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【主要産業が消滅】石炭&ニシン漁で栄えた羽幌線 沿岸バス途中下車の旅[史上最長片道切符の旅(84)]

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深川駅から分岐する留萌本線は、2023年春に石狩沼田〜留萌、2026年春に石狩沼田〜留萌の廃止が決まっています。 かつては深名線も分岐しており、4方向へ路線が伸びたターミナル駅。あと3年ほどで特急が停 ...

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おはようございます。今日は早朝6時の留萌市からスタートです。

2023年3月末をもって留萌本線(石狩沼田〜留萌)が廃止されることで、道北日本海側から鉄路が消えます。

 

留萌駅からは留萌本線の他に、日本海沿いを北上する羽幌線も伸びていました。

さらに留萌炭田が広範囲に渡っており、輸送を担う貨物路線も多くありました。

 

こちらは2018年夏の写真。現在使われていない島式ホームへ跨線橋で結ばれているのですが、断面を見るとこれより先に伸びていたことが分かります。

 

その先には広大な広場がありますが、かつてはここも鉄道用地だったのです。石炭やニシンの貨物輸送で栄えましたが、どちらの産業も衰退。旅客輸送も需用が低下して完全に鉄道が消えることとなりました。

今日は1987年に廃止された羽幌線をたどる沿岸バスで、途中下車しつつ北上します。



まずやってきたのは沿岸バス留萌営業所です。

かなり朝早いですが、もうこの時間から職員さんがいらっしゃいました。

 

ここで購入したのは、「絶景領域・萌えっ子フリーきっぷ一日券」。今回利用する留萌〜幌延を中心とした路線バスが、乗り放題になります。

通常2700円のところ、ぐるっと北海道割で1900円に。乗り通すだけでもお得なので、これを買う他なかったのです。

 

6:50 留萌駅前 発

留萌駅前バス停より、羽幌ターミナル行きの路線バスに乗車。留萌駅前と言っても駅舎近くのロータリーまでは来ず、広い道路上に位置します。

 

中心市街地を走っておりまして、生活利用者の方は4,5人程度が市内での短距離利用。市外まで出ていかれるのは1人だけでした。

 

左手に見えるのは、2016年冬に廃止された留萌本線(留萌〜増毛)の橋梁です。立派なトラス橋ですが、まだまだ残されています。

 

冒頭に写真で映したかつての鉄道用地には、2020年に道の駅るもいがオープンしました。

 

留萌本線に並行する深川留萌自動車道。終点の留萌ICから留萌市街地への入り口にあり、留萌市は完全に自動車を中心としたまちづくりに舵を切っています。

留萌駅の駅舎も取り壊して、新たな施設が作られる予定です。

 

国道239号を走り始めると、ENEOS留萌油槽所の大きなタンクが見えてきました。特に道北の冬を越すには欠かせない、石油の玄関口であり貯蔵庫です。

 

留萌中心街から少し離れて、最初は三泊駅周辺の集落。三泊駅跡はバス停の待合室になっています。

 

日本海のすぐ横を走る沿岸バス、冬の冷たい波が押し寄せていて、座席越しに見える景色も最果て感があります。

 

反対の右手には雪が積もっていても分かるぐらいの廃線跡、左右ともに楽しめる国道です。



留萌市から小平おびら町に入りました。

木造のバス待合室の向こうに建物が立っていますが、その中の空き地が臼谷駅跡です。

 

小平町は留萌炭田を抱える産炭地で、留萌駅からもっと山の方へ天塩炭砿鉄道が結ばれていました。

1950年には17,000人だった人口も、2019年には3,100人で、北海道でよく見られる石炭で栄えた過去を持つ町と同じ現象が起きています。

 

一旦少し離れていた羽幌線の廃線跡が戻ってきて、橋脚跡までハッキリと分かりました。

 

かなり古そうながら立派な木造建物を有する、道の駅おびらにしん番屋を通過。ここへは後ほど訪れます。

 

小平町もう一つの中心地、かつての鬼鹿村の中心街には日本海側で最北のローソンがあります。

 

ドバイのヤシの木みたいな形をした海水浴場、かなり寒そうですが、おにしかツインビーチです。

日本海の荒波を大きな腕で守ってくれているよう。

 

ちょっと雲の切れ目になって、陽が入って来ました。今日一日曇りがほとんどだったのですが、少しでも太陽が見えると一気に波の模様が現れます。



苫前町に入りまして、右手にはグリーンヒルウインドパークの風車が見えてきました。

国内初の大規模風力発電所で、地域活性化を見込んで建設されています。

 

しばらく誰もいなかった車内ですが、苫前町役場から2人乗車。おそらく羽幌高校への生徒さんかと思われます。

 

07:55 苫前上町 着

苫前町の中心大通りを進み、次のバス停で下車しました。降りた瞬間吹雪いているのですから、なかなかの試練を与えられます。

 

3分ほど海に向かって歩き、こちらは道の駅風Wとままえ。このネーミングも明らかに、風力発電の街と掛けています。

 

JR北海道のホーロー駅名標みたいな看板も貼られていました。

 

宿泊施設「とままえ温泉ふわっと」と一体化しており、夏には日本海を望む足湯も楽しめるそうです。

 

町役場の方へ戻るようにして、中心大通りを歩きます。町の花であるエゾエンゴサクを模した街灯が垂れていました。

 

苫前町役場の目の前にあるのが、とままえだベアー。

よくドキュメンタリー番組で取り上げられる、三毛別羆事件。死亡者7名、負傷者3名という国内最悪の獣害が苫前町の山中で起こっています。

 

08:29 苫前町役場 発

今度は留萌方面のバスに乗車し、来た道を少し戻ります。



08:56 花田番屋前 着

小平町へ戻ってきまして、訪れたのは道の駅おびら鰊番屋。かつて北海道の日本海側で盛んだったニシン漁ですが、ここは特にその歴史を伝える場所です。

 

道の駅の隣にあるのが重要文化財、旧花田家番屋です。冬季(12月1日~3月15日)は閉鎖されていますが、日本最北の国指定重要文化財に指定されると、復元工事が行われてその歴史を伝える博物館となっています。

 

ニシン漁で栄えた北海道の日本海側では、漁業経営者が沢山の労働者を雇うように。先程の鰊番屋を作った花田伝作も、18の定置網を経営したニシン漁師です。

 

花田家番屋には5ヶ統の漁夫の外船大工、鍛冶職、屋根職、曲師など200人を収容していました。こうした番屋は道内にいくつもありましたが、現存するものではこれが最大規模だそう。

 

春になると産卵のため、大量に浜へ押し寄せることから春告魚と呼ばれたニシン。しかし1950年代に突然獲れなくなり、ホタテやタコの漁業に切り替わっています。



道の駅から国道を挟んだ向かい側には、三船遭難慰霊之碑が立っています。

第二次世界大戦降伏後の1945年8月22日、樺太から日本への疎開船3隻が旧ソ連軍の潜水艦からの攻撃を受けました。これにより小笠原丸と泰東丸が沈没しており、ここ留萌沖にて計1,708名以上が犠牲となっています。

 

道の駅の展示室には、その遺品が収められています。沈没した船の写真も載せられており、創作活動の経緯も説明されていました。

日本人の立場としては、理不尽としか思えない被害を被っています。第二次世界大戦直後の旧ソ連の行動はあまり教科書に載りませんが、かなりの衝撃とともに学ばされました。



10:06 花田番屋前 発

ラジオが延々流れるという、ローカル感満載の車内。

これは通行止めが頻発し、代替道路がほぼない沿岸バス特有のもので、運転士さんが道路交通情報をいち早く得るためだそうです。

 

留萌から走り続けている国道は、日本海オロロンラインと呼ばれています。

羽幌町に入ったところで、由来となったオロロン鳥のモニュメントがお出迎え。オロロン鳥とはウミガラスの別名で、「オルルーンオルルーン」という鳴き声から名付けられたそうです。

 

羽幌町は人口6,362人を有する、羽幌線沿線で最大の町。バスは道立羽幌病院まで乗り入れます。

 

朝夕ならそれなりの通学需要がありそうな、羽幌高校の横を通過しました。

 

羽幌町内では市街地内部を経由し続け、こちらは沿岸バス本社。

 

雪国の田舎のバスターミナルそのもので、独特の古さを醸し出す雰囲気がとっても好みです。

 

そして羽幌駅跡近くに位置する、羽幌ターミナルに到着で下車します。



10:51 羽幌ターミナル 着

このバスは豊富駅行きだったのですが、この先初山別村で事故が起こり、通行止めのため羽幌にて運転を打ち切りました。

 

待合室内には沿岸バス関連の展示がなされています。

 

さらに、羽幌駅の写真まで残されていました。

国鉄羽幌線には札幌から羽幌線経由で幌延まで至る急行はぼろが走っていました。現在では沿岸バスのはぼろ号やその役割を担っています。

 

羽幌駅跡地には、タイル張りの壁が建てられています。かつて駅があったことを示すシンボル的存在でしょうか。

 

こちらがかつての駅前通り。いくつか飲食店などを見られ、かつて賑わっていたであろう面影は感じられました。

 

国道沿いのメインストリートは明らかに規模感が大きいです。

バスターミナルよりも南側の町役場方にホーマックやツルハドラックなどがあり、そちらへ車で買い物に行く人が多そう。

 

ここから引き続き沿岸バスで北上、日本海沿いの街をめぐります。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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