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【廃止寸前1本だけ】なぜ新下関駅始発で残る?ひかりレールスター590号[2307美祢線(2)]

2023年7月10日

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こちらは山陽新幹線で活躍する700系レールスター。

「ひかりレールスター」として、関西〜福岡の航空機シェアを奪い返すのに貢献しました。

しかし、2011年の九州新幹線全通以降、現在では山陽新幹線こだま号で使われることが殆どになっています。

2023年春のダイヤ改正以降、ひかり号に充当されて「ひかりレールスター」として走る定期列車は1日1本だけです。

 

なぜここまで数を減らしたのか、そして最後の1本がここで残っている理由を探ってみましょう。



やってきたのは朝の新下関駅です。

もう少しのところで新関門トンネルがあり、九州はすぐそこ。下関市は関門海峡を挟んで北九州市の影響を強く受けており、山口県最大の都市になっています。

 

コンコースのセブンイレブンおみやげ街道は6:30〜21:30の営業で、まだ開いていません。

あらかじめ買い物をしておきたい方は、駅から10分ほど歩けばセブンイレブンがあります。

 

さらに2023年5月31日をもって、新下関駅のみどりの窓口は閉鎖されてしまいました。みどりの券売機や下関駅のみどりの窓口を利用することになります。



さて、こちらが新下関駅山陽新幹線の時刻表。

基本的にこだま号が停車しており、朝夕の時間帯ひかり号とさくら号が時々停まります。1日1本だけつばめ号が設定されており、本州までつばめ号が来るのはこれが唯一です。

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そして今回ご紹介するのが、ひかり590号岡山行き。これこそ最後1本の「ひかりレールスター」、絶滅寸前の新幹線です。

新下関駅を始発駅として、早朝6:11の出発。関西にも九州にも行かなくなってしまいました。

 

発車標にも「ひかり」ではなく、「ひかりレールスター」と書かれています。この時点でひかりレールスターの特別っぷりがわかるものです。

 

3番線ホームに上がってきまして、700系レールスターが停車中。

車両自体はこだま号で頻繁に目にしますが、ひかり号では本当に珍しくなりました。

 

一方で、停車駅を見てみるとほぼ各駅停車状態。通過するのは1駅だけで、こだま号とほぼ変わりません。



700系新幹線は東海道新幹線から姿を消しましたが、山陽新幹線では元気に活躍中です。

と言っても目元が黒く塗られており、表情はかなり異なっています。ちょっと闇を抱えていそうな大人風の顔つきです。

 

「Rail Star」と刻まれたロゴの横、先頭車両8号車の車内へ入ります。

 

また詳しくご紹介しますが、4〜8号車は2+2配列の座席配列。東海道山陽新幹線ならグリーン車の座席配列であり、2+3よりも当然空間が広いです。



6:11 新下関駅 発

発車後の自動放送でも「ひかりレールスター岡山行き」と流れました。

 

どんどん速度を上げていきまして、あっという間に240km/h近くへ。

 

山陽新幹線で唯一こだま号しか停車しない駅、厚狭駅を通過しました。

ひかり590号が「ひかりレールスター」でいられる所以、それは厚狭駅を通過していることだけです。唯一の通過駅が厚狭駅となっており、それ以外全て停車します。

 

260km/h超の速度で通過、700系レールスターの最高時速は285km/hとなっています。



のぞみ号も停車する、新山口駅に到着です。

ちょうど向かい側には、こだま773号博多行きが入線。新山口駅始発となっており、特に山口から博多への通勤需要を汲んでいます。

 

新山口駅でほとんどのお客さんが下車してしまい、そのままホーム上で次の新幹線を待っていらっしゃいました。ひかりレールスター590号が新下関始発の理由はここにあります。

2023年春のダイヤ改正以前、ひかりレールスター590号は小倉始発で、新下関駅と厚狭駅を通過していました。当時新下関駅始発のこだま770号からはのぞみ2号に乗り継げず、後続ののぞみ4号東京駅着は11:36でした。

しかし、ひかりレールスター590号を新下関始発にしたことで、新山口駅でのぞみ2号へ乗り継ぐことが可能に。東京駅の到着は10:57となり、新下関駅周辺から東京駅に40分近く早く着けるようになったのです。

 

のぞみ2号へ接続する役割を果たしたひかりレールスター590号。早朝における在来線から新幹線への接続を考慮した結果、「始発駅を新下関駅」にして「厚狭駅を通過する」ひかり号としての運行が生まれたと考えられます。

ここからは各駅停車となり、各新幹線駅から主要新幹線駅へ輸送する、完全にこだま号の役割を果たします。



ひかりレールスターが設定された理由は、関西〜福岡における航空機と新幹線のシェア争いにあります。

1999年に伊丹〜福岡で格安航空の運航が開始。これに対抗して2000年にデビューしたのが、ひかりレールスターでした。

 

それまでも航空機に対抗した0系新幹線「ウエストひかり」が走っていましたが、のぞみ号運行開始後待避のため所要時間が延びるように。

そこで最高速度285km/hへスピードアップし、サービスも向上した「ひかりレールスター」が登場したのです。

 

4〜8号車の指定席では2+2の座席配列を採用し、「サルーンシート」と呼ばれています。リクライニングもかなり倒れ、航空機の一段階上をいく快適性です。

 

5〜8号車の車端部壁面には、コンセントが備わっています。最近では全席でも当たり前になりつつありますが、0系新幹線の後継としてはかなり画期的だったはずです。

また、4号車は「サイレンスカー」として設定され、車内アナウンスや車内販売の声かけもしていませんでした。チケットホルダーを設けることにより、当時指定席でも行っていた車内検札も省略していたそうです。

この設定は九州新幹線全通により、2011年3月11日をもって廃止されました。

 

この九州新幹線全通による、山陽九州新幹線直通運転開始が、ひかりレールスターにとっての転機に。ひかりレールスターの役割を引き継ぐ九州新幹線直通の「さくら号」が登場したのです。

N700系新幹線が使用され、そのまま九州新幹線へ連れていってくれるとなれば、さくら号の方が便利に。ひかりレールスターの車両はこだま号へ流れていったのでした。



どんよりとした雲の下、周南コンビナートが広がります。

夜でもキラキラした工場夜景を楽しめるこの辺り、まもなく徳山駅に到着です。

 

徳山駅には工業地帯周辺への出張需要が考慮され、のぞみ号も停車します。

 

徳山駅を出発したところの煙突では工事が行われていました。足場が丸く組まれていて、その横に長いクレーンが立っており、ちょっとヒヤヒヤする珍しい光景です。



山口県最後の駅、新岩国駅に到着です。

山陽新幹線で一番利用者が少ないですが、ひかり590号は停車します。

 

のぞみ2号東京行きに追い抜かれました。新山口駅でひかりレールスターから乗継いだお客さんの多くが乗車されているはずです。



徳山駅より車掌さんがコンパートメント席の扉を開けられました。

8号車の運転席寄りには4つコンパートメント席が設定されているのです。この時利用されている方は、いらっしゃいませんでした。

 

ちょっと通路から覗かせていただきますと、テーブルを挟んでソファのような座席が並んでいます。以前乗車したこともありますが、プライベート感が高く長時間でも非常に快適でした。

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ひかりレールスターで運行される時の他、こだま845・856・858・860号でもこの個室を利用できるようになっています。3人以上の場合利用可能で、それ未満で利用する場合は不足人数分の乗車券と特急券が必要です。



7:11広島駅 着

フルカラーLED発車標でも赤く「ひかりレールスター」と表示されています。

停車駅は「各駅」、もうこだま号にしか見えません。

 

徳山駅を中心にそれなりのお客さんが乗ってこられていましたが、広島駅始発の7:18発のぞみ80号が設定されているため、新大阪・東京方面へ向かう方は乗り継いで行かれました。

 

マツダスタジアムや貨物駅を見下ろしつつ、広島駅を出発します。



東広島駅で4分ほどの停車。

向かいからはこだま833号博多行きが来ました。同じ700系レールスターですが、やはりこだま号としての運行です。

 

そして広島始発の東海道山陽新幹線、のぞみ80号東京行きに追い抜かれました。

 

駅停車中、車内表示器に注目していると、RailStarのロゴまで流れてきます。

この日は列車運休情報などで中々流れておらず、見られたのは東広島駅が最初になりました。通常なら新下関駅停車中や発車直後でも見られるそうです。

 

三原駅に到着。新幹線ホームは三原城の石垣を横切っており、北側にお堀が広がっています。

 

新尾道駅でのぞみ82号東京行きに追い抜かれました。広島駅始発の東海道山陽新幹線、2本目の追い抜きです。

 

向かいにこだま835号博多行きが到着、あちらは500系新幹線での運行です。

かつては東京〜博多のぞみ号で走っていましたが、短い8両編成になって一部こだま号にて運行しています。



のぞみ号も停車する、福山駅に到着しました。

ひかりレールスターを駆逐した張本人がご登場。さくら543号鹿児島中央行きが停車していました。

利便性を考えると九州新幹線へ直通してくれるなら、ひかりレールスターが置き換えられていくのは当然です。

 

のぞみ86号は30分後出発のため、各停でも岡山駅で乗り継いだ方が早いです。全てのお客さんがひかりレールスターに乗車されました。



新倉敷駅に停車。

N700S新幹線のぞみ4号に追い抜かれました。博多始発の東海道山陽新幹線は2本目です。

 

合計4本の新幹線に追い抜かれたひかりレールスター。残すところあと一駅で終点の岡山駅に到着です。

 

山陽自動車道と共に、高梁川を渡る地点でJR伯備線と立体交差しました。



いい日旅立ちが流れまして、岡山駅到着放送が流れます。

乗り換え路線が非常に多いため、いつもどおり長い案内です。「次は岡山」の表示は上から落ちてくるモーションになります。

 

右手には岡山の車両基地が広がっており、たくさんの黄色い電車たちが停まっていました。今月中には桃色の新型車両227系電車が導入予定です。

 

新下関駅から2時間12分、終点の岡山駅に到着しました。



8:23 岡山駅 着

当駅止でも「ひかりレールスター」の表示は健在。

1日1度だけの特別な案内で、各駅一度限りです。

 

それだけ特別な存在として大切にされた、ひかりレールスター。時代の移り変わりにより、何時ひかり号から退くか分からない状況です。

 

朝早い上り便で乗車難易度は高いですが、ぜひ一度乗車しにいらしてください。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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