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【まもなく廃線】根室本線代行バスで狩勝峠越え 北海道最長路線の旅[2401-2トキエア(4)]
函館から根室まで旧ルートの旅、前回は函館本線を経由して札幌まで来ました。 今日は札幌から道東の大都市、帯広まで向かいます。 現在は石勝線を経由している特急とかち・おおぞら号ですが、それまでは滝川から根 ...
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日当たりが良く北海道とは思えない温かさ、帯広駅の朝です。
今日は遂に最終目的地、根室本線の終着駅である根室駅を目指します。
特急列車より普通列車に乗った方が釧路駅に早く着けるので、普通列車をチョイス。
帯広駅は1,2番線と3,4番線で改札が異なるので、間違えると少々厄介です。
高架ホームに停まっていたのは、花咲線ラッピングのH100でした!
「地球探索鉄道 花咲線」として、観光客誘致にも力を入れている、釧路〜根室の花咲線。
鉄道・運輸機構と北海道による支援を活用して、釧網線ラッピングと花咲線ラッピング1編成ずつを運行しています。
ボックスシートの真ん中には、観光列車運行時などテーブルを設置できるようになっています。
座席モケットには、北海道の生き物や植物が可愛らしく描かれていました。
10:26 帯広駅 発
帯広や釧路の近郊ではそれなりにお客さんが乗るため、日中でありながら2両編成の運行でした。
マックスバリュなどロードサイド店舗の中を高架で走り、札内川を渡って幕別町に入ります。
札内駅では2,3人ほど降りていらっしゃって、帯広を中心とした近距離需要もそれなりに大きいみたいです。
帯広市中心部と一体化した市街地を抜け出し、十勝平野の中へ。
この駅間には稲士別駅がありましたが、2017年春に廃止されています。
幕別駅では、帯広行き普通列車と行き違いました。
クラゲの大群みたく結氷が浮遊する利別川を渡り、池田町の中心市街地へ。
特急おおぞら号が全停車する、池田駅に到着です。
ここでほとんどの方が降りられまして、2両編成の乗客は6,7人だけになりました。
池田町はワイン製造が有名なまち、進行方向左手には「いけだワイン城」を見られ、自由に工場の様子を見学できます。
十勝平野を走るローカル区間に突入。列車行違い設備を備えた信号場が見られるようになります。
石勝線・根室本線では高速化工事が行われており、昭栄信号場にも弾性分岐器に交換する手が加えられ、高速での列車通過が可能になりました。
「十弗駅は10$駅」の看板が立つ十弗駅。言うなればダジャレ看板です。
豊頃町から浦幌町に入りまして、新吉野駅に停車。
下頃部(したころべ)駅として開業したのですが読みにくかったため、近くに吉野桜に似た山桜があったことから、新吉野駅になった説があります。
浦幌駅には1日1往復だけ、特急おおぞら号が停まります。
ホーム上には煉瓦積みのランプ小屋が残されていました。明治期の車内照明には灯油ランプが使われていて、薄暗くなると客車の屋根からランプを吊り下げていたのです。それを収納する小屋が主要駅にあって、今でも残っていることがあります。
お菓子が有名な帯広、駅で買ってきた柳月の月ふわりを朝食にいただきました。
中の小豆とチーズクリームが濃厚で、塩気のあるクリームをしっとりした生地で包んでくれます。
ここまで走ってきた十勝平野も終わり、ここから峠越えへ挑みます。
こちらは常豊信号場、現在は撤去されてしまいましたが、かつて駅だった過去がある訳ではないのに、駅名標みたいな看板が立っていたことで知られます。
遂にトンネルへも入るようになりました。
そんな山中の小集落に位置する、上厚内信号場を通過します。
元々は駅だったのですが、2017年春に信号場へ格下げされました。
立派な木造駅舎も翌年秋に解体されています。
カーブが続くため、後ろからは先頭車両が走る様子を僅かに覗けます。
厚内駅に到着し、反対方向の普通列車と行き違いました。
ここでは8分ほど停車時間があったので、外へ出させていただくことに。
木造駅舎の建つ単式ホームに、島式ホームを組み合わせた構造です。
赤白ツートンカラーになっている、花咲線ラッピングのDECMO。太陽の光を正面から受けて、赤い方はめちゃ明るくなっていました。
厚内駅と浦幌駅は、2023年12月25日に開駅120周年を迎えたとのことです。
到着時にいた普通列車以外特に行き違うこと無く、厚内駅を発車。
ここから少しの間、太平洋沿いを走ります。
と言ってもすぐに、山寄りへ。
2019年に直別駅から降格した、直別信号場に停車しました。
ここで釧路から札幌を結ぶ、特急おおぞら6号と行き違います。
海沿いへ出てきまして、尺別信号場を通過。こちらも2019年に信号場へ降格した駅です。
そして雪が覆う荒地越しに広がる、雄大な太平洋。
函館本線ぶりにこちら側へ戻ってきました。
2005年に阿寒町と音別町を合併した釧路市。
旧音別町の中心駅となっているのが、こちらの音別駅です。
直別、尺別、音別とアイヌ語で川を意味する「ベツ」が3駅並んでいたことから、別シリーズといわれていました。
こちらは根室本線の特急運行区間の中で、一番海の近いところ。
太平洋にしては波が静かで、非常に穏やかな海となっています。
すでに釧路市に入ったはずですが、ここからは白糠町へ。
釧路市の合併について町民の反対票が多かったため、釧路市は白糠町を挟んで、旧音別町が音別町になっているのです。
白糠町の中心駅、白糠駅には特急おおぞら号も停車します。
また、最後に延伸してからわずか9年で廃止された、国鉄白糠線も分岐していました。
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ここで再び釧路市に入りました。
大楽毛駅〜釧路駅は朝夕だと1時間に1,2本列車が設定されており、それまで閑散としていた車内も、ここから割と賑わうようになります。
列車は釧路の港に面する工業地域に入りました。
釧路駅の1駅手前、新富士駅には釧路貨物駅が併設されています。定期貨物列車が発着する、日本最東端の駅です。
新富士駅は東海道新幹線にもありますが、その由来が左手に見える日本製紙釧路工場。
富士製紙釧路工場として1920年に創業開始し、工場への専用線を分岐させるため1923年に新富士駅が開業しました。東海道本線に富士駅があったため「新」を付けたのですが、1988年に東海道新幹線の新富士駅が開業して、結局同駅名になりました。
合併や移管などを経て日本製紙釧路工場になりましたが、こちらは2021年10月に廃止。石炭火力発電所が残っており、左側の煙突からのみ煙が出ています。
釧路運転所の横を通過していると、根室本線(新得〜釧路)から撤退したはずのキハ40がいました。
旭川のキハ40が花咲線で代走中と耳にしたので、おそらくそれかなと思います。この先で乗れたら良いですが…。
道東の代表都市である釧路市、札幌から来る特急おおぞら号の終着駅となっている、釧路駅に到着です。
12:54 釧路駅 着
ピカピカのツートンカラー、花咲線ラッピングに連れられて来られた釧路駅。
花咲線は釧路駅〜根室駅に付けられた路線愛称であり、これから根室本線最後のローカル区間に入ります。
キヨスクへ買い出しに行こうと、地下通路を通って改札へ向かっていたら…
釧路運転所で目にしていた、キハ40が入線してきました。
何とこれから乗車する、根室行き普通列車に充当されるみたいです!
花咲線はキハ54形気動車での運行が基本ですが、代走のキハ40形に乗れるとはラッキー。
しかも背後の花咲線ラッピングH100と並んでいます。
釧路駅と言ったら年季が入った駅ビル、現存する最後の民衆駅です。
民衆駅とは、国鉄と地元が共同で駅舎を建設し、建物内に商業施設を設けた駅。
上層階にはJR北海道関連の事務所が入っており、1階にレストランやコンビニ、お土産屋さんがあります。2004年に撤退したものの、地下には釧路ステーションデパートも入居していました。
買い出しを終えて、普通列車根室行きの改札が始まったところ。
自動改札へ乗車券を投入するのも、これが最後です。
乗車するのは1両の汽車。道南地区でも乗車しました、萌黄色と青の帯が引かれるJR北海道のキハ40です。
キハ40 1727は旭川から連れてこられた車両で、側面には「旭アサ」と書かれています。
2024年春のダイヤ改正で釧網本線がH100形に統一され、釧路駅で当たり前に見られたキハ40の姿が消えていきます。
ホーム上には太平洋炭礦の海底炭が展示してありました。日本で唯一の坑内掘炭鉱として、今でも海底下から石炭を生産しています。
貨物鉄道の太平洋石炭販売輸送臨港線も2019年まで運行しており、国内最後の石炭輸送専門鉄道でした。
ちょうど根室駅から、快速はなさきが到着。
こちらがキハ54形気動車で、花咲線は基本的に全てこの気動車が使われています。
続いて、札幌駅からの特急おおぞら3号が到着しました。根室本線で特急列車が来るのは釧路駅までで、これより先は特急や急行など優等列車が発着しません。
13:25 釧路駅 発
折り返し準備が進められているキハ261形気動車を横目に、こちらはさらに東へ出発します。
キハ54では簡易リクライニングシートか転換クロスシートですが、こちらはボックスシートでどの席でも窓枠が合うのがありがたいです。
これだけ太陽が照る昼間でも、氷の張った釧路川。
奥の広場には撮り鉄の方々が、沢山写真を撮っておられました。
釧網本線との分岐駅、東釧路駅に到着します。
キハ54・キハ40形が走る釧網本線も、2024年春のダイヤ改正でH100形DECMOに統一予定です。
武佐駅は1988年に開業した駅で、新大楽毛駅と共に釧路圏で新たに開設された、根室本線で新しい駅のひとつです。
駅前には集合住宅も立っており、釧路星園高校の最寄駅だったのですが、高校が2009年に閉校したため利用者が減少しました。
釧路市・釧路町の市街地を抜けまして、一気に森の中へ突入します。
最後の列車ということで、釧路駅にて色々買い込んできました。
メインはこちらの駅弁、「こぼれいくらサーモンちらし」です。
ますいくら醤油漬け、酢味トラウトサーモン、サーモンフレーク、鮭を三通り堪能できるお弁当です。
輝くいくらが沢山載っていて、これがとっても美味しい!
サーモンのお刺身は、甘めの卵焼きに載っているので、うまく調和してくれています。
今回のルートからちょっと外れますが、網走ビールでいただきます。
網走産の秋まき小麦、きたほなみが原料。ホワイトエールの特徴であるクリーミーな味わいと爽やかな酸味、オレンジピールの香りも加わって調和しています。
キハ40特有の奥深いエンジン音を立てながら、釧路湿原の端っこを走ります。
カーブが連続するため速度が遅く、14kmの駅間距離は特に長く感じます。
上尾幌駅周辺はかつて炭鉱で栄え、当時の三星炭礦や釧路炭礦青葉礦業所から馬車軌道が敷設されていました。
お隣の尾幌駅には、可愛らしくペイントがされた貨車駅舎が立っています。
駅周辺にはセブンイレブンやライダーハウスがあったりと、それなりに規模感のある集落です。
列車は厚岸湾沿いまで出てきまして、厚岸大橋の架けられた立派な砂嘴を見られました。
足元に置いていて、暖房で温くなってしまったビールを流し込みます。
厚岸町の中心駅となっている、厚岸駅に到着。
厚岸駅といえば駅弁のかきめしが有名で、全国的にもスーパーの駅弁フェアなどで売られています。現地で手に入れるのが難しいですが、事前に電話しておけば列車に届けていただけます。
厚岸駅より先は、砂嘴によって作られた海跡湖、厚岸湖沿いとなります。
外海から守られているため波が穏やかで、それゆえ牡蠣の養殖が盛んです。
結氷した厚岸湖、さらには別寒辺牛湿原の冬景色をボックスシートから眺められるなんて、とてつもない贅沢です。
別寒辺牛湿原の真ん中を突っ切る鉄路、まるで海の上を走っているようで、一体どうやって線路を敷設したんだと思ってしまいます。
凍った湿原の上では、エゾシカと追いかけっこ。
線路上にいる鹿を、けたたましい警笛で追い払います。
飛び出してきたりもするので、各所で急停車していました。
浜中町に入りまして、釧路行き普通列車と行き違い。
キハ54形の車内では、多くの鉄道ファンの方がこちらへ向けてカメラを構えておられました。
浜中町は『ルパン三世』の作者である、モンキー・パンチさんの故郷です。町の中心部は浜中駅から8kmほど離れた、霧多布岬周辺となります。
こちら厚床駅からは、標津線厚床支線が分岐していました。1989年に廃止されましたが、現在でもそれを示す看板が建てられています。
中標津空港へ根室交通の路線バスがここを経由しており、鉄道廃止代替バスとして走ります。
2016年のダイヤ改正で、駅舎に面さない島式ホームを発着する列車がなくなりました。
これにより旧ホームへの立ち入りができず、青春18きっぷのポスターにも採用されたあのベンチまでは行けません。
列車は根室市の細く突き出た半島へ、山の中を掻き分けます。
70km/hと割と速度を出して頑張っている様子です。
別当賀駅を出発しまして、西の空には夕日が浮かんでいます。
汽車は花咲線の中でもハイライト、落石海岸を見下ろす区間へ突入です。
まっすぐ車内へ差し込む夕日が、海岸を魅せる額縁をいくつも作り出してきます。
ボックスシートの広い窓枠ならでは、視界を広く持って壮観できました。
雲の隙間から差し込む太陽と、さざ波を立てる海に映される光には、神々しさすら感じます。
花咲線のクライマックスを迎えまして、漁港を中心にした街へ落ち着きました。
函館本線には昆布駅がありましたが、根室本線には昆布盛駅があります。
勝手にサファリパーク開園してるんですかってくらい、エゾシカがいすぎてました。
雪原と雪原がパッチワークを作る丘の向こうには、花咲カニの水揚げが行われる花咲漁港があります。
牧場には冬でもお馬さんがいっぱいいました。
根室市街に入りまして、日本最東端の駅に到着。
板張りホームに簡単な看板が立て掛けられた、東根室駅です。
少し高台に位置しており、駅周辺には集合住宅もある生活感漂う駅になっています。
函館駅から800km、北海道を横断したこの旅もいよいよ終盤を迎えます。
道内最長路線の根室本線、終着駅の根室駅に到着しました。
15:57 根室駅 着
全行程の半分近くお世話になったであろうキハ40、最後もこの汽車で締められました。
日本最東端の車止めの向こうには、日本一早い夕暮れが迫っています。
日本最東端の駅員さんに乗車券を提示して、まもなくできなくなる長い旅が終わりました。
函館本線と根室本線を乗り継ぐ、かつてのメインルートを辿る旅。
土木技術の進化によって新たな鉄道が生まれ、ローカル線と化して消えていく姿を身に沁みさせられました。
4時になったばかりで暗くなっていく根室駅が、3日に渡る長かった旅を思い返させます。
函館から根室の移動だけでもかなり時間がかかり、ローカル線区間では本数が少なくスピードも遅め。
余裕がないと中々実践しづらい旅ですが、かつて幹線だった姿を想像できる非常に面白いルートでした。実際に移動したようにお楽しみいただけたなら幸いです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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