2022年秋に長崎〜武雄温泉で部分開業した、西九州新幹線。
長崎〜博多の鉄道アクセスにおいては、長崎〜武雄温泉は新幹線かもめ、武雄温泉〜博多は特急リレーかもめの対面乗り換えが必要です。
この不便な状況が表面に現れないよう、長崎駅での行き先案内は接続する特急リレーかもめ号の行き先に統一。ほとんどが博多行きとして案内されています。
しかし、2023年5月5日の長崎駅、発車標には「武雄温泉」の行先表示が現れました。
途中の停車駅も新幹線区間のみ案内されており、特急リレーかもめの停車駅佐賀駅、鳥栖駅などは表示されていません。
一体どうしてこんなことが起こっているのでしょうか?
そういう訳でやってきているのは夜の長崎駅です。
駅前再開発工事の真っ最中で、駅周辺の導線も西九州新幹線開業時から少し変わっています。
新幹線改札へ来てみると、発車標や駅員さんによる放送などいつもと様子が違います。
発車標一番上に出ているのは、かもめ58号博多行き。
これに関しては普段通りですが、その下には本日限定かもめ92号武雄温泉行きが表示されていました。
そして、かもめ58号の発車時刻が近づくと、この新幹線が特急リレーかもめ博多行きに接続する最終新幹線としきりに案内されます。
20:20をまわりますと、かもめ武雄温泉行きだけになってしまいました。
一方で時刻表を見てみると、時間的にはこの後も博多行き特急リレーかもめ号に接続するはず。
一体どうして武雄温泉行きになっているのでしょうか。
その理由はすぐ横に掲示されていました。
2023年5月5日から6日にかけて、博多駅構内で線路切替工事が行われていました。
これに伴って22:45〜翌5:43の鹿児島本線全ての列車が運休に。特急リレーかもめ号に関しても、博多行きの最終列車が繰り上がっていたのです。
その救済措置として、「特急かもめ62号・特急リレーかもめ62号」「特急かもめ64号・特急リレーかもめ64号」の代わりに、それぞれ臨時列車「特急かもめ92号・特急リレーかもめ92号」「特急かもめ94号・特急リレーかもめ94号」を設定。
これら臨時列車に関しては博多駅ひとつ手前、特急リレーかもめ二日市行きとして運転したのです。
従来のルール通りにいけば、行先は「二日市」と表示されるはず。実際に定期列車のかもめ64号門司港行きでは、ここに「門司港」と出ています。
二日市行き特急は普段存在しないため対応できなかったと思われ、表示可能な範囲の最適解が武雄温泉行きだったのでしょう。
また、長崎駅で「各駅に止まります」が表示されるのは、かもめ102号新大村行きのみ。「武雄温泉」と「各駅に止まります」の組み合わせは珍しいものです。
新幹線改札内へ入ってきました。11〜14番のりばが存在しており、方面の案内にすら武雄温泉が無いという有様。
列車は12番のりばからの発車となっており、自由席4〜6号車がエスカレーター側、指定席1〜3号車が階段側です。
ホーム上の発車標も、やっぱり武雄温泉行きの表示でした。
新幹線の行先表示も、二日市ではなく武雄温泉。
普段、武雄温泉が表示されるのは、新幹線が武雄温泉駅に到着してしばらくの間だけです。
このように「次は諫早」などの付記とセットでは、中々みられません。
今回は指定席に乗車、自由席との境にあたる3号車です。
1〜3号車それぞれ色味が異なっており、3号車は唐草柄です。
指定席ながら2+2の座席配列なので、かなり広々した印象となっています。
N700Sの車内ディスプレイには「かもめ92号武雄温泉行」の表示が出ています。英語表示と交代で出ている様子でした。
21:19 長崎駅 発
ホーム上ではあまり駅員さんによる大々的な放送はされず、いつもと変わった様子なく発車しました。
左手には大村線を中心に活躍するYC1系気動車。
長崎の夜景を楽しめる稲佐山にテレビ塔や展望台が光っており、まるで夜空に浮いているようです。
長崎駅を発車後、まずは車掌さんによる肉声放送が流れました。
ここではかもめ92号「二日市行き」と案内。続いて車内メロディが流れまして自動放送ではかもめ号「武雄温泉行き」と放送されます。
長崎を隔てる大きな山を新長崎トンネルで貫く西九州新幹線、僅か8分で諫早駅に到着です。
長崎本線、大村線、島原鉄道の乗り換え駅であり、21:55発大村線快速シーサイドライナーが乗換案内されていました。
ホーム上の発車標に注目してみると、ここでも武雄温泉行きの表示になっているのが分かります。
次の停車駅は新大村駅です。
諫早駅で乗換案内されたのと同じ列車、22:11発快速シーサイドライナー佐世保行きが案内されます。
一本前の便として21:36発普通佐世保行きもあるのですが、1分乗換になってしまい厳しいんですよね…。
そして、新大村駅の発車標に注目してみると、ちょっとおかしなことが。
なんと「武雄温泉」の表示すら消えて、行先が空白になっていました。
終点まで止まりませんと書いてありますが、終点が存在していません。
新大村駅に関しては武雄温泉行きに対応していなかったのでしょうか…?
新大村駅を発車しまして、左手には西九州新幹線の大村車両基地があります。
ここへの回送を兼ねて、長崎駅23:00発/新大村駅23:46着かもめ102号新大村行きが設定されており、これが最終の新幹線かもめ号になっています。
ここから県境区間へ入るということで、新幹線かもめ号はぐんぐん加速。
整備新幹線の最高速度260km/hへ向かって、トンネルを突っ切ります。
県境の俵坂トンネルを含むトンネル群を抜けまして、佐賀県へ来ました。
新幹線単独駅の嬉野温泉駅を通過。この後かもめ94号武雄温泉行きは各駅停車タイプなので停車します。
この列車は嬉野温泉駅だけを通過するパターンでした。
嬉野温泉駅通過を表示している最中で、武雄温泉駅到着の案内が流れます。
自動放送でもしっかり「終点」武雄温泉駅到着との放送です。
武雄温泉駅での乗換案内では、「博多行き」特急の表示。…博多には行かないんですけどね。
もちろん今日2本のイレギュラーのために対応するのは難しいでしょうから、対応していなくてもおかしくありません。
左手からは佐世保線の高架橋が合流してきます。
そして向かいには787系、特急リレーかもめ92号が停車中です。
21:46 武雄温泉駅 着
普段通り3分での対面乗換となります。
なんてことない乗り換えですが、今日は珍しい運行とあって多くの鉄道ファンが写真撮影に熱心です。
10番線ホームの発車標には、特急リレーかもめ92号「二日市」行きの表示がされていました。
一方で、リレーかもめの行先表示については「臨時」でした。
「リレーかもめ特急|二日市」の表記が出ると思っていたのですが、これは対応していないんですね。
ここまで乗ってきた新幹線かもめは折り返し長崎行きに。青色で表示されている各駅停車です。
21:49 武雄温泉駅 発
まだ武雄温泉駅までしか来られない新幹線を横目に、リレーかもめ92号が出発。
後ほど映像を載せますが、「二日市行き」の自動放送が流れていました。一方で車掌さんは自由席の検札に勤しまれているためか、肉声放送はしばらく聞かれません。
長崎本線と佐世保線の分岐駅、江北駅に到着です。
各方面から来た817系電車が集まってきており、その結節点であることが分かります。
江北駅を発車しまして、こちらが「特急リレーかもめ92号二日市行き」の自動放送。
JR九州の在来線特急では個々の列車ごとに乗換案内も自動放送で行っているため、今回のようなイレギュラー対応も訳ないのでしょう。
ここで、今回利用している4号車指定席をご紹介します。
こちらは鹿児島本線の特急つばめで営業していた、ビュッフェ車両を客室に変えたものです。
まず特徴的なのが、エッグラインと呼ばれるドーム状の天井。
この真下にカウンターが設置されており、料理が提供されていたそうです。現在はその雰囲気を特急36ぷらす3より感じることができます。
後から客室に改造したため、座席の前後間隔が非常に広くなっています。足を思いっきり伸ばしても届きません。
常連の方だと広いことを知っている方も多いそうで、鉄道ファンに限らず4号車を指定して購入する乗客もいらっしゃるとのこと。
窓枠が座席と少しずれていることからも、後から改造されたことが分かります。
博多駅との在来線特急流動が太い、佐賀駅に到着しました。
ここで江北始発の普通列車南福岡行きを追い抜きます。
普段この列車は福間行きなのですが、博多駅線路切り替え工事のため南福岡〜福間は運休、南福岡行きとして運行します。
博多駅へ行かないためか、この時間帯とは言え佐賀駅から乗車されるお客さんは少ない印象でした。
車内のLED表示器でも、リレーかもめ二日市行きの表示が出ています。
ここまでもう博多駅へ行く手段は無いように言っていましたが、一応最後の手段があります。
それが、新鳥栖駅で博多行きの九州新幹線へ乗り換えるというもの。リレーかもめ92号からはつばめ338号、リレーかもめ94号からはさくら408号へ接続しています。
これに関しては長崎駅の掲示に小さく書かれていたものの、道中案内はありませんでした。新鳥栖駅到着前の肉声放送で初めて案内がされたことになります。
どれだけ九州新幹線へ乗り換えて行かれたのか分かりませんが、新鳥栖駅で下車するお客さんは2,30人程度といったところです。
続いて鳥栖駅に到着、ここから鹿児島本線に入ります。
終点二日市行きの放送が流れます。
まずは自動放送より、これまで通り二日市行きとして放送されていました。
続いて手動5点チャイムから始まる、車掌さんによる肉声放送も流れました。
車内表示では運行区間を短縮した、南福岡行き普通列車の案内も。
「まもなく終点二日市」になると、横幅が足りず「二日」駅になっちゃうんですね(笑)
22:37 二日市駅 着
行き先表示は回送になっており、二日市行き特急が設定されていないと存在しない光景です。
ここからは久留米駅始発の普通南福岡行きに接続しています。
普段は博多行きのところ、南福岡行きに変更されました。
二日市からの切符を買っていたらいなくなっちゃいましたが、22:46頃に787系は回送されて行っています。
22:48 二日市駅 発
ここから南福岡行きの普通列車に乗って、北上してみます。
春日駅を出発すると、だいぶ乗車率は落ちてきました。
23:04 南福岡駅 着
駅のすぐ横には南福岡車両区が隣接しており、博多発着の列車達が眠る場所となっています。
今夜鹿児島本線で来られるのは、ここ南福岡駅までです。
しかし、列車が来なくなった博多駅の様子を見てみたいところ。
何とかして博多駅へ行こうと、10分ほど歩いて来たのは西鉄の雑餉隈駅。代行輸送などは行っていませんが、JR以外の手段で博多駅へ行けます。
それにしてもこれで「ざっしょのくま」とは難読すぎますよね…。
薬院駅で下車しまして、地下鉄七隈線へ乗り換えです。
2023年春に天神南駅〜博多駅が延伸開業し、簡単に博多駅へ行けるようになりました。
延伸開業当日にも訪問しましたが、こんなに早く実用的な利便性を享受することになるとは思いませんでした。
それでは列車運休中のJR博多駅の様子を見に行ってみます。
一番大きな中央改札口では、右半分のシャッターが閉められていました。
運休については事前に大々的な周知が行われており、途方に暮れている方はいらっしゃいませんでした。
ゴールデンウィークのため、外から来てここで初めて知った方も見受けられたものの、特に駅員さんに聞いたりすることなく全体的に落ち着いた雰囲気です。
発車標は全て真っ暗、博多駅から出る営業列車は全て運行を終えています。
明日の朝も少し遅めの出発になっており、ゴールデンウィークに重ねたのは朝の通勤時間帯に混乱を招かないためという考えかと思いました。
新幹線と在来線のリレー方式だからこそ注目したくなった、今回の二日市行き特急かもめ号。工事が公共交通機関に与える影響を最小限に抑えた結果が現れていて、非常に心強いものでした。
日常への混乱を最小限にすべく、大型連休での工事を担ってくださった方々への感謝も忘れてはいけません。博多駅線路上に複合ビルが建設される「博多駅空中都市プロジェクト」、完成の未来が非常に楽しみです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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