路線図は慣れない鉄道を利用する人にとって、大切な道しるべです。
しかし、中には路線図に書かれていない線路を走る困った列車があります。今回大宮駅から乗車するのは、西船橋行き「しもうさ号」です。
ホーム上では既に大勢のお客さんが乗り込もうと並んでいます。途中どこを走っているのか分からなくなる、そんな列車でも毎日の通勤通学で使っている人にとっては慣れたものです。
路線図外の線路を走るとはどういうことなのか、最初に運行ルートを明かしてしまいます。
大宮駅から東北本線を南下、その後武蔵野線へ入って西船橋駅を目指すというルートです。注目するべきは、東北本線から武蔵野線への入り方。
大宮から南下する東北本線と武蔵野線は直交しているだけで、路線図だけを見ていると直接は入れません。
そこで手助けしてくれるのが、大宮支線・西浦和支線です。
これは貨物線なのですが、朝夕のラッシュ時には東北本線と武蔵野線を直接結ぶ列車が運行され、それが「しもうさ号」です。
ちなみに今回乗車するしもうさ号の他、八王子・府中本町方面へ行くむさしの号もあります。
これに関しても貨物線の大宮支線を通り、今度は武蔵野線の西側へ抜けていきます。
路線図からいなくなる列車といえば東海道の通勤特急湘南(旧湘南ライナー)が有名ですが、これは各駅に停まる普通列車。不思議なルートを走っていくしもうさ号に乗って、その道のりの様子を見ていきましょう。
18:26 大宮駅 発
鉄道の街大宮は東北と新潟の分岐点。長距離輸送だけでなく、首都圏らしく日常的な通勤通学客も多く利用しています。
さいたま新都心駅の横を通過。
この列車は湘南新宿ライン(東北貨物線)の線路を走っているのですが、ホームが設置されていません。京浜東北線と東北本線の列車が停まります。
次の与野駅は京浜東北線のみ停車で、向かい側E233系が東北本線を通過するところに、ホームはありません。
この列車は湘南新宿ライン(東北貨物線)上り線から、武蔵野線大宮支線に入りました。
これで右側を走っていた湘南新宿ライン(東北貨物線)下り線も立体交差して左側へ移り、武蔵野線大宮支線は完全に隣り合った複線になります。
武蔵野線大宮支線は、大宮大地を貫くトンネルに入りました。
トンネルをくぐると、武蔵野線大宮支線から西浦和支線が分岐する別所信号場に侵入します。
大宮支線は西浦和駅、西浦和支線は武蔵浦和駅へ向かいます。支線の名前があべこべでややこしい…。
ひと足早く西浦和支線下り線が分岐、埼京線中浦和駅の高架下をくぐります。
さらに今走っている上り線も分岐し、西浦和支線に入ります。
西浦和支線下り線は複線の大宮支線を乗り越え、西浦和支線上り線と共に武蔵浦和駅を目指します。
東北新幹線の高架橋をくぐりながら、武蔵浦和駅に到着です。この上には東北新幹線と並走する埼京線が通っていて、直交している状況です。
先程の連絡線を通ったことで、東北本線から武蔵野線へ直通することができました。
南浦和駅はさっき通っていた東北本線と直交する駅です。ここに連絡線を作っても良かったでしょうが、おそらく立体交差を作るのに広い土地を確保する必要があり、先程の場所が選ばれたのだと思います。
大宮から武蔵野線各駅へ行きたいなら、しもうさ号を設定しなくても、南浦和駅で乗り換えれば済む話です。
このような列車が運行されているのは、東北本線の混雑緩和のため。大宮〜南浦和に乗っていた武蔵野線へ乗り換える人たちを、しもうさ号に分散させているのです。首都圏では直通列車がたくさんあって慣れていないと混乱しますが、それらは混雑緩和に大きく貢献しています。
東浦和駅は武蔵野線の乗換路線がない単独駅では、最も利用者数が多いです。
武蔵野線は東京メガループを形成する路線であり、都心と郊外を結ぶ路線と交差するため、乗換駅がたくさんあります。
東川口駅は埼玉高速鉄道の乗換駅です。ここから1駅終点の浦和美園駅は、日韓サッカーW杯でも使われた、埼玉スタジアム2002の最寄り駅として開業しました。
ちょうど真上を東武伊勢崎線が通っていて、新越谷駅の明るいプラットホームを見られます。
新越谷駅へ乗換できるJRの駅名は南越谷駅。国鉄武蔵野線が開業した後、乗換駅として東武が新越谷駅を設置しています。
その直後、左手には越谷貨物ターミナルが広がっています。武蔵野線における貨物の拠点駅として設置されました。
大きな機関車も並んでいまして、どっしり構えた様子が格好良いです。
その後はズラッと集合住宅が立ち並ぶ地区、レイクタウンへ。
そこに設置されているのが越谷レイクタウン駅です。2008年に街開きされた新しいニュータウン、あまり無機質さを感じさせない町並みになっています。
駅の北側にはとにかく広いイオンレイクタウン。
「kaze棟」「mori棟」「アウトレット棟」によって構成されており、合計面積245,223㎡はショッピングセンターで日本最大です。
吉川駅は武蔵野線開業時市内唯一の駅で、それにふさわしい駅名。
現在北側は開発中なので真っ暗、一方で南側には住宅が立ち並んでいるので、線路が境界になっているのも面白いです。
人の名前と勘違いする駅名1位にしても良いでしょう、吉川美波駅に到着。
駅の目の前にはイオンタウン吉川美南があります。
更にコストコなど大型店舗が立ち並んでいました。
更に隣接する形で、今度はららぽーと新三郷。ここまで大きなショッピングセンターが続くと、次の駅に到着してしまいます。
ここにはかつて武蔵野操車場があって、新三郷駅は上りホームと下りホームを挟む形で開業しました。
上下ホームが360mも離れていてギネス世界記録にも認定されたのですが、操車場廃止により1999年に下りホーム側へ寄せられ、今ではその面影はありません。
その跡地を活用して再開発が行われているところです。
続いて三郷駅に到着、三郷JCTでは東京外環自動車道が常磐自動車道と交差しますが、鉄道側は乗換路線がありません。
江戸川を渡りまして、埼玉県から千葉県に入りました。
南流山駅で首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)と交差。
そして新松戸駅では常磐線と交差します。
武蔵野線から常磐線柏方面も貨物線の北小金支線で繋がっていて、貨物列車や臨時列車が走ったりします。
新京成電鉄が上を通ったなと思ったところで、地下の新八柱駅へ入線。
続いて成田スカイアクセス線が交差している、東松戸駅に到着しました。
市川大野駅、船橋法典駅を通りまして、夜の住宅街を高架線で駆け抜けていくだけです。
京成西船駅のホームを下に見つつ、終点の西船橋駅はすぐそこになります。
19:27 西船橋駅 着
折返し大宮行きしもうさ号となるこの列車、ホーム上では多くのお仕事を終えた方が待っておられました。
東京の外環を作り上げている武蔵野線、いろんな路線と交差していることがよく分かりました。
直通できなさそうな立体交差部分にも貨物線が設けられていて、列車の流動をよく考えられているなと感じます。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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