ここは日本最北の有人離島、礼文島です。
『花の浮島』の異名を持ち、道端にも咲く高山植物と、厳しい自然が作り出す景色を求めて、多くの観光客が渡ってきます。
稚内の西側に位置する2つの離島、礼文島と利尻島。
北側にある礼文島は宗谷岬と比べると少し南側ですが、十分に最果ての地です。
定期観光バスに乗って島内全体を巡りまして、その魅力を存分に味わいました。
離島の素晴らしさに浸ったところで、現実に引き戻されることが一つ
…あ、明日1限大学だったぁー(棒)
現在の時刻は13:20、明朝9時の講義に間に合うよう、京都の立命館大学衣笠キャンパスまで登校しましょう。
礼文島から脱出する方法は、ハートランドフェリー一択となります。
礼文島から伸びている航路は、利尻島鴛泊港、利尻島沓形港(夏季限定)、そして稚内港です。
島内北部には日本最北の空港の礼文空港があり、エアー北海道が礼文〜稚内の定期旅客便を運航していました。
しかし、これも2003年に撤退しており、現在は休止状態が続いています。
という訳で、まずは香深フェリーターミナルより出港する、鴛泊港(利尻島)経由稚内行きに乗船しましょう。
2階の乗船口へ上がってきまして、団体ツアー年配の方に混じります。
「礼文島へまたお越しください」、是非また訪れたいと心から思える、素晴らしい場所でした。
今回利用するのは2等自由席、ボレアース宗谷は横にもなれるスペースが基本になっています。
甲板に出てきまして、礼文島最後の景色を目に焼き付けます。
車は載せ終わったようで、ボーディングブリッジも離されます。
13:25 香深港 発
遂に日本最北の離島、礼文島を離れました。
世間一般の登校感覚からすれば、家を出発した段階です。最果てからの公共交通機関を駆使しまくって、なんとしてでも1限に間に合わせましょう。
フェリーの奥底から汽笛が響き渡り、礼文島の低い丘にもこだましました。
香深フェリーターミナル近くの海沿いには、ホテルが沢山立ち並んでおり、多くの団体観光客を受け入れています。
礼文島は島を一周する道が無く、集落のほとんどが島の東側。強風が吹き付ける西側は断崖絶壁で、道路を作ることも難しいです。
寒風に打たれすぎたので、船内の自動販売機であたたか〜いロイヤルミルクティーをいただきます。
他に売店もあって、お菓子やパンくらいなら買うことができました。
礼文島からでもその存在を確認できますが、利尻島がはっきり見えてきました。
カモメやウミネコの鳴き声を聴きながらの旅、北の航路という実感が湧いてきます。
船は鴛泊フェリーターミナルへ向かって、舵を切り始めました。
左が利尻島、右が礼文島と並んでおり、こうしてみるとかなり近いことが分かります。天気が良ければ反対側に本土も見られそうです。
また、利尻島といえば島そのものを形成する利尻山がシンボル。
本当はもっと高いところに山頂があって、その形から利尻富士として親しまれています。
まるで高速道路のように見える、山を貫く高架橋。あちらは自転車専用道路です。
しかし、島を一周する道路の方が人気で、あまり利用する方はいらっしゃらないとのことです。
防波堤の中へ入り込みまして、大きな汽笛を鳴らします。利尻島の鴛泊フェリーターミナルに到着です。
14:10 鴛泊港 着
ほとんどのお客さんが鴛泊港で降りられまして、利尻島の観光をされる様子。
このまま乗船して稚内フェリーターミナルまで行かれる方は少なく、入れ替わりになるようです。
京都へ登校中の僕も、そのうちの1人。
稚内ではなく、利尻島の鴛泊フェリーターミナルで降りることを選択しました。
最北端から本州へ向かうにあたって、真っ先に思い浮かぶのが稚内空港です。
しかし、このフェリーで稚内港に到着してからでは、稚内空港への路線バスに乗車することができません。
タクシーを使えば間に合いますが、もうちょっと余裕を持ちたいなという感覚。
そこで今回使う手段が、利尻島にある利尻空港です。
こちらからは基本1日1往復、利尻〜丘珠(札幌)のJAL便が運行されています。
鴛泊フェリーターミナルから利尻空港への公共交通機関アクセスは、路線バスになります。
時刻表上では、フェリーが鴛泊港に到着するのと、バスが出発するのは同時刻でした。
とは言ってもさすがに多少待ってくれるようで、僕が乗った後でも5分ほど遅らせて出発しました。
14:10 鴛泊港 発
これから稚内へ向かおうとするフェリーを横目に、鴛泊港を出発です。
2014年3月に新フェリーターミナルとしてオープンし、海の駅おしどまりという施設になっています。
利尻島は西が利尻町、東が利尻富士町と分かれています。
鴛泊は利尻富士町の中心部であり、港から少し離れると観光客を迎え入れるホテルが立ち並びます。
鴛泊から利尻町の中心部、沓形を結ぶ道道105号を西へ。利尻島を一周する道路の一部です。
そこから利尻山の方へ向かう道路に入ります。こちらが利尻空港へ一本道です。
14:28 利尻空港 着
他にも鴛泊から乗られていた方が、お1人降りて行かれました。
利尻空港へ路線バスで訪れる方は少なく、観光客でも観光バスから降りられるのがメインに思います。
ガラス張りのコンパクトな建物の前には、石造のモニュメントが置かれていました。
利尻山とそれに打ち付ける荒波がモチーフになっているのでしょう。
まだ出発の1時間以上前、非常に閑散としています。
ANAは夏季限定で利尻〜千歳(札幌)便、JALは年中利尻〜丘珠(札幌)便を運行しており、今の時季はJALだけです。
自動販売機ではビールやパン、利尻昆布関連のお土産品を販売していました。
2階に売店があるのですが、閑散期のためか営業していません。空港周辺には正直何も無いので、買い物などは港や町で済ましておきましょう。
ここからは展望デッキにも出られます。
滑走路の向こう側には利尻山が綺麗に見られるはずですが、残念ながら今日は雲に隠れちゃっていました。
丘珠空港からのJAL便が利尻空港に着陸です。搭乗するのはこちらの折り返し便となります。
保安検査場を抜けまして、待合所へ。
定員が48名となっており、今日も含めて満席が続いています。
空港で待っている間、地元の方が数日後の航空券を購入しようとしていましたが、やはり満席だったようです。
後ろ寄りの入り口からパカっと開いた階段を登り、プロペラ機へ乗り込みます。
機内は非常にシンプル、道内航路でそんなに長くないので狭さも気になりません。
飛行機は滑走路へ向かって動き始め、管制塔が無い小さな空港から離れます。
海の向こうに見えているのは、出発地の礼文島。お隣の利尻島より飛び立ちまして、本格的な長距離移動が始まります。
15:55 利尻空港 発
ガタガタと振動を感じながら、利尻空港を離陸。
礼文島から行き着いた鴛泊港を見下ろしつつ、利尻島を離れていきます。
利尻山を隠しているのは厚い雲。
ならば雲の上まで飛んでしまえば、その頂を見られるということです!
まさに氷山という言葉が似合う様相、日本じゃない本場のアルプスのようです。
あっという間に利尻山からはお別れ、すぐに離れていってしまいました。
強い日差しが差し込む一方で、日本海は厚い雲に覆われるばかり。
その切れ目には僅かに陸地の海岸が見られました。おそらく航路的に、焼尻島かと思われます。
機長さんからのアナウンスがありまして、留萌市上空を飛行中とのこと。
日本海沿岸をバスで行ったら何時間もかかるのに、数十分でここまで来られるとは飛行機のチートっぷりを突きつけられました。
シートベルト着用サインが点灯しまして、雲の下へ。
鉄道路線が通っていない、一面田んぼが広がる新篠津村の上空あたりと思われます。
北海道最大の河川、石狩川を渡りました。雨が降っていたのか、濁っているようです。
函館本線の線路も見えまして、札幌のベッドタウンである江別市野幌駅を出発した列車が、高架線を走っています。
老朽化に伴って解体が進められている、北海道百年記念塔の様子も観察できました。
新千歳空港と異なり、札幌周辺に広がる市街地の遊覧飛行を楽しませてくれて、どこを飛んでいるのか釘付けにされます。
17:15 丘珠空港 着
陸上自衛隊丘珠駐屯地との共用飛行場であり、1961年から民間機の乗り入れが始まりました。
基本的には道内航路に特化した空港ですが、2023年春からは丘珠〜名古屋小牧のフジドリームエアラインズが就航開始するなど、本州からの航路も設定されています。
駐機場から歩いて空港ターミナルへ。
札幌市内の空港というイメージからすると、意外と建物は小さかったです。
丘珠空港から札幌市中心部へは、バスが便利となっています。
しかし、1.5km程歩けば札幌市営地下鉄東豊線の栄町駅があります。
空港アクセス駅と名乗るには離れていますが、これくらいなら十分歩ける距離です。
バスよりも地下鉄の方が安いので、今回は歩くことにしました。
イオン札幌栄町店が見えてきたら、栄町駅はもうすぐそこです。
ここまで丘珠空港連絡バスも走っているので、歩くのが辛ければこちらも便利かと思います。個人的には全く苦ではありませんでした。
地下鉄東豊線最初の開業区間は、1988年の栄町〜豊水すすきの間です。
ラインカラーはスカイブルー。現在4両編成で運行していますが、増両できるようにホームが伸ばされていました。
東豊線で走っているのは全て9000形、2015年から運用開始した車両です。
17:57 栄町駅 発
札幌市営地下鉄はゴムタイヤで走っており、中央のレールをまたぐ案内軌条式鉄道と言われます。
18:09 さっぽろ駅 着
JR線の乗換駅である、地下鉄さっぽろ駅で下車しました。
地上の世界へ出てきまして、もう日が暮れかけているのに気がつきます。
ここから本州へは、新千歳空港からの飛行機へ乗ることになります。
何かあった時のため、丘珠空港〜新千歳空港の移動に余裕を持たせていたので、札幌駅周辺で所用を済ませます。
所要の一つがこちら。ユニクロ札幌エスタ店では、北海道ゆかりの企業とコラボしたTシャツなどを販売しています。
せっかくなのでAIRDOのバッグとTシャツを買ってきました。
地下街のケンタッキーで北海道最後の食事。単品ではなくセットを注文しているのでこの上ない贅沢です。
そろそろ札幌駅を出発しないと脱北事故を起こしかねない時間帯、快速エアポートで新千歳空港に向かいます。
帰宅時間帯と重なってしまったので、ホームには割とたくさんのお客さん。
というわけで、『余裕』の旅をご用意してくれました、指定席車両『uシート』使わせていただきます。
ホーム上にて、えきねっとチケットレスで購入。車内は本当にガラガラで、空間を贅沢に使わせていただきました。
19:50 札幌駅 発
道内随一の光を浴びて、北の大都会を後にします。
将来的には北海道新幹線がやってくるこの辺り、いつか札幌駅から新幹線通学してみたいですね。
もしそれが現実になってたら、留年しすぎて再入学してることになりますが(笑)
複々線区間を終えまして、千歳線に入り新札幌駅に到着。
札幌の副都心であり、JR北海道では札幌駅、手稲駅に次いで3番目に利用者数が多い駅です。
まもなく北広島駅に到着、右手にはエスコンフィールドHOKKAIDOが見えてきました。
黒を基調にしたガラス張りの先進的デザイン、夜間には光の空間が漏れ出してきて、その輝きが一層引き立ちます。
かつての千歳空港駅前、南千歳駅に到着。
石勝線との分岐駅であり、帯広・釧路方面からの特急とかち・おおぞら号が停車します。
20:28 新千歳空港駅 着
札幌駅から40分足らずで、終点の新千歳空港に到着しました。
折り返し列車は1日2往復設定されている、特別快速エアポート。
表定速度84.7km/hという特急顔負けのスピードを誇ります。
改札を抜けまして正面左、今回はANA系列の飛行機にお世話になります。
北海道の広さ分からせてやんよ看板を目の前に、ここまでの移動距離を確認してみましょう。
礼文島から千歳まで、すでに直線距離は東京から京都くらいです。これが一つの都道府県に収まっているのですから、やっぱり北海道を舐めちゃいけませんね。
保安検査場を抜けまして、今回乗る飛行機をお披露目。
水色と黄色のパステルしっぽ、いつもお世話になっているAIRDOさんです。
21:20新千歳空港発羽田行きで、AIRDOの最終便となっています。
座席に座って外を眺めていたら、AIRDOロコンジェットが来ました。
機内サービスのカップがポケモン仕様だったり、通常と異なる点が多いので、いつか乗ってみたいんですよね〜。
滑走路へ向かうところで、照明が弱められました。
これは夜間の脱出時、暗さに目を慣らしておくためです。
滑走路へ向かう最中には、点々とした青い光が飛行機を導いていきます。
新千歳空港はこれが特に広く続いていて、そのワクワク感を高められます。
21:20 新千歳空港 発
遂に北大地を離陸しました。
思ってみれば今回の登校、北海道本島は丘珠空港〜千歳空港しか移動しておらず、意外と短かったんですね。
半円のターミナルへ帰巣する銀翼の鳥たち、照明も相まって魔法陣感を連想させられます。
千歳市街の明るい光を見られる時間は割と短く、すぐに田畑が広がる真っ暗なエリアの上空へ。やはり丘珠空港のように街の中にある空港とは異なります。
おそらく、むかわ町の市街地より北海道の上空を出て行きました。
機内サービスでは、ほたてスープをチョイス。海鮮ならでは塩みの主張が強く、見た目の透明感とは違った濃さがあります。
座席に余裕があって1列空いていたので、機内販売でタンブラーを購入しました。
AIRDOのバッグを座席下に入れていたのを気づいてくださって、メッセージ付きでキャンディーまでいただきました。ありがとうございます。
22:10頃もう一段階照明が落とされまして、福島から郡山あたりを航行中です。
降下を開始して22:30頃、雲の中へ入ってかなり揺れています。北海道もそうでしたが、今日は全国的に曇り空だったようです。
ようやく景色が見えるようになった頃には、東京湾の工業地帯。
最後に見た景色は北海道の大地で、夜間雲の厚いフライトはどこでもドアです。
何の気なしに翼の後ろを見てみたら、夜の空に光が点滅していました。
あちらも同じく羽田空港へ着陸しそうな飛行機、空中戦を目の前にしているようです。
どこかのイルミネーションですかってくらい、カラフルなライトで彩られた空港の滑走路。
フライトの最後にこれを持ってこられるとは、意図しなくともこの上ない演出です。
23:00 東京国際空港 着
ターミナルにはTOKYOの文字、羽田空港に到着しました。
2022年秋よりAIRDOと経営統合した、ソラシドエアと隣り合わせ。
北海道と九州、それぞれへ地域密着型の航空会社として親しまれています。
ターミナルまではバスに乗車、ここでもロコンジェットと遭遇しました。
23:16 羽田空港第1・第2ターミナル 発
急いで京急線のりばまでやってきまして、エアポート急行に乗車します。
23:39 品川駅 着
この時間ではもう東海道新幹線は走っていない時間帯。
山手線に乗車しまして、東京駅に向かいます。
23:58 東京駅 着
東海道本線の最終列車が発車する程の深夜です。
そんな深夜の時間に京都へ向かう、手段はもちろん夜行バスです。
八重洲口から東京駅鍛冶屋橋駐車場へ向かいます。
駐車場内は撮影禁止なので撮れていませんが、ちょうど入って行ったあちらのバスに乗車しました。
24:20 東京駅鍛冶屋橋駐車場 発
建築学科の学生さんでしょうか、住宅模型を荷物棚に置いている方もいらっしゃって、東京からのエクストリーム登校は市民権を得てきました。
もうこれくらいの距離じゃあエクストリームと言えないかもしれません。
4列シートの格安夜行バスですが、充電コンセントが付いているのは非常にありがたいです。
明日の講義に備えてタブレットを充電しておきましょう。
海老名サービスエリアにて休憩です。
カラフルな夜行バスがズラッと並んでいて、その姿は本当に圧巻でした。
この時間でも売店がやっていて、ちょっとお腹を満たすこともできます。
海老名からずっと眠っていまして、5時頃は愛知県から三重県へ入っている辺りでした。
7:40 京都駅 着
夜行バスを検索すると出てくる、「変なホテル前」で降りました。
夜行バスで到着した後は、ここで朝マックを食べることも多いのですが、東京駅出発が遅かったので結構カツカツ。
大人しくJR嵯峨野線に乗って、まっすぐ大学へ向かいましょう。
と思ったのですが、最後の最後でハプニング。
嵯峨野線ホームは入場制限がかけられていました。
車両不具合により到着が遅れており、列が出来上がっています。
ちょっとヒヤヒヤしましたが、無事列車は到着しまして、乗り込みます。
立命館大学衣笠キャンパスのJR最寄り駅である、円町駅で下車しました。
セブンイレブンで朝ごはんを買って、食べながら通学します。
食パンを咥えて走る女子高生は絶滅危惧種ですが、礼文島から登校してしまいにはメロンパンを片手にする新種が現れました。
というわけで、9時前に立命館大学衣笠キャンパスに到着。無事1限の授業を受けられました。
この時の講義内容が、生活行動を含めた時間地理学で、通学ルートにも関わるもの。礼文島からきましたよと心の中で自慢しまくってました。
最果てのさらには離島からの登校、長距離通学は何度か取り上げていますが、お楽しみいただけたなら嬉しいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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