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【工事進捗は?】九州北部豪雨から復旧!日田彦山線BRT専用道を観察
福岡県と大分県を襲った平成29年7月九州北部豪雨、これにより日田彦山線は大きな被害を受けました。 添田〜夜明・日田では代行バスによる運行が継続され、利用者が少ないことから鉄路での復旧は断念。BRTによ ...
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『レールが結ぶ、一本列島。』
これは1988年、青函トンネルと瀬戸大橋の開通に際して、国鉄が打ち出したキャッチコピーです。
本州から北海道、四国、九州それぞれはトンネルや橋で結ばれており、全て鉄道での行き来が可能です。
その中で距離が近いにも関わらず、陸路で結ばれていない島同士があります。それが九州と四国です。
あまりイメージが付きませんが、大分県と愛媛県は非常に近く、技術的には佐賀関から佐多岬の豊予海峡に橋やトンネルを作ることが可能とされています。
そして、四国新幹線が松山まできた暁には、この豊予海峡を渡って大分まで結ぶ計画も存在します。
今回は、将来新幹線ルートにもなるかも知れない、大分から愛媛の最短ルートを辿り、その近さを実感していただきたいと思います。
まずは東九州における中心地のひとつ、大分駅に来ました。
JR九州のアミュプラザおおいたを主体にした駅ビルが非常に立派。教会っぽさを感じると思ったら、南蛮文化が広まったことにちなんで、レンガを用いたクラシカルなデザインになったとのこと。
博多〜大分では日本国内でもトップクラスの速度を誇る、特急ソニックが走っています。
博多から大分、さらに宮崎を経由して鹿児島へ至るルートは、東九州新幹線が基本計画線として制定されています。
これは特に大分県が要望している新幹線で、西九州新幹線ができるなら、小倉〜大分くらい開通してもおかしくはないと思うのですが、自治体のやる気と福岡県の理解次第でしょうか。
さて、豊予海峡を渡るにあたって最初に乗車するのは、日豊本線の普通列車幸崎行きです。
11:50 大分駅 発
まずは由布院・久留米方面へ向かう久大本線が分かれます。ここは特急ゆふいんの森が人気の観光路線です。
そして、一緒に大分川を渡ったあとで離れていくのは、大分〜熊本を結ぶ豊肥本線です。
ここについても豊肥新幹線という基本計画線があるのですが、具体的な話は全く聞きません。おそらく基本計画線の中で最も実現性が低い新幹線です。
遠くの海沿いでは重工業が盛んな様子。コンビナートの立派な構造を見られました。
次が終点の幸崎駅というところで、もうお客さんはほとんどいなくなってしまいます。
それでも列車は最後の爆走。電化された特急幹線らしく、110km/hで駆け抜けます。
12:13 幸崎駅 着
結局終点まで乗車していたのは、他に2人だけ。2面3線で広い構内ですが、運行上の拠点ということでしょうか。
ここまでは交通系ICカードの利用が可能、大分駅からの料金は380円です。
橋やトンネルが無い九州〜四国、そうなると海上交通のフェリーに乗ることになります。
その中でも今回乗船するのは、一番短い航路となる「佐賀関〜三崎港」です。どちらの地名もピンと来づらいですが、大分と愛媛それぞれの出っ張り部分を結ぶことにより、最短航路を実現しています。
佐賀関フェリーターミナルまでは、幸崎駅から大分バスに乗車します。本数は1時間に1〜2本程度、旧佐賀関町の中心部へ向かうため、重要なバス路線に位置づけられます。
このバスは大分駅始発なので、必ずしも列車で幸崎駅まで来る必要はありません。大分駅前から乗るなら、6番のりばからの出発です。
12:20 幸崎駅 発
JR系列のバスを思わせる、紺と白のカラーリング。ツバメマークでもつけたら完全にソレです。
駅から国道197号に出てきまして、ここからフェリーターミナルまで向かいます。
ゴツゴツした岩肌に、透明感溢れる海の色。船旅に向けてワクワク感を高めてくれる景色が目の前です。
その先の山は佐賀関トンネルで貫かれており、見た感じ結構新しそう。2007年に貫通したとのことで、佐賀関町が大分市に合併された2005年より後です。
それを抜けると左手には新しそうなガラス張りの建物、佐賀関フェリーターミナルが見えてきました。
12:35 古宮 着
ICカードでの支払いも可能で、幸崎駅からは380円です。
フェリーターミナル最寄りのバス停は「古宮」。
バスの終点「佐賀関」まで行ってしまいそうになりますが、そこではないので気をつけましょう。
さて、ここまで走ってきた国道197号ですが、フェリーターミナル前の交差点からまっすぐ佐伯方面は、国道217号に変わっています。
国道197号は左へ曲がっており、「国道九四フェリー」の案内が示されました。
その方向に目をやると、フェリーターミナルと海が続くばかり。
この国道197号は海上国道と呼ばれるもの。海を越えて大分〜高知を繋いでおり、フェリーの名前まで「国道九四フェリー」になっています。
佐賀関ターミナルの内部を見てみましょう。
1階には売店があって、お土産やちょっとしたお弁当が置いてあります。
2階にレストランが備えられており、食事はここでということに。目の前にフェリーが見られる、ロケーションもバッチリです。
3階には展望デッキがあって、車が乗り降りする様子や出港を見届けられます。
13:00出港の便に乗ってもダイヤ上その先進めないので、これは見送りました。
チケットは1階の乗船券うりばで購入。
立地的に不便で少ないかと思いきや、1時間に1本とそれなりの本数です。
車でなるべく四国に近い所まで来て、速度が遅いフェリーの距離を短くすると考えれば、割と重宝されておかしく無いのでしょう。
徒歩乗船については1120円でした。乗船時に係員さんの方が、QRコードを読み取る方式です。
今回乗船するのは2021年2月にできたばかりの「涼かぜ」です。交通エコロジーモビリティ財団から助成を受けたとのこと。
四国から九州へ次々と車両が上陸。トラックの他大型の観光バスもいました。
車と同じ出入り口から、端っこの歩道を歩いて客室へ。
こういう乗船方法だと階段が急な場合も多いのですが、さすがこの船は新しいためか、かなり緩やかでした。
2階の船内は非常に明るい雰囲気。座席モケットがカラフルに染まっています。
フラットでゆったりできる所も、アットホーム感あって寛ぎやすいです。
カウンター座席は2人ペアで向き合える形、外の景色もしっかり見られます。
また、小さな子供を連れたファミリーは公共交通機関の時間を短くする傾向にあり、実際そのような方が多かったです。その需要に応える形で、キッズスペースまで揃っています。
乗船時間は短いながらも、売店が用意されていました。
3階については大人な雰囲気。
はっきりとした色合いのデザインで統一されており、このシックな見た目は非常に好みです。
こちらにもフラットな区画が用意されていて、意識高い系のベンチャー企業みたいですね。
こちらのカウンター席は一人でも気まずくない、通常の座席配置でした。
運航中でも自由に甲板へ出られます。
正面に佐賀関製錬所、真後ろにフェリーターミナルの位置関係です。
14時ちょうど、佐賀関フェリーターミナルを出港します。
佐賀関製錬所に近づいていきまして、ここで進行方向をぐるっと変えました。
薄汚れた煙突に重工業の歴史を感じつつ、九州本土を離れていきます。
幸崎駅から佐賀関製錬所まではかつて佐賀関鉄道がありました。太平洋戦争により海上輸送が厳しくなったためですが終戦後の開業となり、1963年に廃止されています。
しばらく進みまして、陸地が途切れたところ。ここが大分の先端、佐賀関半島の佐賀関です。
底から少し離れているのが、無人島の高島。周辺の小島含め大分県に属しており、これが九州と四国の境目ということになるでしょう。
豊予海峡が橋で結ばれるならば、こういった無人島に橋脚が立つんでしょうね。
海底トンネルの場合は青函トンネルのように、佐賀関半島の先端部辺りで地上に出られる避難用設備が設けられそう。
この豊予海峡は豊後水道とも呼ばれ、波の穏やかな瀬戸内海から太平洋へ出る船も多いです。
すぐに愛媛県の佐田岬半島が見えてきました。
先端には佐多岬灯台がありまして、海底トンネルの場合はこちらにも避難用の定点が置かれそうです。
佐田岬半島は日本一細長い半島と言われており、四国が九州と少しでもくっつこうと手を伸ばしているみたい。
途中ちぎれそうにも見えますが、なんとか繋がっています。凹凸に海水が入り込んでおり、ギザギザした刃物のような形です。
フェリーはギザギザの一つに位置する三崎港へ向かい、入り込んでいきます。右手側にはかつて三崎製錬所があって、あの山の中を散策すると遺構も見つけられるとのこと。
まもなく到着のアナウンスが流れると、速度を落としていきます。
山の中には満開の桜が模様を描く贅沢仕様、桃源郷のような世界が広がります。
港の周辺には離島みたいな街が広がっていて、商店も数軒見受けられました。
車の出口を港につけるため、ここでも方向転換。これによって海上国道の国道197号は陸地へと繋がります。
下船は車と二輪車が先で、徒歩客は最後。徒歩で利用しているのは、僕の他に一人だけでした。
1階には沢山の車がピチッと並んでおり、車での利用が主流であることを実感させられます。
車が全て出て行くのを待ちまして、四国の地へ降り立ちました。
海上を渡ってきた国道197号は、写真左側の道路へと続いています。
三崎港には「みなとオアシス 佐多岬はなはな」という施設があります。
食堂やカフェなど入居していまして、港での待ち時間も退屈しません。
せっかく愛媛に来たので、温州みかんジュースを。濃厚で深い味わいを楽しませてくれます。
三崎港から愛媛の中心部へはバスが出ています。乗車するのは松山市行きの伊予鉄バスです。
15:30 三崎港 発
かつて夜行バスで使っていたであろう、3列シートの車内。路線バスでありながら、かなりゆったりと楽しめます。
四国側から見ると、三崎港まで盲腸線みたいに伸びる国道197号へ。
それでも実際はフェリーに乗っているので、大分から同じ国道を通っています。
丘の上には三崎高校がありまして、桜の密集度合いが学校の存在を知らせてくれます。
しかし、道路沿いや山の中にも満開の桜がたくさん植わっていまして、非常に綺麗な景色でした。
山脈が海に沈んでいるだけのような地形、所々トンネルで貫いています。
現在ではこのように山の中をトンネルや橋で突っ切る道路が整備されました。かつてはここから見下ろせる海沿いの集落を経由しており、その道路は197酷道と呼ばれるほどだったそう。
左手にも海が見渡せまして、どれだけ細長い半島か、そしてどれだけ高いところを走っているかが分かります。
もしここに新幹線が通されたとしても、トンネルばかりでこのような景色は見せてくれないはず。ローカル路線バスとしての楽しみを存分に味わいます。
たくさんの立派な橋梁が山同士を繋いでいますが、その中でも立派なのが堀切大橋。
左右両方に海を眺められまして、瀬戸内海と宇和海を隔てていることを実感できます。
手前の山を桜が彩る中、奥には八幡浜の海岸が見えています。この辺り一帯見せてくれるのは、リアス式海岸の複雑な地形です。
左手には写真で収められませんでしたが、一瞬だけ伊方原発を見下ろせました。
伊方峠を越えまして、伊方町の中心部にやってきました。
もし四国〜九州を通る貨物列車の需要があるなら、この辺りに奥津軽いまべつ駅のような新幹線駅ができるのではと考えられます。しかし、八幡浜駅〜大分駅で途中駅がなかったとしても、奥津軽いまべつ駅〜木古内駅と同じくらいの距離なので、途中駅がなくても不自然ではありません。
松山から伊予灘沿いを走る国道378号がぶつかる丁字路。
左へ行けば八幡浜港、右へ行けば三崎港、どちらを選ぶか選択の地です。
保内IC〜八幡浜ICを繋ぐ、大洲八幡浜自動車道が現れました。現代の土木技術で作られた高架を見ると、必ず新幹線を連想してしまいます。
保内は八幡浜におけるもう一つの市街地。ジョイフルやビジネスホテルがあって、かなり大きな街です。
少し山を越えまして、八幡浜港へ来ました。
『すずめの戸締まり』で旧ターミナルの建物が登場しましたが、それは既に解体済み。
2022年4月に、立派な新フェリーターミナルが完成しました。臼杵から八幡浜まで、オレンジフェリーに乗ったと想定されています。
中国四国地方を拠点にするショッピングセンターフジが現れ、完全なる中心市街地まで来ました。
16:37 八幡浜駅前 着
1時間ほどかけまして、最寄り駅となる八幡浜駅に到着。運賃は1310円でした。
先程のバスでも松山市駅まで行けるのですが、八幡浜駅から松山駅はJR予讃線で繋がっているので、再び鉄道に乗車します。
八幡浜〜松山には2つのルートがあります。
ひとつは伊予長浜駅を経由した、海沿いを迂回する旧ルート。もう一つは特急宇和海が走る、山の中を貫く内子線を経由した新ルートです。
新幹線的な要素を持つのは新ルートですが、ここはローカルな雰囲気をお届けするために旧ルートへ。
駅には『すずめの戸締まり』で登場した椅子が展示されていました。作品内で、八幡浜から予讃線を使って猫を追いかけていくシーンがあります。
松山行きの普通列車に乗車。伊予長浜経由と併記されています。
予讃線、予土線沿線の地域振興的なラッピングトレインで、車内にまで装飾が施されていました。
鉄道が通っていない一つ飛び出た半島、あの先端から来るのは中々遠いですね…。
16:45 八幡浜駅 発
バスからの乗り換え時間は8分で結構ギリギリ。後続の特急宇和海に乗ったほうが安心できます。
ここは新幹線ができれば、間違いなく駅が設置されるでしょう。
まだ保内IC〜八幡浜ICしか開通していない大洲・八幡浜自動車道、建設工事が予讃線のすぐ横で進められています。
鉄道を活かした公共交通を残すなら、この区間での新幹線開通も真面目に考えなければなりません。
ここはまだ特急が走る区間、2870mに及ぶ夜昼トンネルや駅間距離の長い山間部は、80km/h運転でそれなりの速度です。
肱川を渡るときには、桜満開の大洲城がとっても綺麗に見られます。本当に良い時季に来ましたね。
八幡浜から伊予大洲の距離は20km、新幹線駅は両方に設置できると思われます。
伊予大洲駅で行き違ったのは、特急宇和海。内子線を含む新線ルートを通ってきました。
伊予大洲駅を出発した先で分かれる新線と旧線、この列車は海沿いの旧線を走っていくローカル線で、「愛ある伊予灘線」という愛称がついています。
単線の線路から分かれた新線は、高架橋になって山へと消えていきました。
内子線は元々、五郎駅から分岐するローカル線でした。それが特急ルートに組み込むため線路が付け替えられ、高規格路線として生まれ変わったのです。
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列車は速くて60km/hほどで、肘川沿いを北上。伊予長浜駅に到着すると、ついに伊予灘の近くを走ります。
ちょうどよい具合に陽が傾きはじめ、海の上に広がる空色も穏やかなグラデーションへ。
串駅に到着する直前のガーター橋、細かく波打つ「灘」に夕陽が反射する様子も素敵です。
そして列車は、夕陽が沈んでいく海を眺められることで有名な、下灘駅に到着。
自然の波模様を描く伊予灘に、程よく暖かな光が落とし込まれ、舞台は整っています。1両編成の主役がホームに到着すれば、そこにはロマンチックなワンシーンが生まれるのです。
この景色を求めて国内外から多くの観光客が訪れています。四国は外国人観光客が少ない地域なのですが、それでも中国人観光客の方を中心に集中していました。
現実離れした空間でしたが、段々とお別れの時間が近づいてきます。
完全に内陸まで来ると、同じ日なのにこうも空は変わるのかと驚かされます。
すぐ横を走るのは松山自動車道、川之江JCTから津島若松IC(宇和島市)までを結んでおり、JR予讃線と同様です。
そして山の中を貫いた、内子線経由の新ルートがやって来ました。
向井原駅が合流地点となっており、両方共に特急路線に。
伊予市駅にて特急宇和海に追い抜かれました。
これが八幡浜駅を後から出発してきた特急です。速さはもちろん、高規格で距離が短い内子線を通ったので、このように追いつかれました。
こちらは2020年春に開業した南伊予駅。この駅には車両基地と貨物駅が隣接しており、松山駅から移転してきたものです。
これは松山駅の高架化工事が行われているためで、地上に作らざるを得ないこれら施設を、郊外へ移しました。
18:50 松山駅 着
背後で進む高架化工事もだいぶ形になってきました。こちらは2024年秋に完了予定です。
在来線ホームが高架化されると、現在の地上ホームは広場になる予定です。公式には発表されていませんが、おそらく将来的に四国新幹線が来た時、ホームを建設する用地を確保するためと言われています。
もしかしたら岡山からの新幹線がここに来るかも、そして願わくば九州へ繋がるのでは…。
ちょっと夢物語に思ってしまいますが、ぜひ高速鉄道を活かした交通軸を実現してほしいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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