2023年3月をもって廃止された留萌本線(石狩沼田〜留萌)。
石炭やニシンの輸送を担った路線ですが、炭鉱の閉山とニシンの不漁、人口減少に深川留萌自動車道の開通がとどめを刺して、留萌から鉄道が消えました。
現在運行を続けている深川〜石狩沼田についても、2026年春の廃止が決まっています。
今日は一時的に終着駅となった留萌本線で石狩沼田駅へ。
そして1ヶ月半経った廃止区間と、留萌駅の現在をお届けします。
札幌駅から特急ライラックに乗車、深川駅へ向かいます。
もちろん札幌〜旭川の利用が圧倒していますが、岩見沢までの通勤利用者や、美唄、砂川、滝川で降りるお客さんもそれぞれ10人以上いらっしゃいました。
1時間ほどでまもなく深川駅。肉声での乗換案内で「石狩沼田行き」と放送しているのが、非常に大きな違和感でした。
9:05 深川駅 着
ライラックのお隣4番線ホームには、留萌本線の列車が停車中。
乗換駅となる深川駅で、変化した部分を見て回ります。
まずは路線図式の運賃表。
石狩沼田駅から留萌駅が切り落とされており、廃止の実感が一気に湧いてきます。
さらに、発車標にはこれまで存在していなかった、石狩沼田行きの表示です。
一気に全線廃止されるものと思っていたため、こうなる時代が来るとは…。
基本的に留萌本線が出発するのは4番のりば、1本だけ6番のりばから発車する列車があります。
のりば案内についても「留萌方面」から「石狩沼田方面」へ変更。
旭川・稚内・網走といった都市と、小さな終着駅「石狩沼田」が並列されているのは、なんともミスマッチです。
行灯式のホーム案内についても、「石狩沼田方面」の表示に差し替えられています。
3年間しか使わないものですが、ちゃんと行灯式に対応させており、後ろには「留萌」が透けていました。
4番線ホームには富良野線で使われていた、キハ150形気動車が停車中。ラベンダーカラーで留萌本線へやってきました。
行き先方向幕は白いままで、サボも入っていません。
9:13 深川駅 発
自動放送でなされる「石狩沼田行き」の放送、なかなかの違和感を感じます。
スタフの記載も深川駅から石狩沼田駅で短く、折り返し列車も一緒になっていました。
富良野線におけるワンマン運転についての案内が、まだ残っています。
朝の需要も収まり下り列車のため、利用者さんは他に1人だけでした。
北一已駅は深川市内唯一の留萌本線の駅。
利用者はほとんどいらっしゃらず、駅舎は深名線の宇津内仮乗降場から持ってこられました。
スピードは80km/hちょっと出しており、ローカル線にしてはだいぶ速い方です。
秩父別駅を発車。
列車が止まらないホーム端部分は、2021年頃立入禁止になりました。
この列車は北秩父別駅を通過する便、板張りホームで非常に小さな駅です。
石狩沼田方面の始発列車は、なんと16:21発になっています。
9:28 石狩沼田駅 着
乗っている時間はわずか15分間、石狩沼田〜留萌が廃止されたことにより、留萌本線14.4kmは最短の「本線」になりました。
これまでの日高本線(苫小牧〜鵡川)の30.5kmを上回っています。
途中行き違い設備のある駅は無いので、一本の列車が行ったり来たりするだけ。
お客さんが降りると扉を閉めまして、折り返しの準備を行います。
駅名標を見てみると、やっぱりここが終着駅。
英語部分より下側部分だけ、終着駅仕様で上から貼り付けてあります。
留萌本線の中では確かに大きな駅で、建物的には十分終着駅と言っても違和感無い風格です。
沼田町の中心駅であり、駅前には広々としたロータリーが整備されています。
他に乗っておられたお1人は、車に迎えられていらっしゃいました。
留萌本線(石狩沼田〜留萌)の廃止に伴い、廃線代替交通が整備されました。
駅から少し離れた駅前大通に、バス停が設置されています。
注目したいのは手前側、沼田町営バスです。
これまで設定されていた幌新バスですが、上下4便ずつから上り7便・下り5便へ増便。
このバスは恵比島駅跡を経由するもので、留萌本線廃止による本数減少を補っています。
奥にあったのは北海道中央バス沼田線、深川〜沼田を結ぶ路線バスで、こちらは特に変わっていません。
しかし、2026年春に留萌本線が全線廃止されれば、おそらく本数が増えるものと思われます。特に朝の通学時間帯にバスが設定されるでしょう。
ここで気になるのが沼田町から留萌市へ抜ける手段ですが、直接結ぶ公共交通機関は存在しません。沼田町から碧水を結ぶ予約制乗合タクシーに乗車し、そこから沿岸バス留萌旭川線に乗り継ぐことになります。
予約制乗合タクシーではややハードルが高いですが、沿岸バス留萌旭川線は途中の秩父別から乗車することもできるので、今回はそれで留萌駅跡へ向かうことにしましょう。
折り返し列車が出発するまでは15分、ある程度は駅の様子を見ることができます。
改札は行なっていませんが乗車券を販売しており、北の大地の入場券も購入できます。
留萌駅に比べるとかなりひっそりした雰囲気、本当に静かなローカル線の終着駅という印象です。
駅舎内では昭和の恵比島駅のパネル展と称し、写真が飾られていました。
恵比島駅といえばNHK連続テレビ小説『すずらん』で「明日萌駅」としてロケ地に選ばれたことが有名ですが、かつては炭鉱で栄えた街。留萠鉄道が分岐していたほどで、かつて繁栄した様子をここで読み取ることができます。
駅の時刻表は列車到着時刻を示す、終着駅仕様。
ホームへ出る扉には「石狩沼田〜留萌ラストラン」の貼り紙が残されており、その余韻を感じることができました。
「留萌本線終着駅」としての石狩沼田駅構内へ。
ワンマン列車の案内としてあったはずの「留萌方面乗車口」のプレートが外されました。
ホーム端よりかつての留萌方を望むと、踏切手前に車止め。あちらで本当に線路が途切れてしまっています。
かつては札沼線も来ていた石狩沼田駅。
向かいのホームから発着していましたが、今では使われなくなって花壇の花が彩を与えてくれます。
9:43 石狩沼田駅 発
石狩沼田駅からは3人の乗車。次の列車は13:00発で朝の便はこれで終わりとなります。
この列車は1日1本の旭川行き、しかし車内では深川行きとして案内されていました。
3年間限定の小さな終着駅、石狩沼田駅を出発しました。
これだけ終着駅の証拠を目の当たりにしたのに、遂にここが終着駅という実感は湧きませんでした。
帰りの列車は北秩父別駅に止まります。
ホーム上木造の待合室があったのですが、大きく傾き倒壊のおそれがあって、2022年6月末に立入禁止。
プレハブ小屋を改造した待合室が設置されました。
留萌本線はたった4駅だけ。運賃表も4番から始まっており、かなりギュッと詰められています。
9:49 秩父別駅 着
留萌方面へのバスに乗車するため、秩父別駅で下車しました。
秩父別町の中心駅であり、朝夕の時間帯なら高校生の生徒さんなど乗降が見られるはずです。
逆に言えば、北一已駅、北秩父別駅はかなり利用者が少ないと思われ…。
ホーム上に設置されていた「留萌方面乗車口」は、「石狩沼田方面乗車口」へ新しくなっています。
わずか14.4kmの留萌本線。もう本線とか関係なく、単純に鉄道路線としての短さを突きつけられますね。
駅前には自転車が数台停まっており、やはり生徒さんの通学需要を垣間見ることができました。
留萌方面へのバスですが、秩父別駅前から出る訳ではありません。
主要幹線国道233号上にある、バス停へ向かって500mほど歩きます。
と言いつつ、バスの発車まで時間があるので、秩父別温泉「ちっぷゆう&ゆ」さんへ寄り道することに。
「道の駅 鐘のなるまち・ちっぷべつ」に隣接しており、9:00〜22:00で日帰り入浴ができます。料金は500円です。
黄金の湯とシルクの湯の2種類があり、1日毎に男女入替わります。
今日は黄金の湯で、少しぬめりのあるお湯が特徴的。金箔を張った陶器風呂で収まりがよく心地良かったです。
ちょうど良い時間になりまして、秩父別駅の最寄りバス停「秩父別1丁目」から乗車します。
11:24 秩父別1丁目 発
秩父別町内の各停留所に停まっていき、計5人ほど降りて行かれました。
ちょうど留萌本線の列車が無い時間帯なので、深川を通るこのバスを利用されるのでしょう。
バス車内には留萌本線廃止と同時に運行開始した、羽幌〜旭川を結ぶ沿岸特急あさひかわ号の広告が吊られていました。
留萌大和田IC〜旭川鷹栖ICで高速道路を経由、留萌〜旭川の移動にも便利です。
築紫大橋を渡ると、秩父別町から北竜町に入ります。
セイコーマートが近くにある北竜町の一集落、碧水バス停を通過。
札幌から石狩沼田まで伸びていた札沼線の碧水駅があって、今でも駅舎が残っています。
右手には丘が見えていますが、あの向こう側が沼田町です。
石狩沼田駅から予約制乗合タクシーに乗った場合、ここ碧水から沿岸バスへ乗り換えるということですね。
留萌本線を廃止に追いやった便利な道路、深川留萌自動車道の北竜ひまわりICを通り過ぎます。
ここでバスは峠越えを迎えまして、山を登っていきます。
留萌市に入ると下り坂になりますが、それでもバスは苦しそうです。
この近くにあったのが、峠下駅です。
留萌本線唯一の交換可能駅で、名前の通り峠を越えた先に位置しており、秘境駅としても知られていました。
バス通りはここから留萌本線の廃線跡沿いを走り始めます。遂にこの構造物を「廃線跡」と言う時が来ました。
踏切部分は線路に対して柵が立てられ、「列車は通りません」の看板が設置されています。
橋梁は特に人が通ると危険なため、柵で立ち入れないように。
遮断器が無い第4種踏切でも丁寧に案内されており、バラストも廃線にしてはかなり新しそうです。
第五留萌川橋梁の横を走り、バス車内からでも廃駅を観察できる区間になります。
まずは貨車駅舎の幌糠駅。
ホームには柵が設置されて入れなくなっていますが、ここから見る限りでは待合室へ入れそうな気も。
駅名標は取り外され、廃駅の象徴的存在とも言えます。
1990年に廃止された桜庭駅跡あたりで、留萌本線跡を越えて線路は左側に。
藤山駅は正面側から見られました。
かつては大きい木造駅舎だったのですが、半分ぐらいに減築されています。
引き戸部分には板が打ち付けられ、中へ入れなくなりました。
再び廃線跡を越えており、ここには「跨線橋」というバス停があります。
踏切部分に設置された柵の先、国道と廃線が一緒にカーブ。あの辺りに留萌大和田ICがあって、沿岸特急あさひかわ号はここから高速道路に入ります。
留萌駅の一駅手前、最後に見られるのは大和田駅跡です。
こちらも駅名標が取り外され、ホーム跡には柵が設けられています。
それでも幌糠駅と同様、貨車駅舎の駅名表記は残っており、待合室にも入れそうなレベルです。
ここで国道は留萌本線跡から外れまして、街の中を走り始めます。
留萌市は北海道日本海側の中心都市であり、ロードサイド店舗が大きく発展しています。
留萌駅前に到着、バス停の名前や位置は変わってません。
留萌駅跡に乗り入れることはせず、道路上の留萌駅前バス停に停まります。
ここで下車されたのは他に2人。留萌中心街へ向かうところで、3人ほど乗っておられる状態でした。
廃止から1ヶ月半経った留萌駅跡へ。
大きな深緑色のコンクリート駅舎はそのまま、国鉄時代を思わせる荘厳な風格を今に残してくれています。
その眼であったJRロゴと朱文字の駅名板が失われ、駅としての役割を終えた現実を突きつけられます。
留萌駅と言えば濃ピンクで目を引いていたFMもえる、こちらは現在も入居しているようです。
駅入り口の二重扉は閉ざされており、ガラス部分もシートで覆われ中が分からなくなっています。
留萌駅には駅そば屋さんが入居していたのですが、こちらも撤退。道の駅で営業を再開しています。
駅前駐車スペースには、たくさんの車が停まっていました。
ちょうどお昼時で、周辺にお店が集まっているためでしょうか。
かつての増毛方、西側へ歩いていると何やら通路を見つけました。
現役時代は通れなかったのですが、廃止後に線路を分断して、道の駅るもいへの仮設通路が作られたのです。
留萌〜増毛廃止後に車止めが設置されていたところ、正面からより近くで見られるようになりました。
大量の「構内立入禁止」が物々しいです。
反対を向きますと、現在でも残る増毛方のトラス橋に続いていたことがよくわかります。
留萌駅跡のすぐ近くにも、もう一本通路が作られています。
こちらでは留萌駅跡のホームや駅舎がすぐそこです。
今にも列車が走って来そうな雰囲気。まだ解体は進んでいないため、現役とほぼ同様の状態が保たれています。
それでも駅名標は枠だけになっており、寂しさがつのるばかりです。
信号機にもバッテンが打ち付けられ、列車は確実に来られません。
晩年使われていたのは駅舎に面する1番線ホームだけでしたが、数年前までは跨線橋を渡った先の島式ホームにも列車が発着していました。
もっと遡ると、跨線橋はさらに羽幌線ホームまで伸びていたのですが、スパっと切られています。
広大な鉄道用地は公園として整備され、ゴルフを楽しまれていらっしゃいました。
留萌駅舎も解体の方針で、車中心のまちとして生まれ変わります。
通路のおかげで駅跡から行きやすくなった、道の駅るもいです。
深川留萌自動車道の留萌ICを降り、留萌市街地の玄関口に位置します。
留萌駅にあった駅そば屋さんは、道の駅留萌に移転して営業をはじめました。
留萌駅弁とされた「にしん親子弁当」も健在なのは驚きです。
やっぱりここで頂きたいのは、にしんそば。濃い味の染みた鰊が蕎麦を引き立てています。
留萌駅が廃止されてもこの味は無くなっておらず、本当に良かったと思います。
留萌駅前よりバスに乗車しまして、深川駅まで向かいます。
平日日中のため10人も乗っておらず、これが本来の公共交通機関需要だったことに。
先程と同じルートで秩父別駅まで戻り、留萌本線沿いを走ります。
お休み中のキハ150を見つつ、深川駅まで戻ってきました。
深川駅の最寄りバス停、深川十字街で下車します。
今日は短くなった留萌本線、そして廃止区間の現在をお届けしました。
留萌に鉄道が来なくなったとは未だに実感が湧かないところ。3年後には留萌本線自体も廃止予定で、変化に暇がありません。
かつての繁栄を色濃く残す留萌駅も、取り壊しの方針。ぜひそれまでに立派な駅の様子をご覧いただけたらと思います。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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