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【非電化化された長崎本線】電化設備撤去の進捗は? 浦上駅高架ホーム解体

2023年4月13日

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かつて、博多〜長崎を結ぶ特急かもめが走っていた長崎本線。

2022年に秋に西九州新幹線が開業したことで、在来線特急かもめは新幹線かもめへ受け継がれました。

 

西九州新幹線含めた整備新幹線建設時の条件として、並行する在来線の経営分離が提示されています。特急の役割を新幹線に移した在来線をJRが引き続き運営するのは大きな負担であり、多くが自治体出資の第三セクター鉄道として維持されます。

 

ただし、西九州新幹線の並行在来線とされた長崎本線(江北〜諫早)においては、引き続きJR九州の路線として残されています。新幹線開業による恩恵を受けられない鹿島市が中心となって反対し、佐賀・長崎鉄道管理センターが駅や線路設備を保有し、JR九州が運行を担う上下分離方式により20年間存続することで落ち着きました。

 

特急かもめが走らなくなった長崎本線において、維持費用のかかる電化設備は過剰な設備。普通列車は気動車に変わっており、肥前浜〜長崎の電化設備は4年かけて撤去されます。電車が走らなくなってから半年、どの程度撤去が進んだのか見てみましょう。

まずやってきたのは新鳥栖駅です。武雄温泉〜長崎のみ開通している西九州新幹線は、ここで九州新幹線から分岐すると想定されています。

新幹線ホームの鹿児島中央方へ向かいますと、本線から左へ逸れた線路が敷設されていない高架を見ることができます。

 

反対方面についても同じ、線路を右側から合流できそうな高架の構造です。おそらく将来的に西九州新幹線を分岐させると想定して、高架を建設したのでしょう。

改札を出て在来線を越えた先、外から分岐しそうな部分を見てみます。

右側が新鳥栖駅舎となっており、高架が手前へ分岐して線路1本分張り出してきているのが分かります。線路を支える下部分も、ポイントを想定してかかなり分厚いです。

 

西九州新幹線は線路幅の異なる在来線と新幹線両方を直通できる、フリーゲージトレインの導入が予定されていました。当初は山陽新幹線直通も考慮されていたため、この分岐部から九州新幹線の高架を越えて、長崎本線へ接続する予定だったのでしょう。

現在は西九州新幹線へのフリーゲージトレイン導入は困難で、仮に導入した場合でも速度が遅いためJR西日本が山陽新幹線直通を拒んでいます。この高架が伸ばされるとするなら、フル規格の西九州新幹線へ繋がる未来しか見えません。

 

こちらは上り線の分岐部。先程より距離が短くなっており、九州新幹線の高架関係なしに長崎方面の線路へ繋げられるためと思われます。

 

とは言っても、ここからしばらくは特急列車が数多く残っており、新幹線開通前後で状況がそう変わっていない区間です。

 

博多駅から西九州新幹線の起点、武雄温泉駅までは特急リレーかもめ号が走っています。この他にも佐世保線特急みどり・ハウステンボスや、長崎本線で残る肥前鹿島行きの特急かささぎが設定されており、バラエティ豊かです。

 

乗車するのは普通列車、肥前浜行きです。新幹線開業前に長崎本線で活躍していた、817系電車。路線を走破する長崎発鳥栖行き普通列車も設定されていました。

 

県庁所在地に位置する佐賀駅でしばらく停車、特急みどり・ハウステンボスに追い抜かれます。

 

西九州新幹線開業と同時に、肥前山口駅から改称された江北駅に到着。この駅名も大分慣れるもんですね。佐世保線の早岐〜江北にもYC1形気動車が投入されています。

 

ここは長崎本線と佐世保線の分岐点。特急リレーかもめは右の佐世保線を走るため、ここからは長崎への主要ルートから外れます。

鹿島市の中心駅、肥前鹿島駅に到着。

特急かもめが廃止されることに伴い、博多〜肥前鹿島には特急かささぎが新設されています。地元の方には申し訳ないですが、1日乗客1000人に満たない駅に特急が新設されるとは相当恵まれていると思い、それだけ鹿島市の方は頑張って下さったんだろうなと思います。

 

そこから1駅先、2面3線構造で広い構内を持つ、終点の肥前浜駅で下車します。

 

ただの途中駅に過ぎなかった肥前浜駅ですが、電化区間と非電化区間の境界駅に。お互いに乗り継ぐ方がほとんどで、20人以上はいらっしゃいました。

 

これまで長崎行きだった特急36ぷらす3月曜日ルートは、この先非電化化されたことに伴って佐世保行きに。ただし、ここ肥前浜駅までは立ち寄り観光のために乗り入れます。

いよいよ非電化区間に入りました。使用車両はキハ47形気動車、車内から外を映すだけで分かる年季の入りようです。

現時点では変わらず、電化設備が残されています。上下分離方式の江北〜諫早は元々単線区間でした。

 

肥前七浦駅周辺からはドロドロした有明海が広がり、曇り空が似合っています。綺麗な海の景色は全国どこにでもありますが、こういった特徴ある海もあって良いものです。

 

有明海沿いの景色が魅力的な江北〜長崎についても、臨時特急であればD&S列車ふたつ星4047が走っています。特急かもめは停まらなかった多良駅にも停車します。

 

特急かもめがいなくなったことで、特急を待避する線路が必要なくなりました。

多良駅では駅舎と反対からのアクセスを向上すべく、3番線を廃止して出口を新設する計画もありました。しかし、上下分離方式により駅設備はJR九州とは関係なく、自治体がスロープだけで7000万円の費用を負担しなければならず、現実には難しそうです。

 

引き続き架線は残されていまして、特に変化は見られません。

 

有明海に目を奪われていると…、遂に線路真上の視界が開けます。

線路沿いには電信柱のようになった架線柱、架線だけでなく吊り下げていた腕も無くなっています。

まだ柱は残っていますが、これもいつか引っこ抜かれるのでしょうか。

 

トンネル内に張られていた架線も完全に無くなっており、これは非電化路線だと実感がひしひし沸いてきますね。

 

架線撤去はまだ一部分で、トンネルを抜けると復活していました。とはいえもう電気は通っていないはずです。

長編成の特急に乗ると、カーブのため海越しに先頭車両を見られたのが思い出、里信号場を通過します。

近くのレストランかわ川が印象的で、36ぷらす3が行き違いしていたかと思います。ここに関してはまだ電化設備が残っていました。

佐賀県から長崎県に入りまして、土井崎信号場を通過します。

一線スルー化された信号場。特急かもめ号はいなくなりましたが、小長井行きの列車はここまできて折り返しているので、日常的に使用されています。

 

どうやらトンネル周辺から優先的に架線撤去を進めているようです。

 

小長井駅は完全に架線が剥がされており、駅のローカル感が急上昇しています。

 

一時的に架線が復帰しましたが、トンネルに入るとやっぱり架線はありません。

トンネルを抜けると長里駅に到着です。

待避線の方だけ電化設備が残っており、こちらまっすぐの線路には架線がありません。

 

その待避線から架線が続いており、湯江駅に到着です。

 

次の小江駅を出て小江川を渡り、これからトンネルへ入るところで、架線が途切れました。

 

緑あふれる山の中で、再び復活しています。

東諫早駅を出た先のトンネル前後も、架線が取り払われていました。見たところ上下分離方式区間のトンネルについては、もうすでに電化設備が撤去されているようです。

 

大村線と西九州新幹線の線路がやってきました。長崎における交通結節点、諫早駅に到着です。

諫早駅から長崎は並行在来線にはならず、完全にJR九州が所有している区間です。

 

肥前浜〜諫早の普通列車は基本的にキハ47系気動車なのですが、一部は左手に見えるYC1系気動車が小長井発着の普通列車に充当されるようです。あと数年くらいしたら、全区間YC1系になる気がしますけど…。

 

諫早駅から先に関しては、トンネル内であっても電化設備が残っています。

 

喜々津駅から長崎本線は二手に分かれ、この列車は新線へ。旧線は電化されたことが無いため、元々気動車での運行です。

 

 

 

西九州新幹線は武雄温泉〜新大村に在来線の高規格路線を建設するだけの、スーパー特急方式が検討された時期がありました。諫早〜長崎の新線は在来線の後期各路線とも言えるレベルで、特急かもめが高速で駆け抜けていたのがハイライトでした。

 

この新線は市布経由と称されます。特急ふたつ星4047は旧線を走るので、この線路からは完全に特急列車が消滅しました。

 

 

 

それでも特急が本領を発揮していた名残が、その線形からもはっきり分かります。

 

 

トンネルに挟まれている現川駅に到着しました。

ちょうど佐世保行きの普通列車と行き違いました。このように行き違いで普通列車が停まっている間に、特急が中線を通過していたようです。

 

全長6173mに及ぶ長崎トンネルへ。

トンネルには列車行き違いができる、肥前三川信号場があります。

大村線と長崎本線はお互い普通列車の本数も単線にしては多い方で、現在でも行き違いを行っているはずです。ここを通過する時には音が反響するので分かります。

 

国鉄時代からのディーゼル車は、80km/h以上で走行します。

 

地上へ出てきまして、高架区間に向かって登ります。進行方向左下には長崎電気軌道が走っており、あちらは唯一の在来線電車になりました。

かつて特急かもめ全列車が停まっていた、浦上駅に到着。

この辺りは2020年に高架化されましたが、あと2年で長編成の特急がいなくなるのは分かっていたこと。そのためホーム先端分は簡素な造りで、仮ホーム感が非常に強かったです。

 

その諫早方については、該当部分の撤去が済んでいました。見えているのは綺麗な白いタイルが貼られたホームだけです。

 

長崎方についてはまだ残っていますが、屋根が支柱だけになって入ることはできません。記録したい方は早急にですね。

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西九州新幹線がやってきて、再開発が進んでいる長崎駅周辺。まだ博多とは直接結ばれていないので、正直今回の開業には間に合わなくてもって感じがあります。

 

長崎駅は留置線まで高架化されており、かなり大掛かりな工事であったことがわかります。2年のために架線柱が立てられましたが、この辺りは再利用されたりするのでしょうか。そもそも再利用するような場所はどこかに…?

 

右手からは新長崎トンネルを貫いた西九州新幹線がやってきまして、長崎駅に到着です。

肥前浜駅からは1時間36分で長崎駅に到着しました。

肥前浜駅では時間がなかったのでじっくり見られませんでしたが、濃い青色のキハ47系は非常に色鮮やかで乗ってみたくなるデザイン。特に側面のカラフルな波模様にもこだわりを感じます。

 

電化設備撤去については4年かけて進めるとしていますが、のんびり構えていたらあっという間です。架線下を走るキハ47系を見たい方はお早めに。

西九州新幹線開業からかなり時間を空けてしまいましたが、半年ぶりの長崎駅。

かもめ口の目の前には工事の防音壁が迫っています。

 

駅までの仮設通路が若干変化しており、JR新長崎駅ビルの建設が進められているところです。

 

そして、新たなペデストリアンデッキの一部も供用開始しており、路面電車乗り場までエレベーターを使っていくことができます。

 

従来のペデストリアンデッキ周辺では解体工事が進められており、JR長崎駅周辺の広場が整備されるはずです。

 

新幹線開業を時代の大きな分かれ目として、どんどん変化する長崎。今後も注目すべき都市中心部だと再認識させられました。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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