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【失敗した新規路線】内海行きパノラマスーパーから理由を探る 知多新線ワンマン化

2023年3月13日

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愛知・岐阜両県に路線網を張り巡らせる大手私鉄、名古屋鉄道。

各地バラバラだった小さな私鉄路線をどんどん吸収したことで、近鉄、東武に次いだ総路線距離を有します。

 

歴史ある路線が多い中、比較的新しく作られた路線もあります。その代表格が2005年に開業したセントレアへ繋がる空港線。中部国際空港まで鉄道で行く唯一の手段であり、そのアクセスを担っています。

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その一方でせっかく新線を作ったのに、失敗に終わった寂しすぎる新線も。それが今回ご紹介する、知多半島の先端部に作られた知多新線です。

 

本来なら沿線の宅地開発や観光客で賑わうはずだったのに、開業へ至るまでにその見込みは立たず。複線規格の路盤や、山の中に新駅の構造物が残されていたりと、未完成の路線です。

 

観光利用者が少ないこともあり、2023年春のダイヤ改正では展望車のあるパノラマスーパーの大部分を削減するようです。

今日はこの展望席から、あまりに寂しい知多新線とその理由について紹介します。



やって来たのは名鉄最大のターミナル駅、名鉄名古屋駅です。

最も利用者の多い駅でありながら、地下の僅かなスペースに作られた3面2線のホーム。各地から列車が凝縮されているため、とにかく頻繁に発着します。

 

乗車するのは知多新線へ直通する、特急内海行きです。前2両は特別車両となっており、追加料金360円で利用できます。

 

柱に挟まれた僅かなスペースに扉が収まっており、飛行機のゲートみたいな隙間から乗り込みます。



15:11 名鉄名古屋駅 発

地上の世界へ登ってくると、名鉄とJRが並走する大都市らしい景色が広がります。一番右には東海道新幹線の高架があり、その速さを実感することも。

 

金山駅から神宮前にかけては名鉄唯一の複々線です。

真ん中2本が河和・常滑線、外側2本が名古屋本線・犬山線の方向別複々線になります。

 

神宮前駅より真ん中2本の線路が登っていきまして、立体交差場を走っていきます。



常滑線と河和線の分岐駅となる太田川駅。

まずは名古屋方面の線路が上へと分かれていきました。

 

この太田川駅は3階建ての高架駅になっており、2階ホームと3階ホームがある要塞駅とされています。

 

この列車は2面4線構造の2階部分、1番線ホームに到着しました。

 

太田川駅を出発すると、右手にセントレアへ繋がる常滑線が分岐。河和線は左側へ向かいつつ、3階ホームからの線路が降りてきました。



河和線(高横須賀〜南加木屋)では新駅、加木屋中ノ池駅の建設が進められています。

駅開業は2023年度末を予定しており、工事の真っ最中です。

 

これに併せて築堤では高架化工事も同時進行中。特に橋まで新たに架け替えられており、大規模なものです。

 

知多半田駅は知多半島の中核をなす半田市の中心駅、2019年度には12000人/日近くの乗降でした。

 

並行するJR武豊線は武豊駅まで、名古屋〜半田・武豊はJRと名鉄が競合しています。利用者は名鉄河和線の方が優位に立っており、この先まで線路が続きます。



富貴駅に到着しまして、ここから本題の知多新線です。

当初、名鉄は知多武豊駅と富貴駅の間に武豊信号所を設けて、知多新線の分岐点にする計画でした。

しかし、富貴駅周辺住民は知多新線へ直通列車設定による、列車本数減少を危惧して反対。さらに、名鉄も信号場の用地確保に難航したため、知多新線は富貴駅から分岐する事になりました。

 

大手私鉄の路線分岐駅には思えない、木造駅舎の地上駅です。2面3線は構内踏切で繋がれています。

 

真っ直ぐ伸びる複線の河和線に対し、単線の知多新線は右方向へカーブしていきます。

 

ここまで知多半島の東側を走っていましたが、西側へ行くために丘を越えます。目で見て分かるほどの勾配で、何となく体が上に向いている感じを体感できます。

 

知多新線は単線ですが、複線化を見据えて右側には用地が確保されています。

 

しかし、知多新線の建設が始まった1970年には、南知多高速道路が開通。南知多へのアクセス手段は自動車が主流で、現在までその流れは続いており、鉄道の需要は低いままです。

 

富貴駅〜上野間駅の駅間距離は5.8kmもあるため、3.0km地点には別曽池信号場が設置されています。普通列車などここで行き違いすることも。



その先で通るのが、建設で難航した深谷トンネル。

掘削時には出水事故が発生して、開削による工事へ変更されています。開削の場合はさらなる用地買収が必要で、出費が嵩み工期も遅れることとなりました。

 

元々は沿線を宅地開発して、利用者を獲得する方針だった名鉄。観光地の多い海沿いではなく、内陸部を通すルートを選んでいます。

 

しかし、工事が遅れている間に愛知県の都市開発が再編。沿線は市街地調整区域に設定され、大規模な宅地開発ができなくなってしまいました。

 

本来なら名鉄は各駅周辺で宅地開発を行い、安定した通勤通学需用を得るはずでした。本数が増加することを見越した複線規格のトンネルも、今では必要なくなっています。



知多新線は各駅に停車しており、お隣の上野間駅。

富貴駅から上野間駅はひと区間ですが、距離が長いため280円とかなりの高額です。

さらに、知多新線は名鉄の運賃計算で「(距離に応じた運賃)×1.25倍」のC線に分類されます。これに加えて建設費回収の加算運賃により、高額運賃になっているのです。

 

上野間駅の乗車人数は312人/日(2019年度)いらっしゃって、周辺にはある程度住宅街が広がっています。

 

現在2面2線構造の上野間駅ですが、2023年春のダイヤ改正で2番線上りホーム(金山・名古屋方面)が閉鎖予定です。

 

改札内で各ホームへ階段が続く構造ですが、2番線ホームの方は立入禁止になります。

 

これは知多新線でワンマン運転が開始されるためで、使用するホームを一つに集約したのでした。



住宅街の向こうに伊勢湾を見つつ、南下を続けます。

知多新線は高架や山の中を走るため、踏切が一つもありません。高いところを走るおかげで、景色を見渡せるのが良いです。

 

美浜緑苑駅は周辺に木々が生い茂っており、名鉄の駅で一番秘境駅のような雰囲気です。

知多新線開業の1980年の7年後に開業した駅で、現時点で唯一交換できない1面1線の単式ホームになっています。

 

制限がされた沿線の中、この地域には名鉄によるニュータウン美浜緑苑が建設されました。美浜緑苑駅はそれに合わせて、1987年に設置された駅です。



次に停車する知多奥田駅は乗車人数2781人/日(2019年度)で、線内最も利用客が多い駅です。

知多新線全通と同時期の1980年に開園した、南知多ビーチランドの最寄り駅になっています。

しかし、名鉄の1999年3月期連結決算で230億円の赤字損失を計上しており、閉園が検討されたことも。地元の反対により残っていますが、2003年10月から運営を新設子会社の名鉄インプレスに移管しています。

 

さらに、日本福祉大学の学生さんによる定期利用者が9割近く占めており、知多新線自体が大学への通学需用に頼っている部分も。

左手に見えてくる山の中の白いキャンパス。しかし、一部の学部は東海キャンパスへ移転しており、暗雲が立ち込めています。



次の野間駅は周辺に田んぼが広がるばかり。

しかし、1kmほど離れた海沿いに旅館が数軒あって、そこへバスがでているそうです。

本来だったらここには宅地が広がっていたはずなんですよね…。

 

野間駅についても、2番線上りホーム(金山・名古屋方面)が閉鎖予定。わざわざホーム撤去をするかは分かりませんが、運用上は高架の棒線駅へ姿を変えます。



次は終点の内海駅。割と駅間が短かったですが、内海駅まで4.1kmということもあり、90km/h超まで速度を上げて走ります。

そんな山中の区間には、ぜひ注目してほしいポイントがあります。

 

それがこちら、まるで駅跡のようなコンクリートの構造物です。

名鉄はこの周辺でも住宅地の開発を行い、小野浦駅を開業させる予定でした。

 

しかし、計画の遅れや周辺住民の減少によって駅設置計画は凍結。2両分の短いホームと、そこから降りる階段だけが残っています。



数々のトンネルを抜けて、終点の内海駅へ。

高架線によって住宅地の中をゆっくり走っていきます。

 

高架だと走行音が比較的大きくなるため、すぐ横の内海中学校を始めとして騒音に対して問題視したことも。これについては防音壁を作ることで対応しました。

 

駅の構造は2面4線で、単線の終着駅にしてはかなり立派な構造です。やってくる列車は1時間に3本ですが…。

 

内海駅は高架がぷつんと切れる形の行き止まりです。

駅がある南知多町の中心部はもう少し先で、ここから半島先端部の師崎もろざきへ延伸する計画でした。

 

現在ではその計画は話にすら上がっておらず、ここから線路が伸びることは無いでしょう。



名鉄は内海駅について内海海水浴場への利便性を考え、海のすぐ近くに設置予定でした。駅予定地近くの旧内海中学校跡地も取得し、総合開発を計画していました。

しかし、地元住民は駅から海水浴場の間で商いを営むこと、内陸部の開発を考えていたため反対。結局名鉄が折れる形で内陸部に駅を設置し、最後の内海トンネルを掘削することになりました。

「神社のすぐ近くに駅を作ってしまうと、参道のお店にお客さんが来なくなるので、駅を少し遠いところに作ってもらう」のに似ています。



ようやく内海駅の工事が始まったわけですが、またもや名鉄に壁が立ちはだかります。

それは工事中に発見された、先苅貝塚です。東海地方で最古という貴重な貝塚で、考古学会が発掘調査を開始。工事は一旦中断せざるを得なくなりました。

 

1980年にようやく内海まで全通した知多新線ですが、鉄道建設が遅れる間に、沿線のほとんどが宅地開発できない市街地調整区域に指定。利用予測を大幅に下回る低迷に陥りました。

 

そうなってしまったら増やすべきは観光客ですが、内陸に鉄道駅を設置したため観光には向かない路線に

内海駅については海水浴をした後、駅まで2kmも歩かせるのは厳しいものがあり、鉄道ではなく自動車を使う方が大半になりました。

 

その後、そもそも知多半島南部の観光が衰退気味になり、観光客の鉄道利用がどんどん減少。今回のダイヤ改正でパノラマスーパーの乗り入れも大部分が削られます。

 

終着駅の内海駅は、2020年5月25日から当面の間無人化。さらに2023年3月25日をもって正式な無人駅になります。



どんどん寂れていく様子が手に取るようにわかる知多新線。

この路線が失敗したのは、名鉄が狙いとした宅地開発ができない環境へ変わったことにつきます。見直しが困難な工事開始後にその状況へ陥ったのは、かなり運が悪かったように思います。

 

廃止検討まではされていないものの、現在の利用状況を見るに明らかな赤字路線。

日本福祉大学への通学需要がある内は残るでしょうが、キャンパス移転などされればかなり厳しいと言わざるを得ません。

 

かなり立派な構造物と、周辺の状況のギャップには興味を引くものがあります。

名鉄としては黒歴史的な路線でしょうが、それによって生まれた独特な雰囲気を味わってみてください。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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