鉄道路線には都市と各方面を繋ぐ『放射路線』と、複数の放射路線を結ぶ『環状路線』の2つがあります。
簡単に言えば名古屋周辺では名古屋駅や栄駅などへ向かう路線が放射路線、その周りをつなぐのが環状路線です。
今回ご紹介するのは名古屋市南部、名古屋港に建設される予定だった名古屋市営地下鉄南部線。
桜通線の桜本町駅から名古屋港駅、あおなみ線の稲枝駅まで結ばれる予定でした。
やって来たのは南部線が分岐する予定だった桜通線、桜本町です。
この駅には不思議な構造が残されています。
桜通線はこの駅を出発すると東へカーブしていきます。一方南部線はしばらくは南下する形です。
桜本町駅において2路線は完全に重なっており、相当乗り換えは便利な構造になります。
こちらは桜本町駅の断面図です。
プラットホームは地下3階、そして改札は地下1階。何故か使用されていない地下2階が存在しています。
その空間はどうなっているのか、階段を登ってみると…、
やけに広い踊り場がありました。
これだけ広ければステップを踏むどころか、ブレイクダンスだって余裕です。
現在桜通線のホームは地下3階にありますが、その真上に位置する地下2階に南部線のホームが出来る予定でした。
そのため、この踊り場は南部線の乗り換えスペースに使用されるはずだったのです。
また、南部線は他の地下鉄路線とは違って、中量起動輸送システムでの建設が想定されていました。
厳密には違いますが、新交通システムをイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。
しかし住民たちから上がっていたのは、現在の名城線と名港線の関係のように、南部線を桜通線の支線として運行してほしいという声。
それを受けてか、そのような形へ転用できるような構造も残されていました。
通常地下鉄が走行する場所は駅を出発すると丸い形になります。
しかし桜本町駅の鶴里方面はシールドトンネルと呼ばれる四角いものになっています。
桜通線から南部線へ地下鉄を直通させる路線を建設させやすいようにしたと考えられます。
そんな南部線の立ち位置は、建設優先度の低い路線となっています。
名駅地区に都市圏が集中している現在、名古屋港周辺に環状路線を建設してもあまり意味がありません。
また、クルマ社会の名古屋市では地下鉄にしなくても十分道路が発達しているというのが現状です。
しかし鉄道路線としてはそれぞれの街が独立しているように見える南部の街。開業していたらどのような流動があったのか、想像が膨らみます。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。