。
そのため金沢〜富山や長野〜豊野など短距離で途切れていても、別料金を支払う必要があります。
その究極と言えるのが、高知県の土佐くろしお鉄道、若井駅〜窪川駅です。このひと区間がJR線でないがゆえ、別料金を拒んで青春18きっぷのみで移動しようとすると、四国一周することになります。
このような状態になったのは、窪川〜若井を含む窪川〜中村がかつての国鉄中村線で、赤字路線のため民営化の際に土佐くろしお鉄道へ移管したためです。
大人しく別料金払っておけば良いものを、今回は意地でも青春18きっぷを使ってJRのみで、若井駅〜窪川駅を移動してみることにしました。
最初に乗車します、予土線の宇和島行き普通列車がやってきました。
1両編成のディーゼルカーですが、何処かで見たことのあるカラーリング。後ろ姿を見るとアッと気づきます。
あれ、新幹線ですか。これじゃあ青春18きっぷで乗れま…
す。大丈夫です!
こちらは鉄道ホビートレインと呼ばれる列車。0系新幹線をモデルにしており、四国新幹線と言われたりします。
10:49 若井駅 発
いよいよ予土線の起点である若井駅を出発。いよいよ短く長い、青春18きっぷで行く若井→窪川の旅の始まりです。
若井駅から川奥信号場は高知〜中村・宿毛を結ぶ特急あしずり号が走る区間であり、最高速度110km/hの区間となっています。
トンネルを抜けまして、川奥信号場まで来ました。
JR予土線は旅客案内上、若井駅から分岐することになっていますが、実際に分かれるのはこの信号場からです。
場内にて一時停止しまして、10秒ほど止まるとすぐに発車。ポイントを越えて進行方向左側の線路へ入りました。
土佐くろしお鉄道中村線が分かれまして、進行方向左手へ離れていきました。はっきり見るのは難しいですがあの線路はループ線を描いており、信号場から下を通る線路も見えるそうです。
予土線の車窓と言ったらやっぱり、四万十川の清流。
蛇行する川の水面には山と空が反射しており、ローカル線の車窓として非常に魅力的です。
川奥信号場〜江川崎の最高速度は85km/h、若井駅〜江川崎駅は1974年の開通であり、JR四国の路線で一番新しいです。そのためローカル線ながら比較的高速走行が可能となっています。
土佐大正駅にて行き違いのため、26分の停車。ここで鉄道ホビートレインの車内をご紹介したいと思います。
基本的にはロングシートですが、2組だけクロスシートが備わっています。
こちらは0系新幹線で使われていた転換クロスシート。
この車両では転換できず固定された状態ですが、昔の新幹線の雰囲気をここで感じられます。
灰皿の跡や簡易的なテーブルも備わっており、今の新幹線がどれだけ快適なものになったか、その歴史を知らしめられるようでした。
進行方向後ろ側には、歴代の東海道山陽新幹線と、鉄道ホビートレインの模型が展示されています。
さらに前側には結構な面積を占めてギャラリーを設置。特急列車の模型も置いてありました。
そして注目したいのが運賃表、なんの変哲もなく見えますが、なんと開業当初の東海道新幹線の駅が書かれてあります。かなり細かいところまで凝ってますね…。
ここで行き違ったのは予土線観光列車しまんトロッコ。
窪川行き普通列車として運行されている、JR九州でお馴染み水戸岡鋭治さんによるデザインの列車です。
ロッジ風木造駅舎の外へ出てきました。
ここでふと近くにあった看板に目をやると…
国鉄土佐大正駅の文字。民営化から35年経った今でも国鉄の文字が残されているのに驚きです。
11:36 土佐大正駅 発
かなり長い時間の停車でしたが、多くの乗客が18きっぷ利用の鉄道ファンということもあり、撮影時間として最適です。
蛇行する四万十川によって形作られた複雑な地形、トンネルや鉄橋により、できるだけ真っ直ぐ貫かれます。
四万十川に注目していると、欄干の無い沈下橋を頻繁に目にします。
増水時には川に沈むよう設計されており、水の抵抗や流木の滞留を防ぐ構造です。
土佐大正駅のお隣は、土佐昭和駅。
それぞれ大正天皇、昭和天皇の即位を記念して大正村、昭和村と改称され、今でも地名、そして駅名として残っているのです。
予土線の面白駅名はこの後も続き、やっぱり注目してしまう駅があります。
それがこちら、半家駅です。
この地に住み着いた平家の落人が源氏の追討を逃れるため、「平」を「半」にしたとされています。
いつもここを通る時、こっそり駅名の写真を撮る人が続出します。どうせみんな撮ってるんですから、堂々とカメラを構えましょう。
江川崎駅を前にして、四万十川からはお別れ。ここからは支流の広見川沿いを走ることになります。
四万十市北部の中心駅となります、江川崎駅で5分ほどの停車。
予土線の中でも主要な駅であり、20年ほど終着駅として機能していました。
2013年8月12日には、ここ四万十市江川崎で国内最高気温41.0℃を記録しました。2018年7月23日に埼玉県熊谷市が41.1℃を記録したため、看板は“西”日本一暑い駅に変わっています。
江川崎駅から吉野生駅までは1953年の開業、だんだんと歴史の古い路線へ変わっていきます。最高速度も65km/hへ落とされました。
高知県と愛媛県の県境が近づいてきて、急坂を下っていきます。25‰の勾配標も見られ、登るときにはかなりエンジン音を立てるはずです。
ちょうど葛川沈下橋の向こうにある立派な橋あたりが、高知県と愛媛県の県境となっています。一駅隣へ行きたいだけなのに、もう既に県境を跨いじゃいましたよ。
これまでは立派な構造物で自然を貫いていたのですが、かなり様子が変わって鬱蒼とした森へ。キッパリと車窓の様子が変わるのも、予土線の魅力の一つです。
吉野生駅を発車しました。
予土線は1914年に宇和島駅〜近永駅、1923年に近永駅〜吉野駅(現在の吉野生駅)が開業したのが始まり。ここからは戦前から走っていた区間となります。
松野町の代表駅である松丸駅には、森の国ぽっぽ温泉があります。町が駅舎を改築して開業しました。
近永駅では列車行き違いのため、7分間停車します。
鬼北町の中心的であり、鬼が付く市町村はここだけとのこと。ちょっと意外かもしれません。
近永駅には簡易委託のきっぷ窓口があって、普段では目にしない紙のきっぷを販売しています。特にきっぷ鉄と呼ばれる愛好家から人気の駅で、手書きやスタンプで行き先が書き込まれた補充券を求めるファンが多いです。
NHK松山放送局の記者さんによる記事で、詳しく紹介されています。完全にこの方の趣味でしょ(笑)
海洋堂ホビートレインかっぱうようよ号と行き違いまして、列車は再び動き出します。
ちょっと景色が落ち着いてきたかと思いきや、宇和島へ向かうところで山越えです。
松山〜宇和島において特急宇和海のライバルとなる、松山自動車道が見えてきまして、予土線の線路状況とはあまりに対照的すぎます。
予土線の最急勾配は、務田駅〜北宇和島駅の26.1‰勾配です。県境も十分急でしたが、宇和島に近いところが一番なのは意外。
予土線はここ北宇和島駅で終わり、予讃線へ合流します。
ここから予讃線で松山方面へ向かうのですが、普通列車まで時間があるので、終点の宇和島駅まで行くことにしました。
予土線の起点は若井駅ですが、0キロポストは北宇和島駅に置かれています。おそらく歴史的にこちらから延伸して行ったことが関係しているのでしょう。
宇和島駅に隣接する車庫が広がっており、四国の気動車たちがお休み中。
若井駅からは2時間40分、終点の宇和島駅に到着しました。
13:29 宇和島駅 着
かなり長時間の乗車になりましたが、四万十川を中心とした田舎風景に、高規格路線とカーブの連続といった変化する車窓。レトロな新幹線を散りばめた車内も魅力の一つとして楽しませていただきました。
宇和島駅の改札を出るところで、青春18きっぷに入鋏してもらいました。まず全員が窪川駅から乗車するので、若井から乗っていることに驚かれます。何なら不正乗車疑われてる気もしますが…(笑)
さて、これから向かう松山方面は特急宇和海しか表示されておらず、普通列車が来るまでまだまだ時間があります。宇和島へ来たということで、ずっと行ってみたかったところへ。
やってきたのは「かどや駅前本店」さんです。
その目的はこちら、宇和島鯛めし。四国を代表するおすすめの料理として聞き続けており、いつか食べたいと思っていたのです。
まずは卵の入った出汁を混ぜ、鯛の身や海藻を全て入れます。
それをご飯に載せ、お好みでだし汁をかけていただきましょう。
鯛と海藻をまろやかな卵と出汁が繋いでくれて、大事に食べたいのにどんどん進んじゃう美味しさです。
ご飯をおかわりしまして、出汁がなくなるまで贅沢すぎる卵かけご飯。これはまた食べに来たいですね…!
宇和島駅はJR四国のクレメントインホテルと一緒になっており、駅前のヤシの木も相まって南国リゾート風です。
特急宇和海を見送りまして、ようやく普通列車八幡浜行きが来ました。
愛媛県のキャラクターみきゃんの描かれたラッピング車両です。
車内に入ると愛媛県とゆるキャラたちが描かれており、各自治体の見所が簡単に紹介してあります。
宇和島駅は頭端式ホームで、行き止まりの駅構造。高知県の一駅区間を行きたいだけなのに、なぜか高松〜宇和島を結ぶ予讃線の終点へ来ています。
15:27 宇和島駅 発
乗車しているのは高校生3人と、おかしな18きっぱー1人だけです。
後面展望から宇和島駅向こう側の山には、ちょこんと乗っけられたみたいな宇和島城が見られました。
北宇和島駅を発車しまして、先ほど走ってきた予土線が離れていきます。
列車は山中へ入り、知永峠へ。
こうしてみると宇和島市は峠に挟まれており、山に囲まれた立地であることがよく分かります。
ここまで登ってくると、リアス式海岸の宇和海を綺麗に望むことができました。
伊予吉田駅で特急宇和海17号と行き違います。JR四国ではお馴染みになりつつある、アンパンマン列車です。
列車は再び峠越え、トンネルを抜けて海から結構離れてしまったものの、高いところを走っているお陰でまだ宇和海を望めました。
八幡浜発宇和島行き普通列車と行き違い。しまんと開運汽車すまいるえきちゃん号と呼ばれるラッピング列車です。
アーティストのSHETAさんが関わる、窪川ポップアートプロジェクトの一環としてデザイン。このプロジェクトでは四国霊場第37番札所岩本寺や窪川の商店街をアート作品で彩っています。
西予市の中心駅となります、卯之町駅を出発。2022年11月に新駅舎がオープンしてかなり綺麗になっていました。
こうしてみると線路が山になっており、峠を越えたことがよく分かります。特急列車が走るため非常に良い線路状態、70km/hで山を下って行きました。
双岩駅で特急宇和海19号と行き違い、一線スルー化された方を通っており、速達性を重視しています。
16:25 八幡浜駅 着
ここで特急宇和海22号に追い抜かれました。奥の方にはこれから乗車するキハ54形気動車がスタンバイ中。
しばらくすると、駅舎に面した1番線ホームへ入線してきました。
八幡浜から松山にかけての予讃線にはルートが2つあります。
特急宇和海は内子を経由したバイバス路線を通る一方、今回の普通列車が通るルートは、伊予長浜経由の遠周り。「愛ある伊予灘線」の愛称が付けられています。
16:45 八幡浜駅 発
高校生の生徒さんをたくさん乗せたローカル線、八幡浜駅より出発しました。
完全に直線の昼夜トンネルで、八幡浜市から大洲市へ入ります。
大洲市のシンボルとなっているのが大洲城、肱川を渡る時には障害物無くその姿を見られます。観光列車伊予灘ものがたりがここを走る時には、お城で旗を振ってお見送りしてくださいます。
伊予大洲駅にて特急宇和海21号と行き違いました。こうして駅から見るのも良いですね。
しばらくして伊予若宮信号場から、特急宇和海が通るルートが分かれていきました。
だんだん高架線へ登っていきまして、高規格路線であることがよく分かります。
そしてお隣の五郎駅に停車。現在では特急街道の内子線ですが、かつては五郎駅から分岐するローカル線にすぎませんでした。
特急ルートへ大変貌したことについては、以前の記事をご覧頂けたらと思います。
列車は穏やかな流れの肱川沿いを走行、このまま伊予長浜で伊予灘へ注ぎます。
こちらのルートにおいて、中心駅となっている伊予長浜駅。一時期ネットミームになった「ンョ゛ハー゛」看板がある、ショッパーズ長浜店の最寄駅です。
そしてここから伊予灘沿いを走り始めまして、夕焼けが人気の下灘駅が近づいてきます。
この通り太陽の角度もベストポジションへ、この時間帯を狙って乗車したのがよかったですね。
喜多灘駅には大洲市と伊予市の境界が通っていて、看板が立てられています。伊予灘ものたがりが特急型車両へリニューアルされるのに合わせて、おそらく新しくなったと思われるのですが…。
串駅手前にある海に架けられた橋梁も、障害物なく景色を楽しめてとても良いんですよね。
串駅を発車しまして、いよいよ下灘駅に到着です。
列車後方部で夕陽の光をいっぱいに受けながら、ホームへ入線。
細かく波立つ瀬戸内の伊予灘、水平線の彼方に夕陽が映し出され、この景色を一目見ようと各地から多くの人々が集まってきます。
20人近く乗られまして、下灘駅の人気ぶりを突きつけられました。
1分程度の停車時間の間、夕日に照らされた列車の姿や、伊予灘と夕陽と共に逆光の車両など、様々な写真が撮影されているはずです。
どんどん夕刻へと針が進む中、車窓はどんどんクライマックスへ。いつまででもぼんやり眺めてしまい、写真を撮っているのがもったいなく感じます。
そんな素敵な伊予灘からもいよいよお別れ。
遠くには伊予市、松前町、松山市にかけての港町も見えていました。
伊予若宮信号場でお別れした内子線経由の特急街道ですが、向井原駅で合流します。あちらは高架線となっており、上を闊歩する松山自動車道に負けない高規格路線です。
伊予市駅に到着しまして、特急宇和海24号に追い抜かれました。
2020年春に開業した新駅の南伊予駅には、貨物駅と車両基地が隣接しています。松山駅高架化に際して移転し、それに伴い新駅も設置されたのです。
ここには先程の下灘駅も通る観光列車、伊予灘ものがたり号がいました。今日は平日なのでお休みです。
坊っちゃんスタジアムが見えてきました、近くには市坪駅があります。
夏目漱石と交遊関係にあった正岡子規ですが、野球という言葉を作ったという俗説が存在。「打者」「走者」「四球」などの野球用語を生み出しており、松山は野球ゆかりの地とされています。
その市坪駅にて宇和海25号と行き違いました。
こうしてみると非常に本数が多く、気動車特急としては高松〜徳島を結ぶ特急うずしお号に次ぐ多さです。
まもなく松山駅というところで、将来の松山駅へ繋がる高架が見えてきました。
このあと乗車する普通列車伊予西条行きとして準備中の、普通列車横を通過。ヘッドライトを付けてこちらへ向かってきました。
駅舎に面した基本的に特急が発着する、1番線ホームに到着です。
18:50 松山駅 着
松山駅は中心市街地から外れており、地味な県庁所在地駅の一つとされてきました。高架化されて開発などされれば、変わっていくでしょうか。
JR四国は自動改札導入駅が高松駅と高知駅のみで、四国最大の松山駅でも導入されていません。
次に乗車する19:07発の普通列車伊予西条行きは、多度津行きに接続します。今日中に多度津まで行けるのですが、宿の関係から手前で終わることにしました。
実は松山で終わったとしても、多度津駅から土讃線の本数が少なすぎて、後の行程に影響しません。
跨線橋からは少しだけ高架化工事の状況を見られます。2024年9月末完成予定で、今から非常に楽しみです。
19:07 松山駅 発
これまで非電化区間でディーゼル車に乗ってきましたが、松山駅からは電化区間。遂に電車に乗車します。
こんなに静かだったっけとモーター音に驚きつつ、高架の横を走っていきます。次の三津浜駅近くに高校があるため、生徒さんで結構混雑していました。
伊予北条駅でしばらくの停車。向かいから松山行き普通列車も来ました。
ここで特急いしづち102号高松行きに追い抜かれます。
さらに特急しおかぜ・いしづち21号松山行きと行き違いました。
明るければ海が広がるすぐ近くを走行、しまなみ海道の灯りも見えてきました。
高架線へ登ってきまして愛媛県第二の都市、今治に到着です。
20:32 今治駅 着
ここから先へ進んでも行程は送れないので、今日は今治で終了します。
駅前のJRクレメントイン今治に宿泊。21時までカクテル含めたウェルカムドリンクのサービスがあったりと、かなり魅力的でした。
こちらはJR四国グループのホテル。完全にJRにお世話になりっぱなしの旅です。
それではまた明日、おやすみなさい…。
おはようございます。
今治駅から2日目のスタート、入鋏印を押していただきました。1駅隣に行きたいだけなのに、青春18きっぷ使っただけで2日がかりです。
8:06 今治駅 発
昨日と同じ水色ラインの電車、7000系電車に乗車します。
時計塔みたいに一際目立つのは今治国際ホテル、高さは101.7mで愛媛県で一番高い建物です。
しばらくすると今治城が現れます。
このお城は海城として築かれており、水堀に海水を取り入れて軍船も出入りできました。
読み方の難しい壬生川駅で普通列車と行き違い。
このあたりには喜左衛門狸伝説があって、忍者のドロン!ポーズをした狸が色んなところにいます。禿狸と化け合戦をした時、紀州の殿様行列に化けたものとして見せたお話が有名です。
しばらくすると遠くの方には、瀬戸内工業地域の煙突が見えてきました。予讃線沿線には工業の盛んな街がいくつがあります。
8:44 伊予西条駅 着
この列車は伊予西条駅が終点、跨線橋を渡った先の1番線ホームへ3分乗り換えです。
普通列車と書いてありますが、観音寺駅から快速サンポートになります。特急南風から接続して、高知〜高松の輸送を担うリレー快速です。
四国の普通列車は、ボックスシートとロングシートが片側ずつになっているのが多くなっています。
伊予西条駅の近くには四国鉄道文化館があって、在来線と新幹線両方の線路幅に対応したフリーゲージトレインの試験車両も展示されています
西条市は新幹線の生みの親ともされる十河信二の出身地であり、東海道新幹線の建設に大きく貢献しました。
お隣の新居浜市に入りまして、新居浜駅前の踏切で架線に注目。かなり高い位置に架線が張られています。これは新居浜のお祭りでお神輿が通る際、支障が無いようにするためです。予讃線電化の際にはかなり紛糾したそう。
貨物駅が隣接しており、コンテナを持っていくフォークリフトも忙しく動き回っていました。
新居浜駅で特急しおかぜ・いしづち1号松山行きと行き違いました。
JR四国になって開発された8000系電車、制御付き自然振子装置を備えており、営業最高速度130km/hで速達化を実現しています。
普通列車でもこの辺りは線形がよく、100km/h前後で飛ばして行きました。
山を越えまして四国中央市へ、この街は製紙業が盛んでエリエールの工場も見えました。
伊予三島駅で13分間の停車です。
反対方向からは観音寺発伊予西条行き普通列車もやってきました。
そして特急しおかぜ・いしづち10号に追い抜かれます。
再び乗り込みまして、伊予三島駅を出発。
大王製紙の専用線が駅から分岐していて、工場の倉庫が隣接しています。
次の川之江駅も四国中央市の主要駅、2つ隣り合っていながら特急はどちらにも停まります。
ここで特急しおかぜ・いしづち3号と行き違いました。
ここで愛媛県から香川県へ鳥越トンネルを通ります。
このトンネルは非電化規格で作られているため、かなり小さいです。そのため架線がかなり低い位置に張られています。
新居浜では高い位置だったのに、ここでは低い位置と、列車の上に取り付けられた電気を得るパンタグラフの伸び縮みが激しいです。
そして遂に2回目の県境まで越えてしまいまして、香川県に入っています。この辺りからは海の景色もかなり綺麗です。
そんなところに位置している箕浦駅は貨車を転用した駅舎。北海道ではよく見ますが、四国では数駅程度かと思われます。
観音寺駅で17分の停車。同じ車両で運行されますが、ここで列車番号が変わって快速サンポートになりました。
乗務員さんが交代されるほか、普通列車と行き違いです。
左手山の向こうには秩父が浜があって、日本のウユニ塩湖とも言われる景色が広がります。四国を代表するような絶景スポットです。
みの駅は日本一画数の少ない駅とされています。確かにスカスカ感…。
そして列車は瀬戸内海沿いへ、小さな島へ続く桟橋が見えてきました。
こちらは年2日のお祭りの時だけ橋を渡れるようになる、津嶋神社です。
その近くにあるのが、それに合わせて2日だけ営業する臨時駅、津島ノ宮駅です。日本一営業日の少ない臨時駅として知られています。
ちょうど特急南風5号が高知方面へ走って行きましたが、ちょうどここで土讃線が合流します。
JR四国唯一の車両工場である多度津工場が隣接、四国鉄道発祥の地ともされる多度津駅に到着です。
10:51 多度津駅 着
多度津駅にて快速サンポートを下車、お隣に特急南風8号がやってきました。この特急と対面乗り換えすることによって、高松方面へ行くことができます。
需要の少ない時間帯は、特急しまんと号を連結することなく、対面乗り換えいによる運行がされているのです。
隣を回送列車が並走しつつ、高松方面へ発車して行きました。
多度津駅からは窪川駅まで土讃線に乗車します。
遂にゴールの地名が現れました、これより土讃線を普通列車で乗り通すことになるのです。
再びディーゼル車両にお世話になりましょう、普通列車阿波池田行きに乗車します。
11:39 多度津駅 発
予讃線から分かれまして、いよいよ四国山地を越える土讃線へ。琴平駅までは電化されているため、架線の下をディーゼルカーが走ります。
日本一古い駅舎があるとされる、善通寺駅に到着。ここで特急南風10号と行き違いました。
金比羅山の玄関口となっています、琴平駅に到着です。寝台特急サンライズ瀬戸号も、週末には琴平駅まで延長運転します。
普通列車もここまでは1時間に1本程度走っているのですが、これより先が大変。この1本前はなんと5時間前でした。
真上にあった架線も途切れまして、ここから非電化区間へ入ります。
線路を見てみるとかなり綺麗で、特急列車を支える保線がしっかりなされていることが見た目からも伝わってきました。
讃岐財田駅で特急南風7号に追い抜かれます。この間に次の坪尻駅では進行方向が変わり、現時点での先頭で改札することが案内されました。
この坪尻駅は四国で一番の秘境駅とされ、列車の進行方向が変わるスイッチバック駅として知られています。
土讃線内にいくつか存在する最急勾配25‰の区間へ、猪鼻トンネルで香川県から徳島県の県境を越えました。本当なら高知をちょちょっと移動するだけで済むのに、四国4県を制覇する事態です。
そしてトンネルを抜けますと坪尻駅が見えてきました。
今は本線を走っている状態で、ここから下に見えているホームへ向かいます。
ポイントを越えまして、引き込み線へ入りました。ここで進行方向を変えまして、今向いている方が先頭になります。
そして駅舎があるプラットホームへ。ここでは特急列車通過待ちのため、数分ほど停車するとのことです。
特急南風12号と行き違いました。あちらはスイッチバックする必要はなく、本線上をトップスピードで駆け抜けるのみです。
特急南風と行き違うと、すぐの発車になります。今度は先頭側へ移ってきました。
停車時間中ホームへ降りた方はかなり多くいらっしゃいましたが、実際に下車したのは2人程度です。
これから四国山地に囲まれたこの秘境駅を堪能するのでしょう。
先ほど進行方向を変えた引き込み線は、左側に分かれた線路です。今度は高知方面へ向かうため、右側の本線に入ります。
引き込み線は列車を安全に止めないといけないので、平たい土地。一方で本線は山を降りるため、だんだんと下って行きました。
トンネルを抜けまして、山に沿って坂を下ります。
進行方向右手に注目していると、これから走る土讃線の線路と吉野川の橋梁を見ることができます。
汽車カーブしつつもあっという間に降りてしまい、鉄橋で吉野川を渡りました。河川敷に注目していると、歓迎のカカシなんかも見られます。
徳島県を吉野川沿いに横断する徳島線が佃駅で合流してきました。特急剣山も5往復走っています。
そして進行方向右手には三好市中心部が広がっています。四国最大の面積を誇る三好市、その中心部がここ池田地区です。
12:48 阿波池田駅 着
徳島線の普通列車と接続しており、乗り換える方も結構いらっしゃいました。
高知方面に関しては1時間ほどの待ち時間が発生します。
構内には徳島線を走る観光列車「藍よしのがわトロッコ」が止まっていました。吉野川沿いをいくトロッコ列車の旅、ぜひ乗ってみたいんですがね…。
引き続き1000型気動車にお世話になりまして、高知県へと入りましょう。
ここからは土讃線の中でも人気の車窓、渓谷美を楽しむことができます。
13:49 阿波池田駅 発
徳島線を走るキハ185系特急剣山を横目に、阿波池田駅を出発しました。山の合間に作られたターミナル駅って感じが好きですね。
超立派な徳島自動車道の高架下を潜り、池田町の中心部を抜けて行きます。
そして吉野川が作り出す美しい渓谷が姿を表し始めました。もうそろそろ秋へ衣替えしそうな山々、足元にはゴツゴツとした白い岩が構えています。
吉野川が2億年かけて創った渓谷で、このような景観が約8kmに渡って続きます。阿波の青石と呼ばれる三波川変成岩(さんばがわへんせいがん)です。
たぬきの駅として知られる、阿波川口駅に到着。
山城町の妖怪たぬき伝説から、地域の活性化に取り組んでいます。四国まんなか千年ものがたりの停車中には、化けタヌキの着ぐるみで迎えてくださり、特産品販売を行います。
吉野川ではラフティングを楽しまれている方も、たくさんいらっしゃいました。
小歩危駅で特急南風16号と行き違いました。
特徴的な地名である大歩危と小歩危。断崖を意味する古語の「ほき(ほけ)」から付けられた説と、「大股で歩くと危ないから大歩危」、「小股で歩いても危ないから小歩危」という説があります。
ロックシェッドでなかなか景色は見づらいですが、ここからまさに土讃線という景色になります。
岩肌を露出する崖に大きな骨組みを組んでなんとか構成している建物。厳しい自然に立ち向かう人工物というこの組み合わせが、これだけの迫力を生み出してくれます。
特急列車も停車する大歩危駅に到着です。
向かいには多度津〜大歩危を結ぶJR四国の観光列車、四国まんなか千年ものがたり号が止まっていました。
ご覧に入れた車窓をゆっくり楽しめるだけでなく、車内外でのおもてなしや料理などかなり魅力的とのことです。
吉野川を少し離れて山の中のトンネルへ、そして遂に徳島県から高知県へ戻ってきました。ようやくというべきか、だんだんゴールが近づいています。
大杉駅にて特急南風18号と行き違いのため、しばらくの停車。
土讃線特急にもアンパンパン列車が導入されています。大杉駅に停車する便もあるのですが、この列車は通過して行きました。
そして鉄橋の上にある駅として有名な、土佐北川駅に到着です。ちゃんとホームの下に穴内川が流れており、かなり面白い構造の駅となっています。
繁藤駅にて特急南風11号に追い抜かれました。JR四国最高地点の標高347.4m、ここからグネグネカーブで勾配を緩和しつつ降りて行きます。
列車はもう一つの四国にあるスイッチバック駅、新改駅に到着です。
進行方向右手からこちらへ線路が合流してきました。写真奥の方に見えますが、あちらが新改駅のホームとなっています。
バッテンのクロスを抜けまして、引き込み線へ。
ここで進行方向を変えまして、新改駅のホームへ入線です。信号も赤から黄色になっています。
こちらも秘境駅の一つとして知られており、2人降りられました。
特急20号といき違い、この位置からだと斜めに通過していく様子を見られ、なんだか不思議な感覚です。
再び進行方向を変えまして、本線上へ復帰しました。
ここからは完全に蛇行運転、それでもかなりスピード感もって駆け降りて行きます。
そして香美市の中心街までやってきました。
まるで名寄から宗谷本線を北上して南稚内へ着いた時、久しぶりに街を見たような安心感です。
それほどまでに険しい山、発展した街のコントラストが強くなっています。
土佐山田駅からはかなりのお客さんが乗って来られました。1両編成の汽車では立ち客も多いです。
後免駅からは土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線が合流。第三セクター鉄道として高知県末端部の輸送を支えます。
ちょうど止まっていたのは観光列車しんたろう号。オープンデッキも備わっていて、高架線から太平洋の風を直に感じられます。
たくさんのディーゼルカーが止まっている高知運転所横を通過。高知駅高架化に伴ってこちらへ移転してきました。
高知市中心部に近い住宅街の中を、高架線で走行。2008年に高架化されまして、新しい駅舎が完成しました
16:06 高知駅 発
高知県の代表駅に位置します、県庁所在地の高知駅に到着しました。車内はかなり混雑しており、なんとか下車。
16:09 高知駅 発
どうやら1,2分遅れていたようですが、コンコースへ降りてすぐに乗り換え。接続を取ったため少々遅れての出発です。
こちらは普通列車須崎行き。後続の列車に乗車しても良かったのですが、できるだけ明るい車窓をお届けするべく乗っておきました。
入明駅あたりで左手に注目していると、高知城の天守閣が見られます。高架線だからこそ、こうして街を見渡せるのが魅力です。
高知大学の最寄駅となっている、朝倉駅に到着。土佐山田行き普通列車と行き違いました。伊野〜土佐山田に関しては比較的高頻度で普通列車の運行が行われています。
とさでん交通の線路を越えまして、道路越しに並走。本数が40分に1本程度と少ないため中々列車の並走は見られませんが、特に高知市中心部では路面電車が重要な公共交通機関です。
その路面電車がやってくる西の果て、伊野駅に到着しました。
『竜とそばかすの姫』の聖地とされており、駅名標もデザインが変わっていました。
こちら仁淀川は水質が日本一と言われており、深い青色をした水面が「仁淀ブルー」と呼ばれる滝壺もあります。
どうやら駅舎建て替え中らしい日下駅でしばらくの停車。日高村の中心駅となっています。
反対方向から特急あしずり12号が通過して行きました。
続いて土佐加茂駅で観光列車、志国土佐 時代の夜明けのものがたりと行き違いました。高知〜窪川を走っており、雄大な太平洋や豪華な車内が非常に魅力的です。
佐川駅に到着しました。
現在の連続テレビ小説「らんまん」でモデルの植物学者、牧野富太郎の出身地です。
全長2km近くの斗賀野トンネルで峠越え、太平洋沿いの海岸を目指します。
トンネルを抜けたところで、進行方向右手の後ろ寄りに注目。山の斜面に白石工業土佐工場が張り付いています。
炭酸カルシウムが製造されているのですが、材料の石灰石を山の上で加熱し、水と合わせて石灰水にした後で下へ。これに二酸化炭素を加えて炭酸カルシウムとした後、谷間に吹く風で自然乾燥させる、この地形に合わせた製造方法が取られているのです。
吾桑駅で普通列車と行き違い、湾に形成される港町で栄えた須崎市へ向かいます。
住友大阪セメント高知工場がありまして、重工業の盛んな地域のようです。
17:40 須崎駅 着
終点の須崎駅で下車しました。特急あしずりが全て停まるのはこの駅ですが、2駅手前の多ノ郷駅周辺の方がお店やホテルもあって栄えている印象がありました。
須崎市はニホンカワウソ最後の目撃地、ちぃたん☆ともめた、しんじょう君が有名です。また、鍋焼きラーメンが人気グルメとなっています。
というわけでカワウソ…ではなく鍋焼ラーメンをいただくことにしました。駅から歩いて3分くらいの「やのよし」さんに訪れたのですが、こちらでは鍋焼中華という名前です。
土鍋でぐつぐつ煮込まれるラーメン、漬物が付いてくるのも特徴となります。
あっさりめの醤油ラーメンとなっており、卵との相性も抜群。中々冷めないので大変ですが、この苦労あってのおいしさです。
2021年に英国風へリニューアルされた駅舎。ライトアップの暖かな光に包みこまれます。
そして須崎駅は高知県国鉄発祥の地、大きな鉄輪が置かれていました。
鉄道建設においては須崎港から資材が運ばれ、線路敷設を進めていったとのことです。こういった方法は結構色んなところで見られます。
さて、いよいよ最後の列車がやってきました。
こちら普通列車窪川行きに乗車です。
18:50 須崎駅 発
2000系気動車で運行の特急あしずりと行き違いつつ、須崎駅を発車しました。
この列車は3両編成、土佐新荘駅はホームの長さが足りないということで、ドアカットが行われています。
日鉄鉱業の工場を最後に須崎の街からお別れ。
トンネルを挟みつつ、暗いので見えませんが太平洋の綺麗な区間を過ぎて行きます。
須崎駅の時点では各車両10人くらい乗っておられましたが、土佐久礼駅までで1,2人だけに。
今度は2km近くのトンネルへ入りまして、内陸部へ。ゴール地となる四万十町に入ります。
仁井田駅を発車しまして、次は終点の窪川駅です。
青春18きっぷで行く長い四国一周の旅。ようやくこの旅も終わりを告げます。
青春18きっぷで乗れない土佐くろしお鉄道のホームを横目に、JRのプラットホームへ入線。
同じひと駅でもあっという間に着いてしまいました。窪川駅にゴールです。
21:39 窪川駅 着
かかった時間は34時間50分。車窓を無視して夜間の移動にすれば27時間54分で行くこともできるのですが、それでもかなり時間がかかります。
一方でこの遠回りがあったからこそ、海・山・川の素晴らしい自然の車窓を楽しむことができました。ぜひそんな魅力を体験しに、四国の鉄道へ乗りにいらっしゃってください。
ちなみに窪川〜若井の乗車券は210円。ちなみに歩いて1時間、タクシーでも1500円程度とのことです。
真似する方なんていらっしゃらないでしょうが、この区間は大人しく土佐くろしお鉄道に料金を払うことにしましょう(笑)
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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