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【ヘリ墜落で高速化】旭化成のための日豊本線高速化・宮崎空港線 出張客輸送を支える特急にちりん[2307南阿蘇再開(9)]

2023年8月2日

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宮崎県北部に位置する県内3番目の街、延岡市。

玄関口の延岡駅はツタヤ図書館も入居する複合施設エンクロスと一体化しており、コンクリートによる大きなフレームとガラス張りの明るい建物が特徴的です。

 

特急列車が全て停車する旅客列車の主要駅であるとともに、貨物の取り扱いも行われています。東九州の海沿いを南下する日豊本線の貨物列車は、延岡市内の貨物駅が終着です。

 

その理由はここを企業城下町とする、旭化成の存在。奥の方に煙突が立っている通り工場が多く集まっており、首都圏からの出張需要も大きいものです。

 

現在それを支えているのは、宮崎空港と一本で結んでいる特急にちりん・ひゅうが。

 

しかし、この特急ルートが主流になった背景には、ヘリコプターの墜落事故がありました。

これを機に整備された、高速化後の日豊本線をご覧いただきましょう。



乗車するのは特急にちりん、787系電車による運行です。

特急にちりんは大分〜宮崎空港、特急ひゅうがは延岡〜宮崎空港の運行区間を基本とします。

他にも1日1往復だけ博多〜宮崎空港を結ぶ、特急にちりんシーガイアもあります。

 

今回利用しているのは自由席。4両編成のうち3両が自由席で、1号車には半室グリーンがあるため指定席が少ないです。

延岡駅での乗降も多かったですが、混雑度合いとしては区画が半分埋まるくらいでした。

 

貨物コンテナを横目に、延岡駅を出発します。

この便では行われませんでしたが、日豊本線のこの辺りは線路一本の単線なので、特急同士であっても行き違いが行われることもあります。

 

すぐに渡るのは五ヶ瀬川と大瀬川。

かつて延岡城があったのは駅から見て川の向こう側、そのため町の中心市街地はこの周辺ということになります。



さらに進むと現代の延岡城が見えてきました。

大きな煙突は延岡のシンボルたる様相で、周囲には旭化成の工場が集まっています。

 

この工場地帯は線路沿いにまで及んでおり、関連会社などもひしめいていることでしょう。

 

そんな工場から伸びる線路が、こちらへ近づいてきました。

この先で二手に分かれており、そのうちの一つである旭化成愛宕工場へ続く専用線をコンテナ車が走っています。

 

専用線が分岐する貨物の重要拠点として、南延岡駅はかなり広い構内を有しています。

 

延岡駅の隣駅ですが、南延岡駅にも全ての特急列車が停車。

先ほどご覧いただいた通り旭化成の工場が数多く、日曜日でしたが数名ほど出張らしき方が乗ってこられました。



延岡市は大分空港と宮崎空港の中間地点に位置し、出張による空港からのアクセスが不便な立地でした。

そこで旭化成は自社ヘリポートを整備し、1989年より旭化成延岡工場と宮崎空港を結ぶ専用ヘリコプター路線を設定しました。

1日に4往復運航されており、どれも宮崎空港で東京、大阪、福岡を発着する便と接続。旭化成が所有するヘリコプターを日本エアシステムが運航しており、所要時間は30分ほどでした。

 

しかし1990年9月27日、8人の社員を乗せたヘリコプターは宮崎県日向市の牧島山に墜落しました。

当時旭化成のヘリコプターは整備中でJASが代替機を用意できなかったため、阪急航空が運航。これにより阪急航空チャーター機墜落事故とされています。

 

事故原因は著しく視程が悪い中で低空飛行を行ったこと、機長が空間識失調に陥っていた可能性とされました。

台風の接近により日向市では雨や霧が発生しており、視程が急速に低下。地表確認のためと考えられますが、牧島山付近をかなり低空で飛行する姿が目撃されており、20時58分頃に牧島山山頂の東側斜面に激突しました。



日向市もまた旭化成で発展したまちです。

特急は日向市駅にも停車。こちらへの出張でも便利に利用させてもらえます。

 

延岡市に次ぐ宮崎県第四の町、2006年に高架化されて新駅舎が完成しました。



ヘリコプター墜落事故を受け、宮崎空港から延岡へのアクセスはJR九州の特急列車が担うことになりました。

当時日豊本線のこの区間は最高速度85km/h、まるでローカル特急のような速度しか出せませんでした。

そこでレールを40kgレールから50kgレールへ高規格化、枕木も木製からコンクリート製のPC枕木へ交換。これによって最高速度は110km/hまで引き上げられています。

 

さらに一線スルー化工事も行われており、こちらは対象になった美々津駅を通過しているところです。

ポイントと呼ばれる線路の分岐部分を通過する際、線路が曲がる方を通過する場合は適切に速度を落とさなければ脱線してしまいます。

しかし、片方の線路をまっすぐにする一線スルー化をしておけば、通過列車は速度を落とす必要がなくなるのです。

 

一連の高速化事業費は24億6000万円。そのうち宮崎県が2分の1(12億3000万円)、JR九州が3分の2(9億4000万円)、旭化成が3分の1(2億9000万円)を負担しています。

国鉄分割民営化によって、このような事業にも自治体や民間企業が出資できるようになりました。



特に高速化事業と関係ありませんが、左手には高架橋が見えてきました。

こちらはかつて使われていたリニアモーターカー宮崎実験線跡地です。現在は将来的にリニア中央新幹線ルートの一部となる、山梨実験線へ役割を移しました。



列車からは時々ですが、日向灘の景色を見ることができます。

こちらは一ツ瀬川の河口部、秘境とも言うべき山奥からダムを経てここまで注ぎ込んできました。

 

こちら佐土原駅にもコンテナが積まれています。ここはオフレールステーションと呼ばれるトラック輸送の拠点です。

日豊本線貨物列車の南限は延岡市ですが、JR貨物のネットワークは形成されています。宮崎駅が高架化されたため、貨物の役割はここに託されました。



宮崎市の中心駅、宮崎駅に到着です。

特急にちりんはこのまま宮崎空港駅まで向かいますが、宮崎駅〜宮崎空港駅は特急列車であっても、乗車券のみで自由席に乗車できます。

特急券は必要ない区間で、青春18きっぷなどで乗車することも可能です。

 

宮崎駅を出発すると大淀川を渡り、その対岸にも市街地が広がっています。延岡駅を出た時と同じような感覚です。

 

次の南宮崎駅近くにはバスターミナルの宮交シティがあったりと、もう一つの市街地というイメージ。

 

隣接して車両基地が置かれており、運行の拠点として機能しています。



列車は南宮崎駅より、日豊本線から日南線へ入りました。

日南線から分岐する宮崎空港線は1996年に開業。全線非電化だった日南線は、電車特急を走らせるため南宮崎〜田吉が電化されました。

 

日南線の近くに位置する宮崎空港へ線路を伸ばそうという計画は、昔から存在していました。空港から延岡への出張客輸送を特急列車が担うことが、線路建設実現を大きく推進したことは間違いありません。



田吉駅から入った宮崎空港線の路線距離は1.4km、JR最短距離の路線になっています。

高架線からは空港の滑走路や航空機など間近に見られ、ここまで空港アクセス鉄道らしさを感じられるところは他に無いように思います。

 

終点の宮崎空港駅に到着。

延岡駅からの所要時間は78分、全体的にも特急の所要時間はこれくらいです。高速化事業により最大20分ほど短縮されました。

 

きっかけが墜落事故ということで手放しに良かったと言いづらいところではありますが、結果的には便利な特急街道が形成されました。

今日では宮崎駅での接続パターン含め、1時間に1本程度の特急で結ばれています。

 

宮崎空港駅から宮崎空港は階段を降りて目の前、神戸空港や那覇空港くらい鉄道からのアクセスが便利です。

 

東京、大阪、福岡、名古屋へ多くの航空路線が設定されており、空港利用者も増加しているところ。

 

この利便性を享受しつつ、裏側にある歴史も忘れずにいたいです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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