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【バスすら廃止】国内最長路線バス天北宗谷岬線 最北の路線バス乗車記[史上最長片道切符の旅(86)]
おはようございます。こちらは日本最北端の駅、稚内駅の朝です。 駅舎も駅前ロータリーも真っ白で、北の果てのイメージにぴったりの光景。 一方で、2011年に新しい駅舎へ建て替えられており、以前のコンクリー ...
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前回ご紹介した、1989年に廃線となった天北線。稚内〜音威子府を結ぶ宗谷バス天北宗谷岬線がこれを代替しており、日本最長距離を走る路線バスになりました。
しかし、これほど長い路線でも宗谷本線から分岐する路線にすぎず、「本線」ではありません。
逆に2023年現在、本線で全線廃止されたのは国内に一本だけ。それが今回ルートをたどる名寄本線です。
名寄から紋別を経由して、遠軽駅まで至る路線。北見峠を越えられなかった時代は網走へのメインルートだったのですが、石北本線が開通したことで利用者が減少しました。
史上最長片道切符の旅ではそのルートに含まれる、名寄〜中湧別を路線バスで行きます。
5時間近く路線バスに揺られまして、音威子府駅からスタート。
音威子府村といえば黒いお蕎麦、駅舎内には常盤軒という駅そばがあったのですが、店主の方が亡くなって閉店しました。それどころか工場も閉業し、幻のお蕎麦です。
名寄本線が分岐した名寄駅までは、宗谷本線で南下します。知らなかったのですが、窓口で切符を買うと駅カードをもらえるキャンペーンを行っているそうです。
雪に占拠された木製の機関車ベンチが停まる、2,3番線ホームへ。
15:03 音威子府駅 発
いつも通り鹿が現れたため、遅れての到着。
雪をぴったりつけた特急サロベツに乗車します。
最北の路線らしい雪景色が続いており、道路を走るバスよりも自然の中を突っ切っている印象です。
2021年春に駅から降格した豊清水信号場を通過する際、特急同士の行き違いが行われました。
さらに、美深駅では普通列車と行き違い。
ここからは日本一の赤字路線と呼ばれる美幸線が伸びており、オホーツク海の北見枝幸駅を目指していたのですが、1985年に廃止されました。
宗谷本線は天塩川沿いを走る路線、雲から暖かい陽が差し込んで、冷たい川に映るのが幻想的です。
名寄市街に入りまして、稚内以来の大きな街。旭川〜名寄では1時間に1本程度列車があり、生活路線として機能しています。
宗谷本線を走る貨物列車は廃止されていますが、名寄駅近くにはオフレールステーションというトラック輸送の拠点が置かれていました。
15:48 名寄駅 着
稚内から特急を利用した移動について言えば、旭川または札幌へ向かうお客さんが圧倒的多数。名寄駅で下車したのは僕一人だけでした。
現在では宗谷本線の途中駅に過ぎない名寄駅。かつては深名線と名寄本線が分岐する重要なターミナル駅だったのです。
だんだん暗くなってきまして、牧場みたいなデザイン性が特徴の名寄駅も、ぼんやりとした明かりが灯るようになりました。
名寄本線を代替する路線バスは、名士バス興部線。駅前の3番のりばから出発します。
途中の下川までは1時間に1本程度と比較的本数が多く、そこから先は半減します。
それでも地方の路線バスにしては比較的充実している印象です。
16:57 名寄駅 発
すでに薄暗くなっている名寄駅前、ロータリーに立つ大きな歓迎の看板が迎えてくれます。
本当は名寄で泊まろうとしていたのですが、ホテルが取れなかったので暗いですが仕方なく先へ進むことにしました。
おそらく名寄高校から歩いてこられた生徒さん、徳田17線バス停から7,8人ほど乗ってこられました。
廃線跡と交差しまして、ここは南が丘団地として開発されているようです。
市街地から出て、しばらく国道239号上を走ることに。数日間あまりに人の少ないエリアにいすぎたためか、名寄の夕方はそれなりに車通りがある印象です。
この道路は名寄本線の跡と並行しており、駅跡地にモニュメントが立てられた場所もあるみたい。特に中名寄5線バス停の近くには、中名寄駅の待合室が残されているそうです。
名寄市から下川町に入りました。
この先でも「名寄」がバス停名に残っており、これは並行する名寄川に由来するものと思われます。名寄そのものも地名も、名寄川から来ています。
上名寄12線のバス停には、上名寄駅の駅名標まであるそう。鉄道路線を継いだバス通りに来れば、かつて鉄道が走っていたのを分かるのが良いですね。
北海道のバス停ではあまりに建物が無くて、「鈴木宅」のように個人名が採用されることがあります。
一方で、こちらは「住宅前」という個人情報を守りきったバス停名です。
下川市街地に入ったところで、この辺りでは各バス停で1人ずつ降りていかれます。なるべく家に近いところまで直接来られる、路線バスのメリットが浮き彫りになっています。
更に中心部へ入りますと、乗車まで見られるようになりました。お客さんはだんだん減っていく一方だと思っていたのですが、この点は非常に驚きです。
下川駅跡に位置するのが、下川バスターミナル。
近くのにぎわい広場には、キハ22形気動車2両が静態保存されています。
一ノ橋駅跡の近くには小学校跡を活用した丸天山収蔵館があって、雰囲気を残す木造の廃校を堪能できます。
一ノ橋駅あとはコミュニティセンターになっており、上名寄駅と同様に駅名標が残されています。
その先には、道の駅にしおこっぺ花夢(かむ)。
花の夢ってどういうことかと思ったら、500種類もの花が四季途切れること無く咲くとのことです。
国道から少し奥まったところですが、上興部駅跡は鉄道記念館が整備されています。
開業当時からの駅舎を保存し、駅名標などを展示。上興部石灰砿業所への専用線含めた歴史を解説しています。さらに、ホーム跡にはキハ27形気動車やDD14形除雪車のロータリー車が静態保存の形で停まっているとのことです。
西興部村は人口1000人ギリギリを保っている小さな村、その中心市街地に入りました。
西興部駅の跡地は、ホテル森夢、森の美術館森夢として村により開発が進められました。
駅舎が建っていたところは道路化されており、廃線跡の範囲には保育園や体育館が開館しています。
西興部村は森林資源が豊富であり、それを原料とした遊具やおもちゃなど、3000点の作品を有します。
屋内の木の遊園地として、1997年に開館。特にお子さんが楽しめそうな空間になっています。
西興部村から興部町に入りました。
おこっぺ牛乳が有名な酪農のまち、オホーツク海沿いの漁業よりもそのイメージが強いです。
オホーツク北部の中心として、ある程度の規模はある訳です。
18:30 興部バスターミナル 着
名寄から興部までそんなに雪深い印象はなかったのですが、後ろ姿が雪を巻き上げていた事を伝えてくれます。
このバスターミナルは大きな屋根で繋がっている、道の駅おこっぺが併設された建物になっています。
当然この時間じゃお店が閉まっている一方、バスの待合スペースは開いています。
失礼ながら、これほど小さな町にもヤマト運輸のPUDOステーションが設置されていました。それだけ人が集まりやすい場所として機能しているのでしょうか。
周辺には公園が整備されていて、ブルーシートが掛けられていながら、蒸気機関車の動輪が置かれていました。
ここには「ルゴーサエクスプレス」という、ディーゼルカーを改装した簡易宿泊施設があって、先着10名まで無料で宿泊することができました。コロナ禍によって休止中とのことですが、いつか復活する事を期待したいです。
18:36 興部バスターミナル 発
ここからは北紋バス興部線に乗継、紋別高校行きのバスに乗車します。
ここから紋別市街に入るまでずっと一人、こんな夜に移動する方はいらっしゃらないのでしょうか。
興部高校の近くも通るのですが、ここからもお客さんはゼロ。もう少し夕方に近ければ、紋別と行き来する方もいるのかと思います。
暗くて見えないですが、左手には廃線跡がすぐ隣を走っており、秋里鉄橋が残されています。
しばらく真っ暗だったのですが、明るくなると沙留地区に入ります。沙留漁港は興部の漁業の中心です。
このあたりにある富岡駅跡は、名寄本線で一番有名な廃駅です。
高く盛り土された所を走っていたのですが、その高さに位置したホームへは丸いスノーシェッドの掛けられた階段で結ばれていました。
サビサビに朽ち果てているのも、雰囲気が相まって非常に魅力的なのです。
少ない街灯によって真っ白な雪が照らされ、向こうの闇には廃線跡が静まり返っているはず。
ここには富岡湖畔橋梁跡があるはず。オホーツク海がすぐ近くできれいな景色が見えそうなので、ぜひ今度は昼間に来たいところです。
紋別市街地に入ってきました。
コンビニエンスストアやツルハドラッグなど、チェーン店鋪が多く見られます。オホーツクの主要都市で、空港も存在します。
かつて紋別駅があった中心部まで来まして、紋別バスターミナルに到着です。
19:20 紋別ターミナル 着
イルミネーションの輝くターミナル、背後には立派なホテルが立っており、都市規模の大きさを思い知らされます。
一方で、けばけばしいネオンが煌めく商店街も魅力的です。
今日は紋別プリンスホテルに宿泊。明日は紋別の流氷を見に行くことにします。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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