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【本当に廃止危機?】紀勢自動車道延伸後の格安高速バス 特急南紀の勝機とは[2306-07南紀(3)]

2023年7月3日

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紀伊半島を縦断し、名古屋〜新宮・紀伊勝浦を結ぶ特急南紀。 キハ85系により運行していましたが、2023年6月30日、1992年から活躍した歴史に幕を下ろしました。   そして本日7月1日、特 ...

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紀伊半島における熊野古道の玄関口、熊野市駅です。

 

名古屋からは特急南紀が来ており、新型車両HC85系に置き換えられました。

これまでのキハ85系と比較して快適性が格段に向上、より多くの観光客に利用していただきたいところです。

 

そのライバルとされるのが高速バスです。

高速道路が南へ延伸してきており、特急南紀は自家用車や高速バスにより駆逐されるのではと心配の声も聞こえています。

本当にそうなってしまうのか、比較対象として三重交通の高速バス南紀名古屋線に乗車してみたいと思います。



熊野市〜名古屋において通常料金の差は明らか、特急南紀が6450円高速バスは3400円です。

そこでJR東海はいくつか企画乗車券を販売して対抗しています。

左側は松阪・津への往復割引切符と南紀特急回数券。大阪方面へは津駅で近鉄特急へ乗り換えるのが便利で、そのような客層へ向けた商品という訳です。今回ご紹介する高速バスは松阪や津に停車しないため、自家用車からの転移を見込んでいると思われます。

右側のハッピー名古屋往復きっぷは、熊野市〜紀伊長島→名古屋の指定席往復で13,800円。名古屋駅のJRセントラルタワーズを中心とした商業施設の5000円分商品券がついており、これを差し引くと片道4,400円となります。

 

三重交通も同様の企画乗車券「なごや満喫きっぷ」を、熊野市駅前からでは7,700円で販売しています。往復乗車券と1,100円分の大須ごった煮チケットがセットで、1枚110円分のお買い物券が10枚付いて大須商店街で利用できるシステムです。

 

特急南紀の運行本数は1日4往復、頻度としては3時間に1本程度となっています。



バスは4番のりばからの発車です。

駅前のロータリーではなく、正面まっすぐ進んだ先、熊野市役所近くになります。

 

熊野市〜名古屋を結ぶ高速バスは、1日5本の運行です。新宮から来ており鉄道より所要時間が長いためか、最終便の出発が早くなっています。

 

また、那智勝浦・新宮〜新宿・大宮を結ぶ夜行バスも運行されています。

1984年まで運行されていた寝台特急紀伊みたいですね。



新宮駅からやってきました、三重交通バスが到着です。

新宮から熊野についてはまだ自動車専用道路が開通しておらず、自家用車と比較しても対名古屋において特急南紀が優位に立っているとされます。

気になるのは今回乗車する熊野から先です。

 

しかし、車内はガラガラで4,5人程しか乗っていない状態です。

1時間前に名古屋行きの特急南紀の様子を見たのですが、あちらは4両編成ほとんどの区画が埋まっていました。もちろんHC85系デビュー翌日で鉄道ファンが多いこともありますが、単純に観光客も沢山いらっしゃいました。

 

バスと特急列車で座席の快適性を比較したら、当然特急列車に軍配が上がります。背面にはちょっと軽食を置ける程度のテーブルが備えられていました。

 

昼行バスの中では珍しく、フットレストもついています。

 

窓側座席にだけUSB充電ポートがありました。

特急南紀にはコンセントが無かったのですが、新型車両HC85系デビューにより全席コンセント設備が導入。電源環境に関しては逆転しています。

 

次の停留所は鬼ヶ城東口、観光地の近くから直で帰ることもでき、お一人乗ってこられました。



熊野大泊ICより、熊野尾鷲道路に入ります。

2013年、三里木IC〜熊野大泊IC開通に伴って供用されました。

 

これより南側では熊野道路・紀宝熊野道路・新宮紀宝道路が整備中で、名古屋から那智勝浦・太地まで自動車専用道で繋がる予定となっています。

 

熊野尾鷲道路とその先紀勢自動車道の紀伊長島ICまでは、無料区間となっています。料金所等も設置されておらず、そのまま登ってきました。

 

熊野新鹿ICを過ぎ、特急南紀は遠くの新鹿海水浴場あたりを走ります。紀勢本線はここからリアス式海岸の湾に形成された集落を一つ一つ辿るルートです。

 

しかし、熊野尾鷲道路は一気に山を貫いてしまいます。

尾鷲南ICまでの制限速度は70km/hで、紀勢本線の最高速度85km/hの方が早いですが、短絡ルートによってこの差をカバーしている状態です。

 

こちらは賀田IC付近、賀田駅から1.5kmほど離れた所に位置します。

 

次の三木里ICについては三木里駅から1kmほどとかなり近い位置です。三木里IC〜尾鷲南ICは2008年に開通しました。

 

しかし、ここから尾鷲までは一直線で結ばれています。海沿いの集落を点繋ぎする紀勢本線とは対称的です。



尾鷲南ICで一旦自動車専用道を降ります。

尾鷲熊野道路は2021年に尾鷲南IC〜尾鷲北ICが開通したことで、全通を果たしました。この先のひと区間が最後の開通区間だったということになります。

 

尾鷲南ICには国道42号尾鷲南防災拠点の整備が進められています。

南海トラフ巨大地震による津波で地域が孤立する可能性もあり、それに備えた施設とのことです。

 

ICを降りる時には、路線バスともすれ違いました。尾鷲から熊野にかけて地域輸送を担う路線バスであっても、この道路を使っているようです。

 

ここからは国道42号に接続しています。明らかにカーブが連続しており、自動車専用道整備前はこのような道が最高レベルだったのだと、驚かされます。

 

山を降りてくると尾鷲湾沿いに形成された、尾鷲市街地が広がっていました。

大雨の街として知られており、東海地方の人間は天気予報でよく聞く地名です。

 

右手には尾鷲総合病院が見えてきました。ちょうど玄関口とバス停が一体化しているのが分かります。

 

このバスはその向かい側の停留所に停車、広大な駐車場を有するロードサイド型店舗が広がっています。尾鷲市街地のバス停に位置づけられ、1人乗ってこられました。

 

尾鷲駅は市街地と反対側にあるため、バスから見ることはできません。

それにしても、特急南紀なら10人以上は乗降があるはずで、輸送力の違いを体感させられました。

 

近くの尾鷲北ICから乗ることはせず、引き続き国道42号を走ります。

基本的に街中を走るものの、山を越える時には小さな集落を見下ろす、紀勢本線と似た車窓です。

 

トンネルを抜けると紀北町に入っており、道の駅海山を素通りします。



三重交通海山バスセンターにて、10分の休憩です。

周辺には本当に何も無く、お手洗い休憩や乗車券の購入程度しかできないようでした。

 

11:08に出発し、紀勢本線と一緒に銚子川を渡ります。周辺には相賀駅が存在しています。

 

海山ICより再び自動車専用道へ、尾鷲北ICより勢和多気JCTまで至る紀勢自動車道に入りました。海山IC〜紀伊長島ICは2014年に開通した区間です。

 

船津川沿いを走る紀勢本線と交差し、高速バスは海山トンネルに入ります。

 

上下線一体のパーキングエリアとなっている、紀北PAを通過しました。

尾鷲ひのきを使ったおしゃれな外観、紀北町が運営する地域振興施設「始神(はじかみ)テラス」がもう蹴られて、飲食施設が備わっています。初年度来場者数目標は60万人でしたが半年足らずで達成し、1年で100万人を突破するほどの人気です。

 

紀伊長島ICで降りまして、すぐ近くの紀北町紀伊長島停留所に停車。ここで1人乗車されました。

 

紀伊長島駅など紀北町の中心部へ入ることはなく、再び自動車専用道へ乗ります。

紀伊長島IC〜紀勢大内山ICは2013年に開通した区間です。熊野大泊ICからずっと無料区間でしたが、ここからは有料道路になります。

 

特急南紀では観光放送もされる、荷坂峠を越える紀勢荷坂トンネルへ。長さは3km近くに及びます。

 

トンネルが途切れるところで、左手にはカラフルな建物が現れました。

あちらは大内山動物園、本当に山の中ですが、ライオンなども飼育している本格的な動物園です。

 

初めての料金所となる大紀本線料金所を通過し、紀勢大内山ICを降ります。

 

いつも紀勢本線に乗っている時、交差する紀勢自動車道の立派さに圧倒されている地点がここ。紀勢新幹線で対抗したくなっちゃいます。

 

トーテムポールみたいなモニュメントが林立する、紀勢大内山インター前に停車。特急南紀は大紀町内に停車駅がありませんが、高速バスは停まってくれます。

 

ここからしばらくは国道42号を走行、少しだけ紀勢本線とピッタリ並行する所がありました。

 

同じく大紀町内には瀧原宮があり、こちらは伊勢神宮内宮の別宮とのことで、かなり需要な神社であることが分かります。高速バスも乗降できる滝原宮前停留所を通過しました。



大宮大台ICより、再び紀勢自動車道へ。

大台町内の三瀬谷駅には特急南紀が停車しますが、高速バスの停留所は町内にありませんでした。

 

そんな三瀬谷駅周辺に広がる市街地を見渡すことができます。

駅前に国道42号が走っているため、ロードサイド型店舗で賑わっている地域です。



奥伊勢PAで20分の休憩です。

食堂がありますがファストフードではないので、これはちょっと危険かも。売店で軽食を買うくらいはできます。

 

お店前の石畳の中には、いくつかハート型のものがあるそうです。ちょっと探してみるのも良いかも。



勢和多気JCTを降りまして、最後の途中停留所であるVISONヴィソンへ。

2021年に多気町でオープンした国内最大級の商業リゾート、地域密着型の施設として、地元食材を使ったレストランや産直市場などが集まっています。

 

ここから乗車される方が一番多く、10人以上は乗ってこられました。名古屋から公共交通機関で来ることを考えると、この高速バスが一番便利ということになります。

 

商業リゾート言うなので、宿泊もできます。斜面に立っていることで全室から街並みを一望できるそうです。



勢和多気ICより自動車専用道に復帰、ここから高速バスは名古屋まで停まりません。

紀勢自動車道は勢和多気JCTで終わりまして、伊勢関ICまで伊勢自動車道を走ることになります。

 

伊勢関ICからは東名阪自動車道へ。

特急南紀は津から四日市まで鈴鹿を経由する短絡線を走りますが、高速道路は亀山を経由するためやや大回りです。

 

四日市JCTは伊勢湾岸自動車道と新名神高速道路が分かれる大きな分岐点、絵に描いたようなジャンクションが形成されています。

 

木曽三川で最後の一本、木曽川を渡って愛知県へ入りました。

 

名古屋西JCTで東名阪自動車道は終わり、名古屋第二環状自動車道、名古屋高速5号万馬線が分岐します。

 

千音寺料金所を通って、引き続き名古屋高速5号万番線を走ることになりました。

 

左手奥の方には名古屋駅のJRセントラルタワーズが見えてきます。

 

そして名古屋の車両基地を渡りまして、左下には役目を終えたキハ85系たち。昨日一日で完全に車両を置き換えたばかり、まだ沢山休んでいました。

 

JR東海の気動車特急は、完全に新型車両HC85系へ統一。観光客をメインに多くの人々へ快適な旅を提供してくれます。

 

あおなみ線ささしまライブ駅周辺は再開発が進み、中京テレビ新社屋や愛知大学など、新しい建物が沢山立ち並びます。

 

その真横を通過したのち、新洲崎JCTより名古屋高速2号東山線を少しだけ走りまして、白川出口を降ります。

 

一般道でも広々とした交差点を見ると、名古屋へ来たっていう実感が湧いてきます。

 

JRの線路たちを横目にバスは登っていき、名鉄バスセンターへ到着です。



14:29 名古屋駅 着

ここで所要時間を比較してみると、

高速バスでは、新宮〜名古屋は4時間59分、熊野市〜名古屋は4時間14分

特急南紀では、新宮〜名古屋は3時間28分、熊野市〜名古屋は3時間8分となります。

 

2両編成になったりグリーン車が無くなったりで不安でしたが、輸送量を考えてもまだまだ特急南紀が必要だと感じました。

熊野市は戦後観光地として栄え、最近ではインバウンド観光客も増加しています。快適な旅を提供してくれる特急南紀が、末永く活躍することを期待したいです。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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