台湾には台北都市圏・台中都市圏・高雄都市圏と3つの代表的な都市圏があり、これらを台湾高速鉄道が結びます。
台湾高速鉄道には様々な停車パターンがありますが、それぞれの都市圏の駅には必ず停車。台中都市圏の台中駅には全列車が停車していました。
東海道新幹線でいえば、名古屋都市圏の名古屋駅に全列車が停車している状態です。
そんな中、2026年2月のダイヤ改正で、台中駅を通過する列車が登場しました。
三大都市の真ん中に位置する主要駅を通過する高速鉄道。なんだか聞き覚えがあります。
そう、かつて東海道新幹線で行われた「名古屋飛ばし」です。
1992〜97年に運行されていた始発のぞみ301号は、東京・新横浜の次は新大阪駅で、名古屋駅・京都駅を通過していました。
始発の新幹線でも朝早く大阪に着きたいビジネス需要に応えたものでしたが、名古屋駅の通過は大きな話題を呼んだそうです。
そんな名古屋飛ばしの台湾バージョンが誕生!
平日1本限りの台中通過便に乗ってみました。
やってきたのは夜の台北駅。
正方形の駅舎中央には大広間があり、まるで宮殿のような空間です。
その地下へ下りまして、こちらが台湾高速鉄道の改札。
今回は台北駅から終点の左営駅(高雄市)まで行きます。
台中駅を通過する列車は台北駅22:10発の「1985列車」で、台北〜左営の所要時間は1時間35分。
一方で同区間の所要時間が一番短いのは台北駅21:31発の「165列車」で、1時間34分です。
最速便165列車は台中駅に停車しますが、台南駅を通過しています。
一方、今回乗車する1985列車は台中駅を通過。
その代わり台南駅には停車しています。
自動券売機やネット予約では座席を指定できないようなので、窓口できっぷを購入しました。この場合、改札機にQRコードを読み取らせる方式。
料金は1,490TWD(約7,386円)です。
ホームへ降りると一本前、21:56発の333列車が到着したところでした。ここから多くの方が乗られるようです。
333列車は桃園駅に停車したのち、台中駅から終点まで各駅停車。
ひかり号みたいな立ち位置でしょうか。
ここで列車の番号に注目。TR12の番号を覚えておきましょう。
定刻通り21:56、先行の333列車を見送ります。
きょう台北駅から出発する高速鉄道は、
左営行きの22:10発(1985列車)・22:16発(295列車)
台中行きの22:26発(565列車)・23:00発(567列車)
で終わりです。
今回乗車する1985列車は、22:10に出発して左営駅に23:45着。
その6分後、22:16発の295列車が左営行きの最終列車です。
こちらの左営駅到着時刻は23:59です。
今回は台湾新幹線の終電に密着することにもなります。
22:07頃、お目当ての1985列車がやってきました。
ホーム上では「台中駅には停まらない」旨が、中国語と英語の自動放送で流れていました。
間違えてこれに乗ってしまったら、今日中に台中駅まで戻れません。かなり注意が必要です。
日本の新幹線だと終電でも満席状態ですが、9〜12号車の自由席もガラガラ。
これなら指定席を取らなくてもよかった気がしますが、結果論ということで。
車内では途中停車駅と到着時刻がスクロールされており、新北駅の次が台南駅になっています。
22:10 台北駅 発
台北駅では3分間停車しており、割と余裕を持ったダイヤが組まれているようです。
指定席はガラガラですが、みなさんA席ではなくE席ばかり指定されていました。
自動券売機などできっぷを買うと、E席が優先されたりするのでしょうか。
地下区間を数分走行し、板橋駅に到着。
こちらは台北市の衛星都市に位置付けられる、新北市の代表駅です。新北は「新しい台北」の略。台湾で最も人口が多い市で、400万人に及びます。
板橋駅で扉を閉めると、次の台南駅まで1時間以上停まりません。
本開業以来、台湾高速鉄道であり得なかったことです。
一気に南へ300kmノンストップ。
地上へ出てきまして、夜の台湾を貫きます。
再び地下へ入り、桃園駅を通過。台湾は都市部の地下区間が多く、大陸からの有事に備えているとも言われています。
桃園駅は通過線が完全にトンネルで囲われているようで、駅を通過したことが分かりませんでした。
日本の新幹線技術を導入した700T型。
台北都市圏を抜け出して、最高速度300km/h近くまで上げてきました。
そんなトップスピードにて、最初の地上通過駅である新竹駅が近づいてきました。
その駅通過を楽しみたいところですが…
か…壁。
そう、台湾高速鉄道は通過線と待避線の間が壁で隔てられています。そのため、通過列車から駅ホームが見えません。
おそらく突風からの安全確保等の観点からでしょうが、ちょっと残念。
板橋駅から走り続けること30分ほど、一際眩しい都会が現れました。
高層ビルが煌めく、台中市の街並みです。
台中市は285万人が住み、新北市に次いで台湾2番目の人口を有します。
名古屋市の人口233万人よりもやや多く、台中都市圏は台北都市圏に次ぐ都市圏とされることも。
そして、台中市は名古屋市とパートナー都市協定を結んでいます。
あくまで観光分野におけるものですが、どんな巡り合わせなのか。
台湾の名古屋飛ばしこと、台中飛ばしへ。
線路が奥へと分かれて行きまして…
台中駅を堂々の通過!
通過線を含め2面6線構造という、大きな駅を素通りしてしまいました。
名古屋飛ばしの時はホームに面しているところを減速して通過していました。こちらは通過線上を、ほぼ減速せず通過します。
また、台中駅だけは防音壁が半透明になってくれているので、通過していることがよく分かって嬉しいですね。
台湾高速鉄道の台中駅は、台中市の中心部からだいぶ離れたところにあります。
高速鉄道の台中駅と在来線(台湾鉄路)の台中駅が、全く違うところに位置しているのもややこしい。高速鉄道の台中駅では在来線の新烏日駅へ乗り換え可能で、在来線の台中駅まで15分ほどです。
台中駅を通過して、次の駅は彰化駅。
防音壁に阻まれてほとんど分かりませんが、壁の向こうに何かいます。
ここでは左営行きの列車を追い抜きました。この列車の正体は…
台北駅で見送った、1本前のこの子(333列車)。
台中駅から各駅停車のため、今乗っている速達型(1985列車)が追い抜くのです。
それでは今回、なぜ台中駅を通過する列車が設定されたのでしょうか。
一番の理由は、行き先ごとに乗客を各列車に分散させる「遠近分離」と考えられます。
台中駅通過便を設定することで、1985列車は台北〜台南・高雄など遠くまで利用する乗客、前後の333列車と295列車は台北〜台中など近距離や途中駅を利用する乗客のように分散させることが可能です。
1985列車がない場合、333列車と295列車に近距離利用者と長距離利用者が混在します。
台中駅は台北駅に次いで利用客が多いからこそ、混雑を分散させることが考えられたのでしょう。
また、1985列車は平日のみ運行している点も気になります。土日よりも平日のほうが混雑傾向にあったり、乗務員の確保などが理由と予想されます。
台中駅通過の大イベントを終えたので、車内でゆったり。
台湾新幹線では車内販売が残っています。
折角なのでホットティーを注文しました。40TWD(約199円)と、お手軽で嬉しい。
あまり車両に触れていませんでしたが、座席も日本の700系新幹線とそっくり。
馴染みのある車内なので、とても落ち着けます。
駅のホームでもPRされていましたが、N700S系をベースにしたN700ST電車が導入予定。
2027年下半期から営業開始するようで、これからも日本型新幹線が台湾を走るとは、非常に楽しみです。
そして23:25頃、ついに台南駅到着の放送が流れてきました。
台南市は高雄都市圏の一部とされていた時期もありましたが、現在は別として扱われている様子。
台北・台中・台南だと、三兄弟っぽくて分かりやすいんですけどね。
23:32 台南駅 着
板橋駅から1時間14分ぶりに扉が開きました。
距離にして300.8kmは、新横浜〜名古屋に匹敵します。
台北〜左営では165列車が最速だった一方、台北〜台南ではこの1985列車が最速です。
所要時間は1時間22分で、今回の列車設定により短縮されました。(フォーカス台湾による報道では1時間23分)
台南から左営駅まで最後の区間でも、東海道新幹線の最高速度285km/hを超えて走ります。
左営駅到着前には、左手に車両基地が現れました。
同じ車両がぴちっと並ぶ姿は壮観です。その編成の多さに驚かされました。
23:45 左営駅 着
台北駅からは1時間35分、終点の左営駅に到着しました。大体70人くらいの方が乗っていらっしゃったと思います。
こうしてみると、東海道新幹線の輸送需要の大きさに驚かされますね。台湾高速鉄道も日中はかなり多くの方が利用していますから。
左営駅にはホームが3面ありますが、1面はもう暗くなっていました。
途中の彰化駅で追い抜いた333列車は、お隣の2Aホームに到着します。
そして終電の295列車は、一番奥に到着するとの表示。
しかし、まだそこには回送列車が停まっている状態です。
23:55、彰化駅で追い抜いた333列車が到着しました。
車両の番号を見てみると、確かに「TR12」。台北駅で見送ったのと同じ車両です。
その1分後、停車していた回送列車が発車。333列車の到着を待っていたようですね。
そして23:59、終電の295列車がやってきました。
23:55〜23:59の僅か4分間に、列車を回送させていたとは。なかなか密度の高い列車のやりくりですね。
終電の295列車は、ギリギリ0時を超えないように到着しました。
日本の新幹線は0時〜6時は走れない決まりがありますが、台湾の高速鉄道にも同様の決まりがあるのでしょうか。
そろそろ駅を閉めそうなので、列車がずらりと並ぶ1枚を撮影して退散。
ホームドアが無いため綺麗に撮れるのが嬉しいです。
発車標では到着列車も案内されています。
左営駅は高雄市の中心部から離れているため、高雄市の中心部までは高雄捷運(地下鉄)で行くことになります。
この時間でも終電に間に合うので、宿の心配もそれほどありません。
平日1本だけ体験できる、台湾の名古屋飛ばしこと、台中通過便。
ぜひ機会を狙って乗ってみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。



























































