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【JRしかない都道府県?】大分唯一の私鉄 ラクテンチケーブル線[2306夜行ソニック(6)]

2023年7月5日

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大分県を走る鉄道といえばJR九州

県内を走る私鉄や第三セクター鉄道は思い当たらず、宮崎県とともに私鉄の路線が無い都道府県とされます。

 

かつて大分県には、大分交通がいくつか鉄道路線を有していました。しかし、1975年に耶馬溪線が廃止されたのを最後に、現在ではバス事業を中心に経営しています。

 

しかし、大分県にも僅か1本だけ私鉄路線が残されています。一体どんな路線なのか、乗ってみることにしましょう。



県内唯一の私鉄路線があるのは、温泉の街で名高い別府市です。

別府駅の裏側より西へ歩きます。この私鉄は完全に独立しており、他路線と一切接続していません。

 

しばらくすると目的地の看板が現れました。

大分県唯一の私鉄が走るのは、「ラクテンチ」です。

 

まるで山を分断するように伸びる一筋の鉄路、頂上には不思議な構造物があります。

これこそが大分県内唯一の私鉄路線です。



20分ほど歩きまして、突き当たりに洋風のお城が現れました。

ここは「別府ラクテンチ」、大分県を代表する遊園地となっています。

 

山の上に遊園地が広がっていまして、別府ラクテンチケーブル線が地上とを行き来しているのです。

 

ケーブルカーに乗車するためには、窓口でチケットを購入する必要があります。それぞれ「フリーパスセット」と「入園のみ」の料金が設定されていました。

 

ケーブルカーに乗るだけというのはできず、入園料と行き帰りの乗車券が一体です。ケーブルカーだけを目当てにした変人は、商売相手ではありません。

ただし、山の上に住んでいる住民などは運賃だけで乗車でき、この点では公共交通機関としての役割を担っています。



こちらの駅は、雲泉寺駅。この名称はあまり使われず、専らラクテンチ下駅と呼ばれます。

改札のすぐ先にケーブルカーが待っている一方、フォトスポットだったりカラフルなラッチだったり、遊園地のゲートらしさも感じられました。

 

20分に1本間隔で運行されており、10分くらい前より改札が行われます。

 

ケーブルカーは鋼索鉄道であり、こちらも鉄道事業法による鉄道事業免許を受けた立派な鉄道です。

さらに株式会社ラクテンチが運営していることから、私鉄路線となっています。



階段状になったプラットホームには、空色の車両が停車中。

こちらは「ラクテンチの思い出」号、開園90周年特別企画でケーブルカーデザインコンテストが開催され、こちらは準グランプリ作品です。

 

ラクテンチとケーブルカーは1929年開業、非常に歴史ある路線になります。

台車は1951年製で、日本一古いケーブルカー車両用台車です。

 

車内もまた傾きに合わせた階段状で、ボックスシートが並んでいます。



ラクテンチのシンボルである二重式観覧車を見上げながらの出発です。

最急勾配は558‰、傾くので荷物など注意しなければなりません。

スイスのギゼラインベルン方式と言われる運転方式を採用。2台の車両にワイヤーロープを繋いで、山頂に備えられたモーターでそれぞれ巻き上げ、巻き下ろしています。

 

単線ですが中腹部に設置された行き違い設備へ入り、下ってくる車両と行き違います。

 

こちらの車両は「遊びつくそう!ひみつきち」号、同じコンテストのグランプリ作品です。

 

長さ260mで所要時間は3分ほど、あっという間に終点に到着しました。



こちらは乙原駅(ラクテンチ上駅)です。

遊園地目的の方はケーブルカーに乗らなくても、この高さまで車で来て、乙原ゲートより入場することもできます。

 

駅舎には日本唯一の二重式観覧車、フラワー大観覧車が隣接しています。

1974年に営業開始した大観覧車に代わり、2004年のリニューアルから動き出しました。かつて宝塚ファミリーランドにあったのですが、2003年に閉園して移設されたものです。

 

回転するアームの両端それぞれでも観覧車が回転する動きを見せます。宝塚ファミリーランドではもう1本アームがあったのですが、そちらはミャンマーの遊園地に譲渡されました。

 

観覧車のりばへ繋がる2階の展望テラスからは、別府市街と別府湾を一望することができます。

 

別府駅周辺から一本道がこちらへまっすぐ伸びており、この道路を歩いてきた訳です。

 

左に目を移すとフェリーさんふらわあの港などもあって、全体像を見渡せることが確認できます。

 

もっと近くを覗き込めば、ケーブルカーがすれ違う様子も観察できました。



真ん中には150mの大吊橋が架かっており、そこから遊園地の様子を観察できます。

明治時代この地には、1903年から金・銀鉱石を産出する別府金山が操業していました。創業当時から温泉が湧き出していたのですが、より高温になって坑内環境が悪化し、1916年9月に操業を中止しました。

 

再開も検討された一方で、温泉の枯渇を恐れた地域住民が反対。そこでこの敷地と温泉を有効活用する目的で、遊園地が開園しました。

こんな山の上に遊園地ができたのは、そのような過去があった訳です。

 

しかし、ラクテンチは経営不振に陥り、2003年に遊具メーカーの岡本製作所に譲渡され、2004年3月に「別府ワンダーラクテンチ」としてリニューアルオープンしました。

2008年、再度経営不振により岡本製作所も撤退を表明し、九州観光ホームグループへの事業譲渡で合意。ところが、譲渡先が国土交通省からケーブルカーの営業認可を受ける必要が生じます。この間に九州観光ホームへの譲渡も頓挫し、2008年11月末で一度休園しました。

 

岡本製作所は他社への売却交渉だけでなく、スポンサーを募って自社営業再開も検討。

2009年に自社運営での営業再開を発表し、「ワンダーラクテンチ」から「ラクテンチ」に戻して、リニューアルオープンを果たしました。

 

地方の遊園地として困難を目の前にしながら、今でも運営を続けられているのは非常に嬉しいですね。



ファミリー層や子どもたちが無邪気に遊んでいる中で、徘徊していては気まずいので引き返しましょう。

上下同時に発車するため、当然こちらも20分に1本の運行です。

 

こちらは木造の山小屋みたいで、ケーブルカーの駅らしさを感じられました。

 

帰りの方が下り坂を転がっていくような感覚で、スリルを味わえます。

遊園地の行き帰りで勝手にアトラクションとして楽しめてしまう、大きな魅力の一つです。

 

昔ながらの歴史ある遊園地とともに、ケーブルカーも末永く活躍してほしいです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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