三重県は近鉄が非常に強いことで知られており、特に三重から大阪へは近鉄特急が大きなシェアを誇ります。
それと比較してやや影が薄いJR。なんと三重から神戸まで直通する、JRの列車が存在するそうです。
近鉄・阪神直通でも果たされていない、三重から兵庫の運転。平日早朝1本だけ近鉄超えを果たすというJRの列車に乗ってみましょう。
やって来たのはJR柘植駅です。
田舎のローカル線を思わせる、レトロな瓦屋根の木造駅舎。関西本線と草津線の乗換駅となっています。
3番線ホームからは草津線で活躍してきた、113系が発車。留置線に停車中の117系と並びます。
朝夕には京都まで直通するものの、基本的に路線内で運転が完結する草津線。その中で一つ「網」と書かれた不思議な行き先があります。
これこそが今回ご紹介する、柘植発網干行きです。
6時半を過ぎた頃、LEDで網干と記した223系電車が入線しました。
車内の液晶ディスプレイからも分かる通り、草津線のピクルス色が表示されていながら、行き先は網干。神戸すら越えて兵庫県西部まで直接結んでくれます。
06:36 柘植駅 発
濃い真緑の117系を横目に、三重駅伊賀市の端っこに位置する柘植駅を出発です。
非電化で架線の張られていない関西本線が、大阪方面へ分岐しました。
あっという間に三重県を出てしまいまして、次の駅から滋賀県です。最初の停車駅、油日駅はホームに植樹された桜がとっても綺麗。
伊賀市と並び、忍者の里として有名な甲賀市を走行中。草津線は単線ですが、こちら甲賀駅のように行き違い可能な駅がいくつか設定されています。
その先でくぐるのは新名神高速道路、大阪から名古屋を最短距離で結びます。
甲南駅で反対方向の列車と行き違い。ここでやって来たのが113系電車です。
草津線内での主要駅、貴生川駅に到着します。
左手から近づいてきたのは、第三セクターの信楽高原鐵道です。線路は草津線と繋がっているものの、1991年に列車衝突事故が起きてから、JR西日本からの直通列車は運行していません。
貴生川駅から先では、かなり多くのお客さんが乗車されます。JR西日本が発表した2019年の輸送密度では柘植〜貴生川が2000〜4000(人/日)に対し、貴生川〜草津は8000(人/日)以上で、かなり大きな違いが見受けられます。
この他、米原駅から伸びる近江鉄道本線の終着駅も存在しています。
山の縁を走りまして、草津線らしいローカル感ある景色です。
三雲駅でも113系と行き違い。列車走行位置案内に表示されていなかったので、おそらく回送列車でしょう。
天井川となっている大砂川の下、煉瓦積みで歴史感あるトンネルです。草津〜三雲に関しては、1889年関西鉄道による開業でかなり歴史があります。
甲西駅はびわ湖国体に合わせて、1981年に開業した線内で一番新しい駅。歴史が浅いのにも関わらず、湖西市の代表駅になっています。
駅の近く線路沿いには、複線化を求める看板が立っていました。その第一段階として求められているのが甲西駅の交換可能化、ダイヤの柔軟性向上に最も必要とされています。
石部駅では新駅舎の建設工事が進められており、2023年にオープン予定です。自由通路が設けられ、石部宿の旅籠をイメージしたデザインのこと。
ここでも113系電車、普通列車貴生川行きと行き違いました。
旧東海道の宿場町が広がっていた周辺、国道1号の下をくぐります。
栗東市に入りまして、手原駅に到着。
東海道本線の栗東駅は1991年開業とかなり最近で、それまで当時の栗東町内唯一の駅でした。
この列車は早朝発で乗車するのが大変ですが、今回は手原駅近くの快活クラブに泊まって柘植駅へ向かいました。
東海道新幹線の下をくぐり、ここには栗東信号場が存在します。
かつては南びわ湖駅設置計画がありましたが、滋賀県知事の反対により凍結されました。
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まもなく東海道本線との乗換駅、草津駅に到着です。
草津線の1,2番線ホームへ。一番端には単線のため列車の入線を待っている、113系電車が停車中です。
ここまでは草津線内最長となる、8両編成で来ました。草津駅で前に4両連結し、東海道・山陽本線は12両編成での運行です。
この連結作業のためにかなりスピードを落としての入線。手原〜草津が通常5分のところ、10分ほどかかっています。
ここからも引き続き、普通列車としての運行。ここまで乗ってこられた方も、多くが後続の新快速電車に乗り換えられるようです。
草津駅では8分間の停車時間があります。
草津駅の改札内にはセブンイレブンがあるので、長時間乗車に備えて買い物ができます。
07:37 草津駅 発
草津駅を出発したところで現れるのが、四角いトンネル達。かつてこの上に草津川が通っており、その下を鉄道が通る天井川だったのですが、河川付け替えが行われており、現在ではこの上に川は流れていません。
草津駅から始まる日本最長の複々線区間。普通列車なので内側の線路を走ります。
お隣の南草津駅は1994年に開業した請願駅。2011年からは新快速の停車駅になり、滋賀県内で最も利用客数が多い駅として発展を遂げました。
瀬田駅を出発し、琵琶湖へと注ぐ瀬田川を渡ります。
石山駅は京阪石山坂本線との乗り換えが可能で、そのホームが左奥に見られます。
初見では絶対に読めない駅、膳所駅に到着です。
この駅もまた京阪石山坂本線との乗換駅。ローカル線みたく2両編成で走っていきました。
それに気を取られていると、左手から颯爽と追い越してきたのが新快速。草津駅を3分後に出発しており、ここで追いつかれます。
更に、向かいからは網干駅から来た新快速2号。2023年春のダイヤ改正から導入された、225系Aシート新造車も連結していました。
滋賀県の県庁所在地となっている、大津駅に到着。
新快速が先に到着していたため、一足先に発車します。
普通列車が追いかけるのを待たず、トンネルの奥へと消えて行ってしまいました。この先出会えるかどうかは、新逢坂山トンネルの向こう側で判明します。
滋賀県から京都府に入りました。
左奥に新快速を捉えまして、なんとこちらが追い抜いてしまうという結果に。
そのまま山科駅へ先。
中々新快速は追いつかず、先に発車するというまさかの状態です。時刻表上では、同時刻の発車となっています。
ここですれ違ったのが、京都発近江舞子行きの113系電車。湖西線でも活躍していたこの車両、草津線とともに退役のようです。
そのまま列車は京都駅へ入線。ここで2分の停車時間があります。
この間にようやく新快速が追い着いてきました。
結果として普通列車は、京都駅まで完全に逃げ切ったことになります。また、この列車は草津線から京都へ乗換なしで一番早く行くことができ、直通の意味が十分ある列車です。
ここで、この列車は京都駅から快速に種別変更します。停車駅は長岡京、高槻、茨木、新大阪の順です。
草津線の東海道本線乗り入れはラッシュ時間帯のみ。それも全て京都駅までなので、これより先へ直通するのは平日朝のこの1本だけです。
新快速は京都駅同時発車なのですが、30秒〜1分程度遅れていたみたい。今日は普通列車が先に出発です。
列車は引き続き、下り内側線を走行。上り外側線を特急サンダーバードが走っていまして、新快速や特急の線路が、普通列車が走る線路を挟む形です。
次の西大路駅を通過、東海道新幹線の高架橋がホーム上にあるほど近いです。
続きまして、桂川駅を通過中。京都〜高槻快速列車は朝のみの運行で、ホームに面する線路を通過するのはこの時間帯だけです。
特急はるかがノロノロ走る貨物線が左へ移り、この線路も新快速が走る外側線へ合流しました。
向日町の車両基地が見えてきた頃、後ろから静かに迫る影。
その正体は京都駅を一足遅れて出発してきた、新快速です。ここで一気に快速電車を追い抜いてしまいます。
長岡京駅に到着しました。1995年に神足駅から改称、快速列車が全て停車するようになっています。
京都府と大阪府の府境あたり、特急ひだ25号とすれ違い。大阪ひだとして親しまれ、この春から新型車両HC85系になりました。
これから京都発の特急きのさきへとしてお仕事でしょうか、ダークレッドの列車とすれ違います。
高槻駅に到着です。
向こうからはちょうど特急サンダーバード7号が入線。ここは新快速全列車だけでなく、一部特急も停まる主要駅です。
ここで列車は新快速と同じ、外側線に入りました。
後ろの列車に追いつかれまいと、ぐんぐんスピードを上げて駆け抜けます。
内側を走る普通列車も追い抜きまして、走っているところだけなら新快速と勘違いするレベルです。
快速列車なので、茨木駅に到着。大阪への通勤客も非常に多いです。
207系電車は各駅停車に充当されるため、起動加速度が223系より優れており、後ろから一瞬追い抜かれかけます。
向こうは次停まるので最終的には追い抜くものの、それぞれ役割に沿った性能をもっているのだと分かりますね。
左手からはおおさか東線として旅客化された、城東貨物線がやって来ました。
東淀川駅で普通列車を追い抜き、東淀川〜新大阪は東海道本線で最も駅間距離が短いです。
これは東海道新幹線駅をここに設置する計画で設置しておいたものの、北方貨物線に並行するルートへ変更されたことで、新幹線駅が現在の新大阪駅に決まったからとされています。
東海道新幹線と交差する、新大阪駅に到着です。
基本的には特急列車が発着する、9番線への到着。通勤電車が端っこへ入線するのは、ちょっと違和感があります。
左から下り線、上り線、梅田貨物線のそれぞれ複線が一緒に淀川を渡ります。
そして大きな屋根が特徴的な、大阪駅に到着。特急こうのとり4号が発車するところで、明智光秀ラッピングの黄色い車両でした。
ダイヤ改正までは大阪行きだったこの列車。ここからが春より延長された区間で、まだ行程の半分しか進んでいません。
大阪環状線が左へ分かれていきます。下を覗き込んでいると、うめきた地下ホームから登ってきた梅田貨物線を見られました。
さらに右手からは大阪駅を避ける、北方貨物線が東海道新幹線とともに近づいてきます。
JR東西線が地下から登ってきて、この線路を挟んだ状態で神崎川を渡ります。
ここで兵庫県に入りまして、三重県から始まり2府3県にまたがるこの列車、最後の県に突入です。
最初に停車するのが尼崎駅。
JR東西線、福知山線とあわせて3路線が集結する、重要な駅となっています。
ここからも相変わらず外側の新快速線を走行、ホームのない線路で駅を素通りします。
しかし、芦屋駅からは完全に快速列車として、自分の住処の内側線へ戻ってきました。
スーパーはくと2号とすれ違い。流線型のイメージとは異なる、貫通型先頭車です。
2016年に開業した摩耶駅を通過中、ミュージックホーンを鳴らしながら新快速が追い越してきました。長編成に渡っているため、かなり長い間並走してくれます。
そのまま兵庫県の代表駅、三ノ宮駅に到着です。
多くの私鉄も集結しており、非常に重要なターミナル駅となっています。
新快速と同時刻の発車でしたが、こちらは元町駅に停まるため、そのまま追い抜かれる形に。
神戸駅でも再び見ることはできましたが、入線時に発車していきました。この神戸駅で東海道本線は終わり、ここから山陽本線に入ります。
兵庫駅を出発すると和田岬線が左手に分岐していきました。工場へ通勤客のための路線で、朝の運行は9:29兵庫駅着で終わりとなります。
また、ここまでは方向別複々線と呼ばれる、緩行線が新快速線が挟む形だった配線。
新長田駅通過前に路線別複々線と呼ばれる、左2本が緩行線、右2本が新快速で並ぶ配線に変わります。
須磨駅は砂浜の真横に設置されており、海に近い駅よりもそのイメージが非常に強いです。
大阪湾から瀬戸内海へ掛けての海の景色、山陽本線の中でも非常に見どころの区間になります。
さらに、奥には淡路島とを結ぶ明石海峡大橋が見えてきました。これに関してはより高いところを走る、新快速からの方が見やすいです。
私鉄らしく駅数の多い、山陽電鉄横を通過します。
京都駅〜明石駅で快速だったこの列車、明石駅からは普通列車に戻ります。
新幹線乗り換え駅の西明石駅で3分間の停車。
方向幕を見ても、確かに普通へ変わっている事が分かります。
さらに、草津駅から続いていた複々線区間ですが、西明石駅で終わり。120.9kmに及ぶこの距離は日本一の長さです。
大久保駅で3分停車し、近江塩津駅始発の新快速に追い抜かれました。複線になったため駅で少し停車する必要があります。
さらに、加古川駅でも新快速に追い抜かれました。
こちらは長浜駅始発で、湖西線経由か北陸本線経由かそれぞれ経路が異なります。
更に、特急スーパーはくと3号倉吉行きにも追い抜かれました。気動車でありながら130km/h運行、とんでもないディーゼル特急です。
途中非常に多くの貨物列車とすれ違ったのが印象的。日中でもこれだけ走っているのは大きな発見でした。
山陽新幹線の高架橋と並行するようになり、ちょうどN700Sがやって来ます。
10:30 姫路駅 着
右手奥には播但線の103系電車が停車中。
ホーム越し遠くには、姫路城を望むこともできます。
姫路駅を発車すると、姫新線のキハ127系気動車とすれ違いました。姫新線高速化事業の一貫で導入されており、沿線自治体が費用の一部を負担しています。
はりま勝原駅では115系電車とすれ違い。
いやいや、まさかこれがいる所まで来てしまったのかと、その移動距離にようやく実感が湧きました。
4時間6分、199.9kmに及ぶ行程ですが、いよいよゴールが見えてきます。
10:42 網干駅 着
兵庫県西部、関西圏アーバンネットワークの端っこに到着しました。
普通から回送へと幕がくるくると変えられます。
清掃の方が入られ、そのまま網干の車両基地へ引き上げられました。
元々新快速の運行距離が長いために物凄い特別感はありませんでしたが、草津線からここまで同じ列車で来られた事は非常に面白かったです。
通勤ラッシュの関西圏に注目するのも、大きな魅力でした。
6時台に柘植駅から乗るのは非常に大変ですが、平日1本だけの変わった運行。ぜひ機会があれば乗ってみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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