本州と四国に橋が3本架けられた今でも、四国へはいくつかフェリーが運航されています。
今回ご紹介するのはその中でも異常にお客さんが少ない、神戸〜新居浜の夜行フェリーです。
オレンジフェリーの公式ホームページを見ても、「貨物主体航路」と書かれている状態。同じ会社でもこの航路だけネット予約を受け付けておらず、かなりコアな存在みたいです。
その上で徒歩乗船者といったら更に珍しいようで、乗船には社用車で乗り込み。まるで貨物船に載せられているみたいな、特別な体験ができる夜行フェリーの内部に潜入しました。
始まりは神戸市で一番の中心地、三ノ宮駅からです。
時刻は23時を過ぎようという頃、この時間から瀬戸内海をゆったり航行して、朝には愛媛に着けちゃいます。
まずは神戸のフェリーターミナルへ向かうべく、JR神戸線快速で京都方面へ。
住吉駅で下車しまして、六甲ライナーに乗り換え。マリンパーク行きに乗車します。
全面ホームドアでほとんど車両が見えませんが、新交通システムの鉄道です。
運転手さんがいない無人運転なので、前面展望を距離感ゼロで楽しむことができます。
23:20 住吉駅 発
新交通システムならではの加速音を響かせ、静かに人工島へ向けて発車。
橋を渡って最初の停車駅、アイランド北口駅で下車しました。
住吉駅からの料金は250円で、交通系ICカードも利用できます。
アイランド北口駅がフェリーターミナルの最寄、ここから歩いて神戸港へ向かいます。
神戸港からは、さんふらわあ大分行き、阪急フェリー新門司のフェリーも運航されています。こちらは旅客輸送も重視しており、駅からバスが出ているみたいです。
一方で、オレンジフェリー新居浜行きは先述の通り、貨物主体航路。徒歩乗船はほぼ考慮されていないので、歩くかタクシーを使うかしかありません。
駅から東へ歩き続け、こちらのセブンイレブンがフェリーターミナルに一番近いコンビニ。
乗船券購入の時に現金が必要なので、お金を下ろしたり、朝ごはんを買ったりはここが良いかと思います。
しばらくすると道路標識に、フェリーの表記が現れました。
貨物船なので乗れませんが、奄美・沖縄へのマルエーフェリーも運航されているようです。
遂に阪九フェリーの看板が登場、こちらが大阪・神戸〜新門司で旅客船を運航しています。
街灯の少ない工場地帯の中を歩き、遂に正面にはフェリーが現れました。
こちらが今回乗船する神戸〜新居浜を結ぶオレンジフェリー、「おれんじホープ」です。
どこにフェリーターミナルがあるのか見つけづらいので、フェリー自体が目印になりそう。
トラックなどたくさん停まっていて入りづらいですが、その先にある白い建物。こちらが四国オレンジフェリー神戸待合所です。
アイランド北口駅から徒歩30分ほどでした。
乗船券を販売している窓口があり、記帳台で名簿を記入します。
このフェリーはネット予約ができず、予約したい場合は電話予約のみ。今回は当日購入することにしました。
設備は2種類ありまして、今回はスタンダートな「シングル」利用しました。料金は大人8,350円です。
支払いは現金のみで、クレジットカードが使えないので注意しましょう。
時刻は午前1時前になりました。
徒歩乗船客は職員さんによって運転されます、社用車で船内まで乗り込むことになります。
ナンバープレートがついておらず、完全に敷地内で走るための車です。
このフェリーは、徒歩乗船客をほぼ想定していません。
そのためボーディングブリッジなどの設備を作るくらいなら、車で船内まで乗せた方が楽なのでしょう。
大型トラックの中をすり抜けまして、船内へ昇るエレベーター前で停車。
こんなフェリーの乗船方法なんて初めてですし、日本でここだけではと思います。
エレベーターに乗り込みまして、4階を押します。
非常電話がまさに電話だったり、至る所に面白ポイントが散らばってます。
第4甲板に到着しました。
おそらく徒歩乗船客は僕一人だけ。
スタッフの方が迎えてくださり、お部屋まで案内して下さいます。なんだか旅館で対応していただいている気分です。
案内されたシングル個室は一番手前、5号の区画でした。
そのうちの3番個室へ足を踏み入れます。
扉の向こうにはベッドが置かれ、テーブルまで備わっているのが非常に嬉しいですね。
鍵はかかりませんが、扉を閉めてプライベート空間を作ってくれます。
フェリーの下等設備といったら雑魚寝やカプセルホテルみたいな空間ですが、こちらのフェリーは十分すぎるお部屋。隙間はあるものの、そもそもお客さんが少ないので防音性を気にする必要がありません。
船の揺れに備えて椅子は固定されており、テーブルに対してやや斜めに座る向きです。
ゴミ箱があるので外へ捨てに行く必要がありません。
ベッドにはシーツと枕、分厚い毛布が置かれています。
シーツには「道後リネンサプライ」と印刷されており、調べたら愛媛県の宿泊施設向け企業みたい。
ベッドメイクは自分で行う形で、シーツをマットレスに折り込みセットします。
寝っ転がると完全に足を伸ばせて、寝返りを打てる広さ。
安めのホテルと全く変わらず快適です。
頭側の電気下にコンセントが1口備わっており、かなり安心しました。
シングルの個室の扉が並ぶところにも窓があり、カーテンから景色を見られます。
まだ出航までは時間があるので、船内の様子を見てみます。
こちらはエレベーターで昇ってきて最初の場所、受付などがあるロビーの空間です。
乗船中移動できるのはこの第4甲板の階だけで、船内マップも非常にシンプルになっています。
シングル個室は100室も並んでいますが、他に乗っておられるのは2人だけ。
お1人はトラックドライバー、もうお1方はバイクに乗ってこられたようでした。
発売されていませんが、椅子席のスペースも設けられています。
灰皿が置いてあったので、喫煙所と兼ねている感じです。
今回選んだ設備は「シングル」ですが、もう一つ「スイート」もあります。
ロビーから客室への通路突き当たり、「特別室」というところです。
2名1室なので、1名利用でも2名分の料金が必要。
シティホテルと変わらない1室で、浴槽やテレビもあるそうです。
深夜1時20分、フェリーは神戸港を出航しました。
出航時の放送は全く無く、下船時まで静かなままです。
貨物コンテナが並ぶ人工島の六甲アイランド、神戸における貨物船の玄関口です。
途中ではタンカーともすれ違い、コンテナを載せる部分がビヨーンと伸ばされ、ゴンドラみたいに見えます。
しばらくすると海上に浮かぶ、神戸空港の滑走路。この深夜でも等間隔の照明で分かりました。
先ほどのロビーへ戻ってきまして、こちらにはレストランがあります。
新居浜→神戸の昼行便含め休止中で、現在は食事ができるフリースペースみたいです。
ここには自販機が置かれていて、飲み物には困りません。
食事についても、カップ麺が販売されていました。どれも310円です。
おそらく年齢確認や飲酒運転防止のためでしょう、お酒の販売は中止されていました。
レストランが営業されていた時の名残も残っていて、調味料すら置いてあります。
食券販売方式だったようで、メニューも結構豊富です。
せっかくなのでシーフードラーメンを購入。
自販機の給油機は故障中なので、ポットから注ぐよう貼り紙がされていました。色々ガタが来ている様子ですね。
陸上より高くてもつい買ってしまうカップ麺、船上ならではプラスされる美味しさってありますよね。
フェリーでお馴染みのスロット、初めて見たリポビタンDの自販機もありました。
時刻は深夜2:20、そろそろ明石海峡大橋をくぐる頃です。
甲板へはエレベーター横から出ることができました。
一歩外へ出るともの凄い風、煽られないよう気をつけながら進みます。
こちらは進行方向右手、明石海峡大橋が見えてきました。
ライトアップは0時で終わっていますが、都会の光が照らしてくれるので、その形を捉えられます。
反対側の淡路島では、淡路SAが迎えています。
ハイウェイオアシスもある大きなSA、光が集結して眩いばかりです。
本当は瀬戸大橋のように、鉄道と道路両方を通す計画だった、明石海峡大橋。残念ながら費用対効果の低さから実現せず、道路のみでの建設となりました。
一方で淡路島から四国へ架けられた大鳴門橋には、道路の下に新幹線用のスペースが確保されています。
当時世界最長だった吊り橋を潜り、本州側にはコンクリートの塊が照らされています。神戸側の骨組み内には舞子海上プロムナードが整備されており、道路下を歩くこともできます。
その先には日本標準時子午線が通る、明石市立天文科学館。
完全なる闇には、セイコーの時計が掛けられていました。
この船には浴室も備わっています。
女性が乗っていないためか男性用のみ開いていました。
洗い場は6つ用意されており、浴槽も広々。サウナまで用意されていてこの点はかなり充実していました。
フェリーが本州に乗り上げちゃってますが、ここから小豆島の南側を通っていきます。
陸地が遠くなるので、この辺りは電波が通じなくなっていました。
そろそろ昼夜逆転も治したいので、おやすみなさい…。
午前5時過ぎ、進行方向右手にはおそらく直島の光が見えています。
高松と宇野両側からフェリーが就航しており、アートの島としても非常に人気です。
そして5:50ごろ、遂に瀬戸大橋が近づいてきました。
四国側には工業地が形成されており、空を白く照らして煙もはっきり見られます。
点つなぎのようにしてだけ把握できる道路、その下をまさにくぐるところです。
橋が大きいゆえ中々くぐらないなと待ち遠しい一方、その下を通るのはあっという間でした。
橋を通り過ぎまして、立派な支柱だけが照らされています。
フェリーが通ったのは、与島と四国の間です。
ちょうど高松から岡山への、快速マリンライナーが通っていきました。
一番後ろはグリーン席と指定席で、二階建ての光がシンボルです。
朝になりまして、7時頃夜明けを迎えました。
北西へ突き出す荘内半島から離れ、再び陸地から遠いエリアに。
7:45、大島から海を挟んで愛媛県が見えてきました。
雲に隠れていた太陽が昇ってきて、朝日が海を照らしてくれます。
船内へ戻ると、音楽が流れていました。
おそらくまもなく到着する合図と思われます。
最初から最後まで肉声による案内が無く、かなり落ち着いた船旅でした。
新居浜市は重化学工業で発展するまち、奥には住友の化学工場が見えています。
いよいよ新居浜東港が近づいてきました。正面の山には雪が積もっています。
ここには、みなとオアシスマリンパーク新居浜が整備。キャンプ場やイベント広場、夏には海水浴も楽しめるそうです。
左手は貯蔵施設が中心で、倉庫などが集まっていました。
フェリーが停まるスペースはもう目の前。しかし、この向きでは車の出入り口が海側です。
そのため船体を180°回転させなければならず、じりじり回っていきます。
どんどん近づいていきまして、遂に接岸しました。
8:20 新居浜港 着
下船時も車でフェリーから降ろしてもらうため、ロビーで待機します。
船内で受付担当でいらっしゃった方と、一緒にエレベーターで降りました。
乗船時と同じナンバープレートのない、敷地内専用の車で下船です。
新居浜東港フェリーセンターからは、2.5kmほど離れたところにJR予讃線の滝浜駅があります。
Google Mapでは徒歩37分。バスなどは無いので、他の手段は予めタクシーを呼んでおくのみです。
この後の行程の都合上、8:42発の普通列車に乗るべく大急ぎで多喜浜駅へ。
特急が停車する新居浜市の主要駅、新居浜駅のお隣です。
なんとか乗れるかと思っていたら…
ギリギリ間に合わず、乗り遅れました。
フェリーから接続する列車としては、松山方面は9:57発伊予西条行き、高松方面は9:05発高松行きになると思います。
割とすぐ多喜浜駅前に、新居浜駅へ行く路線バスが来たので乗車。
運よく予讃線が遅れており、ギリギリ特急しおかぜ1号で松山駅へ行くことができました。
ダイヤ通りでは路線バスに乗っても間に合わないので、参考にしないでください。皆さんは、こんな無茶な行程で移動しないようにしましょう。
今回は関西〜四国を結ぶフェリーの中でも謎の航路、オレンジフェリー新居浜〜新居浜航路をご紹介しました。
トラックだけを乗せてドライバーの方もほとんど乗られない、ほぼ貨物船状態の船。同社は大阪〜東予でもフェリーを運行している中、近い航路で旅客輸送してくださっていることに感謝するばかりです。
国内でも屈指の謎フェリー、多少の不便はありますが不思議な体験をしにいらっしゃってみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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