おはようございます。内房線の快速木更津行きに乗車中です。
関東地方を形作っているとも言える房総半島、これを横断する鉄道路線は、小湊鐵道といすみ鉄道を乗り継ぐルート1つだけになります。
そしてもう一本、房総半島の中心へ向かって伸びている路線があります。それが木更津駅から分岐する久留里線です。
久留里線は木更津駅から上総亀山駅を結ぶローカル線。特に末端部の久留里駅から上総亀山駅は100円稼ぐのに15000円かかる、JR東日本で一番の赤字区間になっています。
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【100円稼ぐのに15000円】関東のトンデモ赤字路線・久留里線へ 廃線の可能性は?[天北宗谷岬線(6)]
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この久留里線は木原線として計画され、木更津駅から大原駅を結ぶ予定でした。
建設されたのは、西側が上総亀山駅まで、東側は上総中野駅までです。東側については国鉄木原線を名乗っていましたが、国鉄分割民営化によって第三セクターいすみ鉄道として運行しています。
今日は上総亀山駅から上総中野駅を徒歩とバスで移動し、房総横断路線を再現してみることにしました。
使用されているのはE130系気動車、新しい車両です。
千葉県内のJRで電化されていないのは、ここが唯一になっています。
07:24 木更津駅 発
複線電化された内房線から、単線非電化の久留里線が離れていきます。
正面で交差しているのは、東京湾アクアラインから来た高速道路、神奈川から真っ直ぐ海を渡ってくるこの道路によって、特急電車は壊滅状態に追い込まれました。
横田駅で反対方向の列車と行き違い。向こうは4両も繋げていますが、車内はガラガラでした。何か車両を持ってくる理由があるのでしょうか?
木更津〜久留里駅の輸送密度は1425、100円稼ぐのに1200円必要な計算です。この区間に限って言えばそこまで厳しい状況でなく、今後もしばらくは残りそうな雰囲気。
久留里駅に到着。
久留里線内の駅では一番の主要駅です。
1日の乗車人数は288人(2021年度)。君津青葉高校があり、通学にも利用されます。
久留里線で問題となっているのはこの先、久留里駅〜上総亀山駅です。
上総松丘駅で2人降りられましたが、それ以外は動きが見られませんでした。
久留里線は1912年、千葉県営鉄道久留里線によって開業しました。
国の房総横断鉄道計画と重なったことから、1923年に国有化。1930年に特殊狭軌762mmから狭軌1067mmに改軌し、1936年に上総亀山駅まで開通しました。
久留米駅から先では国の予算が注ぎ込みまれ、単純に山だからということでトンネルがありましたが、割と古い路線なので高規格ではありません。
08:32 上総亀山駅 着
左右に線路が分かれてますが、ポイントが外されたことで途切れていました。もう行き止まりになった1本の線路しか使わない!という意思を感じます。
結構先の方に車止めがありまして、完全にここで行き止まりです。
すぐに折り返してしまう、木更津行きの列車を見送りました。
車内には10人くらいいましたが、皆さん鉄道ファンですぐ帰ってしまいます。
静けさを取り戻した1面1線のホームから、建物は昔から残る駅舎へ向かいます。明るい秋を思わせる奥房総ののぼりだけが、はためいてました。
駅舎内も木造で残されていて、切符を売っていたであろう窓口の他、低めの台の方は小荷物の取り扱いを行っていた跡です。
駅周辺で営業していたであろう商店もシャッターを閉じており、かなり寂しい雰囲気が漂っています。とても終着駅とは思えません。
ここから先、大原駅まで鉄道で繋がるはずだったんですね。
それでは未成に終わった途中区間を歩き、上総中野駅を目指しましょう。
集落の中には閉店して看板もボロボロになった、精肉店などのお店も見られました。
坂を下ってきまして、国道465号へ出ます。
小櫃川には亀山ダムが建設されていて、周辺は穏やかなダム湖です。
新しそうに見えるうどん屋さん「上総屋京兵衛」さんも閉店しています。
その近くには真っ赤な鳥居を、見上げるように位置する川俣神社。
再び川を渡りますが、とても綺麗な渓谷が広がります。
ここではボートを楽しめるそうで、朝9時の割には結構多くの方が漕いでいらっしゃいました。
「亀山湖湖畔の宿つばきもと」さんの看板。周辺にはキャンプ場もあるそうで、レジャーを楽しめる地域みたいです。
このあたりではレトロな商店なんかも見られます。
GoogleMapではこのお店が、コンビニエンスストアとして扱われていました。
新しく道路の端がかけ替えられたようで、スッパリと切られたその跡も自然に呑み込まれています。
この前、越美線を歩いた時に比べれば、十分集落があります。
いよいよ山の中へ挑むところ、最初のトンネルが現れました。
しかし目の前には工事中の看板、トンネル内は歩行者が入れなくなっていました。
という訳で案内に従い、山を登って迂回することに。
まさかこんな山を登ることになるとは思いませんでした(笑)
そこにあるのは閉校した旧蔵玉小学校。
今はNPO法人の事務所になっているらしく、話し声が聞こえてきました。
洗濯物が干してある、人ん家の庭みたいなところを通って、トンネルの出口まで周りました。どうやら車道を広げる工事みたいです。
その先にはつい最近アスファルトを敷いたような、新しい道路が続いています。
ここから南側、鴨川方面の道が分かれていました。
こちらは如何にも古そうなトンネル。表面がザラザラしています。
ここを境にして、君津市から大多喜町に入りました。
こういった山越え区間を歩くと、鉄道を通すのが厳しかったという事実を突きつけられます。
山の縁に沿った平らな道へ出てきました。越美線ウォークの時と似た光景です。
今度は完全に新しそうなトンネル。歩道も整備されていて、照明も白いので安心感が段違いです。
上総中野駅までで最後のトンネル、新筒森トンネルを抜けて下りへ。
ひたすら歩き続けて、家が見えてきました。
反対側には懸崖境がそびえます。
幾層もの地層があらわになって、その上には紅葉のアクセントを携えた葉っぱがもこもこと茂っていました。
レストランもあるという、養老渓谷観光センター近くまで来ました。
ここから上総中野駅には、小湊バスによる路線バスが走っているようです。
本数が非常に少ない中、まさにぴったりの時刻。
老川駐在所前から乗り込むことにしました。
ここの道のりも、割と勾配がきつい様子です。
上総中野駅に到着。
小湊鐵道といすみ鉄道の境界駅なのでもっと大きい駅かと思っていたのですが、想像以上に小さい駅で驚きました。
そんな駅には列車を待つ、多くの鉄道ファンがいらっしゃいます。
お目当ては旧型気動車を使用したいすみ鉄道の観光列車です。
こちらは急行型気動車のキハ28、キハ58の系統に属します。
鳥塚元社長がJR西日本から買い取り、観光需要振興によるいすみ鉄道の利用促進に取り組みました。
多くの人に愛されたこの列車ですが、冬に全般検査が迫っていました。老朽化したエンジンの部品が生産終了しており、検査に合格するためには1億円が必要に。年間運賃収入6000万円を大きく超えることから、2022年11月27日をもって引退します。
側面には、大原から上総中野の列車を示すサボが差し込まれています。
乗降口付近には「夷隅」と漢字で書かれていまして、急行列車というのを演出しているようです。
まるで保存車両のようですが、大きなエンジンの振動がまだ現役であることを主張してきます。
一番に古さを感じるのは、すり減っていく床。たくさんのお客さんが乗り降りした、その証拠が表れています。
11:52 上総中野駅 発
撮影目当ての方に見送られ、上総中野駅を出発します。
車内チャイムはオルゴールが奏でるハイケンスのセレナーデ。途中で巻きなおすため、ぷつぷつと切れた感じも良いです。
キハ28 2346は1964年に作られた車両で、山陰地方で急行「だいせん」「伯耆」で使われ、北陸へ移ったのち、高山本線から持ってこられました。2013年にいすみ鉄道へ来たのですが、運賃表が掲示されたままです。
引退間近に迫った車両の雄姿を収めようと、沿線には撮り鉄さんも沢山です。
元々は国鉄木原線だったいすみ鉄道。大原駅~上総中野駅は1930年に開業しています。鉄路が繋がらなかった久留里線の上総亀山延伸開業も1936年であることから、ここを繋げるのは早々に諦めてしまったようです。
川を渡っている途中、左手には大多喜城も綺麗に見られます。
大多喜駅にはいすみ鉄道本社も併設しており、線内で重要な立ち位置にある駅です。
停まっているのはいすみ300型。いすみ鉄道の車両は黄色に深緑のラインが引かれた、菜の花をイメージしたカラーが基本です。
駅では社員さんもお見送りしてくださいます。
いすみ鉄道の沿線にはこれと言って特別な観光地がありません。そのため、初めていすみ鉄道を利用してもらうきっかけになったのが、この国鉄型急行を使った観光列車でした。
観光列車での体験を十分に楽しんでもらい、再度沿線を訪れるのにいすみ鉄道を利用するリピーターを獲得する、この列車は流れを作る最初の一歩を担っていたという訳です。
国吉駅では駅弁などの販売を行っています。
鉄道単体では中々儲からない事業のため、こういった駅での販売で収益を上げることになります。
キハ28という鉄道ファンにとっては大きな魅力が無くなってしまういすみ鉄道。それでもまた乗りに来て、途中下車しながらこの土地を楽しんでみたいと思いました。
12:53 大原駅 着
最後もハイケンスのセレナーデが流れ、旧国鉄木原線が分岐した大原駅に到着です。
全く知らない世界の車両だとそこまで魅力を感じないのですが、この車内の雰囲気には馴染みがあります。キハ40などと似通っていることで、「いつもとちょっとちがう」という楽しみ方もできたのが良かったです。
いすみ鉄道は旧国鉄ですが、別会社のために改札は異なります。駅舎は一体にも関わらず、途中で塗装が変わっているので隣接しているみたい。
2時間以上の徒歩を経て、未成に終わった旧国鉄木原線をたどる旅。
引退間近の急行車両も組み込んで、横にも広い半島を横断できたのは良かったです。
奥房総の鉄道はこれから変化していきそうですが、ぜひ未成線による半島横断旅も楽しんでみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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