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2016年の熊本地震で被災した、九州の真ん中を走る南阿蘇鉄道高森線。
同年7月に中松〜高森で運転再開しましたが、他路線と接続しない完全な独立路線のままでした。
それが本日2023年7月15日、遂に7年ぶりの全線運行再開を果たしたのです。
さらにJR豊肥本線乗り入れ運行を開始。肥後大津駅〜高森駅で直通列車も設定されています。
待ちに待った南阿蘇鉄道完全復旧。肥後大津発高森行きの初便に乗車しましたので、その様子をお届けします。
熊本駅から阿蘇地域を経由し、大分駅へ至るJR豊肥本線。
ここ肥後大津駅は電化区間と非電化区間の境界駅であり、運行の拠点駅になっています。
それだけでなく副駅名として付いているとおり「阿蘇くまもと空港」のアクセス駅。空からやってきた観光客の中には、鉄道に接続するバスやタクシーで来る方もいらっしゃいます。
至る所に南阿蘇鉄道全線運転再開を祝うのぼりが立っており、いよいよこの日がやってきたのかと嬉しさがジワジワと湧いてきました。
そして発車標に注目しますと、「立野(高森)」の文字。JR豊肥本線から南阿蘇鉄道へ直通する最初の営業列車であり、このように案内されるわけです。
駅前ではこのような旗が配られていて、地元の方々もこれで見送ってくださいました。
高森駅からやってきました、南阿蘇鉄道全線復旧後、最初の営業列車です。
7:12のところ3分ほど遅れまして、終点の肥後大津駅に到着します。
こちらMT-4000形気動車はJR直通乗り入れを考慮した新型車両です。誰にも新型車両の納入回送がバレなかったと、鉄道ファンの間でちょっとした騒ぎになりました。
先頭にはめでたい配色のヘッドマークを掲げ、街の一大イベントです。
大津町の職員さんまでいらっしゃって、この乗り入れを大きく歓迎してくれています。
そして行き先表示器には「JR肥後大津行」を掲げており、南阿蘇鉄道の車両にJRの行き先が出ている、歴史的瞬間です。
真っ白な車体には沿線を流れる白川と、点在する清らかな水源をイメージした青ライン。さらに阿蘇五岳を思わせる緑ラインも描かれています。
これまでのレトロな車両たちとは一線を画した爽やかさです。
ドア横のロゴマークは「南鉄(なんてつ)」の頭文字「n」と、10この小さな楕円形で、阿蘇五岳とそれを囲った外輪山を表現しているそうです。
ロングシートとなっており、表面は布目でざらざらした感じ。
運賃表は南阿蘇鉄道とJR豊肥本線が完全に一緒で書かれていました。
7:28 肥後大津駅 発
子供たちや「からいもくん」なるキャラクターにも見送られ、肥後大津駅を出発しました。
真っ赤な電車と気動車の間から、一番新しい列車が復活した鉄路へ旅立ちます。
この車両はJR直通乗り入れを考慮して、「ATS-DK」という運転保安装置を搭載しました。
また、外国人観光客の受け入れ環境整備を目的に、他言語かに対応したとのことです。
最初の停車駅、瀬田駅に到着しました。
JR豊肥本線であることを証明するような、黒地に白字の駅名標。先ほど肥後大津行き営業初列車に乗車したという地元の方3人が、ここで折り返し乗ってこられました。
ここで車掌さんから、瀬田駅から立野駅の区間で乗車する方は、一番前で精算後に精算証明書を受け取るよう案内がありました。
おそらく南阿蘇鉄道とJR九州の運賃収受を明確にしているものと思われます。
国道を見下ろしつつ、いよいよ南阿蘇鉄道の区間が始まる立野駅に到着です。
車内チャイムが流れまして、間もなく立野駅。
JR豊肥本線は立野駅で進行方向を変えるスイッチバックの路線。進行方向左手からもう一本の豊肥本線が近づいてきました。
阿蘇方面へは行かないという案内がなされ、本当に直通するんだという感動を味わいます。
南阿蘇鉄道ホームもありますが、JR直通列車に関してはJRホームから発着することになっています。
立野駅でスイッチバックせずにそのまま真っ直ぐ進む、いつもと全く逆の動きをする列車です。
この辺りから新駅舎と交流施設、南阿蘇鉄道ホームが見えてきて、本当に出来上がったんだなと実感しました。
進行方向右手には建設中の立野ダムが見えてきます。白川沿川の洪水被害を防ぐ目的で作られています。
この辺りには犀角山トンネルがあったのですが、熊本地震で40mの区間に最大490mmのズレが生じる被害。修復に大きな費用がかかるため、山ごとトンネルを撤去する方式が採られました。
そしてさらに進むと、第一白川橋梁を渡ります。
これこそ南阿蘇鉄道で一番の目玉と言って過言ではありません。川からの高さは60mにおよび、スリル満点の走行を思いっきり楽しめます。
今回は徐行までしてくださって、激しい川の流れを存分に味わえました。
一番車窓を楽しめる場所であるとともに、熊本地震本震で大きな被害を受けた地点です。40億円かけて、新しく鉄橋を架け替えました。
こちらは読者さんから頂いたのですが、渓谷の上空に渡された鉄橋には立体感を強く感じます。
最初の停車駅は長陽駅です。
立野駅まで整理券が出てこなかったのですが、ここから発行されるようになりました。JR直通区間だと何か問題があったのでしょうか。
着物を召した方々などで、華やかなお見送りです。
続いて加勢駅に到着。
ここでも南阿蘇村の職員さんが中心になってお見送りしてくださいました。
踏切近くから地元の方が撮影されたりと、これからも地域の皆さんに愛される鉄道であってほしいです。
阿蘇下田城駅は下田城をイメージした城郭風の駅舎。
有人駅で温泉浴場を併設していたのですが、熊本地震で被災後、営業再開を断念しました。温泉施設を併設した駅舎は1993年に完成し、駅名も阿蘇下田城ふれあい温泉駅でした。しかし温泉施設が無くなってしまったので本日、阿蘇下田城駅へ改称されています。
南阿蘇水の生まれる里白水高原駅は、7年前は日本一長い駅名でした。運休している間に、その称号は他の駅へ明け渡しています。
しかし、自動放送も運賃表も白水高原駅に省略されており、長い駅名は無かったことにされています。
が、車掌さんによる肉声放送では、しっかりフルで読んでくださって安心しました(笑)
間も無く中松駅に到着、今回の新たな運行再開区間はここで終わりです。
高森線内では唯一行き違い可能駅になっています。戦時中、停車している列車が機銃掃射を受け、死傷者が出た過去も。その跡が今でも残っているそうです。
駅舎には喫茶店が入居していて、店員さんも一緒にお見送りしてくださいました。
これまでも走っていた区間ですが、全通のインパクトは強いものです。
以前は中松駅発車後と到着前に一時停止していたのですが、その必要も無くなったみたい。
しばらくすると、小池水源近くの線路沿いに、明らかに駅舎のような建物があります。
ロータリーや駅の整備はしたものの、勾配の途中にあるために設置できないことが判明し、あとはホームを作るだけの段階で中止されました。
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阿蘇白川駅では紅白幕が掲げられていました。
丸いヘッドマークらしき銘板も並んでおり、これからの南阿蘇鉄道にも期待を寄せられているようです。
水色に塗られたとんがり屋根の木造駅舎、喫茶店「Café 75th st.」が入居しています。
南阿蘇白川水源駅は2012年に開業したばかりです。
大きな駅舎にもお祝いの旗が掲げられていました。
白川水源の最寄り駅で、ここにも喫茶店が入っています。
駅前に鯉のぼりまで泳いでいる、こちらは見晴台駅。
『午後の紅茶』CMの舞台として知られる駅です。
これで南阿蘇鉄道は一躍有名になったようにも思います。
全線運行再開時、この場所に新駅である湧水トンネル公園の新駅を設置予定でした。
しかし、結局それは見送られたまま、運行再開となっています。
元々はまっすぐ進む予定だったのですが、あまりに湧水が多かったために、旧カーブして、高森駅は現在の位置に作られました。
そして遂に終点の高森駅に到着。折り返し帰るお客さんもいらっしゃいそうですが、一度ホームに降りるよう案内がされます。
肥後大津駅からの所要時間は49分、終点の高森駅に到着です。
2023年4月末に完成したばかりの新駅舎を前に、白いプラットホームでたくさんの方にお出迎えしていただきました。
運賃表は熊本駅から表記されており、肥後大津駅で乗り継いで来られる乗客も考慮されています。
白いMT8000形気動車が停まる新しい駅、ただ路線を直して復活を果たしたのではなく、7年の時を経て進化する形で生まれ変わったことを感じさせられました。
駅舎内の売店なども大賑わい。この後駅前には屋台が出たりイベントが開催されたりと、とにかく南阿蘇鉄道漬けの1日だったみたいです。
2000日以上待ってようやくの全線復旧。地元の方々による大歓迎には、感動し尽くしていました。
近年では韓国人の来訪者も多く、途中区間が代行バスだった時でも2両をいっぱいにするほど乗られています。ローカル線とはいえ震災復興の中で大きな意味を持ち、観光面でももっと元気になってくれれば嬉しいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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