2023年春のダイヤ改正で誕生した新駅、ここはJR京葉線の幕張豊砂駅です。
ホームは1線が地上、1線が高架という、非常に珍しい構造。一体なぜこのような形なのでしょうか。
また、開業へ漕ぎ着けるのに非常に大きかった存在が、駅の目の前で構えています。千葉県に誕生した25年ぶりのJR新駅、かなり特徴を持った新しい駅の様子をご覧ください。
最初にやってきたのは深夜2時。
ホームだけ明るくなっているものの、それ以外は真っ暗。建物が明るいのも今日は準備されている方がいらっしゃる為でしょう。
しかし、駅前では10人以上の鉄道ファンが待機中でした。中にはテントまで張っている方がいらっしゃって、おそらく自動券売機の早番を狙っているものと思われます。
4時に再び訪れると、自動券売機が稼働済み。シャッターが開きそうな雰囲気になってきました。
4:20、シャッターが上がりまして、駅員さんがお出迎え。
駅が営業を始めるその瞬間をカメラに収めようと、非常に多くの方が集まっておられました。
20人以上は待っていましたが、折角なのできっぷを購入することに。
指定席券売機は設置されておらず、近距離きっぷや定期券購入のみになります。
まずは入場券を購入して、早速駅構内へ入ってみましょう。
白で統一されていることで、まるで博物館のような清楚感ある見た目。
一見普通の自動改札に見えますが、ちょっと違うところも。
ICカードタッチ部分がやや斜めになった最新型であるのに加え、将来的にQRコード対応を考えているであろうリーダーも見られました。
改札を抜けてとにかく感じるのは開放感です。
屋根には膜屋根が張られており、太陽が出れば自然光が取り込まれて明るくなるそう。
あちこちで千葉県産のスギが使われており、ボーダーの細かな木目調が特徴的です。
明るいコンコースを奥へ進むと、地上の1番線ホームと高架の2番線ホームが立体的に組み合った構造を楽しめます。
その構造についてはまた後ほど、まずは最初にやってくる列車を迎える、出発式が始まります。
この駅に到着する最初の列車は、上の2番線ホームへ来る5:04発東京行き。
その音が響いてきますが、出発式は5:06発蘇我行きとのことなので、1番線ホームへ。
2階から木漏れ日を思わせる光に包まれながら、幕張豊砂のヘッドマークをつけた、京葉線が入線。新しい駅に命が吹き込まれます。
コンコースには4種類のヘッドマークが、並べて展示されていました。
出発式を終えたところで、特徴的なホーム構造を見てみましょう。
この駅はコンセプトとして、「公園で過ごすような気持ちの良い駅舎」を目指しているそう。
ならば1番線地上ホームへの階段は、ちょっとしたテラスへ向かっているような気分です。
先程は出発式で見物客がいっぱいでしたが、人がいなくなれば非常に開放感あります。
目の前に広がるのは、京葉車両センター。
2031年までにホームドアが設置されるようですが、車両基地ツアーさながらのトレインビューを楽しめます。
駅構内にはこのような、四角いベンチが置かれています。
東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村で使われた材木を使用しており、ここでも県産材を採用したそうです。
今度は高架の2番線へ向かいましょう。
コンコースからホームが見えた1番線に対し、2番線は完全に上です。
高架を登ってきました。よくある都市部の駅だと、向かい側にもホームが対面する相対式ホーム。
しかし、ここは正面に駅舎があって、まるで1面しかホームがない駅のようです。
それを裏切ってくれるのが、線路と反対側に見下ろせる1番線ホーム。
特に上下列車が同時間帯に入線することもあり、これほど良いタイミングはありません。
それにしても、なぜこのような構造になったのでしょうか。
京葉線は1975年、東京湾沿岸の貨物需要を見込んで、に貨物専用線として一部区間で開業しました。
幕張豊砂駅のあたりには貨物操車場や鷺沼貨物駅を作る計画があったのです。
その後、京葉線は旅客線の色を濃くし、貨物駅計画は立ち消え。ここには京葉車両センターが作られました。
上り線から車両センターへ抜ける時、下り線と平面交差すると運行に支障があります。そこで上り線が高架にして立体交差としました。
幕張豊砂駅はそんな場所に開業したため、上り線は高架、下り線は地上の構造になったのです。
幕張豊砂駅は南側にだけ出口が設けられており、北側からのアクセスには難があります。
しかし、自由通路を作るにも京葉車両センターをまたぐため非常に長く、建設事業費は約50億円。まだ利用者がそこまで見込めないため見送り中です。
千葉県はこの地域の開発を進めており、幕張メッセ、千葉マリンスタジアムを作りました。
この開発を北へ拡大しようと考え、千葉県がJR東日本に新駅設置要望をしたのが幕張豊砂駅の始まりです。
しかし、その後の不況で開発が進まず、新駅の促進期成同盟は活動休止に至ります。
そんな中、2013年にイオンモール幕張新都心がやってきました。
これを受けて新駅設置構想が本格化し、千葉県、千葉市、イオンモール、JR東日本で駅建設の方向がまとまります。
ちょうど幕張豊砂駅開業式典のリハーサルをしていたのですが、背後には4つのマークが見られました。
建設費用115億円のうち、2分の1をイオンモール、千葉県、千葉市、JR東日本がそれぞれ6分の1ずつ負担。
どう考えてもイオンモールがなければ駅設置は無かったと言えます。
「幕張豊砂」駅は一般公募で決まった駅名。地域名の「幕張」と駅の南側に位置する地区の「豊砂」で、利用客への分かりやすさと地域住民の愛着を得られるとして、採用されました。
大きな集客力を持つイオンモールだからこそしてくれた、建設費の半分という大きな投資。
ぜひ多くの方に訪れていただいて、幕張豊砂駅自体も楽しんでいただきたいですね。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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