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【熊本〜宮崎横断路線】「未成線・日肥線」くま川鉄道湯前線&国鉄妻線をバスで行く[年越し2022(4)]

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遠距離からの鉄道アクセスが不便でな宮崎市。本州からは九州の縁を通る鹿児島本線や日豊本線から行くしかありません。

そんな不便な状況下、かつて熊本から宮崎へ九州南部を突っ切る、日肥にっぴ線の建設が計画されていました。西側からは現在第三セクターくまがわ鉄道湯前線が運行、東側からは廃止されてしまったものの国鉄妻線が伸びていました。

今日はこのルートをたどって、熊本から宮崎へ横断してみることにしました。

 

ここ人吉市は、令和2年7月豪雨により大きな被害を受け、JR肥薩線とくまがわ鉄道湯前線が発着する人吉駅には列車が来なくなってしまいました。

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まずは湯前線で東へ向かうため、くまがわ鉄道の券売機できっぷを購入。

 

途中駅の肥後西村駅~湯前駅は2021年11月に再開しているので、そこまでは代行バスで向かうことに。大型バスを何台も用意していますが、利用者の8割が高校生の通学利用のため、夕方は輸送力を増強しないといけないのです。



16:26 人吉温泉駅 発

人吉市には温泉街が広がっていて、駅周辺の街並みもレトロチック。しかし、令和2年7月豪雨では球磨川が氾濫し、この辺りも浸水したようです。

 

人吉駅の車両基地にいたくまがわ鉄道の気動車5両全てが浸水。その他第四球磨川橋梁の流出など壊滅的な被害を受けましたが、2025年度の全線運行再開を目指しています。

 

人吉ICの近くに人吉高校があるため、ここから多くの高校生の生徒さんが乗ってこられました。

 

その後は山を登っていきます。鉄道路線はこれを避けるようにして、くまがわ沿いを走っていました。

 

球磨川を渡っているところ、向こうに流されてしまった第四球磨川橋梁が見られました。わずかに橋台が残るだけです。



16:48 肥後西村駅 着

代行バスの終点、肥後西村駅に到着しました。ここから鉄道に乗り換えます。

 

2017年をもって多良木高校が統廃合による生徒募集を終え、球磨中央高校、南稜高校、人吉高校、球磨工業高校へ列車で通学する生徒さんが増加。

バスドライバー不足などもあり、やはり一度に多くの人数を運べる鉄道が必要とされています。

 

現時点では線路の終点となっている肥後西村駅、踏切の直前部分には車止めが置かれています。

人吉駅のJR肥薩線が復旧していない現状、完全な孤立路線であり、しばらくは高校生の通学が需要のほとんどを占める地域内輸送に特化します。

 

ホームでは多くの高校生が待つ中、列車が到着。2両編成で結構余裕を持った印象です。

 

2015年から新型車両KT-500形気動車の運行を開始。水戸岡鋭治によるデザインが施され、観光列車仕様です。

 

山に囲まれた人吉盆地、田園の中を走ります。

 

この車両を使った田園シンフォニーという観光列車も走っていました。いつか全線復旧して、再び走ってくれると嬉しいですね。



唯一行き違い可能な駅である、あさぎり駅で途中下車します。

ここまでで半分くらいの生徒さんが、各駅でぽつぽつと降りて行った印象です。

 

部分的な運行再開を受けて、あさぎり駅構内には仮車両基地が置かれました。5両中3両が運行に就いており、それらはトレーラーで線路上に輸送されています。

 

暗くなってくるとクリスマス直後だったこともあり、駅舎ではイルミネーションが煌めいていました。商工コミュニティセンター「ポッポー館」と一体化しており、Aコープには沢山の車が出入りしています。

 

広場に設置されたイルミネーションもかなり立派なもの。雨で塗れた地面に反射して、特に幻想的でした。



18:56 多良木駅 発

今日は多良木駅前にある宿泊施設ブルートレインたらぎに泊まります。東京~熊本を結んでいた寝台特急はやぶさを転用しているのです。

 

今回は個室タイプに宿泊。暗めの室内に古くなってきた設備など、実際には体験できなかったブルートレインの旅が再現されます。

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翌朝、7時前に目を覚ましました。熊本から寝台特急はやぶさに乗っていたら、掛川を通過していたあたりでしょうか。

多良木駅は1999年に少し移転しており、その時に建てられた新しめの駅舎です。

 

07:10 多良木駅 発

今日も朝一番の湯前行き普通列車に乗車します。

 

車内は工芸品を展示する棚があったりと、観光・団体列車運行時にも楽しませるデザインです。しかし、かつてはテーブル付きのボックスシートだった車内、現在はロングシートになっています。

これは多良木高校閉校により通学利用者が拡大し、普通列車運用時の輸送で乗降に時間がかかったり、積み残しが起こったりと不便が発生したため。朝夕の通学輸送改善を図り、現在のロングシート配置に変更されました。

 

現状でも十分楽しませてくれる列車であり、とても満足です。



07:18 湯前駅 着

湯前線の終着駅は、ここ湯前駅。しかし、本当は日肥線として宮崎県まで至るはずでした。湯前駅からはバスに乗り換えまして、あの山を越えます。

 

乗っていた列車は7:25発で、高校生の生徒さんが10人くらい乗っていかれました。次の列車は11:51で、相当時間があきます。

 

ホームと反対側には湯前駅レールウイングがあり、ウッドデッキ上には色んなお店が出店していました。

 

湯前駅の駅舎は国の登録有形文化財に指定されています。湯前線の開業は1924年と結構歴史が古いものです。

 

駅舎内には湯前中学校で使わなくなったピアノが置かれています。田園シンフォニーにちなんでなのか、鍵盤のペイントがされたベンチも置いてありました。

 

駅舎に隣接して、観光物産協会湯~とぴあが整備されています。この時は年末年始かつ朝だったので、周辺のお店は開いていませんでした。



2時間半待ちまして、ようやく西米良村にしめらそん営バスがやってきました。

このバスは湯前駅から県境を越え、宮崎県西米良村の中心部まで走ります。

 

他にお客さんはいないまま、運転士さんとお話しながら山へ向かうことになりました。

 

10:00 湯前駅 発

日肥線の未成線ルートを辿って宮崎へ抜けることを話したら、昔は未成線として線路が地図に書いてあったと教えてくださいました。

 

かつては国鉄バス・JR九州バスが運行していた自動車路線でしたが、利用低迷から1996年に西米良村営バスへ代替されました。

基礎自治体が営業するバスが県境を越えるのは珍しいですが、西米良と湯前ではお互いに買い物で行き来する人がいるそうです。

 

相当高い所まで来まして、峠越えに挑んでいることがよく分かります。

人吉盆地の東端は湯前で、山の奥にはおそらくその景色が広がっているようです。



横谷トンネルで、熊本県から宮崎県に入ります。

湯前線は人吉盆地だったので建設も簡単でしたが、このような山ではなかなか建設が進まなかったのですね。

 

南九州ですがここまで標高が高いこともあり、雪が40センチも積もったことがあるそう。最近でも10センチくらいは積もるとのことです。

 

バスでありながらわき道に入って、かなりの山道を走ります。住民の方はみんな四駆の軽トラを持っているいるそうです。

 

途中の集落からお一人乗ってこられました。この先の診療所へ向かうようでした。

 

村所むらしょ橋を渡り、西米良村の中心部へ入りました。西米良村は宮崎県で最も人口が少ない村で、人口は1013人(2019年10月)です。

 

診療所と病院の違いはベッド数20台以上が基準になりますが、1台少なくして診療所にしているとのことです。お医者さんは2人で、ここまで小さい村としては多い方。

 

ここまで国道219号を走り続けてきましたが、一ツ瀬川を挟んで反対側の道を走ります。

 

山を登っていきまして、西米良村の街を見られます。人口から見ても、生活のほとんどがここに集まっているようです。



11:04 温泉館ゆた~と 着

西米良温泉の中で人気の温泉施設、「西米良温泉ゆた〜と」でゆったり。柚子風呂などに浸かってきました。

 

上がった後はお昼ごはんに、煮しめ楽コロッケをいただきました。地元で採れたゴボウ、ニンジン、シイタケなどの「煮しめ」が入っていて、甘い風味を楽しめます。

 

ここから乗車するのは、宮崎交通の路線バスです。事故公表を見てみると、1日2本というとんでもない少なさ。

 

西都バスセンター行きの、年季が入ったバスに乗り込みます。まさに南国を走っていそうな見た目です。

 

先ほど走ってきた道を戻りまして、中心市街地にある村所駅でしばらく停車。JR九州バスの自動車線だったことから駅と付いています。2012年に建て替えらえた立派な建物です。

 

ここからも引き続き一ツ瀬川沿い、国道219号を走ります。

もし日肥線が繋がっていたら、途中区間は三江線みたく高規格路線になっていたのかなと思います。特に利用者も多く見込めず廃止になっていそうな点も似ている印象です。

 

西都市に入りまして、土砂崩れによって片側通子になっている区間もありました。山がコンクリートで固められて、土砂を排除していくようです。

 

左に見えるのは廃ガソリンスタンド、この先にあった小学校も廃校になっています。

 

新しいトンネルも建設されていまして、これから道路もより便利になっていくのでしょう。

 

右手には大きな一ツ瀬ダムが見えました。道路は結構切り立ったところを走っています。



川を渡りまして、街の中へと入ります。

杉安駅から日豊本線の佐土原駅までは、国鉄妻線が伸びていました。1922年に杉安駅まで開業しており、やはり山が無く線路を敷設しやすい所には、鉄道が来ていたのです。

 

西都バスセンターに到着。

妻線は第一次特定地方交通線に指定され、1984年に廃止されました。その中心駅が妻駅で、現在の西都バスセンターすぐ近くです。

 

妻駅跡は公園や駐車場になっていて、駅舎や駅名標を再現しており、かつてここに鉄道があったことを伝えています。

 

妻駅はその駅名から入場券が非常に人気で、特にテレビ『ザ・ベストテン』で山口百恵ファンが、妻駅の入場券をプレゼントしたことを取り上げると、1年間で10万枚売り上げました。

 

すぐ近くにはショッピングセンターもあります。昔はかなり栄えていたように感じますが、中心市街地は大分衰退している印象でした。

 

引き続き宮崎交通の路線バスに乗車。これには2,3人程乗車されました。

 

妻線の廃線跡は、自転車道などとして転用されています。

 

しかし一部分は道路にもなっており、今走っているのはまさに廃線跡上です。

 

東九州自動車道の西都IC近くを走行。日豊本線よりもかなり内陸部を走っていることが分かります。

 

旧佐土原町の中心部、乗客は4,5人程です。



15:32 佐土原駅 着

妻線の分岐駅、佐土原駅に到着しました。駅舎は1967年に改築されたものなので、国鉄時代のレトロさを残しています。

 

駅舎内では日豊本線(門川~佐土原)開業100周年を記念して、写真が展示されていました。旧駅舎もデザイン的には今とあんまり変わらない印象ですね。

 

妻線についても紹介されていました。20kmにも満たない短い盲腸線で、あんまり注目を集めなかった路線でしょう。

 

時間がある今日のうちに年越しサンライズの乗車券を買っておこうとしたら、まさかの補充券でした。こういう切符は買わないので珍しくて良かったですが、意図せず発券を煩わせてしまって、申し訳なかったです。

 

妻線の列車は1番線から発着していました。しかし、現在では延岡方面へ北上することができなくなっています。

 

妻線はしばらく日豊本線と並行して北へ向かっていたんですが、車止めが設置されて1番線からは宮崎方面との始発・終着列車が使用するだけになりました。

 

車止めの先にはエレベーターと新しい跨線橋が設置。バリアフリー化工事が進んでおり、駅の構造もかなり大きく変わっていることを見て取れます。

 

そして最終的に爽やかな真っ白な駅舎、宮崎駅に到着しました。

今では地域輸送に特化したローカル線と、廃止になってしまった路線。これらが九州を横断していたかもしれないと想像すると非常にワクワクします。

一方でそれは難しいと感じさせる地形、沿線沿線の様子を見てくると、妄想の域を出ないと実感しました。全く主要ルートではなくバスの本数など不便ですが、ぜひ選択肢の一つに加えてみてください。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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