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【橋梁倒壊】美祢線/山陰本線の被災現状を代行バスで見に行く 復旧か廃止か…?[2307美祢線(1)]

2023年7月9日

 

山口県における記録的大雨で被災した、美祢線と山陰本線。

美祢線全線と山陰本線の小串〜長門市で運転見合わせが続いており、代行バスや代行タクシーが運行されています。

 

特に美祢線では第6厚狭川橋梁が流出し、赤字ローカル線に億単位の復旧費用がかかると予想され、このまま路線廃止も考えられる状況です。

 

今回は代行タクシーと代行バスを利用し、路線の被災現場を訪問してみました。



美祢線の起点である厚狭駅は、山陽新幹線の乗換駅です。

こだま号しか停まらない山陽新幹線唯一の駅となっており、時刻表は真っ青。

 

新幹線乗換改札には、美祢線バス代行の案内が掲示されていました。

 

乗換改札の美祢線発車標は暗くなっており、バス代行の紙が貼られています。

 

そこから跨線橋が接続しており、4面5線のホームへ階段が降りています。美祢線が発着していたのは1,2番線ホームです。

 

ホーム上を観察してみましたが、特に変わった様子はありません。

 

代行バスのりばの案内は跨線橋上のみで、これに従って在来線口へ向かうことになります。

 

駅舎に面した1番線ホームは美祢線専用、普段ならここにキハ120が止まっています。

 

東側を見ると信号下に「美祢上り」の文字。左へ分かれているのが美祢線です。

 

在来線改札外へ出てきました。美祢線の欄は表示されておらず、特に代行バスの紙は貼られていませんでした。



みどりの窓口跡にはホワイトボードが置かれ、美祢線代行バスの時刻表が掲示されています。

列車のダイヤと大体合っていて、本数は同じです。

 

ここで気になるのが、ひと駅先の湯ノ峠ゆのとう駅を、すべての便が通過していること。

湯ノ峠駅だけは美祢線に沿った道路から外れているためです。

 

そこで、厚狭駅〜湯ノ峠ゆのとう駅を往復する代行タクシーが設定されています。

 

こちらが各駅のバス停の位置です。大抵は駅前か、広い道路に設定されていました。

 

厚狭駅の場合は、在来線の駅前ロータリーとなります。



まずは代行タクシーで湯ノ峠駅へ向かうことにします。

厚狭駅から湯ノ峠駅の代行タクシーを使う場合、厚狭駅の駅員さんに申し出るよう案内がありました。

ただし、この代行タクシーは美祢方面から湯の峠へ行く人に向けて設定されています。そのため、乗車したい場合は早めに申し出ておいた方がスムーズです。

 

みどりの券売機で時刻検索してみると、時刻は出ませんが、乗車券の購入はできました。



美祢方面からの代行バスが到着。

お客さんは9人降りられました。

美祢線の中でも厚狭〜美祢の利用はそれなりに多い印象、平日の昼間でも高齢の方が使われています。

 

駅員さんにきっぷを見せて検札を受け、湯ノ峠駅の集札箱に入れるよう言われました。

これでタクシーに乗車します。他にお客さんはいらっしゃらず、今朝2人利用されていたそうです。

 

代行タクシーは第一交通さんが担当されています。

雨が降ってしまい見えづらいですが、所々で美祢線の線路を見られました。



10分ほどで湯ノ峠駅に到着。

代行バスの仲間はずれにされちゃってますが、かなり立派な駅舎。

そして入り口には土嚢が並んでおり、一週間経っても大雨の影響が未だに分かります。

 

駅舎内にも砂が流れ込んでおり、乾いた土の香りが立ち込めていました。

 

ラッチ周辺にも土嚢があって、これらによって駅舎内が守られたようです。

 

階段に2段目あたりまで汚れており、そこまで水位が上がっていたのでしょうか。

 

一応ホームヘは入らないようにしておきますが、ここからでもジメジメとした土が溜まっているのをはっきりと確認できました。

 

駅構内線路には流木や蔦が絡みついており、冠水していた証拠を目の当たりにします。



ここから厚保駅方で路盤流出や土砂流入が起こっているようなので、そちらへ歩いてみることにします。

駅舎横には流木が集められており、今回でか分かりませんが標識も傾いていました。

 

踏切から見ても、線路やバラストに流木が溜まっている様子を観察できます。

 

湯ノ峠駅のすぐ近くには厚狭川が流れており、こちらの水位が上がったということです。

 

黄色いガードレールのところまで泥が付着しており、信じ難いですがあの高さまで増水していたんですね。

 

しばらく国道316号を歩きます。山の中を走っている美祢線が姿を現す頃、特に土砂崩れは起きていないようで、見える限りでは無事のようです。



そう思っていたところ、何でもない田んぼの中を走る線路に、大雨の爪痕が。

盛り土に線路が敷設されているのですが、コンクリートの枕木が完全に浮いています。

 

こちらは更に進んだ別の地点。工場の駐車場に面したところで、線路が完全に浮いている様子を間近で見られました。

 

盛り土もやや崩れている様子で、土嚢によってこれ以上の崩壊を防いでいます。



こちらはその近くにある、貞任第5踏切です。

遮断機や警報機に多くの流木が絡まっていました。

 

厚狭方のカーブしている辺り、建物のところが路盤流出していた地点です。

 

流木は反対の美祢方に多く溜まっている状態でした。

 

中には生活用品なども混ざっており、大雨規模の大きさを実感させられます。

 

近くにかかる橋の欄干にも流木が多くあり、重みのせいか分かりませんが少したわんでいます。看板の通り全面通行止の状況です。

正確なことは分からず撮影はしませんでしたが、警察車両と川から引き上げたようにも見える車がいました。



15分ほど歩いて、湯ノ峠駅へ戻りました。

時間になると代行タクシーがやってきます。湯ノ峠駅→厚狭駅方向については特に利用の連絡は必要ありません。

 

進行方向左の美祢線に注目していましたが、路盤流出や土砂流入は確認されませんでした。

 

あちらは列車交換を行っていた、鴨ノ庄信号場。

美祢線にはかつて多くの貨物列車が走っており、それを捌くための交換設備が残っているのです。



厚狭駅へ戻ってきました。

少し待っていたら長門市行きの代行バスが到着。こちらに乗車して北上することにします。

 

前や横にはLEDで大きく「鉄道代行」と表示されていました。

代行バスの運行を始めてから今日で4日目、仮に鉄道復旧が行われるとしても、1年くらいこれが続くでしょう。

 

5人ほどお客さんを乗せて、厚狭駅を出発しました。ご高齢の方と大学生で半々くらいです。

 

代行バスは美祢線から外れて、県道65号へ。中国縦貫自動車道の美祢西IC近くを通りました。

 

最初の停車駅は厚保あつ駅となります。何か駅周辺で復旧作業を行なっているのか、何台か工事用らしき車両が停まっていました。

 

この橋梁ではありませんが、美祢線は2010年にも平成22年梅雨前線豪雨により、第3厚狭川橋梁(湯ノ峠駅〜厚保駅)の流出が起きました。

この時山口県は、JR西日本から「廃止したい路線と位置付けている」との発言があったとしています。全線復旧費用13億3400万円のうち6億6700万円を国と山口県が負担し、残りをJR西日本が負担する形で運行再開しました。

 

しばらく北上していると、めくれ上がった太陽光パネルが姿を現します。家具を外に出した家々も見受けられ、完全に被災地の中です。

 

それだけ大きな被害を受けた地域に位置する、四郎ケ原駅で下車しました。

ここから美祢線で一番大きな被害を受けた、崩落・流出している第6厚狭川橋梁を見に行きます。



四郎ケ原駅より北へ、県道33号に向かいます。

踏切などからも見ましたが、路盤流出などは無さそう。県道33号と美祢線が厚狭川を挟む形です。

 

交差点には流木や家具が残っており、被災地の生々しさを突きつけられます。

 

ちょうど代行バスとすれ違いました。

ここは車通りが多い上歩道が無く、カーブは見通しが悪いので、歩かれる際はかなり注意が必要です。

 

増水でなぎ倒されたであろう植物のすぐ向こうが美祢線。あまり見えませんが間違いなく線路冠水はしていたのでしょう。



そして遂に倒壊した、第6厚狭川橋梁が姿を現します。

想像以上の崩落の状況に、驚きを隠せません。

 

真ん中の橋脚が倒れ、線路は崩れるようにして湾曲している状態です。

 

電線は草木のカーテンレールになってしまい、引きずりこまれた厚狭方の線路と絡みつきます。



第6厚狭川橋梁は、美祢市衛生センターのすぐ近くです。

おそらく様子を見に来る方が多いのでしょう、立ち入り禁止のコーンが立っていました。

逆にこうしてくれていた方が、どこまでなら入っていいかはっきりしてくださり、非常にありがたいところです。

 

上から見下ろすと、明らかに線路が川へ落ちていく様子を見て取れます。

 

厚狭方に至っては、線路がほぼ垂直です。

 

いつ崩落したかは分かっていないのですが、おそらく流木などが橋脚に当たって崩れたと考えられます。

 

美祢方の橋脚が倒れたことで、線路も一緒に川へ落下。

 

厚狭方についても引きずり込まれるようにして、線路が落ちていったと考えられます。

線路はレンガの積まれている橋台に載っていたはずで、周りの固められた石垣なども全体的に崩れてしまっていました。

 

復旧を願いたいところですが、橋梁の一部分ではなく全体的に崩落している状況。完全に作り直す必要があり、費用は10億を超えそうな規模です。



四郎ケ原駅へ戻ってきました。

広い駅舎内には3人掛けの椅子と、学校で使うような机がポツンと佇んでいました。1日の乗車人数は7人とのことで、やはり列車を使う方も非常に少ないようです。

 

大きな駅舎に有効長の長いホームには、貨物列車で賑わった昔の姿を思わせます。

 

厚狭方面ホームには国鉄90周年記念の碑が建立されていました。

 

美祢線の2019〜21年度平均収支状況は、4.6億円の赤字。輸送密度も366(人/日)と非常に低く、かなり厳しいと言わざるを得ません。

突然走らなくなった列車が再びやってくることはあるのでしょうか…。



四郎ケ原駅より再び長門市行きの代行バスに乗車。

高校生の下校時間に重なり、7人ほど乗っておられました。

 

車内からでも崩落した第6厚狭川橋梁を見られます。

 

踏切へ続く道が立ち入り禁止になっていたのですが、特に線路上は問題なさそう。途中の道に何かあったのかもしれません。

 

かつて大嶺支線が分岐していた南大嶺駅。大嶺炭田があったのですが閉山のため需要が減り、1997年に廃止されました。

 

途中土砂崩れのため片側車線通行止めの箇所もありました。こちらはすぐに復旧工事が行われています。

 

美祢市の代表駅である美祢駅で、高校生の生徒さん4人が下車されました。

この近くには山口県を代表する観光地、秋吉台があります。観光客に美祢線を使ってもらおうと取り組んでいるところですが、中々そうもいかないのが現状です。



その訳はこちら、新山口駅です。

駅前にはバス乗り場が広く整備されており、萩、秋芳洞、長門市へのバスが充実しています。

 

のぞみ号も停まる新山口駅からバス一本で観光地に行けるのなら、明らかにこちらの方が便利。こだましか停まらない厚狭駅から美祢線を利用して、観光地へ向かう方はかなりの少数派です。

 

ちょうど見えてきました大きな煙突、あちらは宇部興産のセメント工場です。

かつては石灰石を運ぶ貨物列車が美祢線を走っていたのですが、宇部興産専用道路を建設して港までの私道を整備したことで貨物列車は廃止。美祢線は一気にローカル線と化してしまいました。

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美祢線の役割は高校生の通学輸送であり、平日の朝夕に乗車すると確かに多くの生徒さんが利用しています。これをバスで賄う体制が整ってしまえば、もう美祢線の役割は終わったと言わざるを得ません。



長門市に入り、長門湯本温泉まで北上しました。

バスはかなりレトロな街並みの中、非常に狭い道を走っていきます。

 

長門湯本駅の利用者は少ないのですが、温泉街から非常に近いです。今後美祢線を観光路線として活用したいなら、ここが一番の強みにすら思います。

 

2022年7月には福岡〜長門湯本温泉の高速バス「おとずれ号」も新設されたばかり、かなり注目を浴びている温泉地です。



長門市市街地を走りまして、終点の長門市駅に到着です。

美祢から乗車されていた生徒さんも途中で降りられ、最後まで乗っていたのは僕ひとりだけでした。

 

駅車内に入り発車標を見てみると、美祢線と山陰線小串方面のところに、代行バスの紙が貼ってあります。

 

美祢線だけでなく山陰本線線でも長門市〜小串が運転を見合わせており、同区間で代行バスが運行されているのです。

 

橋梁が傾いて軌道ズレが起こったほか、土砂流入や路盤流出の写真が掲載されていました。

 

翌日7/8にも大雨が襲っており、代行バスや列車は運休。さらなる被災がないことを祈ります。

 

益田方面の気動車が出発していった一方、美祢線のキハ120は長門市駅でお休み中です。



それでは山陰本線の代行バスに乗車します。

美祢線の代行バスは、JRバス中国によって運行されていました。

 

一方で山陰本線は防長バス、高校生の下校時間帯ということで、積み残し対策のため2台体制でした。

 

高校生の生徒さんを主に、15人乗せて長門市駅を出発します。

 

かなり景色の良い海沿いを走ってくれていて、山陰本線からもこのような車窓を楽しめます。観光列車「〇〇のはなし」が萩〜新下関で走っていますが、運転見合わせのために運休中です。

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最初の停車駅である黄波戸駅近くに停まりました。

乗車したバスの運転士さんは一切アナウンスをしない方で、完全に地元の生活利用者に向けた印象です。

旅行で来られる場合、GoogleMapを開いたりして、ずっと気を張っていた方が良いでしょう。

 

長門古市で7人下車、8人乗車されました。どちらも高校生徒さんの下校の様子です。

 

海の断崖絶壁に連なる鳥居で有名な、元乃隅神社の最寄駅とされる人丸駅。5人下車され、1人乗車しました。



長門粟野駅で下車しました。

ここから少し歩いたところ、山陰本線の粟野川橋梁が被災しているため、見に行くことにします。

 

同じ粟野川ですが、道路の粟野橋については新しく架替え工事中でした。

 

見る限りこちらは被害が無さそうで、通常通り車も通っています。

 

一方で山陰本線の粟野川橋梁、ぱっと見では分かりませんが…

 

よく見ると橋脚が向こうへ傾き、それに従って橋台もズレているようでした。

 

一番右はまっすぐですが、それと比べると明らかに傾いています。

 

公道から見える範囲ではこれが限界、この上に敷設された線路も曲がってしまっています。



長門粟野駅へ戻ってきました。

非常に長いホーム端まで来ましたが、やはり橋脚を見ることはできません。

 

かつて行き違い可能駅だったようですが、片側の設備が撤去されています。

 

駅舎内には粟野小学校児童による絵が飾られていたり、貸し傘設置に取り組んでいたりと、この駅が大切にされている様子を伺えました。

 

一方でその粟野小学校、2019年度末をもって閉校してしまったそうです。

 

長門粟野駅より小串行きの代行バスに乗車。5人ほど高校の生徒さんが乗っていました。

 

バス車内からも橋梁の様子は観察できます。

 

「〇〇のはなし」が観光停車する阿川駅。駅前には小さなまちのkiosk「Agawa」があって、断水のため休業していたのですが、営業再開したようです。

 

滝部駅近くには下関北高校があって、5人くらい高校の生徒さんが乗って来られました。



代行バス終点の小串駅に到着です。

下関方面の列車と接続していないこともあり、親御さん方がここまで車で迎えに来られていました。

 

ちょうど小串駅に到着した列車は、夜間停泊のためか引き上げられていきました。

 

小串駅のバス乗り場は駅舎と反対側となっています。

 

長門市方面の時刻表には、代行バスの紙が真上より貼られていました。

 

その代行バスのりばというのが、線路下の地下道を通った先です。



下関駅からの列車が到着。

30分くらい停車したのち、折返し下関行きになります。

 

列車が到着したところで、小串駅を出発。この時点で誰もいませんでしたが、川棚温泉駅より先でポツポツと乗られてきました。

 

こちら梅ヶ峠駅は本州最西端の駅です。

 

ちょうど向かいからは山陽本線の電車が通過してきました。

 

幡生駅にて山陰本線は終わり、山陽本線に入ります。



終点の下関駅に到着です。

京都から続く日本一長い在来線は、しばらくの間途切れることとなりました。

 

特に情報公開されている訳ではありませんが、橋梁の傾きで済んでいる山陰本線は、しばらくすれば復旧しそうな感覚。一方で美祢線は復旧するにしても年単位で時間がかかり、路線廃止も視野に入っていると思われます。

毎年のように被災しているローカル鉄道。鉄道ファンとしてはとにかく早いうち乗っておくのが吉という状況です。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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