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【まもなく引退】客車を気動車に改造したキハ143形 新型車両737系電車投入

2023年4月11日

財政状況が厳しいJR北海道、冬には大雪に見舞われる気候でありながら、古くなった車両でも使い倒します。

その中でも頑張っているのがこの列車、キハ143形気動車です。現在は室蘭本線の室蘭〜苫小牧〜岩見沢で運行されています。

室蘭本線の室蘭〜苫小牧は電化されており、2023年5月には737系電車がデビューします。

これに伴って引退が決まっているキハ143形気動車。あと僅かで走る姿を見られなくなってしまうこの車は、元々これだけで走れなかったのを大改造した車両です。あまりに特殊なこの列車はなぜ生まれたのでしょうか。

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岩見沢駅〜長万部駅を結ぶ室蘭本線、かつて特急スーパー北斗が唯一停まってた東室蘭駅から伸びる室蘭支線の終着駅、室蘭駅に来ました。

行政の中心や港などはこちらですが、東室蘭駅周辺の方が栄えつつあります。それでも特急すずらん号が乗り入れて室蘭〜札幌を結んでおり、通勤通学の利便性は確保されています。

 

自動改札機や指定席券売機が導入されていない、市の中心駅のようでちょっと簡素な設備です。2019年度の1日あたり乗車人数でいえば、東室蘭駅が1833人なのに対して、室蘭駅が631人で3倍近くの違いがあります。

そして、今回室蘭本線へやってきた理由がこちら、5月引退が決まっているキハ143形気動車です。

一見なんてことない車両に見えますが、元々客車だった車両を気動車に改造したという、非常に珍しい車になっています。

 

昔の鉄道はお客さんが乗る車両(客車)と運転士さんが乗ってそれを引っ張る車両(機関車)に分かれていました。1970年ごろに古くなった客車を置き換えるため、登場したのが50系客車です。

しかし、両数の少ない客車のために機関車を用意するのは非効率。客車は次第に無くなっていき、自分で車を動かすことができるディーゼル車両へ置き換えられました。

 

当時まだ新しかった50系客車も、10年ほどで必要なくなってしまいます。そこで客車に運転台やエンジンをつけて、ディーゼルカーにしてしまおうと誕生したのが、143形気動車です。

 

昭和55年新潟鉄工所で作られ、平成6年に五稜郭車両所で改造を施されたことが示されていました。

 

しかし、ご覧いただいている通り老朽化が深刻、電化区間の苫小牧から室蘭に新型車両737系電車が投入されるとのことで、これと同時に引退を迎えます。また、すでにハイブリッドディーゼル気動車H100形も投入されています。

 

http://出々 吾壱(talk / Contributions) at the Japanese Wikipedia - File:JRN DC143-100 20061103 001.jpg from the Japanese Wikipedia, GFDL, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7776007による

系列全体を示すキハ141系の中には、キサハ144形という運転席もついていない中間車もあります。かつては札沼線で走っていたのですが、桑園〜北海道医療大学前が電化されて余っていました。

そこで釜石線を走るSL銀河のお客さんが乗る車両に採用され、JR東日本へ譲渡することに。しかしJR北海道と同時期に作られたため老朽化が激しく、SL銀河自体2023年春の廃止が決まっています。

それでは車内へ入ってみましょう。

元々車掌室だったところに運転台を設けたため、コンパクトな作りになっているそう。

 

乗降口と客室の間にはデッキが設けられておらず、お手洗いが設置されています。

 

乗降扉から座席までの距離が結構遠いのが印象的でした。また、立ち客が寄りかかれるようなスペースがあるのも、かなり珍しいです。

室蘭駅を出発、1両目へ来ましてこちらは車両間の様子です。

気動車というのは1両単体で走れるのが通常ですが、この列車は2両1組で走ります。そのため車両間には運転台が設置されておらず、普通の電車みたいな貫通扉です。

 

列車の窓は相当汚れが目立っており、車窓はかなり曇っています。二重窓になっているのですが、外側の窓を開けた後で内側を閉めると、それなりに綺麗な車窓となるみたいです。

 

 カーブが続く室蘭支線を走りまして、東室蘭駅に到着。現在でも室蘭支線含めこの辺りで走る、H100形気動車がたくさん停まっていました。

東室蘭駅で特急を待避するようなので、外から色々見てみます。

先ほど触れた通り、2両1組で中間部に運転台が無いのが分かりやすいかと思います。

 以前ご紹介した1両編成の電車、小野田線123系電車とは対照的です。

 

車内も覗き見ることができるほど間近で見ると、いかにも電車っぽさを感じられる、運転台の無い車両連結部です。

 

真ん中に謎の支柱がありますが、貫通扉を開けば直接お隣の車両へ行くことができます。この支柱はあまりに広いデッキの耐久性を高める為でしょうか。

 

座席配列は基本的に2+1のボックスシート、車端部にロングシートが備られています。

 

国鉄時代は窓を開けたり扇風機で暑さ対策をしていましたが、こちらは冷房まで設置された車両です。

東室蘭駅を出発。

この先には広大な貨物駅があって、本州からのコンテナ貨物を取り扱っています。

 

特急北斗も停車する白老駅、アイヌ文化共生象徴空間ウポポイの最寄駅です。

 

日本一長い在来線の直線線路は、白老〜沼ノ端の28.7km。気動車ながら100km/h近いスピードで駆け抜けて行きます。

 

少し海に近いところも走りまして、真横にはあまりに大きすぎるコンビナートまで。室蘭、苫小牧は北海道屈指の工業地です。

 

停まっている電車にも札幌近郊感が現れてきまして、苫小牧駅に到着しました。

客車が気動車に変わったというのは、結構コアな方でないと凄さが伝わりにくいかもしれません。

それでも、今ではほとんど国内から消滅した客車運行の、転換期に生まれた列車として歴史を感じるものがあります。車体の凸凹感や錆までかなりのものです。

 

今度は普通列車も電化設備を活かして電車での運行になり、新型車両のデビューも楽しみです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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