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【なぜ赤字幹線に?】美祢線がローカル線になった理由は貨物廃止にあり![〇〇のはなし(3)]
ここは山口県西部の街、山陽小野田市は厚狭駅です。 山陽新幹線の中で唯一ひかり号が1本も停まらない駅であり、駅舎も新幹線停車駅とは思えないような国鉄時代からのコンクリート駅舎です。 ...
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長州藩の本拠地として栄えた城下町、日本海側の山口県萩市に来ています。
街の中心駅は、ここ山陰本線の東萩駅です。特急列車は益田駅から山口線へ抜けてしまうため、優等列車は走っていません。山陽側の山口市とはバスによるアクセスが便利です。
「明治維新胎動の地」という謳い文句の萩市からは、観光列車「○○のはなし」が走ります。
特徴的な列車名は、萩(はぎ)・長門(ながと)・下関(しものせき)に刻まれた歴史や文化、海の幸や地酒など、様々な「はなし」が息づいていることが由来とされています。
それぞれ赤と緑の車両の間は「洋と和をつないだ海」によって結ばれており、夏みかんの花とハマユウが描かれています。
夏みかんは萩市の果樹、長門市には天然記念物の原木が残っています。ハマユウは下関市の花です。
近年JR西日本が導入する観光列車は、グリーン車指定席に変わっています。車両内装は非常に豪華である一方、乗車券として青春18きっぷを利用することができません。
しかし、○○のはなしは普通車指定席なので、乗車券として青春18きっぷの利用が可能です。
乗車には指定席料金は530円、3時間半に及ぶ山陰本線の旅を楽しみましょう。
内装
列車の内装は、「西洋が憧れる日本」と「西洋に憧れた日本」をモチーフにしています。
1号車は「西洋が憧れる日本」として、和風の車内です。
テーブル席が基本となっており、右側が海沿いです。6席だけ窓を正面に向いた、カウンター席があります。
床面も石畳風になっており、和風庭園のような雰囲気がありました。
座面の色合いやテーブル下の畳など、カジュアルさを残しつつ和の良さを引き出しています。
車内には沿線案内の一環として、伝統工芸品が展示されていました。
郷土料理も紹介されており、やきとり、はぎ御膳、ふく恋盛り。旅館で出てきそうな豪華な食事みたいです。
2号車は洋風の「西洋に憧れた日本」。
皮張りシートや煉瓦の壁紙など、レトロな喫茶店みたいなデザインです。
全ての座席が海側を向いており、山側は少し高くなっています。
この車両は気動車ですが、コンセントも設置されました 。
車内には行った時には、夏みかんの香りがお出迎えしてくれます。
明治維新後、職を失った士族に栽培が勧められました。山口県のガードレールは夏みかん色になっており、今では県のシンボルと化しています。
乗車記念のスタンプや、記念乗車証も置いてあります。
時刻表
午前便(新下関~下関~長門市~東萩)
新下関(9:59発)-下関(10:07発/10:11着)-川棚温泉(10:40発)-小串(10:44発)-滝部(11:12発)-特牛(11:18発)-阿川(11:22着/11:37発)-人丸(11:53着/11:57発)-長門市(12:18発)-萩(12:47発)-東萩(12:52着)
午後便(東萩~仙崎~長門市~下関~新下関)
東萩(14:13発)-萩(14:20発)-仙崎(14:56着/15:25発)-長門市(15:31発)-人丸(15:49着/15:55発)-阿川(16:11着/16:21発)-特牛(16:27発)-滝部(16:33発)-小串(16:59発)-川棚温泉(17:03発)-下関(17:39着/17:43発)-新下関(17:50着)
乗車記
萩市
14:13 東萩駅 発
駅員さんにお見送りされながら、立派ななまこ壁の駅舎を出発します。
萩市の中心街は、川に運ばれた土砂が作り出すデルタ地形にあります。山陰本線は既に発展していた城下町に線路を通せなかったため、それを迂回するようにして敷設されました。
萩市の中心駅は東萩駅ですが、萩駅もまた昔ながらの駅舎を再現したレトロなデザインとなっています。
萩市観光協会の方々が、横断幕を持ってお見送りしてくださいました。
大漁旗みたいに、非常に派手なデザインとなっています。
住宅街の向こうに見える山は、萩城があった指月山です。明治時代の廃城令によって取り壊され、天守閣の復元も財源の問題から難しくなっています。
萩市街の縁を通った後、列車は日本海沿いへ。その後はちょっと山がちな内陸部にも入ります。
この辺りで車掌さんが検札にいらっしゃいました。車掌さんにお願いすれば、○○のはなしの入鋏も押していただけます。
沿線には石州瓦の集落をたくさん見られます。
朱色屋根の日本家屋は寒くて雪の多い地域に多く、この地域のシンボルです。
萩市から長門市に入りまして、海の向こうには青海島が見えています。海上アルプスと呼ばれる自然の地形が魅力です。
仙崎支線
到着した長門市駅ホームには、列車が神隠しに遭ったかのように、赤い鳥居がズラッと並んでいます。
ここではドアが開くことは無く、そのまま進行方向を変えて長門市駅を出発しました。
ここから入るのは山陰本線の支線、左側の仙崎支線です。
長門市~仙崎の普通列車は6往復だけ、日本最長路線である山陰本線から伸びるわずか2.2kmの支線です。
仙崎駅の利用者数は(47人/日)、あくまで山陰本線の一部のため残されたようですが、いつ廃止されてとおかしくない状況。
その中でも貴重な観光列車の停車。仙崎駅では15:25の発車まで、29分停車します。
金子みすゞ
1区間しかない支線とは思えない、立派な終着駅です。
駅舎内には仙崎かまぼこの板を使った、彩り豊かなモザイクアート。それぞれにメッセージが書かれています。
仙崎駅を出て右ヘ進む道は、金子みすゞ通りと言われます。
童話詩人として広く知られる金子みすゞは仙崎出身です。1930年に26歳で亡くなったのち、半世紀経って教科書に採用されたこともあり再度長知れ渡ることとなりました。
センザキッチン
JR仙崎駅から歩いて5分くらいのところに、道の駅センザキッチンがあります。この長時間停車の間にも、十分買い物に行くことができます。
列車の本数は少なくても、たくさんのお客さんがいらっしゃいました。仙崎名物と言えば、ちくわやかまぼこ等練り物、イカやウニといった海の幸です。
○○のはなしの車内に展示されていたように、仙崎の焼き鳥を買っていきたかったところ。しかし、50分待ちと示されていたので厳しそうです。
長門市
道の駅から戻って来まして、仙崎駅を発車。
壁には鯨が描かれていますが、ここは捕鯨が行われた地域です。青海島にはくじら資料館もあります。
再度、長門市駅に停車しまして、今度はドアも開き乗降扱いを行います。
難しいのかもしれませんが、さっきの時点で仙崎まで乗ることができれば、センザキッチンの収益も僅かとはいえ貢献して良さそうですが…。
長門市駅を出発。
こちらでは旗を振って見送ってくださり、小さな触れ合いです。
車両基地も併設されており、特急が走らないためローカル感溢れます。
そして、いよいよ1つ目のビュースポットです。
先程も見られました青海島は、日本海の荒波により断崖絶壁や岩礁などが形成されています。
人丸駅にてしばらくの停車。
雲から差し込む太陽の光が車体を照らし、高貴な雰囲気が増しています。
123基の鳥居が崖に並ぶことで有名な、元乃隅神社の最寄り駅です。アメリカCNNにより日本で最も美しい景色31選に選ばれました。
駅舎には神社をモチーフにした、赤い鳥居が立っています。
車内販売
2号車には車内販売カウンターがあり、列車のグッズやお土産、日本酒を購入できます。
ドリンクや食べ物は販売しておらず、お弁当系に関しては乗車3日前までの電話予約が必要です。
唯一販売されているのが、日本酒です。5種類ありまして、味わいまで紹介してあるので、詳しくなくても安心。
センザキッチンで買ってきたちくわと一緒に、甘口の日本酒を楽しみました。
人丸駅を出ると、油谷湾沿いを走行。少し入り組んでおり、木々でモコモコした島を楽しめます。
下関市
阿川駅には「小さなまちのKiosk」をコンセプトにしたカフェAgawaがあって、土祝日を中心に開店しています。
全面ガラス張りでスケルトンなデザイン。田舎景色の中ぽつんとある感じが良いですね。
2020年8月にオープンしまして、これにあわせて「〇〇のはなし」が停車するようになりました。
この間にテイクアウトで購入できますよ、ということです。観光列車でよくあるホーム上の販売に留まらず、実店舗を構えているというのが凄いですね。
今回購入しましたのは、車内でもあらかじめ放送されていた「○○のはなし」オリジナルセット。
1500円でクッキーや阿川みかんジュースの他、色々セットになっています。車内販売では購入できない分、ぜひ手に入れて欲しいところです。
阿川駅は角島大橋の最寄り駅となっており、Agawaではレンタサイクル事業も行っています。
1780mに及ぶ無料の橋が架かっており、その景色はコマーシャルに採用されたことも。
屈指の難読駅名、特牛駅にも停車。ブルーラインというバス路線が駅前を通っており、角島まで行くことができます。
滝部駅にもまた停車しまして、駅名標には角島大橋の写真が掲載されていました。
さて、山陰本線は再び海沿い区間に出てきまして、ビュースポットとして停車することに。
この時は1月はじめだったので日の入りが早く、夕陽の時間帯でした。
海の向こうには小さな島々が浮かんでおり、荒波がその海岸に打ち付けています。
その一つ「男島」は無人島「厚島」と呼ばれ、1952年にピアニストのアルフレッド・コルトーが川棚温泉に宿泊した際、この景色に感激して「厚島を譲ってくれないか」と懇願したと言い伝えられています。
川棚温泉駅にも停車しますが、その玄関口となっているのが小串駅。トワイライトエクスプレス瑞風の横断幕も掲げられていました。
本州最西端の駅、梅ヶ峠駅を通過。ここが西に出っ張っており、東へと戻りつつ南下する形です。
吉見駅で運転停車しまして、普通列車と行違います。
そしてまさに日が落ちる頃、日本海ともお別れです。
ここで山陽本線が合流しました。
日本一長い在来線、山陰本線は幡生駅で終わりです。
そのまま山陽本線を西へ乗り入れまして、本州の果てとなる下関駅に到着しました。
ここで列車は進行方向を変えます。
アテンダントさん方とはここでお別れ。手を振ってお見送りしていただきました。
下関市は山口県で一番大きい街。九州との繋がりが深く、海峡を挟んだ北九州市とともに発展しました。
そして列車の終点となる新下関駅に到着です。
17:50 新下関駅 着
山陽新幹線の高架橋の下、終点の新下関駅に到着しました。
車内空間は非常に落ち着いており、日本海の景色もよく、阿川駅での買い物も非常に楽しめます。青春18きっぷで観光列車の旅をしてみたい、そんな時手を伸ばせる魅力ある列車でした。
山陽新幹線の改札までは遠くなっているため、動く歩道での移動になります。
さくら566号新大阪行き、こだま855号博多行きに接続しています。青春18きっぷは現地でだけ使用する方は、こちらをご参考にしてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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