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【国鉄から廃止だけど…】優良な黒字三セク鉄道 本数6倍の甘木鉄道が凄い!

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国鉄分割民営化時、いわゆる赤字路線として指定された特定地方交通線。

鉄道廃止か、地方自治体出資の第三セクター鉄道として存続かの選択を迫られました。

第三セクター鉄道は税金で維持しているものであり、そのほとんどが赤字です。

 

その一方で、黒字で成り立っている優秀な第三セクター鉄道もあります。代表的な例が、関西と鳥取を結ぶ特急スーパーはくとが走る智頭急行。山をトンネルで貫く高規格路線を完成させ、基本的には黒字を実現しています。

 

しかし、今回ご紹介する甘木鉄道は完全に地域輸送に特化している鉄道会社。鹿児島本線基山駅から福岡県朝倉市の甘木駅を結ぶ路線です。

それでありながら鉄道や関連事業によって、単年度黒字を達成する年も存在しています。

 

国鉄時代に汲むことができなかった潜在需要を掘り起こした第三セクター鉄道。一体どんな変化があったのか観察してみましょう。



甘木鉄道甘木線の分岐駅である、鹿児島本線基山駅に来ました。

ここは佐賀県基山町の中心駅、甘木鉄道とJRの改札は分けられています。

 

甘木鉄道ののりばへ行くには一度JRの改札を出て、自由通路から階段を降りた先です。

 

ここに時刻表が掲示されているのですが、第三セクター鉄道と思えない運行本数。平日の朝夕は約15分間隔、土休日・平日の昼間でも約30分間隔で走っています。なんなら本数を減らしているJR鹿児島本線を超える時間帯も。



それでは階段を降りてホームへ。

緑色の汽車が停まっていますが、こちらが甘木鉄道。JRのホームと隣り合っているのをお分かりいただけるかと思います。

 

ホーム上の待合所にはペイントがされており、どこかレトロな雰囲気です。

 

運賃は基山から甘木の13.7kmで370円。

基山駅でも自動券売機や窓口は無いので、整理券を取る方式です。

 

駅名標を見てみますと、JR九州と非常に似たデザインです。特にJR九州の子会社という訳ではありません。

 

こちら発車標が設置されていますが、日中時間帯は30分に1本。朝夕ラッシュ時間帯は15分に1本です。

実は甘木線の列車本数、国鉄時代はわずか1日7本でした。それが現在では平日42本、土休日36本になっているのですから、この上なく便利になっています。



それでは車内へ乗り込みます。

入り口部分の段差が片方2段になっており、高齢者の方にも優しい配慮です。

 

ロングシートとボックスシートが半々の、ローカル線でも見慣れた配置となっています。

 

短い路線でありながら、途中には乗換交通手段が色々あるみたいです。



10人ほどのお客さんを乗せて、基山駅を出発。

こうして見ると本当にJR線かと思ってしまいます。架線柱も非電化路線の甘木線を越えて、設置されていました。

 

それでも鹿児島本線は歴史ある特急幹線、非常に長いプラットホームが残されているのが異なる点です。

 

複線電化の路線から離れまして、単線非電化ローカル鉄道の始まりです。

 

門司区から鹿児島市を結ぶ国道3号を越えまして、東へカーブしていきます。

 

沿線には一軒家を中心とした、住宅街が広がっていました。



最初の停車駅は立野駅です。

この駅は1987年に開業した新駅。甘木鉄道になってから立野駅、大板井駅、今隈駅、山隈駅の4駅が新設されており、7駅から11駅に増えています。

立野駅では九州縦貫自動車道の真下にホームを設置したことで、駅舎整備のコストを抑えました。

 

JR九州の豊肥本線にも三段スイッチバック駅として有名な立野駅があって、駅名標が非常に似ているため中々区別をつけづらいです(笑)

 

佐賀県から福岡県へ入りました。

小郡市には陸上自衛隊小郡駐屯基地があり、こちらは戦後に小郡村が誘致したとのことです。



そしてまるで駅のように、線路の分かれているところが現れました。

こちらは2003年に開設された大原信号場です。

現在の15分に1本のダイヤを実現するにあたり、列車行き違い設備が必要になったため、この信号場が設置されました。この土地は小郡市が提供したとのことです。

 

一線スルー化もされているため、行き違いを行わない時はまっすぐの方を通れば良いことになっています。

 

しばらくするとGLPと書かれた、新しそうな建物が見えてきました。こちらは2023年11月竣工予定の、GLP福岡小郡です。

GLPとは物流不動産会社として物流施設を提供するシンガポールの会社。九州における東西南北の結節点、鳥栖JCTが近い立地から選ばれたようです。

 

しばらくするとそんな高速道路の一つ、大分自動車道の下を潜ります。

 

ここで何やらホームらしき構造物が見えてきました。こちらは1939年開通当初の筑後小郡駅(現在の小郡駅)です。

 

しばらくすると1986年に移転した先の小郡駅が見えてきました。

 

ここは西鉄天神大牟田線の立体交差地点であり、下には西鉄小郡駅が見えています。

甘木鉄道への移管時に移転しまして、乗り換えの利便性向上を図りました。これにより天神を始めとした西鉄の駅へ行きたいお客さんにも、甘木鉄道を利用してもらいやすくなっています。

実際基山駅では空席が目立っていた車内も、10人以上乗って来られました。かなり効果があったと見て良さそうです。



この辺りで大分自動車道と並行します。

高速道路上に設置されているバス停が見えてきました、高速小郡大板井停留所です。ここから日田・由布・別府・大分方面の高速バスに乗車できます。

 

そしてそこに設置されたのが大板井駅。ホームからすぐに高速バス停留所へ乗り換えられるという、アクセスの良さです。

 

1987年に開設された大板井駅。県道の開通に伴う立体交差事業で、2003年に高架化されました。そのためかなり新しい駅に見えます。

 

その直後に宝満川橋梁を渡ります。2006年に傾斜したことで、不通になった時期もありました。

 

毎年のように大雨が襲う九州北部、その度水没することで有名になっている小郡イオンが見えます。



次の停車駅は松崎駅に到着です。

隣接する形でPALTAC九州支社を含む工場がありました。こちらは化粧品、日用品の大手企業です。通勤に利用される方もいらっしゃるのでしょうか。

 

この駅は1面2線構造であり、反対方向の列車と行き違いが行われます。短い路線で30分に1本の運行本数でも、交換設備はそれなりに必要です。

 

ここまで住宅街や高速道路の近くなど市街地を走っていましたが、ようやくローカル線っぽい車窓となりました。



しばらくすると、やけに大掛かりな骨組みが組まれている工事現場が現れます。

こちらはプロロジスパーク小郡の建設現場、アメリカ物流大手プロロジスパークによる物流拠点です。

先ほどもGLPがありましたが、小郡市は物流において外資系企業にもかなり注目されているようですね。

 

今隈駅の目の前にあって、かなり大規模な開発。

こちらは路線内で一番新しい新駅、2002年に開設されました。駅の見た目的にあんまり新しそうに見えませんが…。

 

今回4,5人ほど降りられたのですが、これからも利用者が増えそうな期待が持てます。



小郡市を出まして、今度は大刀洗町の北端部をなぞるようになります。

最初の停車駅が西太刀洗駅。町の中心駅は西鉄甘木線の大堰駅です。

 

今度は筑前町に入り、山隈駅に到着。この木造停留所型待合室が、これぞローカル線の駅って感じですね。



路線内でも主要駅となっています。太刀洗駅に到着です。

先ほどの西太刀洗駅は大刀洗町だったのですが、こちらは筑前町内の駅。

太刀洗駅が大刀洗町に無いという中々混乱する立地になっています。

 

国鉄時代に交換設備が廃止されたのですが、甘木鉄道になって本数を増やす上で、交換設備が復活しました。

かつては最大3両編成で運行していたのですが、交換設備増強による増便が行われたため、現在では2両編成が最大です。列車の両数が多いよりも便数が多い方が、コストはかかる一方で利便性は高くなります。

 

太刀洗駅を出発してしばらくすると、戦闘機が見えてきました。かつてここには陸軍大刀洗飛行場があって、軍需品の輸送を目的に甘木線が建設されました。

 

飛行場は戦時中に攻撃を受けてしまい、その跡地にはキリンビール福岡工場があります。かつてはここへ専用線が伸びており、貨物輸送を行っていました。

現在では貨物列車は廃止されましたが、キリンビールは甘木鉄道の一株主です。

 

朝倉市に入る直前で、最後の途中停車駅である高田駅を出発します。

 

最高時速は65km/h、あまり速達性に重点を置く必要がないのでしょうか。



すると進行方向右手から、何やら電化路線が近づいてきました。

これが甘木鉄道の競合路線となっている、西鉄甘木線です。

西鉄久留米駅の2駅隣、宮の陣駅から分岐する路線であり、県内三番目の都市久留米へのアクセスはこちらが便利となっています。

 

地図上で見ると甘木鉄道の線路は西鉄の接線みたいな位置関係。ちょっと並走したかと思ったら、すぐに西鉄甘木線は離れていってしまいました。

 

基山駅からは25分、終点の甘木駅に到着です。



甘木鉄道で使用されているレールバスの呼称は、かつて富士重工業製のLE-Carが使用されていたためです。

2006年に運用したのがこちらの車両、これはレールバスというのに相応しい見た目ですね。

 

現在使用されているのはAR301形とAR400形、ローカル線でよく見るような顔つきになっています。

右側は国鉄急行色をイメージした塗装の車両、鉄道ファンを意識したような動きがここでもあるようです。

 

古くからの駅舎が残されており、こちらは有人駅となっています。

 

かなり広々した定期券売場の窓口があって、外観はレトロですが中は結構新そうに見えました。

近畿日本ツーリストの看板も掛かっており、甘木駅旅行センターが入っています。

 

観光案内所なんかも入っていて、朝倉市の玄関口です。ここは邪馬台国があったのではないかと言われている土地の一つで、卑弥呼の文字をよく見ます。



今度は西鉄甘木駅の方にも行ってみましょう。

甘木鉄道甘木駅から西鉄甘木駅までは信号2つ分、200mくらい離れていました。

 

こちらもまたレトロな木造駅舎、なんならこっちの方が古そうに見えます。

西鉄甘木線が開業したのは1915年、こちらの方が24年早く開業したとのことです。

 

甘木駅から福岡天神までの料金は、宮の陣駅乗り換えで810円、久留米駅乗り換えで870円。

甘木鉄道甘木駅から博多駅だと、基山駅乗り換えで850円です。2つの会社を乗り継いでいますが、距離が短いのでこの通り競合できています。

 

西鉄甘木駅の本数は30分に1本であり、朝夕のラッシュ時は甘木鉄道の方が便利という状況です。

 

甘木鉄道の現在の状況は、需要に合わせた経営努力が実を結んだ結果と言えるでしょう。

また、市民団体などで構成される応援グループ「甘木鉄道を育てる会」が、季節運行のたなばた列車やコスモス列車の運行支援、広報活動も実施しています。地域に愛される鉄道として、これからも活躍し続けることを期待したいです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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