南阿蘇鉄道 熊本

【熊本地震で被災】完全孤立状態の観光鉄道 新型車両MT4000形も来た南阿蘇鉄道の現状[2212南阿蘇(3)]

2022年12月10日

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熊本市から阿蘇へ伸びる豊肥本線、立野駅に来ています。

駅名標にもありますが、ここはスイッチバックのある駅として有名です。

 

ここでは三段スイッチバックを採用しており、国内における他の例は肥薩線大畑駅と木次線出雲坂根駅だけです。

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右上の熊本方面から来た列車は立野駅に入線、ここで進行方向を変えて引込線に入った後、再び進行方向を変えて大分方面へ向かいます。

 

これにより行き止まりになっている立野駅ですが、ここから先に第三セクター南阿蘇鉄道高森線が伸びています。

 

しかし2016年4月の熊本地震で被災し、途中の中松駅〜高森駅は7月に復旧したものの、立野駅〜中松駅は6年間運休したままです。

現在孤立してしまっている高森線ですが、2023年夏に全線運行再開予定になります。



駅舎再建/ホーム修繕中 立野駅

現在、駅舎が存在しない立野駅。南阿蘇鉄道のプラットホームの先に、駅舎となる新しい建物が建設中です。

 

南阿蘇鉄道のプラットホーム上には、JRとは異なるデザインの駅名標が立っていました。

 

立野駅ではプラットホームの崩落が起こっており、現在は上屋の骨組みを埋めている様子。JRのホームについても新しくなったものです。

 

仮設階段を上がるところには恐らくスロープになるであろう、コンクリートの坂道が作られていました。

 

元々はJRの駅舎があったのですが、今は建設中で仮駅舎も存在しない状態。JRホームへは工事現場を横切りながら仮設の階段を降ります。

 

交通の結節点として重要な場所であり、交流施設を兼ねた立派な駅舎ができるそう。その日がとても待ち遠しいですね。



産交バスで行く不通区間

高森線の不通区間は代行バスが走っていないため、並行する路線バスで中松駅へ向かいます。

 

特急が走る幹線なのにスイッチバックが必要なほどの山。バスはぐんぐん登っていきます。

 

奥には何本ものクレーンや新しい住宅、プレハブ事務所がたくさん見られました。

 

熊本地震では阿蘇大橋が崩落しており、新しく新阿蘇大橋が架けられました。あの画が衝撃的なだけ合って、熊本地震復興の象徴です。

 

阿蘇大橋の下には阿蘇長陽大橋が架かっています。

 

そして、南阿蘇鉄道の第一白川橋梁まで見られました。こちらの鉄橋についても新しく架けられており、路線で一番の見所が復活しています。



バスはどんどん山深いところへ。

3つの庁舎をひとつにまとめ、2017年新しく生まれ変わった南阿蘇村役場。施工中に熊本地震が起きて、それを乗り越えてできた建物です。

 

阿蘇下田城ふれあい温泉駅を通過。下田城にちなみ、小さなお城みたいで可愛らしい駅舎です。

 

道路は鉄道のすぐ横を並走することがないため、あまり線路をはっきり見ることはできません。



鉄道運行区間の起点 中松駅

産交バスは南阿蘇鉄道の終点近くの高森中央まで行きますが、そこへは鉄道で行きたいので中松駅で下車しました。

 

海辺のカフェみたいにお洒落で可愛らしい駅舎。そう思っていたら喫茶店が入居しているみたいです。

 

駅員さんのいない無人駅ですが、お店から良い香りがするので全く心細くありません。待合スペースにまで侵食していて、雑貨なんかも並べられています。

 

中松駅には停車中の列車が機銃掃射を受け、死傷者が出た過去もあります。現在でもその跡が残っているそうです。

 

中松駅に交換設備が備えられたのは1989年。その割には向かい側ホームが非常に新しく見えますが、2022秋にお色直しされたみたいです。

 

現在は駅舎側のホームしか使われておらず、向こうへは立入禁止に。全線復旧したら使われるようになるのでしょう。

 

それにしても、雰囲気的には駅というより完全に遊び心溢れたカフェです。

 

しばらく時間があったので、気になっていた未成駅・小池水源駅に行ってきました。

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鉄道運行区間 中松駅〜高森駅

中松駅へ戻ってきて、南阿蘇鉄道の最終列車に乗車します。

 

2両編成の列車に乗り込むと、大勢の韓国人観光客の方がいらっしゃいました。車掌さんが韓国語で放送していたため、団体列車かと勘違したぐらいです。

九州は韓国から来やすいので特に人気、インバウンド需要も見込めるみたいです。

 

中松駅を出発しまして、すぐに一時停車します。ここでは先の踏切が閉まるのを待っているのです。

 

すぐに動き直しまして、駅舎で喫茶店を営んでいらっしゃる方が、お見送りしてくださいました。

駅前には韓国の団体さんを載せていた大型バスが停まっていたのですが、南阿蘇鉄道は7.2kmの道のりを25分かけて走る実質観光鉄道。バスも普通に高森駅まで先回りできちゃいます。

 

ビニールハウス内には、阿蘇の名物としても食される「あか牛」がいました。

 

水に恵まれた南阿蘇鉄道沿線、とにかく水源がたくさん乱立しています。そのひとつが先程の、小池水源です。

 

エンジンも音を大きくしながら、未成駅を通過していきます。

 

右下を覗き込むと、吉田城御献上汲場が見えてきました。

阿蘇家の主城だった吉田城、地理的にも重要な位置にあり、広大な土地を有していてそうです。その吉田城で必要とされる水は、全てここで賄えていたといいます。



続いて左手に広がるのは、かっぱの言い伝えがある明神池名水公園。

ここに男女カッパが住んでいたのですが、男カッパが悪戯好きで神様を怒らせてしまい、遠くの池へ飛ばしてしまいました。女カッパはいつか帰ってくると信じて石の上に座って待ち続けましたが、二度と会えませんでした。

今ではその座っていた石の上に女カッパの姿が乗せられています。

 

阿蘇白川駅は教会風の建物、駅舎デザインと、車内に施されたクリスマス飾りがピッタリです。

ここにもカフェが入居していて、南阿蘇の食材を使ったトルティーヤピザ等のランチを楽しめます。

 

南阿蘇白川水源駅は2012年に開業したばかりの新駅。白川水源の最寄り駅で、ここにも喫茶店が入っています。南阿蘇鉄道はコレがデフォルトなんですかね(笑)

 

第三白川橋梁を渡っている時には、韓国語で第一白川橋梁を渡る時に流れる自動放送を流していました。

第一白川橋梁は産交バスから見えた、熊本地震では自然体が歪んで掛け替えられた橋のこと。あの鉄橋で渓谷を渡るなんて素晴らしいでしょうね…。

 

まるで人が模様を描いたみたいな山の表面。これを自然が作り出したなんて凄いことです。

 

見晴台みはらしだい駅は午後の紅茶のCMで一躍有名になりました。それで南阿蘇鉄道を知った方も多いのではないでしょうか。

 

午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティーの売上の一部が、南阿蘇鉄道の駅再整備などに寄付されています。



旧国鉄高森線は県境を越えた先、高千穂〜延岡を結んだ高千穂線と繋がる予定でした。

1973年から工事が始まりましたが、1975年に高千穂トンネルから大量の出水。その後も工事は進められたのですが、鉄道開通は断念せざるを得ないことになりました。

 

一方で結果的には毎分32トンの湧水量を誇る水源地として活用され、高森湧水トンネル公園として整備されました。ここに新駅を設置して、観光客の利便性工場を図ろうとしています。

 

トンネルが掘削できなかったので、高森線はその直前で急カーブ、高森駅はその先に設置されています。

 

普通列車ですが完全に観光列車に乗ってきた気分。評定速度17.28km/hというのんびりした旅でした。

最後に料金を払っていたのは僕だけだったので、全員団体の韓国の方だったようです…。



南阿蘇鉄道にやってきた新型車両

今日乗ってきたのはMT2000形と呼ばれる気動車です。

 

他に普通列車で運用されているのが、東南アジアのモノレールみたいな見た目をしたMH3000形です。

 

そして、つい先日新型車両が製造され、新潟県から運ばれてきました。どうやらこの車庫の中に入っているようです。

 

ちょっと透けていますが、真っ白な車体に緑色の波が描かれているのが分かります。これがMT4000形です。

JR豊肥本線乗り入れを想定しており、おそらく熊本駅から直通して、更に観光需要を取込みます。

 

また、南阿蘇鉄道ではトロッコ「ゆうすげ号」を運行しています。今日のように海外からのお客さんも見込める阿蘇地域で、全線運行再開すれば乗客は格段に増えるはず。

 

高森駅では観光客に戻ってきてもらえるよう、その体制を整えるべく公共施設が建設中です。

 

最終的には駅舎と公共施設の間に芝生広場を設け、屋根で繋ぐような形になるそう。現在はバスの便が少なく不便ですが、高千穂へ抜けるルートも形成されると思われます。

 

恐らく通学時間帯以外は観光鉄道と化すであろう南阿蘇鉄道。それだけの魅力と集客力があるはずですから、ぜひ復旧しただけの結果が現れてほしいです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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