JR西日本の試験車両として、2021年から試運転している、DEC700電気式気動車。
中国地方で何度か見かけることがあるものの、あまり知られていない新型車両でした。
試験車両として製造されたこの車両。秋には姫新線津山〜新見の臨時快速「ハレのモリ」として、初めて営業運転することが発表されました。
乗れるようになるとは思わなかった、DEC700電気式気動車。一体どんな車両なのでしょう?
DEC700は2021年8月中旬より試運転を開始した、JR西日本の新型電気式気動車です。
JR西日本による20年後を想定した技術ビジョン「持続可能な鉄道・交通システムの構築」に向け、試験車両として作られました。
DEC700は、JR西日本で初めての電気式気動車。
JR東日本で導入されているGV-E400と同様に、ディーゼルエンジンと発電機で発電し、その電力でモーターを動かして走ります。
電気式気動車にすることで、電車・気動車のシステム統合により、メンテナンスを効率化できます。
新型車両として製造する際には、工期短縮やコスト抑制も可能です。
「DEC700」の「DEC」は、「Diesel」「Electric」「Car」の略。「7」は電気式気動車、十の位の「0」は通勤・近郊型車両、一の位の「0」は設計順を表しています。
実際試運転の際に見られた、車両の様子を見てみます。
まず印象的なのは、225系・227系電車と同じ顔つき。
中国地域でよく使われている、黄色が配色されます。
岡山地区のUrara、広島地区のRedWingと比べると、完全に同じと分かります。
ライトの形も非常に似ており、デザインの統一性が見られました。
一つ違うのがスパッと切られたような、切妻の断面。
大抵の車両は膨らんだような形をしていますが、こちらは完全に直線です。
連結時を想定して、転落防止幌も備えられています。
試験車両ということもあり、1両のみの製造。
両端に運転台が備わっている一般的な構造です。
お客さんが乗降する扉は片開きで、片側に2箇所付いています。
行先表示器はフルカラーLEDになっており、種別なども色付きで表示できそうです。
車内はどうしても見づらかったですが、2+1の転換クロスシート。
転換クロスシートの場合、座席定員25席、車両定員90人。
ロングシートにできるほか、乗務員室を客室に変えることもできる構造になっているそうです。
乗務員室を客室に変えた場合、2両で1セットの編成にすることも可能です。
このほか、車載型IC改札機の搭載にも対応。ICOCAエリアもローカル線へ順次広がるかもしれません。
バリアフリー化が図られており、車椅子スペースや車椅子対応トイレも装備。このあたりも新型車両としてかなり実用的です。
DEC700は2021年6月の導入発表時点で、量産計画はありませんでした。
一方で、2022年のJR西日本技術情報誌「技術の泉」では、『量産先行車として電気式内燃動車DEC700を開発』『量産車へと繋げていきたい』としています。
それでもDEC700は試験のみで終わると思っていたところ、姫新線津山〜新見で快速「ハレのモリ」として初の営業運転を行うことになりました。
「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の開催に合わせた、輸送力増強のためです。
運行日は、2024年9月28日から11月24日の土日祝。
下りは津山駅8:28発・新見駅10:36着、上りは新見駅15:48発・津山駅17:36着で運転されます。
バッテリー搭載によるハイブリッド方式で運転予定。
赤字路線とも位置づけられる津山〜新見で、鉄道アクセスが充実します。
国鉄車両が多く走っていたJR西日本のローカル区間にも、遂に新型車両の幕開けが見えてきました。
新たなハイブリッド車両でローカル線に乗れる日も、非常に楽しみです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。