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【熊野市〜大阪】南紀&近鉄特急で繋がる!便利な特急リレー旅
世界遺産熊野古道の玄関口の一つ、熊野市駅に来ました。 この日は熊野大花火大会の開催日。多くのお客さんが集まっており、夜行含め臨時列車も沢山運行されていました。 これから向かうのは大阪駅。 ...
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国鉄阿佐線は牟岐駅から後免駅を結ぶ、大正11年に計画された路線です。
牟岐駅〜海部駅は1973年に開業し牟岐線に組み込み。国鉄の赤字により工事が中断した区間についても、海部駅〜甲浦駅は1992年に阿佐海岸鉄道阿佐東線、後免駅〜奈半利駅は2002年に土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線として開業しています。
2020年12月には阿佐海岸鉄道がDMVを導入、土日祝限定で室戸市の海の駅とろむまで運行していました。
そして2023年8月29日、1日限りで未成区間の甲浦駅〜奈半利駅を結ぶ、特別運行が行われることになったのです。
形が違うとはいえ、計画から101年越しに阿佐線が鉄道会社によって結ばれたことになります。
1日限りで実現した貴重な機会、高知県の最東端の駅から最西端の駅まで、鉄道を使って横断してみることにしました。
まずやってきたのは高知県最東端の駅、甲浦駅です。
初っ端から残念なお知らせですが、阿佐海岸鉄道の甲浦駅はDMV導入に伴い、既に鉄道駅としては廃止されています。
現在残されているプラットホームは廃駅の遺構。
100mほど伸ばして鉄道とバスを切り替える「モードインターチェンジ」を設置、阿佐東線は阿波海南信号場〜甲浦信号場を結ぶ路線ということになりました。
現在甲浦駅として扱われているのは、あくまで甲浦信号場の近くにあるバス停というだけです。
甲浦駅が廃止されたことは知っていましたが、ここではあまり細かい所を気にせず、鉄道会社の交通機関で高知県を横断できたということをお楽しみいただけたら幸いです。
という訳でDMVの鉄道区間も楽しむべく、阿波海南駅に来ました。
元々ここはJR牟岐線の途中駅だったのですが、DMVのモードインターチェンジを設置するため、阿佐海岸鉄道が阿波海南駅〜海部駅をJR四国から引き継ぎました。
牟岐線と阿佐東線の線路は完全に分断されており、車止めの近くにモードインターチェンジが設置されました。
同じ線路上を鉄道とDMV両方が走ることは、信号設備上許されておらず、普通鉄道かDMVどちらかの選択を迫られた形です。
ちょうど定期便がやってきまして、バスモードから鉄道モードへの転換を見られました。
前方の鉄輪が降りてきまして、車体が持ち上げられます。
鉄同士擦れる音を奏でながら、トンネルへと消えて行きました。
今回のDMV奈半利便は、特別運行としての貸切です。
ある意味旅行商品のようなもので、社員さんからパンフレットなどいただきました。黒い箱は写真集となっています。
阿波海南文化村よりやってきました、DMV阿佐海岸維新号です。「特別運行奈半利駅」と掲げられています。
車内へ乗り込みますと、バスモードから鉄道モードへ切り替えが行われました。
どのようにしてボンネット車両が線路上を走れているのか、かなり詳しく説明してくださります。
鉄道モードとして、トンネルへ入って行きます。この走行音など鉄道らしさを感じられますので、先の動画でお聞きいただけたらと思います。
海部駅に到着です。
かつてはJR四国牟岐線と阿佐海岸鉄道阿佐東線の境界駅でした。
国鉄の赤字に伴い工事がストップした阿佐線、第三セクターとしてそれを引き継ぎ、1992年に阿佐東線が開通しました。
右手にはかつて使用されていた、普通鉄道車両が留置されています。この車も一体どうなるのでしょうか…。
DMVは長いトンネルへと入って行きます。
阿佐海岸鉄道阿佐東線は10kmの路線、そのうち半分をトンネルが占めています。19本のトンネルと高架線や橋梁によって結ばれる高規格路線です。
基本的に山の中を走って行きますが、所々では左手に綺麗な海を見られます。
唯一の有人駅、宍喰駅に到着しました。徳島県海陽町南部の中心部に位置しており、少し歩いたところには宍喰温泉や道の駅もあります。
宍喰駅近くには阿佐海岸鉄道本社があって、隣接する車庫にも普通鉄道の車両が残されていました。
第4宍喰トンネルを走りまして、ここで徳島県から高知県の県境を越えます。
高知県最東端の駅とさせていただきましょう、甲浦駅跡のホームが見えてきました。旅のテーマともなります、高知県横断の始まりです。
甲浦駅跡を少し過ぎて、甲浦信号場に停車。
ここで鉄輪が上がりまして、鉄道モードからバスモードへ切り替えられました。
そして高架線から急勾配のスロープで、ぐるっと降りて行きます。
甲浦駅バス停に到着しまして、ここから高知県横断の始まりです。
最初の停留所は海の駅東洋町です。
8月いっぱいまでは、海上アスレチックのビーチホッピングを楽しめるとのこと。高さ10mのジャンボスライダーが目玉です。
以前訪れた時は秋でもキャンプの方が多くいらっしゃって、商業施設もかなり賑わっていた印象でした。東洋町名産のポンカンも販売しています。
こちらでは幼稚園の園児の方々が、うちわを振ってお出迎えしてくださいます。NHKの方も取材に来られていました。
ほとんどのDMVは徳島県へ戻り、海の駅宍喰温泉が終点です。
1日1往復だけ海の駅とろむ行きが運行されており、今回の奈半利便もこれと同様のルートで室戸方面へ南下します。
高知県の東端に位置する東洋町は、海が非常に綺麗でサーフィンのまちとして知られています
こちら生見海岸では世界的大会も行われ、サーフィンのために移住される方もいらっしゃるとのことです。
車内広告ではDMVが走らない周辺自治体についても、いろんな写真とともに紹介されていました。ごめん・なはり線沿線自治体も含まれており、阿佐線沿線とも言うべき自治体たちです。
右手には険しい山々が見えてきましたが、この辺りであの山を越える国道493号が分岐します。
室戸岬を経由せずに奈半利町へ抜けられるのですが、いわゆる酷道と呼ばれており、短絡ルートとしてはあまり機能していません。
東洋町から室戸岬までの40km、このような岩場が続きます。
ここはお遍路さんの難所と言われ、道路が整備される前はこんな海岸をずっと歩き続けていたそうです。
打ちつける波に大きな岩が現れ、その音からゴロゴロ浜と言われます。
この辺りで東洋町から室戸市に入りました。
まず迎えられるのは佐喜浜の集落。
地方コンビニや小中学校があったりと、港町としてまとまっている印象です。
しばらくすると鹿岡鼻に大きな岩が見えてきました、夫婦(みょうと)岩です。
かつての室戸岬町と佐喜浜町における境であり、しめ縄で結ばれています。岩柱には風触によって、蜂の巣構造と風紋が描かれているとのことです。
海の駅東洋町から30分以上走り続け、むろと廃校水族館に到着。通常のDMVでもこの区間、一つも停留所がありません。
こちらは旧椎名小学校を改修した水族館。1回1000円の「ぶりくじ」「さばくじ」では、特等から4等までサイズの異なるぬいぐるみをもらえます。
屋外プールに亀が泳いでいたり、手洗い場や跳び箱を水槽へ活用したりと、非常に人気の場所です。
続いての停留所は、室戸世界ジオパークセンター。この辺りでは高知東部交通の路線バスが走っているのですが、室戸岬方面へはここで乗り換えることが多いです。
展示スペースでは室戸地域の独特な地形について解説されており、地理オタクにはたまらない場所かと思います。
ここを出て左には、高知県海洋深層水研究所が位置しています。
海洋深層水を商品化したのは室戸が最初、ここは海岸からの落ち込みが激しく、遠方まで行かずとも深海の水が採れるのです。
御厨人窟・神明窟は弘法大師が「空海」の名をつけた場所ともされます。
左手には海と空しか見えておらず、それが由来とのことです。
そして遂に四国を代表する岬のひとつ、室戸岬に到着しました。
ここも訪れたことがありますが、岬っぽいというよりゴツゴツした岩が並ぶ海岸という印象です。
山の上には室戸岬灯台があって、日本一のレンズと明るさを誇ります。海における交通の要衝として、今も活躍している地点です。
DMV定期便の最終到達地点、海の駅とろむで休憩となります。
ここには室戸ドルフィンセンターがあって、イルカと一緒に泳いだり、餌やりを体験できる触れ合い施設となっています。
ここでも記念品を頂きました。室戸市はキンメ丼が非常に有名、海洋深層水などもいただいています。
ここでは室戸市の方がお出迎えしてくださいまして、室戸ジオパークのキャラクター「まがり博士」の着ぐるみをきた職員さんもいらっしゃいました。
そしていよいよDMVが営業運転を行なっていない、奈半利方面へ走り出します。
室戸市の方々にお見送りされまして、阿佐線開通の歴史的な1ページの一幕です。
普段DMVが来ない室戸市中心部へ、もし阿佐線の鉄道がここへ来ていれば、この辺りに室戸駅があったと言われています。
DMVから見る室戸市役所、なんとも不思議な感覚と言わざるを得ません。
海沿いを走ったのち、吉良川の街並み歴史的な集落に至ります。こちらは高知県で初めて重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
ここはかつて備長炭の生産で栄えたまち、台風に備えて外から街を見た時、屋根が揃って見えるようになっています。
ジオパークの要素の一つである、羽根岬を通過。
大昔に海底だった場所であり、貝が這った大きなミミズのような跡や、水の流れの跡などが見られるそうです。
そしてついにDMVは奈半利町に入りました。
室戸市についてはDMVが週に1度走っていますが、奈半利町内を旅客営業するのはこれが初めてです。
これまでそんなに景色が変わらない海沿いを走っていたのですが、正面には市街地が広がります。
そしてついに看板にも奈半利駅の文字が現れました。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の終着駅であり、阿佐線として計画されたうちの西側で、鉄道路線として実現しています。
奈半利駅はお祭り状態となっており、町民の方をはじめとして多くの方に迎えられました。
奈半利駅のオリジナルキャラクター・なはりこちゃんと、奈半利町のきんめにゃんもいらっしゃいます。
阿波海南駅からは2時間半かけて、終点の奈半利駅に到着です。
かなり長時間の乗車となりましたが、遂にDMVがここまで繋がったことに感動するばかりです。
阿佐線が計画されてから101年。
鉄路では繋がっていないとはいえ、鉄道として走れる車両のDMVが未成区間を結んだのは、非常に大きな出来事です。
駅前ではイベントとして、鉄道モードへの切り替えも行われていました。
さて、奈半利駅からは土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線に乗車します。
DMVがここまで来たとなると、奈半利駅にもモードインターチェンジを設置して、ごめん・なはり線乗り入れを妄想してしまいます。
しかし、ごめん・なはり線は末端部でも朝夕は利用者が多く、DMV車両への統一は難しいです。普通鉄道とDMV両方が同じ線路を走れるよう法改正されれば、日中のみDMV運行など可能になりそう。
現実的な理想としては、高架線を少し延長してDMV乗り換えホームとモードインターチェンジを設置。バスモードへ転換したのち道路へ降りていくというものです。高知県がDMVに将来性を見出していただければ、こういったこともできるのかなと思われます。
そしてホームに止まっていましたのは観光列車しんたろう号です。この列車の魅力はと言うと…
海側に設けられたこのオープンデッキです。
フェリーのテラスをイメージしたかのような空間、直に風に当たれる素晴らしい車両となっています。
12:32 奈半利駅 発
駅前広場に停車中のDMVを見送りつつ、奈半利駅を発車しました。
NHKの方がDMVとしんたろう号を一緒に撮ろうと話をしていらっしゃって、こっちは素人のクセに偉そうに、分かってるな〜と思ってました(笑)
次の田野駅がある田野町は、横断幕が掲げられている通り四国で一番面積の小さい町。わずか6.53㎢で、全国21位の小ささです。
そして列車はトンネルへ、オープンデッキにいる人は気をつけてと自動放送がありますが、ひんやりした風と轟音を直に感じられるのは、大掛かりな鉄道インフラの強さを突きつけられます。
この通り太平洋を一望できまして、潮風を感じられるようでした。
安芸市街に入りまして、この列車はまもなく終点の安芸駅に到着です。
12:59 安芸駅 着
車体の4分の1をオープンデッキにするという、なかなか思いつくことのなかった二重構造。追加料金も不要な普通列車ですから、ぜひ乗ってみていただきたいです。
安芸駅からは10分の接続で、普通列車高知行きに乗り換えとなります。
13:09 安芸駅 発
安芸駅は安芸市中心部に設置されており、市役所や商業施設も近くに集中していました。
車庫が併設されており、もう1編成同型でオープンデッキを備えた、やたろう号がいます。高知県の偉人となっています、幕末の陸援隊隊長である中岡慎太郎と三菱財閥の創設者である岩崎弥太郎が由来です。
次のあき総合病院前駅は2021年に開業した新駅。生活利用者の利便性向上を図ったものです。近くには県立安芸高校桜ヶ丘校舎もあるため、こちらへの通学も非常に便利になったはず。
海側にありますカリヨン広場には、かつて土佐電気鉄道安芸線の安芸駅がありました。1974年に廃止されたのですが、阿佐線建設を促進するためだったと言われています。今でもトンネルなど廃線跡は残されており、部分的に通ることもできるそうです。
穴内駅で普通列車奈半利行きと行き違いました。
JR四国の車両も乗り入れていまして、観光列車「志国土佐時代の夜明けのものがたり」も走ることがあります。
片側一線スルー構造の駅がいくつか設置されていまして、速達化も視野に入れた線形です。
高架線によって琴ヶ浜沿いを走行、弓形の砂浜をしっかり見渡せました
芸西村に入りまして、太平洋は線路を風から守る防風林的役割を果たす森林へ、ここでも高架線で敷設されています。
ここ西分駅近くの芸西西ICまで、高知東部自動車道が伸びており、2025年春には高知龍馬空港IC〜香南のいちICが開通し、自動車専用道で結ばれる予定です。この先にも延伸計画があり、安芸市までの建設が進められています。
ごめん・なはり線が開業したのは2002年のこと、非常に新しい路線でして日本国内で開業した最後のローカル線です。
国鉄の赤字によって工事が中止された1981年の時点で、約44%が完成していました。いつまでも鉄道が通らず放置された高架橋や盛土は、土佐の万里の長城、バベルの塔と呼ばれていたそうです。
夜須駅までは山がちな地形ということで、多くのトンネル区間が占めていました。
まもなく夜須駅というところで東の港へ注目してみますと、何やら踏切が見えています。ごめんなはり線以外に鉄道は無いのに、あれは一体何なのでしょう。
あちらは手結港可動橋でして、船が通るときに橋が上げられる跳ね橋です。おそらく橋が上がった時に、遮断機が降ろされるのでしょう。
あたおか駅…ではなく、あかおか駅を出発しますと、雄大な大海原とはお別れです。
香南市の中心駅、のいち駅で普通列車と行き違います。
この辺りで日中ながらロングシートは座席が全部埋まるくらい。赤字ローカル線で厳しい状況とはいえ、重要な足として機能していることが分かります。
物部川を渡ったこの辺りに高知龍馬空港があり、空の玄関口となっています。
後免町駅の近くには、とさでん交通の終着駅があります。ローソンと路面電車のプラットホームが完全に接続しており、店舗と待合室が完全に一体化した不思議な駅です。
土佐電気鉄道安芸線は後免町駅から後免駅まで行き、土讃線への乗り入れも行っていました。
高架線から降りてきました土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線は、JR土讃線と接続します。
ここからは岡山から高知を結ぶ特急南風も走る幹線、土讃線へ乗り入れて高知駅を目指します。
途中の駅で特急南風と行き違いのため運転停車しました。バケモノ気動車と言われる新型2700系、アンパンマンラッピング車両でした。
高知駅周辺の市街地では連続立体交差事業が行われ、2008年に高架化されています。非電化単線の高架区間という全国的基準としては珍しいです。
それと同時にオープンした新駅舎、終点の高知駅に到着です。
14:24 高知駅 着
乗ってきた1両編成の普通列車は、それほど時間が経たないうちに回送されていきました。
鯨のあばら骨駅舎と呼ばせてもらっています、カッコいい屋根が特徴的の高知駅。
中心部からやや外れているため、後免町駅からとさでん交通の路面電車で、はりまや橋停留所へ行く方も多いのかなと思います。
1時間ほど時間を空けまして、次に乗車するのは特急あしずり7号中村行きです。JR四国から土佐くろしお鉄道中村線へ乗り入れる特急で、高知県のさらに奥地まで向かいます。
使用されているのは2000系気動車です。JR四国発足時の1989年にデビューした車両で、日本初の制御付振り子式車両。振り子式気動車では世界初の例でした。
お隣には特急南風が到着し、こちらから乗り換えられるお客さんも20人ほどいらっしゃいました。
特急南風は新型車両2700系で統一されましたが、特急あしずりでも半分くらいが新型車両になっています。
15:43 高知駅 発
ステンレスをギラギラ輝かせる特急南風よりバトンを受け取り、高知駅を出発です。
高架線ということで市街地を一望でき、左手には高知城も見られました。
高知市内でも旭駅、朝倉駅に停車。急にゲリラ豪雨が降り始めて、ホーム上はとんでもない有り様になってしまいました。
とさでん交通が走る国道33号と並走する区間になりまして、タイミングが合えば路面電車を追い越したりすれ違う様子を見られます。
とさでん交通の終着駅も近くにあります、伊野駅に到着。
『竜とそばかすの姫』の聖地にもなっており、オリジナルの駅名標が立っていました。
佐川駅のある佐川町では「さかわかき氷街道」というイベントが行われており、かき氷店舗を渡り歩けます。
2km近くの斗賀野トンネルに入りまして、山越えを果たし太平洋沿岸へ。
ちょっと見づらいですが抜けた先には白石工業土佐工場があり、山にへばりつく姿はハウルの動く城とも言われます。
須崎市の港地域まで来ますと、住友大阪セメント高知工場の煙突が見えてきました。かなり長い間海沿いを走ってきましたが、重工業を目にしたのはこれが初めてかもしれません。
途中で特急あしずり12号と行き違い、あちらは新型2700系気動車でした。
ニホンカワウソ生息地としても知られる須崎市、中心駅となる須崎駅に到着です。
土佐山田行きと窪川行き、逆方向の普通列車が縦列停車中。JR四国ではよく見られる光景ですが、乗り間違いには注意が必要です。
そしてここから先は進行方向左手に注目するほかありません。
土讃線は岩場ギリギリに線路が敷設されており、覗き込んで見るほど海がものすごく近いです。特に安和駅周辺の景色は非常に迫力があります。
中土佐町の中心駅、土佐久礼駅に到着。
古くから漁師町として栄え、久礼の港と漁師町の景観は国の重要文化的景観にも選定されています。少し海側へ歩くと久礼大正町市場があって、海の幸を楽しめるだけでなくその活気ある市場の光景も人気です。
そして再び列車は山越えです。
太平洋は森林で隠されるようになりまして、険しい山をカーブとトンネルで越えていきます。ここは土讃線全体を通しての最急勾配、25‰です。
速度は90km/hほど、エンジン音を掻き立てながら頑張って登っていきました。
そして遂にJR土讃線の終着駅、窪川駅に到着しました。
ここからは土佐くろしお鉄道中村線に入るため、乗務員さんも交代です。
奈半利駅から乗車したごめん・なはり線と同じ鉄道会社ですが、それぞれの路線は完全に孤立しています。
JR予土線のかっぱうようよ号も停車中。全ての列車が若井駅〜窪川駅で乗り入れています。
中村線は少しの間だけ四万十川と並行しており、沈下橋と呼ばれる欄干の無い橋も見られました。
若井駅を通過すると若井トンネルへ。
その先の川奥信号場でJR予土線が分岐し、四万十川沿いへ離れていきました。
中村線の線路はくるっと一周することで勾配を緩和する、ループ線になっています。しかし、トンネル内のためか交差地点は分かりませんでした。
国鉄中村線は1963年、ここ土佐佐賀駅まで開通。その後1970年に中村駅まで全通しています。
佐賀町は2006年、大方町と合併して黒潮町になりました。
ここで特急あしずりと行き違い、連続テレビ小説『らんまん』のラッピング車両でした。
先程停まりました佐川町出身の植物学者、牧野富太郎がモデルです。
高知駅のキヨスクにて買ってきました、焼きさば寿司とゆずチューハイをいただきます。
高知駅の駅弁屋さんは改札内ホーム上と改札外キヨスクで売っているものが異なります。ホーム上であればかつおのたたき弁当がおすすめ、ただし結構人気なので12時頃には売り切れてしまうことも多いです。
お寿司は5巻並んでいまして、紅葉のバレンが見た目を楽しませてくれます。
程よく酢が効いており、焼いているからこそ味わえる身のホロホロ感。しっかりとした歯ごたえで非常に美味しいです。
まろやかな甘さのゆずチューハイも進み、お寿司と一緒にジュースを飲む子供みたいなことしてます。
車窓も格別で、土佐佐賀駅から土佐白浜駅にかけての太平洋が見どころです。
ゴツゴツした岩場の海岸も迫力あり、波模様も絵に描いたような白と青です。
こうした岩場を短絡するようにして、まっすぐトンネルが貫いています。
最高速度は110km/h、戦後建設された高規格路線を活かした走行です。
土佐入野駅に到着。旧大方町の中心駅がここになります。
もうひと山越えて内陸部へと入りますと、終点の中村駅に到着です。
17:27 中村駅 着
特急あしずり号はほとんどが中村駅発着、宿毛駅発着は1日1.5往復しかありません。
中村駅から先は接続する普通列車に乗車します。高校生の生徒さんが多く乗られていました。
中村駅〜宿毛駅の宿毛線は1997年の開業。国鉄時代1981年に中断した工事を、土佐くろしお鉄道が引き継ぎました。
17:37 中村駅 発
乗ってきた特急あしずり号は中村駅で折り返し、宿毛駅からの普通列車と接続して発車します。
四万十くろしおラインと愛称は一体化していますが、このように分離されている中村線と宿毛線。
それゆえターミナル駅としての機能を持ち合わせた広い構内で、車庫も併設されています。
トンネルを抜けた先で四万十川を鉄橋で渡りました。河口が近いためかなり長い橋梁となっています。
ロードサイド型店舗が立ち並ぶエリアになり、近くに設置されている具同駅から5,6人乗られました。
市街地を抜けまして、郊外の田んぼへ至りました。
線路沿いには西南地域へ空港建設を求める看板が立っていました。実現性がどうかは置いておき、たしかに空港空白地帯ではありますね。
一昔前は鉄道も高速道路も無かったと思うと、かなり大変な場所だったことが分かります。
有岡駅はこのように一線スルー化されており、特急列車など速度を落とさず分岐部を通過できます。
ここが宿毛線内最急勾配の25‰地点、高架でありながらかなり湾曲しているように見えますね。
そのままトンネルに入っており、2000年目前の新規路線として、どうしても新幹線という印象を持ってしまいます。
工業団地駅の近くにはコカ・コーラや佐川急便の営業所、電気や鉄鋼関係の工場もありました。
ここには平田ICが位置しているので、トラック輸送の利便性も高いです。
田んぼの中をズカズカと歩く鉄道高架、ローカル線でありながら高規格というロケーションのキャップに萌えます。
5084mという長大トンネル、聖ヶ丘トンネルを抜けました。
ここで湾に形成された港町で発展した、宿毛市中心部が広がります。
ここには中村宿毛道路の終点、宿毛和田ICがあります。2020年7月に全通したばかりで、ここから接続する愛南町方面への宿毛内海道路が一部で工事中です。
東宿毛駅を出発すると、完全に市街地を高架で跨ぐようになります。
そして土佐くろしお鉄道宿毛線の終点、そして高知県最西端の駅である、宿毛駅に到着しました。
18:07 宿毛駅 着
珍しい高架の終着駅、この通り完全にぷつんと線路が途切れています。
甲浦駅を出発してから、かかった時間はちょうど8時間。特急列車などを使って最短乗り継ぎで来ましたが、高知県の横長さを知らしめられました。
この時間は無人になっていますが、有人改札の横にはみどりの窓口も併設されていましたあ。
土佐くろしお鉄道はJRではないものの、安芸駅、中村駅、宿毛駅にみどりの窓口がある珍しい鉄道会社です。
元々の計画としては宿毛から先、愛南町を経由して海沿いに宇和島を目指す予定でした。
現在ではその実現見込みはなく、今後も難しいと思われます。
今回のDMV奈半利特別運行、少し遡れば第三セクターによるローカル線新規開業のお陰で実現した、今回の高知横断。
ぜひ高知県にもDMVに観光面での将来性を見出してもらえれば、定期的な奈半利発着便の運行ができるのではないかと思います。新たな技術の確立による阿佐線ルートの完成、今後に期待を寄せたいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。