鉄道車両のデザインは、外観含め時代に合わせて変わります。
しかし、約40年間も同じデザインの車両が新造され続けている、地方私鉄がありました。
浜松市街を南北に貫く、遠州鉄道です。
1983年に導入された1000形から、ほとんど変わらない外観。
2024年の新造車両であっても、今の時代では珍しく、全ての窓を大きく開けられます。
昭和から平成を越え、令和になっても同じデザイン。
パッと見変わらないように見えますが、一体どこが違うのでしょうか?
JR浜松駅から5分ほど歩いたところ、遠州鉄道の始発駅である新浜松駅に来ました。
県内で不動産にも力を入れている地方私鉄。奥の駅ビルと直結しており、JR九州みを感じます。
列車は1時間に5本。
新浜松駅の発車時刻は12の倍数で、非常に分かりやすいです。
遠州鉄道の電車とバスで使える、地方交通系ICカード「ナイスパス」の簡易改札機が置かれています。
Suica等は使えないので、きっぷを購入。有人改札の駅員さんに見せて改札を通ります。
ホームへ上がりまして、正面の線路を見ると行き止まり。
2面2線のホームになっていますが、現在使われているのは1番のりばだけです。
留置線として使われている2番のりばに、ちょうど古くからの車両が停まっていました。
せっかくなので新型車両と比べるため、外観を見てみましょう。
遠州鉄道では1000形と2000形が走っていますが、こちらは1000形(1003編成)です。
2024年9月28日に新造車の2000形(2009編成)が導入されたことで、1000形(1002編成)が置換えられて引退。
おそらく今停まっている1003編成が、遠州鉄道で一番古い車両と思われます。
おでこに行先方向幕が付いており、丸っこい文字が可愛らしいです。
運転室は少々年季が入っているものの、シンプルな構造。
そして、真四角の出っ張ったライトが特徴的です。
また、遠州鉄道の車両は大きく窓が開きます。
サッシで窓が上下に区切られているのが、その証。これだけで地方路線感がグッと高まります。
そして車両間の銘板に注目してみると、昭和63年(1988年)製。
1000形電車は1983年から1996年、昭和から平成にかけて製造された車両です。
それまで活躍していたのが30形。湘南型と呼ばれる丸っぽい全面になっています。
そのイメージを一新し、切妻型で直線を用いてデビューしたのが1000形です。
2000形についてもこれを踏襲したデザインで、2024年にデビューした2009編成までこれを受け継いでいます。
西鹿島駅と新浜松駅を往復し続ける遠州鉄道。新造車の2009編成がやってきました。
留置されていた1000形と並びましたが、車両の形はパッと見同じ。
すぐに分かる違いは、行先表示がフルカラーLEDになってることくらいでしょうか。
2両編成の電車には、浜松へお出かけの方が沢山の方が乗っておられました。
改めて車両の外観を見てみますが、やはり新車っぽさはあまり感じません。
バーテンダーが辺を切り落とした氷みたいになっている、直線デザインが相変わらず印象的。
四角いライトも主張が激しいです。ここだけ見たら、ふと名鉄のパノラマカーが思い出されました。
フルカラーLEDの行き先表示器には、駅ナンバリングも書かれています。
こちらは2008編成から導入されました。
36年差の車両が並んでいますが、全く変わらないデザイン。かなり統一感があります。
そして、2024年に製造された新型車両でも、窓を開けることができます。
最近の車両は一部のみ開けられる形が多いので、全ての窓を開けられるのは珍しいです。新型車両でこの形は、長良川鉄道くらいでしょうか。
2両編成が組まれている、先頭車両に乗り込みます。
運転台後ろは、3面全てがガラス張り。前面展望も見やすい仕様です。
こちらが運転台で、メーターは針式です。
足元周辺含め、かなりシンプルな作りであることが分かります。
マスコンの中央部には、三菱マークが付いていました。
外観は昭和から変わらないとはいえ、車内設備は現代のニーズに合わせたものです。
運転台後ろには、車椅子スペースが設けられています。
車椅子スペースの窓に関しても、開けることができます。
もう少し空いたら開けてみますが、ここも変わらないのはちょっと嬉しい。
また、最近だとUVカットガラスで代えられることが多い、ロールカーテンも健在です。
何段階かに分けて、固定できる形になっています。
運転室上部分には、あまり見ないタイプの禁煙マークが貼ってありました。
運転室の入り口には、引き戸による鍵付きの扉が設けられています。
各扉の上には、液晶ディスプレイが設置されています。
左側は次駅表示。右側は行き先と路線図の他、広告も流れていました。
防犯カメラも設置され、車内の安全性が高められます。
比較のため、2000形(2003編成)の車内も見てみましょう。
液晶ディスプレイが設置されたのは2006編成からなのですが、順次交換されたためご覧の通り設置されています。
車椅子スペースも既に設けられているほか、現在では防犯カメラも全編成に付いています。
再び新造車の方へ。LED照明を採用しており、かなり明るい印象があります。
遠州鉄道は全編成ロングシート。扉は3箇所です。
座席モケットは紫色で、9人座席を3分割するようにポールが立っています。
2003編成に関しては、部分的にライトグレーのモケットが取り入れられていました。
ポールが立てられたのは2004編成からなので、色を変えることで区分を分かりやすくしていたのでしょう。
連結部には扉が無く、モノレールみたいな感じ。
走行中には立ち入ることができません。
車両連結部付近が優先席で、座席モケットはライトグレー。つり革はオレンジ色です。
お客さんが少なくなったので、端っこの窓を開けてみました。
両方のつまみを持ったまま下ろす、機構はJRなどと同じです。
ガラス2枚分重なると、UV加工を施していそうな青みが目立ちます。
つまみ部分は新しいためか、可動が滑らかでした。窓の開閉は4段階で固定できます。
昭和の新車を見ているようですが、ちゃんとここは2024年。
車内の銘板がそれを証明してくれています。
一方でこちらは、2003編成。
2005年に製造された編成で、同じ2000系でも窓の古さが違います。
窓を固定する穴が、新造車両より奥まったところに位置していました。
つまみのデザインもレトロ。これは経年劣化のせいかもしれませんが、つまむのも硬かったです。
ヘタってきてますが、ロールカーテンも引き出せます。
新造車両は終点の、西鹿島駅に到着です。
折り返し時間は3分程度で、すぐに新浜松駅へ戻る準備が行われます。
行先表示は駅ナンバリングも入り、「ET01新浜松」です。
令和6年に製造された、昭和デザインの新造車両。
遠州鉄道と言ったらこの車両と、完全に染み付いたのでしょう。
これからも30年ほどは、走り続けるこの車両。
地元の方に愛される「あかでん」には、是非その姿を留めてほしいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。