JR東海、JR西日本、JR九州は2024年春をもって、東海道山陽九州新幹線の喫煙ルーム全てを廃止すると発表しました。
東海道山陽新幹線ではN700・N700Sの3号車・10号車・15号車。山陽九州新幹線ではN700系3号車・7号車に設けられています。
廃止された喫煙ルームは業務用室として非常用飲料水を配備、災害等緊急時の対応力向上に活用するとのことです。
ここでは鉄道における煙草との関わりと、今後鉄道車両に残る喫煙可能設備についてご紹介します。
かつて鉄道での煙草は当たり前の時代で、昭和までその風潮がありました。
1970年代に禁煙車が現れた一方、それも少数派。近郊電車でも灰皿が設けられていました。
その後、国鉄分割民営化を経て旅客鉄道はJR6社へ。
煙草に含まれているたばこ特別税は、旧国鉄が残した借金が膨張し、その財源確保のために導入されました。国鉄債務処理においてはJR追加負担減額が焦点に当てられたため、JTや喫煙議員からの反発もあったものの、結果的に法案が成立しています。
大きな変化があったのは、2003年の健康増進法施行。
JR東日本の東北・上越・長野行新幹線等では2007年までに喫煙車が全て廃止、喫煙ルームも設けられませんでした。
一方で東海道新幹線においては、700系新幹線で喫煙車が存続。
新型N700新幹線でも全車禁煙車にした一方で、喫煙ルームを設けました。
喫煙目的としてストレス解消が挙げられますが、出張・ビジネス利用者が多い東海道山陽新幹線では、そのニーズが大きかったためです。
700系新幹線の喫煙車は、10号車グリーン車と15,16号車普通車でした。
車内には空気清浄機が設置されていたものの、煙の匂いが立ち込めていたのを覚えています。
2020年4月1日より健康増進法改正案が全面施行され、望まない受動喫煙を防止する取り組みはマナーからルールに変わりました。
最後まで喫煙車が残っていたのは、東海道新幹線700系と近鉄特急。
東海道新幹線700系新幹線は2020年3月をもって引退し、近鉄特急も改正案施行によって喫煙車を廃止。これによって鉄道から煙草を吸える座席は全て無くなりました。
2020年7月にデビューした新型N700S系新幹線にも喫煙ルームは設置されましたが、縮小傾向が見られていました。
7号車にあった喫煙ルームはビジネスブースに改良。打合せ等に利用できるスペースとして2022年から一部編成に試験導入し、2023年10月から有料で本格的に導入されます。
計3室残っていた喫煙ルームも、2024年春をもっての廃止が決まりました。
今後車内で喫煙が可能な鉄道は以下の通り。
多くの近鉄特急には喫煙ルームが設置されており、2020年デビューの名阪特急ひのとりでも整備されました。名古屋〜大阪間で東海道新幹線と競合していることから、この区間ではしばらく残るのではと思われます。
また、ほとんどが個室設備の寝台特急サンライズ瀬戸・出雲号でも、6・13号車のシングル、シングルツイン、4・11号車のシングルデラックス、サンライズツインそれぞれ半数が、喫煙個室です。
こちらも個室になっており号車まで分かれていることから、今後も残るものと思われます。
他にもクルーズトレインのTWILIGHT EXPRESS瑞風、TRAIN SUITE四季島の喫煙ルームでも喫煙可能です。
今回の喫煙ルーム廃止により、鉄道車両における可能な限りの禁煙化がほぼ達成されました。
煙草の立ち位置が半世紀前とまるで変わり、より快適な車内空間となります。鉄道における時代の変化が、ここでキッパリと現れたように感じました。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。