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【幻の九州横断観光鉄道】高森〜高千穂の未成線バス 湧水トンネルの先へ[2307南阿蘇再開(6)]
2023年7月15日、熊本地震で被災した南阿蘇鉄道が7年ぶりに全線復旧を果たしました。 JR豊肥本線の立野駅から、カルデラの南側へ入り込む路線。現在終着駅は高森駅ですが、元々は県境を超えて宮崎県まで繋 ...
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九州横断鉄道を目指して建設された、国鉄高千穂線。
高森の異常出水事故により建設は断念され、国鉄分割民営化で第三セクター高千穂鉄道として残されました。
日本一高いところを走る鉄道橋の高千穂橋梁に、トロッコ列車「トロッコ神楽号」など、観光路線として人気を博した路線でした。
しかし、2005年に宮崎県を襲った台風14号により、橋梁流出を含む大規模な被害を受けました。部分的な路線存続も考えられましたが、2008年に全区間廃止へ至ります。
現在ではこの廃線上を保存鉄道が走っており、高千穂橋梁を目玉としてトロッコ運行を楽しむことができます。廃線活用の成功例ともされる高千穂あまてらす鉄道、その魅力をお伝えすべくご紹介します。
南阿蘇鉄道高森駅より、長距離バスたかちほ号で高千穂バスセンターまで来ました。
ここ高千穂町中心部から高千穂駅までは割と離れており、坂を登っていくことになります。
今でも「駅通り」の愛称が残る県道237号を北上し、橋の下に線路が見えてきました。
延岡駅と結ぶ路線バスの高千穂駅バス停前にはお店があり、ご飯も食べられます。
1階の「カフェARIGATO」さんは宮崎名物チキン南蛮が人気です。
今回は2階の「Korean dining&Cafe はるはる」さんにお世話になりました。
こちらはあのカフェチェーン店を意識されたという「はるペチーノ」、店内には看板犬「きら」が歩き回る、ほんわかした雰囲気のお店です。白内障で目がほとんど見えずぶつかってきちゃったりしますが、可愛がってあげてください。
さて、先ほどの店舗があった場所から高千穂駅まで、階段を降りていく形です。
てっきり高千穂駅は町の中心部にあるもんだと思っていたのですが、町外れに位置していました。本来なら九州横断を目指した途中駅に過ぎないため、こういった立地になったのでしょう。
濃い赤色をした縁取り駅名板は、まさにローカル鉄道の表象です。各地からやってきた人々を、レトロさで迎えてくれます。
現在では必要無くなった運賃表ですが、JR九州各線主要駅まで掲示されていました。
駅舎内ではグッズなども販売されているので、こちらもぜひ。
駅構内へ入ってきました。
1面2線分の用地が確保されていますが、現役当時線路が敷かれていたのは1線だけだったとのこと。熊本県側の高森線と接続した時に備えていたようです。
線路上も自由に歩くことができます。
真ん中で分かれた駅名標に描かれている通り、高千穂町は日本神話ゆかりの地です。天界から遣わされた天照大神の孫(天孫)が降り立った、天孫降臨の地とされています。
線路上を歩いて行った先、車庫へ分かれるポイントも間近で見ることができました。
ここには現役当時訓練用として使われたという、ディーゼル車が眠っています。一般人でも駅構内を往復する運転体験ができて、2ヶ月に1回ほど開催されているそうです。
現役当時は「トロッコ神楽号」が走っていましたが、こちらはJR九州「海幸山幸」として活躍しています。
今回の目的は高千穂あまてらす鉄道のメインアトラクション、グランドスーパーカートです。
駅舎内の窓口できっぷを購入しました。9:40から40分に1本の運行で、通常10便運行されています。
事前予約はできないため、当日窓口で乗車便を申し出る形。大人1800円です。
グランドスーパーカートには鉄道と同様、プラットホームから乗り込みます。
右側に乗車口が線路へせり出しているのが、お分かりいただけるかと思います。
駅に隣接した待合所の屋根からは水が滴り落ちており、打ち水方式で涼ませてくれます。手作り感ある古民家みたいな見た目もまた、各地から来たお客さんを楽しませる要素の一つです。
出発10分前ぐらいになって、グランドスーパーカートがホームへ入線してきます。
背が低くかなりコンパクトな小さいトロッコ、遊具っぽさならではの可愛らしさです。
この車両は空港で走っている牽引車がベースです。改造して下に鉄道の車輪を履かせています。
定員60人の2両編成は満員で、その人気ぶりが伺えます。
特に韓国や中国からのインバウンド観光客も、1/3ほど占めているように見えました。
15:00、高千穂駅を出発しました。
大きく手を振ってお見送りされていくのは、久しぶりに遊園地の遊具に乗った気分です。
最高速度は15km/h、その分じっくり景色を見せてくれます。
鉄のレールを走っている振動が直に伝わってきて、これこそトロッコならではです。
しばらくして見えてきたのは初代スーパーカート、軽トラックを改造した手作りです。
2009年から高千穂駅構内での手押し木製トロッコから始まり、2012年よりこちらの車両でスーパーカートの運行がスタートしました。
高千穂線の日ノ影(日之影温泉)〜高千穂が開通したのは1972年のこと、踏切は無く高いところから高千穂市街地を見渡せます。
サイクリングをなさっている観光客に手を振られ、ゆっくりしたスピードでも感じられる風で、直射日光を浴びつつも爽快感があります。
長さ214m、最初のトンネルへ入ります。
天井に現れるのは車両から灯されているイルミネーション。チカチカ点滅したり動いたりして、全く退屈させません。
左手には芸事の神様を祀っているという、荒立神社の鳥居が見えてきました。
実際多くの芸能人が訪れているということで、剛力彩芽さんやアンミカさんが高千穂町観光大使に就任しています。
高千穂あまてらす鉄道で2つ目のトンネル、今度は489mと少し長めです。
天然のクーラーに涼みながら、星空を眺めているようなロマンチックな雰囲気を演出してくれます。
トンネルの出口が見えてきまして、緑が壁面を照らし始めました。
先程まである程度街が広がっていましたが、トンネルを抜ければ山の色が濃くなります。
右手には国道218号、白いアーチを描く雲海橋です。
真横から見ないと分かりませんが、左右非対称になっているという全国的にも珍しい橋になります。
苔生したコンクリート壁が山を切り開き、頭上の葉っぱたちにより、木立のトンネルが作り上げられています。
高千穂駅の隣駅、天岩戸駅跡を通過しました。
この先に高千穂橋梁がありまして、一旦停止して風速計測により安全の確認が行われます。
いよいよ門の向こう側、日本一高い鉄道橋の高千穂橋梁へと走り出します。
一歩橋の上に来ただけなのに、パッと空気が変わったようです。
近くに見えるものは全て見下ろす形、日本一の鉄橋は伊達ではありません。
ユーモア溢れる観光案内をしてくださったり、シャボン玉が飛んでいたりと、素晴らしい景色だけでなくお客さんを楽しませるのに特化した、本当に素敵な場所でした。
走行中は座っていなければなりませんが、ここでの停車中は立って景色を存分に楽しむことができます。
岩戸川の川底から橋までは105m、渓谷すらあんな遠い場所にあるなんて、想像を絶するものです。
先ほどの雲海橋も同じところに架けられており、あの橋から高千穂橋梁を見ることができます。
床部分は透明になっており、その高さをスリルと共に伝えてくれました。
段々畑や棚田の一角には牛がいる牧場があったりと、視野が広い分細かいところまでポイントを見つけるのが面白いです。
再び動き出しまして、橋の向こう側まで渡りきりました。
トンネルの向こう側は日之影町の管轄で、まだ走ることはできません。
しかし町とも交渉中とのことで、いつか高千穂から日之影町までスーパーカートで結ばれて、また違った楽しみが生まれることを期待したいです。
ここで進行方向を変えまして、高千穂駅方面へ戻ります。
今度は高千穂橋梁を一度に渡り切る、鉄道ならでは風を感じながらの走行です。
岩戸川を見下ろしても森に埋もれているほどで、それだけ自然に囲まれた場所ということに。
天岩戸駅で一旦停止。2003年度の利用客数は3人/日で、高千穂線で一番利用客が少なかったとのことです。
このように駅が残されていますが、立ち入ることはできません。
山の自然に囲まれ、トンネルのイルミネーションに見送られつつ、元来た道を戻っていきます。
所要時間は往復30分ほど、終点の高千穂駅に到着しました。
宮崎県の山奥というアクセスの悪い中、これだけの人を集める高千穂あまてらす鉄道。
開放的なトロッコから見る車窓はもちろん、職員の方々によるおもてなしも行き渡っており、絶対満足させてくれるに違いありません。
廃線を活用した成功例として広まるよう応援していきたいですし、再び訪れたいと思います。
写真では伝えきれないこの魅力、ぜひ足を運んでみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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