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【まさかの部分存続】留萌本線存廃協議の経緯/留萌駅2023年春廃止/石狩沼田駅まで存続の理由を考察

2022年7月16日

JR北海道が廃止・バス転換、または上下分離方式を求めている留萌本線。北海道新聞の報道によると、沿線4市町(深川市、秩父別町、沼田町、留萌市)とJR北海道は石狩沼田〜留萌を早ければ2023年3月末で廃止深川〜石狩沼田は3年程度存続させて廃止する方向で調整していることが分かりました。近いうちに首長が集まり判断するとのことです。

(日本語版ウィキペディアのLincunさん, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7860179による)

これまでJR北海道は留萌本線について、深川〜留萌全線の廃止・バス転換を求めていました。3年程度とは言え、深川〜石狩沼田の部分存続を受け入れた理由について考えたいと思います。



留萌本線は2015年6月から、全線を対象に存廃協議が行われていました

北海道新聞はJR北海道幹部が沿線自治体と非公式に、留萌本線の全線廃止を打診していたと報道しています。

JR北海道が乗客の減り続けているJR留萌線(深川―増毛間、66・8キロ)の廃止を検討していることが26日分かった。留萌線のうち特に利用が少なく、安全対策が追いつかない留萌―増毛間(16・7キロ)を先行して2018年度までに廃止したい考えだ。JRの経営スリム化の一環で、沿線自治体の一部に意向を伝えた。今後、自治体に協議を申し入れる時期を見極めていく。

(2015年6月27日北海道新聞https://web.archive.org/web/20150627123700/http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0150361.html )

 

この時点で秩父別・増毛両町長は廃線を容認するような発言をしています。

秩父別町の神薮武町長は「経営が厳しいことは以前から聞いていた。存続の要望をしてもどうにもならないと思う」と話し、今後は公共交通の確保を求める考えだ。増毛町の堀雅志町長は「残念だ。観光には影響が出るが、致し方ない」としたが、沼田町の金平嘉則町長は「路線は残してもらいたい」と述べた。

(2015年6月28日北海道新聞

https://web.archive.org/web/20150628082012/http://mainichi.jp/select/news/20150628k0000e020132000c.html )

 

留萌〜増毛の輸送密度は39人/日(2014年度)、実際に2016年12月4日限りで廃止されました。



2016年11月18日、JR北海道は『「当社単独では維持することが困難な線区」について』を公表し、留萌本線が「輸送密度200人未満」(赤線区)に分類されました。

2020年には留萌市が石狩沼田〜留萌の廃線を容認、残る3市町は深川〜石狩沼田の部分存続へ舵を切ることとなります。

https://web.archive.org/web/20210207052019/https://www.asahi.com/articles/ASN8M6S7FN8MIIPE01C.html

(2020年8月20日 朝日新聞)

留萌市は人口2万人の町で、秩父別町(2300人)・沼田町(3200人)と比較しても大きな町。市内には北海道留萌高等学校、留萌市立病院があって、交通弱者が市外へ出る需要が小さいです。

さらに2020年には深川留萌自動車道が全通。まちづくりの中心を道路に据えています。

しかも留萌本線全長のうち半分が留萌市内で、路線距離が長く、費用負担もその分重くなります。

これだけの理由が集まれば、留萌市が費用負担して鉄道を存続しようとしないのは当然です。



区間存続を目指す3市町、それでも道のりは険しいものです。

沼田町は深川〜恵比島の存続を求めています。

これは石狩沼田〜恵比島が、深川留萌自動車道から離れているためと考えられます。

また、恵比島駅が連続テレビ小説「すずらん」の舞台で、貴重な観光地であることも関係しているかもしれません。

 

深川市・秩父別町については、深川〜石狩沼田の存続を求めています。秩父別町では先述の通り2015年時点で廃線を容認していましたが、澁谷信人町長に代わったためか、存続側に変わりました。



JR北海道は部分存続に否定的で、全線廃止・バス転換の立場。

区間存続のためには、どちらの場合も折返し設備のため、4000万円の初期費用が必要。自治体に対し、深川〜恵比島の場合は年間3億8800万円、深川〜石狩沼田の場合は年間3億4500万円の赤字補てんを求めています。

3市町で分け合った場合年間1億ずつにあり、特に秩父別町や沼田町にとっては大きな負担です。国は赤字線区について特別な援助をしない方針で、北海道からも支援はありません。



どこからも援助を受けることができないことに対し、沼田町は鉄道ルネサンス構想を打ち出しています。

鉄道ルネサンス構想について―北海道沼田町

 

これはJR北海道が乗り放題となるサブスクリプション。上下分離だけでは鉄道の延命措置に過ぎないため、根本的な解決を目指して発表されました。

ただし、これは北海道の住民全員が購入することを前提としており、鉄道が無いエリアの住民の理解を得ることは難しいです。

更に、これは札幌圏の定期券利用者の需要と重なる部分であり、定期券の減収にもなってしまいます。

様々な問題点がありますが、沼田町が鉄道に対してかなり本格的な姿勢になっていることは分かります。



ここから推察すると、沼田町は上下分離方式として設備費用の負担を受け入れたのではないかと考えられます。

また石狩沼田駅までの14.4km存続させる場合、沼田町内を走るのは1km程度。路線距離に応じて負担割合を決めるなら沼田町は非常に小さな割合ですが、それよりも大きな割合を受け入れ、他自治体の負担軽減を図ったのではと思います。

ただし、3年程度存続させた後廃止としているのは、非常に気になる部分です。たった3年後の廃止が前提で報道がされているのに、年間の負担だけでなく初期費用4000万円も負担するのか…。単なる鉄道の延命に否定的な沼田町がこれを容認するのか…。

疑問は尽きませんが、近く行われるという首長が集まった判断を待ちたいと思います。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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