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【HC85南紀デビュー】新型車両で行く紀勢本線特急 運行初便乗車記[2306-07南紀(2)]

2023年7月1日

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  2022年7月1日、キハ85系を置き換える新型車両HC85系が、高山本線の特急ひだ号でデビューしました。 2023年春のダイヤ改正ではキハ85系が定期列車から引退し、HC85系に統一され ...

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紀伊半島を縦断し、名古屋〜新宮・紀伊勝浦を結ぶ特急南紀。

キハ85系により運行していましたが、2023年6月30日、1992年から活躍した歴史に幕を下ろしました。

 

そして本日7月1日、特急南紀にHC85系がデビューします。

 

全ての列車が新型車両へ。名古屋駅から紀伊勝浦駅まで全区間、新たな南紀の旅をお届けします。



名古屋駅ではHC85系特急南紀をお出迎えする装飾が、盛んになされていました。

神々しい「NEW NANKI」の文字は、熊野古道の玄関口へ向かうに相応しいものです。

 

岐阜方に引き上げていたHC85系、7時47分に名古屋駅へ入線しました。

 

南紀としての営業運転初便とはいえ、キハ85系ラストランよりは1両少ない4両編成での運行です。恐らく今後は2両編成がデフォルトになると思われ、これを見られるのはイベント等ある時ぐらいでしょう。

 

フルカラーLEDの燃えるようなグラデーションには、「南紀」「紀伊勝浦」の表示がされています。

 

ホーム上では職員さんがお手製の横断幕やプレートでお見送りしてくださいました。

 

ホーム端は立ち入れなくなっており、出発式が行われています。コンコースから来賓の方が登って行かれたのを目にしました。

 

2両+2両を繋げた、特に変わりない連結方法です。

 

車内はこれまで通り、オレンジ色のグラデーション掛かった座席です。グリーン車は2020年秋に廃止されており、車両置き換えでの復活もありませんでした。



8:02、警笛が鳴らされて名古屋駅を出発。

出発式や職員さんによる華やかな旅立ち、新たな南紀として堂々たる面持ちです。

 

アルプスの牧場から始まる「特急南紀」の自動放送が流れます。ハイブリット車両のため、ボワーンとエコーのかかった起動エンジン音が独特です。

 

名古屋の車両基地には、深夜に新宮駅から帰ってきたキハ85系と、これから活躍するHC85系が停車中。一昔前までHC85系がいると特別取り憑かれていたのに、存在が当たり前になってしまいました。

 

名鉄とHC85系は、特急ひだ号と名鉄名古屋本線で共演済み。名鉄がJRの駅を間借りしている弥富駅を通過します。

真っ白な駅名標にはかつて「日本一低い駅」の表記があったのですが、近くの近鉄弥富駅の方が低い疑惑が出たため、消されました。

 

木曽三川を渡りまして、愛知県から三重県に突入です。



まもなく桑名駅に到着。

近鉄線、養老鉄道線は既に表示実績がありますが、三岐鉄道が出てくるのはこれが初めてです。

 

近鉄特急とすれ違い、同じ会社の列車ではと思ってしまうくらいHC85系と同系色です。

 

お隣には養老鉄道が停車中。桑名〜大垣を結んでおり、これまでも1日1往復大阪発着の特急ひだ号が停まる大垣駅で乗り換えられました。

 

新たな列車の旅立ちとして、桑名駅でもポップな横断幕によってお見送りしていただきます。

 

富田駅を通過、ちょうどここから分岐する三岐鉄道の貨物が停車していました。



四日市の石油化学コンビナートが見えてきます。

まさに関西本線らしさを感じる景色、これまでの特急ひだ号が走る中にはなかった要素です。

 

臨海部へ向かっていくつか貨物線が伸びており、北海道から来たディーゼルによって引っ張られています。

 

まもなく到着する四日市駅は市街地から離れており、もはや貨物駅のようなもの。

そしてそこではJR貨物の職員さんでしょうか、旗を振ってお出迎えしてくださいました。

 

さらにDF200形ディーゼル機関車のラッピング、Ai-Me(アイミー)までお隣りにいました。

 

コンテナまでHC85で彩られ、温かなお見送りをされつつ四日市駅を出発です。



ここまでJR関西本線を走ってきましたが、ここから第三セクター伊勢鉄道伊勢線に入ります。

地上を走る関西本線を見下ろしつつ、特急南紀は津方面へ短絡しています。

 

伊勢鉄道伊勢線内で唯一の停車駅が、鈴鹿駅です。虹を描いた横断幕とともに、反対側から見送っていただきました。

 

鈴鹿サーキット稲生駅手前で、新宮駅始発の特急南紀2号とすれ違いました。あちらは上り営業運行初便となります。

 

伊勢鉄道線は高規格路線となっており、特急南紀が高速走行できる区間です。

 

中瀬古駅で複線区間は終わり、行き違いのため河芸駅で運転停車して普通列車と行き違いました。



三重県の県庁所在地、津駅に到着です。

ホームいっぱいの子供達にお見送りいただいて、三重県にHC85系がやってきた喜びを感じられます。

 

津駅よりJR紀勢本線に入りました。近鉄名古屋線ともここでお別れ、あちらは大阪と伊勢の分岐点である中川デルタ線へ向かいます。

 

HC85系はデッキも見どころ、洗面台横の名のミュージアムには、沿線の伝統工芸品が展示されています。

美濃和紙や木彫のフクロウなど展示されているのを見ましたが、今日の南紀号は三重県にあわせた伊勢型紙です。

 

もう一編成の方も同じく伊勢型紙ですが、模様が異なります。ひだ号だけでなく南紀号にも対応した種類です。



デッキへ移動してきたのは、松阪駅ホーム上へ降りるため。

あらかじめ電話予約しておけば、ここで駅弁を受け取ることができるのです。特急南紀や快速みえ、近鉄特急でもこのサービスが行われています。

 

松阪の観光ポスターを掲げて、着ぐるみを着た方までいらっしゃいました。もう完全に観光列車です。



松阪駅で受け取ったお弁当は、元祖特撰牛肉弁当。1700円と袋5円をお釣りなしで渡すことになります。

電話で掛け紙をどうするか聞かれまして、紹介されたHC85系と一緒のデザインに。偶然お隣の方も購入されており撮らせていただきましたが、こちらは違うデザインです。

 

元祖特撰牛肉弁当は1959年の紀勢本線全線開通に合わせて販売されました。当時の値段は150円、日本一高い駅弁で散髪料と同じくらいのだったそうです。

 

冷めても美味しい牛肉の駅弁で、そこまで高くならないよう試行錯誤されました。赤ワインを加えて松阪牛の内ももを厳選、秘伝のたれによって美味しい牛肉の駅弁です。



多気駅に到着しました。伊勢方面への参宮線が分岐する一方、特急南紀は紀勢本線へ。

ここで運転士さんの交代が行われ、多くの乗務員さんが乗ってこられました。

 

ここで高校生の生徒さんによる放送が流れました。特急ひだと同様、特急南紀でも日本語と英語で録音された観光案内がされます。

 

7月1日〜2日の特急南紀1,3,5号で配られる、記念乗車カードとマグネットをいただきました。

青い海をバックにして、爽やかに走るHC85系。特急ひだ号とは違った一面を見せてくれるはずです。

 

早速山の中へ入りまして、険しい自然に囲まれた紀伊半島らしさが現れてきます。

 

ところどころで紀勢自動車道と交差するようになり、紀勢本線と並行して延伸が続きます。

高速バスが特急南紀を脅かすライバルのようにも思えますが、快適性が格段に向上したHC85系の投入でどうなるでしょうか…。



三瀬谷駅に到着しました。

無人駅のはずですが、今日はJRの社員さんも一緒にお出迎えしてくださいます。

 

渓谷っぽいところは比較的少ないですが、そのなかでも三瀬谷橋梁は山の高いところを結んでおり、迫力があります。

 

途中では記念ボードで写真撮影をさせていただいたりと、記念列車ならではの体験も。

 

ひだ号では自動放送による観光案内が行われますが、南紀号でもHC85系になって導入されました。

最初に流れるのは荷坂峠の観光案内放送です。

 

荷坂峠を越える線路はΩカーブの線形で、進行方向右手に張り付いていれば、これから向かう長島の街を下に見ることができます。

 

かなりの高さを下ってきまして、遂に海が見えてきました。海なし県の岐阜県とは明らかに異なる車窓です。



紀伊長島駅で列車行き違いのため、4分ほど停車します。

みなさんここで撮影大会、鉄道ファンでホームがいっぱいになります。

 

跨線橋から見下ろすようにHC85系を見たのは、これが初めてかもしれません。丸っぽい顔に模型感を感じます。

 

ここで行きちがったのは、紀伊勝浦駅始発のHC85系始発列車、特急南紀4号です。

 

土日に利用可能な青空フリーパスのエリアは紀伊長島駅まで。

ちょうど名古屋へ戻る特急が来ることもあり、効率よく折り返す鉄道ファンの方がかなりいらっしゃいました。

 

紀伊長島駅を出発したところ、年季の入ったドックが残されています。まるで戦時遺構のような姿、アニメ『凪のあすから』で登場したそうです。

 

もう一つの峠、馬越峠についても観光案内放送が流れます。

馬越峠は熊野古道のルートの一つです。自然と折り重なるように敷き詰められた石畳は日本でもトップクラスの雨量を誇る尾鷲の雨から守ってきました。遠くからは天狗倉山や便石山の山頂へ続く登山コースにも繋がっています。



今日は小雨が降っていましたが、大雨の町として知られる尾鷲は曇っているだけでした。

尾鷲駅でも多くの子供達がお出迎え、フラッグはHC85南紀のロゴではなく、尾鷲オリジナルのデザインです。

 

これまで山の中を貫いていた列車は、リアス式海岸の尾鷲湾へ入っていきます。

 

特にロックシェッドの中を潜り抜けながら海が広がるのは、紀勢本線が走る場所の厳しさを代表する景色だと思います。

 

三里木駅〜新鹿駅は1959年に開業した紀勢本線最後の区間です。本線でありながら戦後の開通と、かなり遅いもの。それだけ鉄道建設が難しかった場所ということです。

 

技術向上により長いトンネルを掘れるようになり、リアス式海岸の小さな湾にある集落を点繋ぎするようにしています。

そして遂には車両もただのディーゼルではなく、ハイブリッド車両へ生まれ変わりました。

 

新鹿駅を通過しまして、長大トンネルで山を突っ切る区間は終えました。

 

JR東海が日本一美しいと認める新鹿海水浴場を見下ろします。

 

特急南紀が走る中で一番の観光要素、熊野古道についての観光放送も流れます。

 

大泊駅を通過するすぐ近くには、熊野大泊ICがあります。自動車専用道が繋がるのは今の所ここまでですが、その先でも建設が進んでいるところです。



熊野市駅に到着。

熊野観光の拠点として、一般のお客さんが乗降車されている様子でした。

 

ここでいよいよ太平洋が姿を現します。まだちょっと木々や住宅越しのため、あまり綺麗に見える区間ではありません。

 

三重県最後の駅、鵜殿駅を通過したところで、熊野川について観光案内が流れました。

 

この熊野川を渡ると三重県から和歌山県へ入ります。



新宮駅に到着しました。

JR西日本の駅になっても、JR東海の新型特急が盛大にお出迎えされます。

 

吹奏楽の方による演奏までされており、これまで来た中で一番賑やかな新宮駅です。

 

ここからは電化区間で、反対側には深緑色の227系電車が止まっています。JR西日本紀勢本線の普通列車です。

 

ここでJR東海からJR西日本の方へ乗務員さんが交代されました。

 

駅名標もJR西日本の青色になりまして、紀伊勝浦駅まで乗り入れます。

 

新宮駅には車両基地が隣接しており、紀勢本線では随一の鉄道運行拠点です。

基本的に紀伊勝浦駅発着の特急南紀も、始発と最終は新宮発着になります。



海の景色を楽しむのならば、この区間が一番です。

特に障害物無く、雄大な太平洋がどこまでも広がっています。

 

さらにゴツゴツした岩も現れて、特急くろしお側のジオパーク感も演出されました。

 

宇久井駅で列車行き違いのため運転停車駅。特急くろしお号で、パンダくろしおでした。

 

那智駅にかけても太平洋の美しい区間。HC85系の明るい空間から見られるようになり、一層素敵な車窓が作り出されました。

最後にアルプスの牧場が流れまして、遂に終点の紀伊勝浦駅です。

ワイドビューチャイムが聴けないのは寂しいですが、キラキラと爽やかな音色は本当に素敵。



11:56 紀伊勝浦駅 着

那智勝浦町観光業の方々に迎えられ、名古屋からの新たな旅が終わりました。

 

ちょっとキハ85系の名残が残っていたり、その移り変わりを実感させられます。

 

HC85系がやってきた最初の日、どの駅も普段と比べ物にならないくらい明るくなっていました。

沿線の仲間入りを果たし、より多くの方に使っていただけたらと思います。

 

ぜひ皆さんも新しい南紀に乗って、紀伊の旅へおでかけしてみてください。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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