こちらは三陸地方の主要な街、鉄鋼業やラグビーでも有名な釜石市です。
内陸部の花巻市から伸びるJR釜石線の終点で、『銀河ドリームライン釜石線』という愛称が付けられました。
これは釜石線の起点となる花巻市が宮沢賢治の故郷であることに由来し、駅舎には『銀河鉄道の夜』を連想させる装飾を施しています。
釜石から盛岡には直通の快速列車が設定されています。それが、今回ご紹介する快速はまゆりです。
使用車両は東北地方のローカル線でよく使われているキハ110系気動車。外観的には東北地方でよく走る、何の変哲もない列車に見えます。
しかし、ホームの屋根にはまるで特急停車駅のような、号車札が下がっています。ここに記されている通り、快速はまゆりには指定席が設定されているのです。
キハ110形の中にもいくつかの種類があります。
快速はまゆりは3両編成で、3号車が指定席です。
この号車にはキハ110形0番台が充当され、急行列車用に作られています。
1,2号車は自由席であり、基本的には普通列車用に作られたボックスシートの100番台が充当されます。
しかし、この日は全ての車両が0番台で、指定席と自由席の違いが全くなくなっていました。
以前は快速はまゆりの全車両でキハ110形0番台を使っていたのですが、2007年から自由席に100番台が投入されています。
一方で、今回のように自由席でありながら、指定席車両が入る事例も見られます。
0番台の座席は回転座席で、リクライニングも備えられています。
背面テーブルもあり、急行列車用に作られただけあります。近年の特急車両や有料座席と比べたら当然劣りますが、ローカル線の快速列車としては十分価値の高いものです。
指定席料金は530円(通常期)ですが、年末年始などでなければ自由席でもよほど座れると思います。
急行陸中を継いだ快速はまゆり
急行陸中は仙台から秋田を結んだ列車ですが、花巻から釜石、宮古を経由してから盛岡へ、花輪線経由で秋田へ行く不思議なルートをとっていたのです。
それに加え、途中で異なる列車の連結や解結を繰り返しており、どのような運行を行っているのか掴めませんでした。
その急行陸中の花巻~釜石を継いだのが快速はまゆりで、1本だけ宮古~花巻の運行でした。
しかし、JR山田線の釜石~宮古は東日本大震災の被害を受け、2019年に第三セクターの三陸鉄道として復旧。快速はまゆりの直通は行われなくなりました。
停車駅
盛岡ー矢幅ー花巻ー新花巻ー土沢ー宮守ー(鱒沢※5・6号のみ)ー遠野ー(岩手上郷※3・6号のみ)ー松倉ー小佐野ー釜石
11:28 花巻駅 発
しばらくは三陸鉄道リアス線と並走、険しい山へ登っていくように分かれました。宮古方面へ直通していた時は、釜石駅で進行方向を変えていたということですね。
お隣の小佐野駅からは10人くらいの乗車。この辺りはロードサイド店舗も立ち並ぶ国道283号沿いを走っており、中心駅の釜石駅に限らず途中からのお客さんも多めです。
松倉駅は2021年3月から停車駅に追加されており、同様のお客さん狙いで、釜石市街地西端からの需要も拾っています。
並行バスとの競合
JR釜石線沿いには立派な釜石自動車道が貫いており、ここには釜石~盛岡を走るバスもあります。
快速はまゆりの場合、乗車券2310円・所要時間2時間18分、バスの場合、運賃2400円・所要時間2時間。快速はまゆりよりもバスの方が早いです。
バスは1日2往復で本数が少ないため、まだ鉄道のシェアは高めですが、これから脅威になってもおかしくありません。
日本一のヘアピン路線
釜石線は仙人峠を越えるため、とんでもないカーブによって高低差を埋めています。地図で線路の形を見てみると面白い形を見ますが、これは全国的にもトップレベルで、どうしてこうなったと言ってしまいそうになる代表例です。
左手を見てみると赤い鉄橋が架かっているのですが、釜石線はこれからあそこへ向かいます。
その手前に位置する陸中大橋駅は、採掘した鉄鉱石を釜石へ運ぶ重要な駅でした。現在でもホッパーが残されており、かつては鉱山住宅も建ち並んでいたようです。
釜石線は釜石西線の花巻~仙人峠駅と釜石東線の陸中大橋~釜石駅で分かれており、この間は索道で結ばれていました。この間を埋めたのが、ヘアピンカーブの線路です。
トンネルを抜けてさっき見上げていた橋を渡ると、その時通っていた釜石線の線路をはっきりと視認できます。ここまで列車に乗ったまま、高低差を体感できるところは他にないでしょう。
釜石線は1950年に陸中大橋駅から上有住駅が結ばれたことで全通しました。索道の起点である、仙人峠駅までの鉄道は廃止されています。
鉄道150年仕様のSL銀河
釜石線にはもう一つ、臨時快速SL銀河が走っています。
遠野駅では1時間停車中のSL銀河と行き違い。機関車には鉄道開業150年のヘッドマークが付いていました。
SL銀河は2023年春をもって引退が決まっています。
勾配の急な釜石線では蒸気機関車の他、後ろに連なる気動車の動力も借りて走ります。この気動車が老朽化したため、釜石線でのSL運行が出来なくなってしまったのです。
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沿線では多くの方が手を振っていただいたのを覚えており、一際輝いていた観光列車ルートが消えるのはやっぱり寂しくなります。
釜石線めがね橋 宮守川橋梁
めがね橋と言われる宮守川橋梁はかなり高く、カーブしていることで綺麗な曲線を描く橋脚の形も見られました。
SL銀河に乗っているとここで汽笛が鳴らされ、道の駅みやもり周辺の広場から撮影される方がいらっしゃいます。
宮守駅からは、SL銀河の撮影を終えた方々が多く乗ってこられました。釜石線で行きやすい所に撮影地があるのは、非常にありがたいですね。
釜石方面の快速はまゆりとも行違ったのですが、遠野駅で1時間停車中のSL銀河に追いつけます。この中には、遠野駅から釜石駅まで乗られる方も多いのではないでしょうか。
土沢駅は『銀河鉄道の夜』の始発駅のモデルとも言われており、宮沢賢治の育った町としてのエピソードが濃くなってきました。
市民悲願の誘致 新花巻駅
釜石から東北新幹線で各都市へ行く場合、新花巻駅からの乗車が可能でお客さんの流動も大きいです。新幹線開通当初は設置されず、花巻市民を中心とした駅誘致運動が行われましたが、駅開業のために釜石市や遠野市も協力しています。
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【なぜ設置?】花巻市民の悲願!新花巻駅が設置されるまで[史上最長片道切符の旅(70)]
一ノ関駅より東北本線で北上、花巻駅にやって来ました。 東京駅から続く東北本線。ちょうど500km地点にあるので、ホーム上に大きな500キロポストが刺さっていました。 この地域ではかなり大 ...
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実際釜石線からの新幹線利用者も多く、十分意味があったのではないかと思います。
似内駅の北には花巻空港ICがあり、その通り近くに花巻空港が位置。東北本線には花巻空港駅が存在します。
東北本線へ直通
花巻駅からは東北本線に乗り入れ、ここで進行方向が変わります。
ただし、花巻〜盛岡は30分程度なので、座席を回転させることはありませんでした。
新花巻駅で交差した東北新幹線と並走。
矢幅駅は2009年、全列車停車駅へ格上げされました。盛岡のベットタウンとしての色が濃く、結びつきを考えると停車も必要と思われます。
13:43 盛岡駅 着
釜石線はローカル線とはいえ、三陸地方と東北本線沿いを結ぶ鉄道の中でも重要な路線です。高速バスも本数が多くないため、鉄道による長距離輸送のシェアが高めで、急行由来の指定席連結快速が残っているものと思われます。
釜石線の快速はまゆりを利用の際は、指定席車両か注目してみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。